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第四章 王立学院中等部三年生
244 アシェルの欲しいもの③
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Side:イザベル14歳 夏
アシェルが流した噂を元に行われている、【甘いくちどけとトキメキ】イベントの最中。
最初の一週間は四階に待機していたが、アシェルが魔法を使っていないこと。そして最近の中では比較的楽しそうに過ごしていたのを見て、この時間は人気のない教室で勉強の時間に充てていた。
基本的に授業は移動教室なので、ホームルーム以外で教室にクラスメイトが居るのは稀だ。
イザベルはアシェルほど頭が良い訳ではないので、予復習はしっかりとして学力を落さないようにしなくてはいけない。
イザベルとしては必修の単位さえ取れていれば問題ないのだが、最近はずっとアシェルの部屋で寝泊まりしているので、アシェルに余計な心配をかけないためだ。
今日は事前に、アークエイドをアシェルの元へ連れていくと聞いていた。
イザベルとしては余計なことをしないで欲しかったが、アシェルがイベント参加の条件を満たしているからと許可を出してしまっている。
だから、せめてアークエイドの順番は最後にしてくれと言った。
何かあってもアシェルを安定させるためのイベントの進行に、影響が出てしまわないように。
方向性は些か問題があるが、ようやくアシェルが笑っている時間が増えたのだ。
距離を取ろうとしていた幼馴染や、【シーズンズ】の仲が良かった生徒と話す機会も増えた。
そのお陰か、少しずつ食事が摂れるようになった。
睡眠は疲れてという感じだが、それでも眠りかけてはうなされて起きる姿を見るよりも良い。
相変わらず夜間は朝まで、少しだけ扉を開けた隣で床に座って過ごすのだから。
——こんなことなら、夜間観ていた方がマシだった。少なくとも、寝台の上に居たのだから。
アークエイドの姿を見るとイザベルの領分を越えて文句を言ってしまいそうなので、今日も教室で勉強をしていた。
アシェルがもし渡されている卓上ベルを鳴らせば、イザベル、カナリア、エラート、マリクの持っている小さな子機に振動があるはずだった。
それなのに、生徒が走ってイザベルを呼びに来た。
スカートだとか、行儀が悪いことなど気にせずに走った。
五階に近付くだけで分かるほど、アシェルが居るはずの踊り場からアシェルの魔力が漏れていた。
何が何でも止めるべきだったと思った。
最近は調子が良さそうだと思っていたのに、一体何があればここまでアシェルが追いつめられるのだろうかと。
アシェルに手を握られたまま、アシェルの顔周りにだけ『防音』をかけ、この踊り場にもかける。
アシェルにかけたものは外から中に聞こえないように。踊り場にかけたものは中から外に聞こえないようにした。
「これでアシェル様にも廊下にも、ここで話した声は漏れませんわ。アークエイド殿下。アシェル様にナニをしたのか。洗いざらい吐いて下さいませ。わたくしを呼びに来てくれた生徒から、アークエイド殿下が踊り場に来られてから、それなりに時間が経っているとお聞きしておりますが?」
こうして話しているだけでも、肌に纏わりつくような形を持たない魔力がイザベルの調子を狂わせる。
風の流れのない踊り場では、なかなか魔力が散ってくれない。
じわじわと酷くなっていく頭痛や吐き気から目を逸らし、アシェルの心が壊れてしまう元凶を睨みつける。
不敬で処罰するのならすればいい。
認識阻害のついた魔道具を使っているようだが、そもそもアークエイドの些細な表情の変化を読み取れないイザベルには、眼鏡なんてあってもなくても一緒だ。
「……イベントの内容の説明を受けて、チョコを使ってキスをした。そのままアシェを襲おうと思って、所有印を付けてまたキスをした。」
「それをアシェル様が嫌がったと?……わたくしには、そうは思えませんが。」
もしその程度で嫌がっているのなら、アシェルは泣いてなどいないはずだ。
もっと抵抗をして服が乱れているか、明確に何かしらの魔法を使って抵抗するか。
もしくは部屋に招いた令嬢と遊ぶ時にふと浮かべる、どこか冷めて諦めた眼をして受け入れるかのどれかだろう。
アシェルは拘りに関わることではない限り、基本的に相手の望む行動を取ろうとする。
——最近は特にそれが顕著だ。
アークエイドへの恋心を自覚しているアシェルが、例えイベントの延長とはいえ、アークエイドの望みを拒絶するとは考えにくい。
もし拒絶するのなら、最初からキスをするイベントにアークエイドを参加させないはずだ。
それに襲うつもりだった割には、はだけているのは所有印が覗く襟元だけ。それもボタンを二つ外されただけで、引き千切られた形跡もなければ肌着すら見えない。
ズボンに至っては、ベルトも。それより上に在って邪魔なはずのホルスターにも手を付けていない。
本当に襲うつもりがあったのか疑わしい。
ソレにアシェルが気付いていた可能性は高いだろう。
イザベルに指摘されたアークエイドは言葉に詰まった。
つまりそれだけではないのだろう。
「わたくしは洗いざらい吐けと言っているのです。それと……わたくしがこの状況を見て予測できたことを、アシェル様が考えなかったとは思わないでくださいませね。アークエイド殿下に本気で襲うつもりが無いのに、アシェル様が泣く意味が分かりませんわ。」
「っ!……何でそう思う。」
「やっぱり……。それくらいご自分で考えなさいませ。それよりも、わたくしからの質問への答えがまだですわ。」
「……アシェに……俺とムーラン嬢の婚約の話の決着が着くまで……待っていて欲しいと伝えたかった。話そうとした途中でアシェに嫌がられて、伝えられなかったが。」
一体アシェルにどれだけの負担を強いるつもりなのかと、怒りで腸が煮えくり返りそうになる。
間違いなくアシェルは、アークエイドとムーランの婚約関係の話を聞きたくなかったのだ。
何のために、どう待たせたいのかは知らないが。今のアシェルにムーラン関連の話を聞かせるのは、鬼畜の所業以外の何物でもない。
イザベルが声を荒げる前に、ダニエルが口を開いた。
「殿下。ソレは口外してはいけないものだというご自覚はありますか?例え濁していたとしてもアシェル殿の為を思うのなら、余計な情報を漏らさないで頂きたいのですが。」
「たったコレだけですら駄目なのか?全部言うつもりじゃない。やっとアシェに触れたんだ……。もっとアシェに触りたい、話したい。でも、アシェと関わることが出来ないのは分かってる。それでも、俺はまだアシェのことを——だって……。どうにかして片をつけるから、俺がアシェを——なことは忘れないで欲しいって……。それだけは……それだけはどうにかして伝えたかったんだ……。もっと嫌がって暴れてくれれば、そんなこと言うつもりも無かった。いっそのこと、襲おうとした俺を軽蔑して嫌ってくれれば……。」
「それこそ、余計な情報です。アシェル殿には、殿下の様子がおかしいことはバレやすいんですから。アシェル殿が自力で答えに辿り着いてしまった場合……殿下ではアシェル殿を止められないでしょう?そのリスクが高いからこそ、認識阻害の眼鏡まで義務付けられたんですよ。今までのことが無駄になってしまいます。そして、それをイザベル嬢の前で話すのも、かなりのリスクだと認識してください。」
苦しそうに胸中を吐露するアークエイドに、ダニエルが淡々と言葉を返す。
アークエイドのコレが本心なのだとしたら。
やはりアークエイドとアシェルは両思いなのだ。
そもそもあれだけしつこかったアークエイドが、簡単にムーランに乗り換えるとは考えにくい。
だが、どうしても隣国との関係性もあるので、アシェルと関わることが出来ないというのは、その辺りの影響もあるのかもしれない。
——だからと言ってアシェルに与えた影響を考えると、簡単に許すことなど出来ないのだが。
それよりも答えやアシェルを止めるという発言の方が気になる。
そしてその情報が、イザベルにも届かないようにしていることも。
大人しくアシェルを抱えているエラートを見れば、目が合い、そして気まずそうに逸らされた。
どの程度か分からないが事情を知っていて、尚且つアークエイドの限界を感じ取ってイベントに連れてきた、というところだろうか。
一体、アシェルの周りで何が起きているというのだろうか。
対処が無理だからこうなっているとは思うのだが、せめてアシェルに関係の無い話しならば良かったのに。
「お話し中のところ失礼ですが……。いくつか確認させてくださいませ。アークエイド殿下では話になりませんので、ダニエル殿にお聞きしますわ。」
「私に答えられる範囲のことでしたら。」
ダニエルならば、アークエイドと違ってイザベルに不要な発言はしないだろう。
現状が分かれば、この苛立ちも少しはマシになるだろうか。
「アークエイド殿下は、契約魔法で言葉を縛られているようだけれど……。アシェル様のことをまだ好きでいらっしゃる。けれど、隣国との関係上。それを口にすることも、言えない理由を説明することも。アシェル様と一緒に過ごすことも出来ない。……合っていますか?」
ダニエルが頷く。
やはり外交関係で何かがあるらしい。
それについては、聞いても教えて貰うことは出来ないだろう。教えて貰っても、イザベルには荷の重い話になりそうだ。
「その理由をアシェル様が知れば。アシェル様の中で優先順位の高いアークエイド殿下の声すら聞かず、暴走して何かをしてしまう恐れがある。それを避けるために、アシェル様や傍に仕える私への情報が規制されている。これも間違いありませんか?」
またダニエルは頷いた。
アシェルがアークエイドの護衛をする中。もしその指示を聞かないのだとしたら、アークエイドに害を為す人間がいると判断した場合だ。
そうでなければ、よほど理不尽な理由でない限りアシェルは従うだろう。
アークエイドの護衛中にアシェルが指示を聞く優先度は、アークエイドの次にアベルのはずだ。
「状況がかなりややこしそうですね。旦那様も何かご存知のようでしたし、国王陛下がどうにかしているというところでしょうかね。しっかりとした理由は分からないまでも、アークエイド殿下ご自身の身に、何かが起こっていることは理解しました。」
「やはり、これだけの情報で辿り着いてしまわれるのですね。」
「伊達にメイディーに仕えておりませんから。主人達の性質は、これでも理解しているつもりです。アークエイド殿下がアシェル様から距離を置かなくてはいけないのも、嫌がられようとしてこんなところでアシェル様を襲うフリをしたのも……アシェル様がお傍にいると、都合が悪い、ということで良いでしょうか?それでしたら、アシェル様自身。社交界の日より距離を取ろうとしていましたし、こちらとしても都合が良いのですが。」
「えぇ。護衛を止めるのはメイディーの性質上、無理だと理解していますから。あまり殿下達に近付かない方が良いですね。」
「分かりました。大丈夫だと思いますが、殿下達へアシェル様から近づかないように気を付けておきます。……口に出来ない情報もあると思いますので、仕方のないことかもしれませんが……。私はアシェル様を危険に晒したい訳ではございません。できましたら、もっと早く教えて頂ければスムーズに協力できた、とだけお伝えしておきますね。」
どんな理由であれ、アシェルが暴走しかねない情報をわざわざ伝えたくはない。
もし大切なモノが脅かされていると知れば、アシェルは自分に持てるものを全て駆使してでも答えに辿り着こうとするだろう。
アシェルは——メイディーは大切なモノを守る為なら、自分の命すら天秤にかけて物事を実行してしまう人達だ。
それが最適な手段だと判断すれば、自身のことなど顧みることはないだろう。
何も知らなければ回避できないことでも、もしかしたらイザベルが知っていることで回避出来ることもあるかもしれない。
ダニエルから聞きたいことを聞きだしたイザベルは、アークエイドに向きなおる。
「アークエイド殿下。暴走するのは勝手ですが、アシェル様を巻き込まないで下さい。それと、アシェル様のお部屋の合鍵を返却してくださいませ。今のアークエイド殿下には、不要のモノでございます。」
「コレは……。」
ぎゅっとアークエイドが襟元を握った。
紐か何かに通して、首から下げているのだろう。
今のアークエイドにとって、アシェルとの唯一の繋がりを。
この胸元を掴む仕草は、今年に入ってからよく見る様になった気がしていたが、そういうことだったのかと納得してしまう。
それでも事情はよく分からないが、アークエイドがいつでもアシェルの元へ来れる状況は良くないと感じる。
アークエイドが限界を迎えて、アシェルの元へ来ないとは言い切れないからだ。
大人しく渡してくれそうにないので力尽くでも奪おうと、一歩踏み出したイザベルの手が引かれる。
「ベル、何処行くの?そんなに気分悪いの?……ごめんなさい、僕のせいで。でも……置いてかないで。ベルまでいなくなったら、僕……どうしていいのか……。迷惑、かけないように頑張るから……だから。一人にしないで……。」
ぎゅっとイザベルの手を握りこんだアシェルは、かけていたバスタオルを少しだけずらして、怯えた子供のようにイザベルの顔色を窺っている。
最近ようやく小さな不安を口にすることが減ったのに、また振り出しだ。
「少し床に落としたものを、拾っていただけでございます。お話ももうすぐ終わりますし、魔力酔いは移動すれば治まりますから。私は何処にも行ったりしませんよ。アシェル様のことを迷惑だなんて思ったこともありません。私は、アシェル様がアシェル様らしく居てくださることが、一番だと思っておりますから。」
「……ほんと?でも……僕のダメなところ、あったら教えてね。直すように頑張るから。お話終わるの、待ってる。」
「えぇ。帰る時はもう一度お声がけしますね。もう少しだけお待ちくださいませ。」
アシェルに聞こえる様に、唇を近づけて話す。
不安がるアシェルに、普段の面影はない。
小さな子供が親に捨てられないように、必死に縋っている様にすら感じる。
いや。普段から周囲の望む反応を返すのは、嫌われたくないという無意識の表れなのかもしれない。
そう考えるとアシェルが自分の意志を尊重して周囲と関わっているのは、本当に限られた相手だけになってしまう。
今は、その大丈夫だと思っていた相手ですら、アシェルのことを嫌いになるのではないかと不安を抱いていて。それが積もりに積もって、こうやって表層化しているのだろう。
アシェルは居て良いのだと。誰かが見捨てたりせずにずっと傍に居るのだと伝え続けないと、ある時フラッと消えてしまいそうで怖い。
ようやく少し微笑んだアシェルは、またバスタオルを被って引っ込んでしまった。
今の余計な会話も、その会話に参加する人の表情も、アシェルは知らない方が良い。自らバスタオルを被ってくれて助かった。
「殿下、鍵をお預かりします。いくらアシェル殿の表情が見えないと言っても、今の声と会話を聞いて。アシェル殿の現状が理解できない、ということはありませんよね?」
「……あぁ。イザベルに返してやってくれ。イザベル。もし全て片付いたら……ソレはまた俺に預けてくれるか?」
アークエイドの首から外された銀色のチェーンの先に、合鍵とサファイアとアメジストがあしらわれたペンダントトップが付いていた。
それがダニエルを経由して、イザベルへと渡る。
そこから合鍵だけを外して、ネックレスはダニエルに返した。
鍵がついていなくても、これはアークエイドの心の拠り所になるはずだ。
「返却は合鍵のみで結構でございます。もう一度アークエイド殿下に預けるかどうかは、状況次第ですね。私には、その全てが何を示すのか把握できておりません。一つだけ言えることは、憂いなくアシェルお嬢様をお迎えできる状態でない方にはお渡しできない、ということだけです。」
「そうだな。それだけ聞ければ十分だ。」
「ダニエル様。私からアシェル様に進言することはありませんので。私に教えても良い範囲でダニエル様が話せることがあれば、今夜教えてくださいませ。私に出来ることであれば、アシェル様に危害が及ばないように尽力させていただきます。23時までは私も応接間におりますので。お話が無理であれば、訪室は不要です。……アシェル様もですが、流石に私も限界なので、これで失礼させていただきますね。」
ぺこりと頭を下げると、それだけで胃の中身が上がってきそうになる。
魔力酔いは初体験だが、二度と経験したくない辛さだ。
「エラート様。お待たせいたしました。ずっと抱えて頂いておりますし、私がアシェル様をお運びしましょうか?お部屋まで来ていただくのは、手間でしょうし。」
ずっとアシェルを抱えて待ってくれていたエラートは、人の良い笑みを浮かべる。
「俺のことは気にすんな。こうなった原因は俺にもあるし、イザベルは結構魔力酔い酷くなってるだろ。それに……抱えた時からずっとしがみつかれてる。多分、下ろすのも苦労するぞ、コレ。……もしかして、最近のアシェはずっとこの調子だったのか?」
流石のアシェルも、幼馴染の前ではこんな不安を口にしていなかったらしい。
「私の前では、一言二言漏らすことは……。ここまで酷いのは、一番不眠も食欲不振も酷かった時ですね。イベントのお陰で、最近は不安を口にする頻度も減っていましたから……そろそろ大丈夫かと思っていたんですが……。」
背後から小さく「すまない。」と聞こえてくるが無視だ。
謝られても、許すかどうかを決めるアシェルには聞こえていないのだから。
「アシェル様、話し合いが終わりました。お部屋に戻りましょう。防音はお部屋で解除しますね。」
バスタオルを少し上げて声をかければ、アシェルが頷いてバスタオルが揺れる。
エラートに抱えて貰っているアシェルと手を繋いだまま、受付で【シーズンズ】の運営に礼を言う。
揉めていた間も、ずっと廊下を封鎖してくれていたようだ。
箝口令まで敷かれているらしい。流石【シーズンズ】というべきだろうか。
今日アシェルがお誘いした子には断りを入れて貰うように、カナリアにお願いしておいた。
イベント自体、暫く休止で再開でも、このまま中止でもという言葉まで貰った。
アシェルの魔力が溜まっている場所も、風魔法で換気してくれるらしい。
更には魔法が得意な男子生徒も二人貸し出してくれ、アシェルに『気配遮断』と『認識阻害』をそれぞれかけてくれ、男子寮のエレベーターまで送ってくれた。
とても気の利く運営である。
アシェルの許可を取って、少しバスタオルを重ねてこんもり見せたので、エラートに洗濯物を運ばせているような見た目になってしまったのだが。
それでも見た目に違和感があったり、アシェルを運んでいると思われるよりは良いだろう。
イザベルも洗濯籠に洗いあげたシーツなどを乗せ、エラートの近くに手が伸びていることを誤魔化して歩いた。
沢山のファンたちの厚意によって、無事イザベル達はアシェルの部屋に帰りつくことが出来たのだった。
アシェルが流した噂を元に行われている、【甘いくちどけとトキメキ】イベントの最中。
最初の一週間は四階に待機していたが、アシェルが魔法を使っていないこと。そして最近の中では比較的楽しそうに過ごしていたのを見て、この時間は人気のない教室で勉強の時間に充てていた。
基本的に授業は移動教室なので、ホームルーム以外で教室にクラスメイトが居るのは稀だ。
イザベルはアシェルほど頭が良い訳ではないので、予復習はしっかりとして学力を落さないようにしなくてはいけない。
イザベルとしては必修の単位さえ取れていれば問題ないのだが、最近はずっとアシェルの部屋で寝泊まりしているので、アシェルに余計な心配をかけないためだ。
今日は事前に、アークエイドをアシェルの元へ連れていくと聞いていた。
イザベルとしては余計なことをしないで欲しかったが、アシェルがイベント参加の条件を満たしているからと許可を出してしまっている。
だから、せめてアークエイドの順番は最後にしてくれと言った。
何かあってもアシェルを安定させるためのイベントの進行に、影響が出てしまわないように。
方向性は些か問題があるが、ようやくアシェルが笑っている時間が増えたのだ。
距離を取ろうとしていた幼馴染や、【シーズンズ】の仲が良かった生徒と話す機会も増えた。
そのお陰か、少しずつ食事が摂れるようになった。
睡眠は疲れてという感じだが、それでも眠りかけてはうなされて起きる姿を見るよりも良い。
相変わらず夜間は朝まで、少しだけ扉を開けた隣で床に座って過ごすのだから。
——こんなことなら、夜間観ていた方がマシだった。少なくとも、寝台の上に居たのだから。
アークエイドの姿を見るとイザベルの領分を越えて文句を言ってしまいそうなので、今日も教室で勉強をしていた。
アシェルがもし渡されている卓上ベルを鳴らせば、イザベル、カナリア、エラート、マリクの持っている小さな子機に振動があるはずだった。
それなのに、生徒が走ってイザベルを呼びに来た。
スカートだとか、行儀が悪いことなど気にせずに走った。
五階に近付くだけで分かるほど、アシェルが居るはずの踊り場からアシェルの魔力が漏れていた。
何が何でも止めるべきだったと思った。
最近は調子が良さそうだと思っていたのに、一体何があればここまでアシェルが追いつめられるのだろうかと。
アシェルに手を握られたまま、アシェルの顔周りにだけ『防音』をかけ、この踊り場にもかける。
アシェルにかけたものは外から中に聞こえないように。踊り場にかけたものは中から外に聞こえないようにした。
「これでアシェル様にも廊下にも、ここで話した声は漏れませんわ。アークエイド殿下。アシェル様にナニをしたのか。洗いざらい吐いて下さいませ。わたくしを呼びに来てくれた生徒から、アークエイド殿下が踊り場に来られてから、それなりに時間が経っているとお聞きしておりますが?」
こうして話しているだけでも、肌に纏わりつくような形を持たない魔力がイザベルの調子を狂わせる。
風の流れのない踊り場では、なかなか魔力が散ってくれない。
じわじわと酷くなっていく頭痛や吐き気から目を逸らし、アシェルの心が壊れてしまう元凶を睨みつける。
不敬で処罰するのならすればいい。
認識阻害のついた魔道具を使っているようだが、そもそもアークエイドの些細な表情の変化を読み取れないイザベルには、眼鏡なんてあってもなくても一緒だ。
「……イベントの内容の説明を受けて、チョコを使ってキスをした。そのままアシェを襲おうと思って、所有印を付けてまたキスをした。」
「それをアシェル様が嫌がったと?……わたくしには、そうは思えませんが。」
もしその程度で嫌がっているのなら、アシェルは泣いてなどいないはずだ。
もっと抵抗をして服が乱れているか、明確に何かしらの魔法を使って抵抗するか。
もしくは部屋に招いた令嬢と遊ぶ時にふと浮かべる、どこか冷めて諦めた眼をして受け入れるかのどれかだろう。
アシェルは拘りに関わることではない限り、基本的に相手の望む行動を取ろうとする。
——最近は特にそれが顕著だ。
アークエイドへの恋心を自覚しているアシェルが、例えイベントの延長とはいえ、アークエイドの望みを拒絶するとは考えにくい。
もし拒絶するのなら、最初からキスをするイベントにアークエイドを参加させないはずだ。
それに襲うつもりだった割には、はだけているのは所有印が覗く襟元だけ。それもボタンを二つ外されただけで、引き千切られた形跡もなければ肌着すら見えない。
ズボンに至っては、ベルトも。それより上に在って邪魔なはずのホルスターにも手を付けていない。
本当に襲うつもりがあったのか疑わしい。
ソレにアシェルが気付いていた可能性は高いだろう。
イザベルに指摘されたアークエイドは言葉に詰まった。
つまりそれだけではないのだろう。
「わたくしは洗いざらい吐けと言っているのです。それと……わたくしがこの状況を見て予測できたことを、アシェル様が考えなかったとは思わないでくださいませね。アークエイド殿下に本気で襲うつもりが無いのに、アシェル様が泣く意味が分かりませんわ。」
「っ!……何でそう思う。」
「やっぱり……。それくらいご自分で考えなさいませ。それよりも、わたくしからの質問への答えがまだですわ。」
「……アシェに……俺とムーラン嬢の婚約の話の決着が着くまで……待っていて欲しいと伝えたかった。話そうとした途中でアシェに嫌がられて、伝えられなかったが。」
一体アシェルにどれだけの負担を強いるつもりなのかと、怒りで腸が煮えくり返りそうになる。
間違いなくアシェルは、アークエイドとムーランの婚約関係の話を聞きたくなかったのだ。
何のために、どう待たせたいのかは知らないが。今のアシェルにムーラン関連の話を聞かせるのは、鬼畜の所業以外の何物でもない。
イザベルが声を荒げる前に、ダニエルが口を開いた。
「殿下。ソレは口外してはいけないものだというご自覚はありますか?例え濁していたとしてもアシェル殿の為を思うのなら、余計な情報を漏らさないで頂きたいのですが。」
「たったコレだけですら駄目なのか?全部言うつもりじゃない。やっとアシェに触れたんだ……。もっとアシェに触りたい、話したい。でも、アシェと関わることが出来ないのは分かってる。それでも、俺はまだアシェのことを——だって……。どうにかして片をつけるから、俺がアシェを——なことは忘れないで欲しいって……。それだけは……それだけはどうにかして伝えたかったんだ……。もっと嫌がって暴れてくれれば、そんなこと言うつもりも無かった。いっそのこと、襲おうとした俺を軽蔑して嫌ってくれれば……。」
「それこそ、余計な情報です。アシェル殿には、殿下の様子がおかしいことはバレやすいんですから。アシェル殿が自力で答えに辿り着いてしまった場合……殿下ではアシェル殿を止められないでしょう?そのリスクが高いからこそ、認識阻害の眼鏡まで義務付けられたんですよ。今までのことが無駄になってしまいます。そして、それをイザベル嬢の前で話すのも、かなりのリスクだと認識してください。」
苦しそうに胸中を吐露するアークエイドに、ダニエルが淡々と言葉を返す。
アークエイドのコレが本心なのだとしたら。
やはりアークエイドとアシェルは両思いなのだ。
そもそもあれだけしつこかったアークエイドが、簡単にムーランに乗り換えるとは考えにくい。
だが、どうしても隣国との関係性もあるので、アシェルと関わることが出来ないというのは、その辺りの影響もあるのかもしれない。
——だからと言ってアシェルに与えた影響を考えると、簡単に許すことなど出来ないのだが。
それよりも答えやアシェルを止めるという発言の方が気になる。
そしてその情報が、イザベルにも届かないようにしていることも。
大人しくアシェルを抱えているエラートを見れば、目が合い、そして気まずそうに逸らされた。
どの程度か分からないが事情を知っていて、尚且つアークエイドの限界を感じ取ってイベントに連れてきた、というところだろうか。
一体、アシェルの周りで何が起きているというのだろうか。
対処が無理だからこうなっているとは思うのだが、せめてアシェルに関係の無い話しならば良かったのに。
「お話し中のところ失礼ですが……。いくつか確認させてくださいませ。アークエイド殿下では話になりませんので、ダニエル殿にお聞きしますわ。」
「私に答えられる範囲のことでしたら。」
ダニエルならば、アークエイドと違ってイザベルに不要な発言はしないだろう。
現状が分かれば、この苛立ちも少しはマシになるだろうか。
「アークエイド殿下は、契約魔法で言葉を縛られているようだけれど……。アシェル様のことをまだ好きでいらっしゃる。けれど、隣国との関係上。それを口にすることも、言えない理由を説明することも。アシェル様と一緒に過ごすことも出来ない。……合っていますか?」
ダニエルが頷く。
やはり外交関係で何かがあるらしい。
それについては、聞いても教えて貰うことは出来ないだろう。教えて貰っても、イザベルには荷の重い話になりそうだ。
「その理由をアシェル様が知れば。アシェル様の中で優先順位の高いアークエイド殿下の声すら聞かず、暴走して何かをしてしまう恐れがある。それを避けるために、アシェル様や傍に仕える私への情報が規制されている。これも間違いありませんか?」
またダニエルは頷いた。
アシェルがアークエイドの護衛をする中。もしその指示を聞かないのだとしたら、アークエイドに害を為す人間がいると判断した場合だ。
そうでなければ、よほど理不尽な理由でない限りアシェルは従うだろう。
アークエイドの護衛中にアシェルが指示を聞く優先度は、アークエイドの次にアベルのはずだ。
「状況がかなりややこしそうですね。旦那様も何かご存知のようでしたし、国王陛下がどうにかしているというところでしょうかね。しっかりとした理由は分からないまでも、アークエイド殿下ご自身の身に、何かが起こっていることは理解しました。」
「やはり、これだけの情報で辿り着いてしまわれるのですね。」
「伊達にメイディーに仕えておりませんから。主人達の性質は、これでも理解しているつもりです。アークエイド殿下がアシェル様から距離を置かなくてはいけないのも、嫌がられようとしてこんなところでアシェル様を襲うフリをしたのも……アシェル様がお傍にいると、都合が悪い、ということで良いでしょうか?それでしたら、アシェル様自身。社交界の日より距離を取ろうとしていましたし、こちらとしても都合が良いのですが。」
「えぇ。護衛を止めるのはメイディーの性質上、無理だと理解していますから。あまり殿下達に近付かない方が良いですね。」
「分かりました。大丈夫だと思いますが、殿下達へアシェル様から近づかないように気を付けておきます。……口に出来ない情報もあると思いますので、仕方のないことかもしれませんが……。私はアシェル様を危険に晒したい訳ではございません。できましたら、もっと早く教えて頂ければスムーズに協力できた、とだけお伝えしておきますね。」
どんな理由であれ、アシェルが暴走しかねない情報をわざわざ伝えたくはない。
もし大切なモノが脅かされていると知れば、アシェルは自分に持てるものを全て駆使してでも答えに辿り着こうとするだろう。
アシェルは——メイディーは大切なモノを守る為なら、自分の命すら天秤にかけて物事を実行してしまう人達だ。
それが最適な手段だと判断すれば、自身のことなど顧みることはないだろう。
何も知らなければ回避できないことでも、もしかしたらイザベルが知っていることで回避出来ることもあるかもしれない。
ダニエルから聞きたいことを聞きだしたイザベルは、アークエイドに向きなおる。
「アークエイド殿下。暴走するのは勝手ですが、アシェル様を巻き込まないで下さい。それと、アシェル様のお部屋の合鍵を返却してくださいませ。今のアークエイド殿下には、不要のモノでございます。」
「コレは……。」
ぎゅっとアークエイドが襟元を握った。
紐か何かに通して、首から下げているのだろう。
今のアークエイドにとって、アシェルとの唯一の繋がりを。
この胸元を掴む仕草は、今年に入ってからよく見る様になった気がしていたが、そういうことだったのかと納得してしまう。
それでも事情はよく分からないが、アークエイドがいつでもアシェルの元へ来れる状況は良くないと感じる。
アークエイドが限界を迎えて、アシェルの元へ来ないとは言い切れないからだ。
大人しく渡してくれそうにないので力尽くでも奪おうと、一歩踏み出したイザベルの手が引かれる。
「ベル、何処行くの?そんなに気分悪いの?……ごめんなさい、僕のせいで。でも……置いてかないで。ベルまでいなくなったら、僕……どうしていいのか……。迷惑、かけないように頑張るから……だから。一人にしないで……。」
ぎゅっとイザベルの手を握りこんだアシェルは、かけていたバスタオルを少しだけずらして、怯えた子供のようにイザベルの顔色を窺っている。
最近ようやく小さな不安を口にすることが減ったのに、また振り出しだ。
「少し床に落としたものを、拾っていただけでございます。お話ももうすぐ終わりますし、魔力酔いは移動すれば治まりますから。私は何処にも行ったりしませんよ。アシェル様のことを迷惑だなんて思ったこともありません。私は、アシェル様がアシェル様らしく居てくださることが、一番だと思っておりますから。」
「……ほんと?でも……僕のダメなところ、あったら教えてね。直すように頑張るから。お話終わるの、待ってる。」
「えぇ。帰る時はもう一度お声がけしますね。もう少しだけお待ちくださいませ。」
アシェルに聞こえる様に、唇を近づけて話す。
不安がるアシェルに、普段の面影はない。
小さな子供が親に捨てられないように、必死に縋っている様にすら感じる。
いや。普段から周囲の望む反応を返すのは、嫌われたくないという無意識の表れなのかもしれない。
そう考えるとアシェルが自分の意志を尊重して周囲と関わっているのは、本当に限られた相手だけになってしまう。
今は、その大丈夫だと思っていた相手ですら、アシェルのことを嫌いになるのではないかと不安を抱いていて。それが積もりに積もって、こうやって表層化しているのだろう。
アシェルは居て良いのだと。誰かが見捨てたりせずにずっと傍に居るのだと伝え続けないと、ある時フラッと消えてしまいそうで怖い。
ようやく少し微笑んだアシェルは、またバスタオルを被って引っ込んでしまった。
今の余計な会話も、その会話に参加する人の表情も、アシェルは知らない方が良い。自らバスタオルを被ってくれて助かった。
「殿下、鍵をお預かりします。いくらアシェル殿の表情が見えないと言っても、今の声と会話を聞いて。アシェル殿の現状が理解できない、ということはありませんよね?」
「……あぁ。イザベルに返してやってくれ。イザベル。もし全て片付いたら……ソレはまた俺に預けてくれるか?」
アークエイドの首から外された銀色のチェーンの先に、合鍵とサファイアとアメジストがあしらわれたペンダントトップが付いていた。
それがダニエルを経由して、イザベルへと渡る。
そこから合鍵だけを外して、ネックレスはダニエルに返した。
鍵がついていなくても、これはアークエイドの心の拠り所になるはずだ。
「返却は合鍵のみで結構でございます。もう一度アークエイド殿下に預けるかどうかは、状況次第ですね。私には、その全てが何を示すのか把握できておりません。一つだけ言えることは、憂いなくアシェルお嬢様をお迎えできる状態でない方にはお渡しできない、ということだけです。」
「そうだな。それだけ聞ければ十分だ。」
「ダニエル様。私からアシェル様に進言することはありませんので。私に教えても良い範囲でダニエル様が話せることがあれば、今夜教えてくださいませ。私に出来ることであれば、アシェル様に危害が及ばないように尽力させていただきます。23時までは私も応接間におりますので。お話が無理であれば、訪室は不要です。……アシェル様もですが、流石に私も限界なので、これで失礼させていただきますね。」
ぺこりと頭を下げると、それだけで胃の中身が上がってきそうになる。
魔力酔いは初体験だが、二度と経験したくない辛さだ。
「エラート様。お待たせいたしました。ずっと抱えて頂いておりますし、私がアシェル様をお運びしましょうか?お部屋まで来ていただくのは、手間でしょうし。」
ずっとアシェルを抱えて待ってくれていたエラートは、人の良い笑みを浮かべる。
「俺のことは気にすんな。こうなった原因は俺にもあるし、イザベルは結構魔力酔い酷くなってるだろ。それに……抱えた時からずっとしがみつかれてる。多分、下ろすのも苦労するぞ、コレ。……もしかして、最近のアシェはずっとこの調子だったのか?」
流石のアシェルも、幼馴染の前ではこんな不安を口にしていなかったらしい。
「私の前では、一言二言漏らすことは……。ここまで酷いのは、一番不眠も食欲不振も酷かった時ですね。イベントのお陰で、最近は不安を口にする頻度も減っていましたから……そろそろ大丈夫かと思っていたんですが……。」
背後から小さく「すまない。」と聞こえてくるが無視だ。
謝られても、許すかどうかを決めるアシェルには聞こえていないのだから。
「アシェル様、話し合いが終わりました。お部屋に戻りましょう。防音はお部屋で解除しますね。」
バスタオルを少し上げて声をかければ、アシェルが頷いてバスタオルが揺れる。
エラートに抱えて貰っているアシェルと手を繋いだまま、受付で【シーズンズ】の運営に礼を言う。
揉めていた間も、ずっと廊下を封鎖してくれていたようだ。
箝口令まで敷かれているらしい。流石【シーズンズ】というべきだろうか。
今日アシェルがお誘いした子には断りを入れて貰うように、カナリアにお願いしておいた。
イベント自体、暫く休止で再開でも、このまま中止でもという言葉まで貰った。
アシェルの魔力が溜まっている場所も、風魔法で換気してくれるらしい。
更には魔法が得意な男子生徒も二人貸し出してくれ、アシェルに『気配遮断』と『認識阻害』をそれぞれかけてくれ、男子寮のエレベーターまで送ってくれた。
とても気の利く運営である。
アシェルの許可を取って、少しバスタオルを重ねてこんもり見せたので、エラートに洗濯物を運ばせているような見た目になってしまったのだが。
それでも見た目に違和感があったり、アシェルを運んでいると思われるよりは良いだろう。
イザベルも洗濯籠に洗いあげたシーツなどを乗せ、エラートの近くに手が伸びていることを誤魔化して歩いた。
沢山のファンたちの厚意によって、無事イザベル達はアシェルの部屋に帰りつくことが出来たのだった。
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