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第一章
9話
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「おい、フィリア!何ぼーっとしてんだよ!」
「ちょっと何回言ったら分かるのよ!お嬢様への口の聞き方をもっと考えなさいってば!」
「いってぇ!殴らなくたっていいじゃねぇか!」
「殴ったなんて言わないでよ!これはしつけよ。し、つ、け!」
「なんだとぉ?」
うーん……。幸せを守るって決めたのはいいものの、どうすればいいのかが全くわからないわ。まずほとんどの人と会ったこともないのに。どうしようかしら……。お庭に咲き誇る花々を見ながらぼんやりと頭を働かせる。
「あんたはほんとに生意気なのよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
うーん……。色々考えたいのだけれど何だか少し騒がしいような……。そう思って私はやっと周りの状況を確認した。箒を持ったラナとスコップを持ったジェイくんが睨み合っている。これは危ない。
「二人とも落ち着いて!きっかけはだいたい想像がつくけどラナも気にしなくていいのよ、言葉遣いくらい。ジェイくんはお友達なんだから」
「ほら!フィリアだってこう言ってるだろ!」
「だけど!ジェイくんも女の子相手にスコップで戦おうとするのはどうかと思うわよ。それ金属製じゃないの……」
「ですよね!やっぱりお嬢様は私の味方!」
「この件に関してはどっちの味方でもないわ。はぁ、もう少し二人が仲良くなってくれたら嬉しいのだけれど……」
「「それは無理」です!」
二人は揃ってこちらを向いた。
「……息はぴったりなのにね。それに二人が並んでいると森の妖精が戯れているみたいで可愛らしいのに」
そう、髪の色は茶色と柚葉色だし目の色はどちらも緑系の色だから二人が揃うと森を思い出す。これで会話の内容も可愛らしかったらいいのに……。ジェイくんが週に一回のペースでここに来るようになってからいつもこの調子だ。どちらも素直でいい子の似た者同士だと思うのだがなかなか上手くいかない。
「こんな奴が森の妖精だったら動物たちも寄り付かないだろうよ」
「何ですって?」
「もう!二人ともいい加減にしなさい。喧嘩せずにいられるようになるまで私は二人とは話しません!少しは歩み寄ることを覚えるべきよ」
二人が自然に仲良くなることを期待していたけれど難しいみたいなので強硬手段だ。一度ちゃんと二人きりの時間をとることにした。私は姿勢を正し、くるりと向き直って屋敷の中に戻った。二人は呆然としていたが気にしないことにした。
******************
部屋に戻った後、ラナは置いてきたのでリサに淹れてもらったお茶に口をつけた。それにしても部屋に戻ってきたあたりから何だか頭が重い。体も怠いし、視界も少しぼやけている。
「ふぅ、少し疲れてしまったみたい。一時間くらい休もうと思うから時間が来たら起こしてもらえるかしら?」
「かしこまりました。……お嬢様、申し訳ございません」
「何のこと?」
「ラナのことです。私共の教育が足りておりませんでした。ラインホルト家の侍女たるもの、お仕えするお方にご迷惑をかけるなど言語道断でございます」
「それは気にしないで。素直であることはラナの美点だもの。ただ少し真っ直ぐすぎるだけよ」
「ですが……」
「いいの。貴女も気にすることはないわ」
少し納得のいかない顔をしているリサを安心させようと微笑む。しかし頭痛で上手くいかず顔が歪んでしまう。
「お嬢様?」
「気に、しないで。少し体調が悪い、だけだから、休めば…すぐに……」
この感覚は久しぶりだ。倒れたりして迷惑はかけたくないので気を張ってみるが上手くいかない。私は楽な方へと意識を手放した。
慌てたリサの声と足音が遠くに聞こえた気がした。
「ちょっと何回言ったら分かるのよ!お嬢様への口の聞き方をもっと考えなさいってば!」
「いってぇ!殴らなくたっていいじゃねぇか!」
「殴ったなんて言わないでよ!これはしつけよ。し、つ、け!」
「なんだとぉ?」
うーん……。幸せを守るって決めたのはいいものの、どうすればいいのかが全くわからないわ。まずほとんどの人と会ったこともないのに。どうしようかしら……。お庭に咲き誇る花々を見ながらぼんやりと頭を働かせる。
「あんたはほんとに生意気なのよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
うーん……。色々考えたいのだけれど何だか少し騒がしいような……。そう思って私はやっと周りの状況を確認した。箒を持ったラナとスコップを持ったジェイくんが睨み合っている。これは危ない。
「二人とも落ち着いて!きっかけはだいたい想像がつくけどラナも気にしなくていいのよ、言葉遣いくらい。ジェイくんはお友達なんだから」
「ほら!フィリアだってこう言ってるだろ!」
「だけど!ジェイくんも女の子相手にスコップで戦おうとするのはどうかと思うわよ。それ金属製じゃないの……」
「ですよね!やっぱりお嬢様は私の味方!」
「この件に関してはどっちの味方でもないわ。はぁ、もう少し二人が仲良くなってくれたら嬉しいのだけれど……」
「「それは無理」です!」
二人は揃ってこちらを向いた。
「……息はぴったりなのにね。それに二人が並んでいると森の妖精が戯れているみたいで可愛らしいのに」
そう、髪の色は茶色と柚葉色だし目の色はどちらも緑系の色だから二人が揃うと森を思い出す。これで会話の内容も可愛らしかったらいいのに……。ジェイくんが週に一回のペースでここに来るようになってからいつもこの調子だ。どちらも素直でいい子の似た者同士だと思うのだがなかなか上手くいかない。
「こんな奴が森の妖精だったら動物たちも寄り付かないだろうよ」
「何ですって?」
「もう!二人ともいい加減にしなさい。喧嘩せずにいられるようになるまで私は二人とは話しません!少しは歩み寄ることを覚えるべきよ」
二人が自然に仲良くなることを期待していたけれど難しいみたいなので強硬手段だ。一度ちゃんと二人きりの時間をとることにした。私は姿勢を正し、くるりと向き直って屋敷の中に戻った。二人は呆然としていたが気にしないことにした。
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部屋に戻った後、ラナは置いてきたのでリサに淹れてもらったお茶に口をつけた。それにしても部屋に戻ってきたあたりから何だか頭が重い。体も怠いし、視界も少しぼやけている。
「ふぅ、少し疲れてしまったみたい。一時間くらい休もうと思うから時間が来たら起こしてもらえるかしら?」
「かしこまりました。……お嬢様、申し訳ございません」
「何のこと?」
「ラナのことです。私共の教育が足りておりませんでした。ラインホルト家の侍女たるもの、お仕えするお方にご迷惑をかけるなど言語道断でございます」
「それは気にしないで。素直であることはラナの美点だもの。ただ少し真っ直ぐすぎるだけよ」
「ですが……」
「いいの。貴女も気にすることはないわ」
少し納得のいかない顔をしているリサを安心させようと微笑む。しかし頭痛で上手くいかず顔が歪んでしまう。
「お嬢様?」
「気に、しないで。少し体調が悪い、だけだから、休めば…すぐに……」
この感覚は久しぶりだ。倒れたりして迷惑はかけたくないので気を張ってみるが上手くいかない。私は楽な方へと意識を手放した。
慌てたリサの声と足音が遠くに聞こえた気がした。
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