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第三章 王立学院中等部二年生
200 獣人の好き④
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Side:アシェル14歳 冬
ぼんやりとする意識の中、言い争うような声が聞こえる。
「————といって。少し早めにお迎えに上がって正解でした。」
「それが分かっているなら、来なくても良いだろう。」
「良くありません。私は、本日お休みするとは伺っておりませんので。」
「アシェなら、少し休んだところで全く問題ないだろ。」
「それはアシェル様がお決めになることです。」
微睡の中、アークエイドとイザベルの言い合う声を聞きながら、もっと寝ていたいのにと思う。
少し位置がしっくりこないので良い位置を探してごそごそと動くと、アークエイドがそれに気づいた。
「アシェ、起きたのか?」
「……やだ……まだねるの……。」
しっくりとくる、温かくて寝心地の良い場所を見つけて、アシェルの意識はまた落ちかける。
「アシェル様。本日の授業はどうなさいますか?本日は魔法学中級、薬草学、体術、マナー、家庭科と、びっしり授業が詰まっておりますが。」
イザベルに言われた授業の進行度をぼんやりと考えながら、それでもアシェルはやっぱり眠ることを選んだ。
「いい、ねる……。でも……おひるはメルとたべる。……でゅーくに、りりぃよろしくって……。」
言いたいことだけ言ってすぅすぅと寝息をたて始めた主に、イザベルは大きなため息を吐いた。
この様子だと、メルティーと昼食を食べるために起きはするだろうが、逆に言うとお昼までは寝ていそうだ。
授業はサボるのに、メルティーの食事の味見だけは欠かせないらしい。もしかしたら、昨日のマリクの求婚の件もあるからかもしれないが。
「それは家庭科の送迎のことなんでしょうね、きっと。さて、アークエイド様。アシェル様はまたお眠りになられたようなので、少しわたくしとお話してくださいませ。」
にっこりと、それでも有無を言わせない威圧感に、アークエイドはイザベルから逃れられないことを悟った。
========
Side:アークエイド14歳 冬
イザベルの話に居住まいを正すべきか迷うが、布団の下はアークエイドもアシェルも全裸な上、アシェルが腕の中で眠っている。
イザベルはそんなアークエイドの迷いなど知らず、椅子をベッドサイドに持ってきて腰掛けた。
「アシェル様はかなりアークエイド様に気を許していらっしゃるのに、まだ返事は貰えませんの?」
「残念ながらな。そういうイザベルの方はどうなんだ?」
「どうも何も……真剣に返事を考えるからと、保留されていますわ。いっそのことキッパリと振っていただけたら、諦めもつきますのに……。」
わざわざイザベルが話したいと言った上で、アシェルのことを引き合いに出してきたので、恋愛話がしたいのだろうと当たりを付けて問えば、イザベルは小さな溜息とともに言葉を口にする。
どうやらアークエイドの予想は当たっていたようだ。
「アルフォードは真剣に悩んでいる様だぞ。」
「アルフォードお義兄様を困らせてしまったかしら……。でも、ずっとお伝えしたかったんだもの。……アシェル様は、この件に関して何か言っていたかしら?」
「いや、何も。少なくとも学院祭時点では、アシェルとアルフォードはそのことについて話していないみたいだったからな。恐らく、イザベルからの報告待ちじゃないか?」
アシェルは結果を気にしてはいるだろうが、自分から聞いたりはしないだろう。
アークエイドは気になって、アルフォードに聞いてしまったが。
「学院祭時点で……。どんな話をしたのかは聞かないでおきますわ。どうやったら義妹ではなくて、女性として見て頂けるのかしら。普通は下着姿の女性に迫られたら、と思うのだけれど。アークエイド様のように、他に意中の方がいらっしゃるのかしら。」
「もし居るのなら、アルフォードは既に断っているだろ。本命がダメだった時の為にキープしておくというような性格ではないと思うしな。」
「……ですわね。考えるから時間が欲しいって言われてるけれど……もうそろそろ卒業なさるでしょう?そうなれば、今のようにお食事を一緒にすることも叶わなくなるわ。」
「そういえば、ちょくちょくアルフォードが夕食に来ているな。あれはイザベルからお願いしたのか?」
アークエイドの言葉に、イザベルは頭を横に振る。
「いいえ。少し一緒に居る時間を増やすためにお邪魔する、と言われましたわ。帰りは女子寮の前まで送っていただきますけれど、メルティー様もマルローネも居るし、特別何かお話しするわけではありませんの。」
「イザベルは一号棟だろ?」
「メルティー様のお部屋までお送りしていますから。」
「二号棟の入り口まで見送って、一号棟へ行けば少しは二人の時間が取れるんじゃないのか?アイザックだったか。アルフォードの侍従はいないんだろう?事情も知っているだろうし。」
アルフォードを夜這いした時に使用人がグルだったと聞いているので、アルフォード専属侍従であるアイザックは事情を知っているだろう。
「えぇ。マルローネは知らないけれど、アイザックやアルフォード義兄様についてきた使用人は知っていますわ。……そうね。今度、わたくしは一号棟の方へ帰ってみるわ。それで少しでもお話が出来ると嬉しいし。それと、アークエイド様。冬休みはお忙しいかしら?」
イザベルに予定を聞かれる意味が分からずに、アークエイドは首を傾げる。
「いや。スタンピードの片付けは済んだし、いつもの執務だけで特に予定は無いが。」
「出来たら、アシェル様も含めた四人で、ダブルデートを出来ないかしら?といっても、普通のデートではなくて、メイディーの興味を惹きそうな場所に行くことになるのだけれど。」
「俺は構わないぞ。そもそも、アシェをデートに誘おうとは思っていたしな。」
「何処を予定していましたの?お食事だけでしたら気にしなくても良いけれど、アシェル様は定番のオペラなんかは、あまり興味がありませんわよ?」
「それは知ってる。それなら同じストーリーの本を読んでいるほうが喜びそうだからな。商業ギルドの魔道具展示にでも誘おうかと思っていた。アシェは商業ギルド自体には行った事があるが、色々あったからな。結局展示は見てないらしい。」
「それでしたらアシェル様は喜ばれると思いますわ。あとは……商業ギルドの前にカフェに行きませんか?アシェル様もアルフォード義兄様も甘味が好きですから。カフェの方はこちらで調べておきますわ。お茶をして、魔道具を見てたらきっと夕食に丁度いい時間になるから、それからディナーへ……で。」
確かにアシェルもアルフォードもじっくり魔道具を見るだろうし、二人揃えばあーだこーだと展示を見ながら考察を語り合いそうだ。
ランチ代わりにカフェに行ったとしても、魔道具を見終わるころには良い時間になっているだろう。
「あぁ、良い案だと思う。」
「アークエイド様が了承してくださって良かったわ。流石にデートにお誘いするのに二人っきりは、ハードルが高いと思っていたのよ。」
「俺は良いが……アシェに確認は取らなくて良いのか?」
どうせ起きないだろうことは分かっているので、アークエイドもイザベルも普段通り喋っている。
実際、腕の中のアシェルはすぅすぅと規則的な寝息をたてていて、全く起きる気配はない。
これでスタンピード前は寝不足気味だったというのが、本当に不思議なくらいだ。
「えぇ。アシェル様は嫌とはおっしゃられないはずですから。」
イザベルが確信をもって言うので、恐らく事実なのだろう。
確か去年アークエイドがデートに誘った時も、イザベル次第だと言っていた。
「あ、今回はアシェル様にお洋服は贈らないで下さいませね。メルティー様がリリアーデ様にいいお店を聞いたらしいので。アシェル様もお誘いして行ってみようと思っているので。」
デートなどで着る機会があるタイミングでワンピースを贈れば、一度は袖を通してもらえると聞いていたので、この機会にプレゼントしたいと思っていた。
のだが、イザベルが言うように三人で選びに行ったのなら、そっちが優先されそうだ。
「仕方ない。今回は諦めることにする。」
「申し訳ありませんわ。その代わり、アークエイド様のお好みを聞いておきますわよ?先に言っておくけれど、普段のアシェル様は淡い色はお召しにならないわ。でも、市街デートとなれば魔道具を使うでしょうから。色については気にしなくても大丈夫ですわ。でもメルティー様に良くお似合いになるような、フリルがたっぷりついたものは苦手なようですわね。可愛すぎるからとおっしゃられるけれど、程よく付いてるものであればアシェル様にもお似合いになるのに。」
アークエイドからの贈り物を受け取れ無い代わりに、希望を聞いてくれるらしい。
少し逡巡して、希望を伝える。
「俺は確実にお忍びスタイルだ。出来ればサファイアブルーか、少し深みのある瑠璃色のものを取り入れて欲しい。ワンピースでなく、小物で構わない。服の色や形まで指定したら、買い物に行く楽しみが減るだろ。」
「普通であれば嬉しい気遣いですけれど、アシェル様の場合、あまり気にされないと思いますわよ?」
「イザベルやメルティーも一緒に行くんだろ?それなら、アシェに似合うものを選んでくれるだろ。楽しみにしておく。」
「分かりましたわ。アークエイド様が居てくれて助かりました。流石にマルローネにまで話すわけにもいかないし、アイザックに相談するのも変ですから。」
「アシェに話したらどうだ?」
なんだかんだで、ノアールの相談には真面目に答えようとしていた。
それに雰囲気的に、相談自体は初めてではなかったように見えた。
技術的なものに関しては練習するしか上達する道は無いと思っていそうで、それについて抵抗もなさそうなのが問題だが。
「アシェル様に相談しても、確実に予期しない結果が起きますわ。夜這いが失敗したなどと伝えたら、アルフォードお義兄様に薬を盛りそうですもの。体質で分解できるけど命に別状は無い薬なんだから、分解が追いつかないくらい使えば問題ないよね、なんて笑って言われそうですわ。その上、事細かに効果を聞かれるか、覗かれでもしそうですわ。」
イザベルの言う状況が、簡単に想像できてしまう。
使う薬剤も楽しんで極悪なものを作った上で、更に実験結果を気にするだろう。
そうなると相談したイザベルもだが、巻き込まれるアルフォードもいたたまれなくなってしまう。
「イザベルが言いたい意味は分かった。確かに、次兄が絡んでいるし、相談するのには向かないかもしれないな。まぁ、話しを聞くだけは俺でもできる。アルフォードから何か聞いて来いと言うのなら、頑張ってみるが?」
「いいえ。アルフォードお義兄様が、わたくしとのことを真剣に悩んでいそうだという情報だけでも十分ですわ。正直なところ、アークエイド様から聞くことになるとは思ってませんでしたけれど。これでも長年片思いをしてきたんですもの。アルフォードお義兄様のお好みは、大体把握しておりますわ。」
「長年……いつからなんだ?」
「お邸に仕えることになる前から。と言っておこうかしら。アシェル様の言う“特別な好き”だと自覚したのは、それより後だけれど。」
アークエイドの片思いを応援してくれているのは、イザベル自身も長すぎる片思いをしていたからなのだろうか。
「お互い、難儀な相手に恋したものだな。」
「全く、本当に。今までにしたアプローチは、ことごとく空振りだったんですもの。ひとまず気持ちをお伝えして、それが伝わっただけでも大きな一歩ですわ。」
「くくっ、そうだな。アルフォードの場合、姉上とのこともあるから、ハッキリと気持ちは伝えにくかっただろうしな。」
「えぇ。ノアール様との件が、ここまで長引くとは思ってませんでしたわ。でも、まだアルフォードお義兄様の在学中に決心していただいて良かった、とも思ってしまいますわね。とにかく、卒業式までもっと頑張ってアプローチしますわ。……いえ、それよりもまずはメルティー様の件かしら。アシェル様としては、わたくしとアルフォードお義兄様がお話しできるように、なんでしょうけれど……。死地に飛び込めと言われているようにしか感じませんでしたわ。普段命令されるのは嫌がるから、回避できると思いましたのに。」
昨日の“命令”のことを言っているのだろう。
アークエイドも、まさかアシェルがイザベルに明確に“命令”するとは思っていなかった。
「恐らくだが。イザベルが思うほど死地にはならないと思うぞ。まぁ、衝撃は受けるだろうが。相手はマリクだし、メルティー自身が受け入れている。姉上の護衛を肩代わりさせるのに、マリクとエトを指名するくらいには、実力については認めてるってことだからな。」
アビゲイルの護衛の肩代わりをさせるという話に、イザベルは驚いた。
「アルフォードお義兄様が、アビゲイル様の護衛の代わりを任せたのですか?アシェル様が、お二人に任せるのは違和感ありませんけれど……。」
「あぁ。術式の論文を引き合いに出されたからかもしれないけどな。」
「それでも論文と天秤にかけて、アビゲイル様の護衛を譲ったのでしょう?よっぽどのことだわ。でもそれを聞くと、少し気が楽になるわね。ただ、このままじゃ確実に突撃はしてしまうから、契約魔法は必須でしょうね。」
「口頭約束じゃダメなのか?」
「話しを聞いた瞬間、部屋を飛び出す可能性があるわ。内容は伏せて、先に契約魔法を済ませてから内容を伝える……。が、アシェル様の指示を守るにはベストなのよ。」
イザベルはそう言うが、アルフォードが感情的に動いているところを見たことが無い。
普段の落ち着いていて、妹達大好きな姿からはあまり想像できない。
確かに内容的に突撃はおかしくないが、それでも話し位、最後までちゃんと聞きそうな気がする。
「考えていることはなんとなく分かるけれど……。結論だけ伝えても、順番に説明しても、きっとメルティー様はご了承されていることと、その理由を聞く前に飛び出しますわよ。」
「あまりピンとこないが、イザベルが言うならそうなんだろうな。」
「えぇ。そういえば、最近女生徒の間で広まっている噂は、何かご存知かしら?」
急な話の変わりように、アークエイドは首を傾げる。
そもそも幼馴染たちとしか一緒に行動しないし、他に交流と呼べるのはお昼ご飯と、生徒会くらいなものだ。
「その様子だとご存じありませんわね。でしたら問題ありませんわ。」
「中途半端に言われた方が気になるんだが。」
「そうですわね……恐らくリリアーデ様とアシェル様についての噂が聞こえてくるかもしれませんけれど、事実無根ですわ。少し前から二人が階段裏で、いかがわしいことをしていたという噂が出回っていますの。でも、アシェル様の体調が悪かった日のことなので……ここまで言えば、理由は分かりますわよね?」
目に見えてアシェルの体調が悪かった日は、月の物が始まった時だ。
あの時確かに、リリアーデだけ連れ出されていたし、目立たないように階段裏でリリアーデに話を聞いて、それが目撃されて噂になったということだろうか。
生物の時間までに二人でお茶をしていて、それが二人が実は恋仲ではと噂になりかけたこともあった。
相手がリリアーデだったことで、その噂は霧散したのだが。
また同じようなことが起こっているのだろう。
「あぁ、分かった。デュークにも気にしないように、それとなく伝えておく。」
本当はアシェルがメルティーを守る為に取った行動で、最初はアシェルのお眼鏡にかなえばワンナイトでも愛してもらえるかもしれない。という噂が流れていた。
そのせいでリリアーデとのことが誤解され急速に噂が広がったのだが、元の噂はアークエイドは知らなくて良いことだ。
アシェルの幼馴染達には理由が分かる良い隠れ蓑の噂が出回ったので、本来の噂を届きにくくするために使用人一同、積極的にリリアーデとの噂を更に拡散したかいがあると言うものだ。
マルローネや一部のアルフォードの使用人は、わざわざ学生服を着て噂を流していたくらいなのだから。
「ありがとうございます。では。わたくしは授業に行ってまいりますわ。長らくお話して下さってありがとうございます。」
「いや、こちらこそ。デートについては、日程を教えてくれたらそれで調整する。」
「分かりましたわ。それでは。」
チラリと腕時計を見たイザベルが、会話の終了を告げた。
体感的にも、そろそろ移動しないとホームルームに遅れてしまうだろう。
さっと椅子を元の位置に戻し、寝室から出て行ったイザベルを寝台の中から見送る。
アークエイドでは相談相手としては適任とは言えないだろうが、他に言える相手もいない、というところなのだろうか。
イザベルは普段、侍女であることに固執しているように見えるので、あまり素で話せる相手がいないだけなのかもしれないが。
アシェルの傍を離れなくてはいけない冬休みが憂鬱だったが、デートと言う楽しみが出来た。
イザベルのことだ。恐らくアルフォードは、ダブルデートのお誘いに頷くしかなくなるのだろう。
アシェルは昼食を食堂で食べると言っていたので、目覚まし時計を見て時間を確認する。
まだまだゆっくり、こうしてアシェルの温もりを抱きしめていられそうだ。
普段の大人びた微笑みを湛えた表情とは違う、まだ少し幼さの残る愛しい人の額に口付けて、アークエイドはアシェルの寝顔を見て過ごすことにした。
ぼんやりとする意識の中、言い争うような声が聞こえる。
「————といって。少し早めにお迎えに上がって正解でした。」
「それが分かっているなら、来なくても良いだろう。」
「良くありません。私は、本日お休みするとは伺っておりませんので。」
「アシェなら、少し休んだところで全く問題ないだろ。」
「それはアシェル様がお決めになることです。」
微睡の中、アークエイドとイザベルの言い合う声を聞きながら、もっと寝ていたいのにと思う。
少し位置がしっくりこないので良い位置を探してごそごそと動くと、アークエイドがそれに気づいた。
「アシェ、起きたのか?」
「……やだ……まだねるの……。」
しっくりとくる、温かくて寝心地の良い場所を見つけて、アシェルの意識はまた落ちかける。
「アシェル様。本日の授業はどうなさいますか?本日は魔法学中級、薬草学、体術、マナー、家庭科と、びっしり授業が詰まっておりますが。」
イザベルに言われた授業の進行度をぼんやりと考えながら、それでもアシェルはやっぱり眠ることを選んだ。
「いい、ねる……。でも……おひるはメルとたべる。……でゅーくに、りりぃよろしくって……。」
言いたいことだけ言ってすぅすぅと寝息をたて始めた主に、イザベルは大きなため息を吐いた。
この様子だと、メルティーと昼食を食べるために起きはするだろうが、逆に言うとお昼までは寝ていそうだ。
授業はサボるのに、メルティーの食事の味見だけは欠かせないらしい。もしかしたら、昨日のマリクの求婚の件もあるからかもしれないが。
「それは家庭科の送迎のことなんでしょうね、きっと。さて、アークエイド様。アシェル様はまたお眠りになられたようなので、少しわたくしとお話してくださいませ。」
にっこりと、それでも有無を言わせない威圧感に、アークエイドはイザベルから逃れられないことを悟った。
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Side:アークエイド14歳 冬
イザベルの話に居住まいを正すべきか迷うが、布団の下はアークエイドもアシェルも全裸な上、アシェルが腕の中で眠っている。
イザベルはそんなアークエイドの迷いなど知らず、椅子をベッドサイドに持ってきて腰掛けた。
「アシェル様はかなりアークエイド様に気を許していらっしゃるのに、まだ返事は貰えませんの?」
「残念ながらな。そういうイザベルの方はどうなんだ?」
「どうも何も……真剣に返事を考えるからと、保留されていますわ。いっそのことキッパリと振っていただけたら、諦めもつきますのに……。」
わざわざイザベルが話したいと言った上で、アシェルのことを引き合いに出してきたので、恋愛話がしたいのだろうと当たりを付けて問えば、イザベルは小さな溜息とともに言葉を口にする。
どうやらアークエイドの予想は当たっていたようだ。
「アルフォードは真剣に悩んでいる様だぞ。」
「アルフォードお義兄様を困らせてしまったかしら……。でも、ずっとお伝えしたかったんだもの。……アシェル様は、この件に関して何か言っていたかしら?」
「いや、何も。少なくとも学院祭時点では、アシェルとアルフォードはそのことについて話していないみたいだったからな。恐らく、イザベルからの報告待ちじゃないか?」
アシェルは結果を気にしてはいるだろうが、自分から聞いたりはしないだろう。
アークエイドは気になって、アルフォードに聞いてしまったが。
「学院祭時点で……。どんな話をしたのかは聞かないでおきますわ。どうやったら義妹ではなくて、女性として見て頂けるのかしら。普通は下着姿の女性に迫られたら、と思うのだけれど。アークエイド様のように、他に意中の方がいらっしゃるのかしら。」
「もし居るのなら、アルフォードは既に断っているだろ。本命がダメだった時の為にキープしておくというような性格ではないと思うしな。」
「……ですわね。考えるから時間が欲しいって言われてるけれど……もうそろそろ卒業なさるでしょう?そうなれば、今のようにお食事を一緒にすることも叶わなくなるわ。」
「そういえば、ちょくちょくアルフォードが夕食に来ているな。あれはイザベルからお願いしたのか?」
アークエイドの言葉に、イザベルは頭を横に振る。
「いいえ。少し一緒に居る時間を増やすためにお邪魔する、と言われましたわ。帰りは女子寮の前まで送っていただきますけれど、メルティー様もマルローネも居るし、特別何かお話しするわけではありませんの。」
「イザベルは一号棟だろ?」
「メルティー様のお部屋までお送りしていますから。」
「二号棟の入り口まで見送って、一号棟へ行けば少しは二人の時間が取れるんじゃないのか?アイザックだったか。アルフォードの侍従はいないんだろう?事情も知っているだろうし。」
アルフォードを夜這いした時に使用人がグルだったと聞いているので、アルフォード専属侍従であるアイザックは事情を知っているだろう。
「えぇ。マルローネは知らないけれど、アイザックやアルフォード義兄様についてきた使用人は知っていますわ。……そうね。今度、わたくしは一号棟の方へ帰ってみるわ。それで少しでもお話が出来ると嬉しいし。それと、アークエイド様。冬休みはお忙しいかしら?」
イザベルに予定を聞かれる意味が分からずに、アークエイドは首を傾げる。
「いや。スタンピードの片付けは済んだし、いつもの執務だけで特に予定は無いが。」
「出来たら、アシェル様も含めた四人で、ダブルデートを出来ないかしら?といっても、普通のデートではなくて、メイディーの興味を惹きそうな場所に行くことになるのだけれど。」
「俺は構わないぞ。そもそも、アシェをデートに誘おうとは思っていたしな。」
「何処を予定していましたの?お食事だけでしたら気にしなくても良いけれど、アシェル様は定番のオペラなんかは、あまり興味がありませんわよ?」
「それは知ってる。それなら同じストーリーの本を読んでいるほうが喜びそうだからな。商業ギルドの魔道具展示にでも誘おうかと思っていた。アシェは商業ギルド自体には行った事があるが、色々あったからな。結局展示は見てないらしい。」
「それでしたらアシェル様は喜ばれると思いますわ。あとは……商業ギルドの前にカフェに行きませんか?アシェル様もアルフォード義兄様も甘味が好きですから。カフェの方はこちらで調べておきますわ。お茶をして、魔道具を見てたらきっと夕食に丁度いい時間になるから、それからディナーへ……で。」
確かにアシェルもアルフォードもじっくり魔道具を見るだろうし、二人揃えばあーだこーだと展示を見ながら考察を語り合いそうだ。
ランチ代わりにカフェに行ったとしても、魔道具を見終わるころには良い時間になっているだろう。
「あぁ、良い案だと思う。」
「アークエイド様が了承してくださって良かったわ。流石にデートにお誘いするのに二人っきりは、ハードルが高いと思っていたのよ。」
「俺は良いが……アシェに確認は取らなくて良いのか?」
どうせ起きないだろうことは分かっているので、アークエイドもイザベルも普段通り喋っている。
実際、腕の中のアシェルはすぅすぅと規則的な寝息をたてていて、全く起きる気配はない。
これでスタンピード前は寝不足気味だったというのが、本当に不思議なくらいだ。
「えぇ。アシェル様は嫌とはおっしゃられないはずですから。」
イザベルが確信をもって言うので、恐らく事実なのだろう。
確か去年アークエイドがデートに誘った時も、イザベル次第だと言っていた。
「あ、今回はアシェル様にお洋服は贈らないで下さいませね。メルティー様がリリアーデ様にいいお店を聞いたらしいので。アシェル様もお誘いして行ってみようと思っているので。」
デートなどで着る機会があるタイミングでワンピースを贈れば、一度は袖を通してもらえると聞いていたので、この機会にプレゼントしたいと思っていた。
のだが、イザベルが言うように三人で選びに行ったのなら、そっちが優先されそうだ。
「仕方ない。今回は諦めることにする。」
「申し訳ありませんわ。その代わり、アークエイド様のお好みを聞いておきますわよ?先に言っておくけれど、普段のアシェル様は淡い色はお召しにならないわ。でも、市街デートとなれば魔道具を使うでしょうから。色については気にしなくても大丈夫ですわ。でもメルティー様に良くお似合いになるような、フリルがたっぷりついたものは苦手なようですわね。可愛すぎるからとおっしゃられるけれど、程よく付いてるものであればアシェル様にもお似合いになるのに。」
アークエイドからの贈り物を受け取れ無い代わりに、希望を聞いてくれるらしい。
少し逡巡して、希望を伝える。
「俺は確実にお忍びスタイルだ。出来ればサファイアブルーか、少し深みのある瑠璃色のものを取り入れて欲しい。ワンピースでなく、小物で構わない。服の色や形まで指定したら、買い物に行く楽しみが減るだろ。」
「普通であれば嬉しい気遣いですけれど、アシェル様の場合、あまり気にされないと思いますわよ?」
「イザベルやメルティーも一緒に行くんだろ?それなら、アシェに似合うものを選んでくれるだろ。楽しみにしておく。」
「分かりましたわ。アークエイド様が居てくれて助かりました。流石にマルローネにまで話すわけにもいかないし、アイザックに相談するのも変ですから。」
「アシェに話したらどうだ?」
なんだかんだで、ノアールの相談には真面目に答えようとしていた。
それに雰囲気的に、相談自体は初めてではなかったように見えた。
技術的なものに関しては練習するしか上達する道は無いと思っていそうで、それについて抵抗もなさそうなのが問題だが。
「アシェル様に相談しても、確実に予期しない結果が起きますわ。夜這いが失敗したなどと伝えたら、アルフォードお義兄様に薬を盛りそうですもの。体質で分解できるけど命に別状は無い薬なんだから、分解が追いつかないくらい使えば問題ないよね、なんて笑って言われそうですわ。その上、事細かに効果を聞かれるか、覗かれでもしそうですわ。」
イザベルの言う状況が、簡単に想像できてしまう。
使う薬剤も楽しんで極悪なものを作った上で、更に実験結果を気にするだろう。
そうなると相談したイザベルもだが、巻き込まれるアルフォードもいたたまれなくなってしまう。
「イザベルが言いたい意味は分かった。確かに、次兄が絡んでいるし、相談するのには向かないかもしれないな。まぁ、話しを聞くだけは俺でもできる。アルフォードから何か聞いて来いと言うのなら、頑張ってみるが?」
「いいえ。アルフォードお義兄様が、わたくしとのことを真剣に悩んでいそうだという情報だけでも十分ですわ。正直なところ、アークエイド様から聞くことになるとは思ってませんでしたけれど。これでも長年片思いをしてきたんですもの。アルフォードお義兄様のお好みは、大体把握しておりますわ。」
「長年……いつからなんだ?」
「お邸に仕えることになる前から。と言っておこうかしら。アシェル様の言う“特別な好き”だと自覚したのは、それより後だけれど。」
アークエイドの片思いを応援してくれているのは、イザベル自身も長すぎる片思いをしていたからなのだろうか。
「お互い、難儀な相手に恋したものだな。」
「全く、本当に。今までにしたアプローチは、ことごとく空振りだったんですもの。ひとまず気持ちをお伝えして、それが伝わっただけでも大きな一歩ですわ。」
「くくっ、そうだな。アルフォードの場合、姉上とのこともあるから、ハッキリと気持ちは伝えにくかっただろうしな。」
「えぇ。ノアール様との件が、ここまで長引くとは思ってませんでしたわ。でも、まだアルフォードお義兄様の在学中に決心していただいて良かった、とも思ってしまいますわね。とにかく、卒業式までもっと頑張ってアプローチしますわ。……いえ、それよりもまずはメルティー様の件かしら。アシェル様としては、わたくしとアルフォードお義兄様がお話しできるように、なんでしょうけれど……。死地に飛び込めと言われているようにしか感じませんでしたわ。普段命令されるのは嫌がるから、回避できると思いましたのに。」
昨日の“命令”のことを言っているのだろう。
アークエイドも、まさかアシェルがイザベルに明確に“命令”するとは思っていなかった。
「恐らくだが。イザベルが思うほど死地にはならないと思うぞ。まぁ、衝撃は受けるだろうが。相手はマリクだし、メルティー自身が受け入れている。姉上の護衛を肩代わりさせるのに、マリクとエトを指名するくらいには、実力については認めてるってことだからな。」
アビゲイルの護衛の肩代わりをさせるという話に、イザベルは驚いた。
「アルフォードお義兄様が、アビゲイル様の護衛の代わりを任せたのですか?アシェル様が、お二人に任せるのは違和感ありませんけれど……。」
「あぁ。術式の論文を引き合いに出されたからかもしれないけどな。」
「それでも論文と天秤にかけて、アビゲイル様の護衛を譲ったのでしょう?よっぽどのことだわ。でもそれを聞くと、少し気が楽になるわね。ただ、このままじゃ確実に突撃はしてしまうから、契約魔法は必須でしょうね。」
「口頭約束じゃダメなのか?」
「話しを聞いた瞬間、部屋を飛び出す可能性があるわ。内容は伏せて、先に契約魔法を済ませてから内容を伝える……。が、アシェル様の指示を守るにはベストなのよ。」
イザベルはそう言うが、アルフォードが感情的に動いているところを見たことが無い。
普段の落ち着いていて、妹達大好きな姿からはあまり想像できない。
確かに内容的に突撃はおかしくないが、それでも話し位、最後までちゃんと聞きそうな気がする。
「考えていることはなんとなく分かるけれど……。結論だけ伝えても、順番に説明しても、きっとメルティー様はご了承されていることと、その理由を聞く前に飛び出しますわよ。」
「あまりピンとこないが、イザベルが言うならそうなんだろうな。」
「えぇ。そういえば、最近女生徒の間で広まっている噂は、何かご存知かしら?」
急な話の変わりように、アークエイドは首を傾げる。
そもそも幼馴染たちとしか一緒に行動しないし、他に交流と呼べるのはお昼ご飯と、生徒会くらいなものだ。
「その様子だとご存じありませんわね。でしたら問題ありませんわ。」
「中途半端に言われた方が気になるんだが。」
「そうですわね……恐らくリリアーデ様とアシェル様についての噂が聞こえてくるかもしれませんけれど、事実無根ですわ。少し前から二人が階段裏で、いかがわしいことをしていたという噂が出回っていますの。でも、アシェル様の体調が悪かった日のことなので……ここまで言えば、理由は分かりますわよね?」
目に見えてアシェルの体調が悪かった日は、月の物が始まった時だ。
あの時確かに、リリアーデだけ連れ出されていたし、目立たないように階段裏でリリアーデに話を聞いて、それが目撃されて噂になったということだろうか。
生物の時間までに二人でお茶をしていて、それが二人が実は恋仲ではと噂になりかけたこともあった。
相手がリリアーデだったことで、その噂は霧散したのだが。
また同じようなことが起こっているのだろう。
「あぁ、分かった。デュークにも気にしないように、それとなく伝えておく。」
本当はアシェルがメルティーを守る為に取った行動で、最初はアシェルのお眼鏡にかなえばワンナイトでも愛してもらえるかもしれない。という噂が流れていた。
そのせいでリリアーデとのことが誤解され急速に噂が広がったのだが、元の噂はアークエイドは知らなくて良いことだ。
アシェルの幼馴染達には理由が分かる良い隠れ蓑の噂が出回ったので、本来の噂を届きにくくするために使用人一同、積極的にリリアーデとの噂を更に拡散したかいがあると言うものだ。
マルローネや一部のアルフォードの使用人は、わざわざ学生服を着て噂を流していたくらいなのだから。
「ありがとうございます。では。わたくしは授業に行ってまいりますわ。長らくお話して下さってありがとうございます。」
「いや、こちらこそ。デートについては、日程を教えてくれたらそれで調整する。」
「分かりましたわ。それでは。」
チラリと腕時計を見たイザベルが、会話の終了を告げた。
体感的にも、そろそろ移動しないとホームルームに遅れてしまうだろう。
さっと椅子を元の位置に戻し、寝室から出て行ったイザベルを寝台の中から見送る。
アークエイドでは相談相手としては適任とは言えないだろうが、他に言える相手もいない、というところなのだろうか。
イザベルは普段、侍女であることに固執しているように見えるので、あまり素で話せる相手がいないだけなのかもしれないが。
アシェルの傍を離れなくてはいけない冬休みが憂鬱だったが、デートと言う楽しみが出来た。
イザベルのことだ。恐らくアルフォードは、ダブルデートのお誘いに頷くしかなくなるのだろう。
アシェルは昼食を食堂で食べると言っていたので、目覚まし時計を見て時間を確認する。
まだまだゆっくり、こうしてアシェルの温もりを抱きしめていられそうだ。
普段の大人びた微笑みを湛えた表情とは違う、まだ少し幼さの残る愛しい人の額に口付けて、アークエイドはアシェルの寝顔を見て過ごすことにした。
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