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第一章
7話
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ある晴れた日の午後。とっても気持ちが良くてお散歩日和だわ。そう思っていた時だった。
「お嬢様、お手紙が届いております」
そう言ってラナから手渡されたのは一枚の真っ白な封筒。気になって差出人を確認する。
<ロナン・ラインホルトより>
「あら、お兄様からじゃない!」
そう、私には兄がいる。私よりも七つ歳上で三年前から他国へ留学に行っている。つまりは大変優秀な人なのだ。竜胆色で少し長めの髪は一つにまとめられており、私より少しグレーがかった空色の瞳は冬の空に似ている。私やお父様とは違うこの色合いは私が生まれてすぐに亡くなってしまったお母様のものを受け継いでいる。けれど顔つきはお父様にそっくりだ。少し垂れ目なところとかすっきりとした鼻筋とか。
<愛する我が妹へ
フィリア、元気にしているかい?春になって少し暖かくなってきたから体調も少しは安定してくる頃だと思うが無理はしないようにね。来月にはそちらに帰る予定だ。可愛らしい妹の笑顔が見られるのを楽しみにしているよ。>
そういえば私ったらお兄様にまだ散歩に始めたことを伝えていなかったわ。あとでお返事に書いておきましょう。それにしても優しい兄だ。手紙をくれるたびに私の体調を気にしてくれていることがよく分かる。それに……
「お兄様が来月帰ってこられるそうよ!」
「そうなんですか!私はまだお会いしたことがないので分かりませんがお嬢様がこんなにお喜びになるということはとっても素敵な方なんですね」
ラナが我が家にやってきたのはお兄様が留学に行った二ヶ月後なのだ。それからお兄様がこちらに帰ってきたことはないので二人は面識がない。それにしても自分の身内が褒められるのは嬉しいことだ。
「えぇ、とっても優しいし頭が良くてかっこいいの!っ……」
ロナン先生は本当に素晴らしい方なのよ!と言いかけて何とか止まることができた。……ん?先生?いやいや、お兄様はまだ成人もしていないのに先生だなんて私は何を言っているのかしら。(ちなみにこの国の成人は18歳)
『あぁ、ロナン先生……何で貴方は攻略対象じゃないの?』
前世の自分の声が頭の中に響いた。そう、確かこれはゲーム画面でヒロインの頭を撫でてくれるロナン先生を見つめながら言った言葉。……え?お兄様ってあのロナン先生なの?私は死ぬだけなのにお兄様はラブリリのあの人気キャラに成長するっていうの?色々言いたいけどまず、同じ親から生まれたのにこの差は何だ!私は脳内でこれ以上声が出ないほど叫んだ。
「……お嬢様?どうかされましたか?」
ラナの声で自分が長い間フリーズしていたことに気がついた。いけない、いけない、今はラナがいるのよ。
「いいえ、何でもないわ。お、お兄様が帰ってきたら一緒に何をしようか考えていたのよ!そうね、一緒にお散歩をするのも素敵だわ」
「そうですね、素敵だと思います!」
「本当にお兄様がお帰りになる日が楽しみだわ!……ラナ、少し一人になりたいのだけど、いいかしら?」
きっとお兄様のことを考えたいからだと思ったのだろう。ラナは優しく微笑んだ。
「かしこまりました。何かご用があればすぐにお呼び下さい」
「えぇ、ありがとう」
ラナが部屋を出て行って扉が閉まるまで私は息を止めていたのではないかと思う。扉が閉まり切ったその瞬間に思いっきり息を吐いた。
ルークベルト王子殿下とは婚約者とはいってもそんなに交流をしてきたわけではないし、他の攻略対象たちとは全く関わりがなかったので、自分の行動のせいで起こりうる影響に関してはさほど気にしていなかったがお兄様は別だ。攻略対象ではなくても人気も高くいろんな場面で登場するロナン先生が身内にいる限り私の行動は少なからずラブリリの世界に影響を及ぼすだろう。
私はそろそろ真剣に考えなくてはならない。「Loving Relief」と名付けられた、一人の少女と四人の少年たちの物語について。
「お嬢様、お手紙が届いております」
そう言ってラナから手渡されたのは一枚の真っ白な封筒。気になって差出人を確認する。
<ロナン・ラインホルトより>
「あら、お兄様からじゃない!」
そう、私には兄がいる。私よりも七つ歳上で三年前から他国へ留学に行っている。つまりは大変優秀な人なのだ。竜胆色で少し長めの髪は一つにまとめられており、私より少しグレーがかった空色の瞳は冬の空に似ている。私やお父様とは違うこの色合いは私が生まれてすぐに亡くなってしまったお母様のものを受け継いでいる。けれど顔つきはお父様にそっくりだ。少し垂れ目なところとかすっきりとした鼻筋とか。
<愛する我が妹へ
フィリア、元気にしているかい?春になって少し暖かくなってきたから体調も少しは安定してくる頃だと思うが無理はしないようにね。来月にはそちらに帰る予定だ。可愛らしい妹の笑顔が見られるのを楽しみにしているよ。>
そういえば私ったらお兄様にまだ散歩に始めたことを伝えていなかったわ。あとでお返事に書いておきましょう。それにしても優しい兄だ。手紙をくれるたびに私の体調を気にしてくれていることがよく分かる。それに……
「お兄様が来月帰ってこられるそうよ!」
「そうなんですか!私はまだお会いしたことがないので分かりませんがお嬢様がこんなにお喜びになるということはとっても素敵な方なんですね」
ラナが我が家にやってきたのはお兄様が留学に行った二ヶ月後なのだ。それからお兄様がこちらに帰ってきたことはないので二人は面識がない。それにしても自分の身内が褒められるのは嬉しいことだ。
「えぇ、とっても優しいし頭が良くてかっこいいの!っ……」
ロナン先生は本当に素晴らしい方なのよ!と言いかけて何とか止まることができた。……ん?先生?いやいや、お兄様はまだ成人もしていないのに先生だなんて私は何を言っているのかしら。(ちなみにこの国の成人は18歳)
『あぁ、ロナン先生……何で貴方は攻略対象じゃないの?』
前世の自分の声が頭の中に響いた。そう、確かこれはゲーム画面でヒロインの頭を撫でてくれるロナン先生を見つめながら言った言葉。……え?お兄様ってあのロナン先生なの?私は死ぬだけなのにお兄様はラブリリのあの人気キャラに成長するっていうの?色々言いたいけどまず、同じ親から生まれたのにこの差は何だ!私は脳内でこれ以上声が出ないほど叫んだ。
「……お嬢様?どうかされましたか?」
ラナの声で自分が長い間フリーズしていたことに気がついた。いけない、いけない、今はラナがいるのよ。
「いいえ、何でもないわ。お、お兄様が帰ってきたら一緒に何をしようか考えていたのよ!そうね、一緒にお散歩をするのも素敵だわ」
「そうですね、素敵だと思います!」
「本当にお兄様がお帰りになる日が楽しみだわ!……ラナ、少し一人になりたいのだけど、いいかしら?」
きっとお兄様のことを考えたいからだと思ったのだろう。ラナは優しく微笑んだ。
「かしこまりました。何かご用があればすぐにお呼び下さい」
「えぇ、ありがとう」
ラナが部屋を出て行って扉が閉まるまで私は息を止めていたのではないかと思う。扉が閉まり切ったその瞬間に思いっきり息を吐いた。
ルークベルト王子殿下とは婚約者とはいってもそんなに交流をしてきたわけではないし、他の攻略対象たちとは全く関わりがなかったので、自分の行動のせいで起こりうる影響に関してはさほど気にしていなかったがお兄様は別だ。攻略対象ではなくても人気も高くいろんな場面で登場するロナン先生が身内にいる限り私の行動は少なからずラブリリの世界に影響を及ぼすだろう。
私はそろそろ真剣に考えなくてはならない。「Loving Relief」と名付けられた、一人の少女と四人の少年たちの物語について。
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