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第二章 王立学院中等部一年生

92 カミングアウト④ ※

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※アークエイドとイチャイチャ中に、記憶とトラウマに触れる描写があります。


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Side:アシェル13歳 冬




「アーク?座るなら寝台に——。」

急にしゃがんだアークエイドに、寝台に上がるように促そうとした言葉は遮られる。

「ヒールを脱がしてやる。」

「それくらい自分で、んっ。」

優しく内股を撫でられ、その手はゆっくりと足先まで降りていく。

その柔らかい快感から目を背けるようにアークエイドに視線をやれば、ミュールの留め具を外して脱がされた。
そしてパクリと、足指を咥えられる。

「ひゃぁ!?ちょっと、汚いでしょっ、やっ。んっ、やぁ……。」

足の指を、指の間を、足の甲を。
ぬるぬると熱い舌で、隅々まで丁寧に舐めあげられる。

その普通ではありえない感触に、ゾクゾクとした快感が背中を駆け上がってくる。

片側は満足したのか、そのまま反対側のミュールを脱がされ、同じように舐められた。

ゾクゾクと抗いがたい快感を静めたくて、アシェルはギュッと自分の身体を抱きしめる。

そんなアシェルの姿に、アークエイドは嬉しそうに眼を細めた。

「…んぅ……んっ、ゃ……。」

ゆっくりと上へと上がってきて、アークエイドは脚の間に顔を埋めた。そのままスリットからスカートをはだけさせ、アシェルの脚を大きく広げさせる。
太腿にチュゥと強く吸い付き、いくつも花びらを散らしていく。

「あ、またっ。」

「この前の、さっさと消しただろ?見える場所には付けないから、今日のは消すな。」

「な、気付いて、あんっ、んんっ!?」

あの抱き潰された日にもたっぷり全身に所有印を付けられたのだが、シャワーを浴びた時に創傷治癒ヒールで消してしまっていた。
それを咎めるかのように、下着をずらした隙間から敏感な花芽まで強く吸われ、大きすぎる刺激が駆け上る。

ビクビクと身体を震わせるアシェルの姿を楽しむように、吸っては優しく舐めを繰り返される。

そっと割れ目から指が中に入ろうとして、すぐに離れていった。

「これだけ気持ちよさそうでも濡れないのか。」

「……こればかりは体質だよ。あそこの引き出しに、ボトルが入ってるから取ってくれる?」

「サイドチェストか?」

「うん、一番上に入ってるから。」

アークエイドが立ち上がり、チェストの引き出しを上げるのを見ながら、いそいそと寝台の中央へ移動する。

アシェルから指示された物を手に取ったアークエイドが、ぎしりと音をたてながらアシェルの傍に寄ってくる。

「なんだこれは?」

「ローション。一応クリーン使えば取れると思うけど、服に付いちゃうと気になるから、制服全部脱いでくれる?」

ペタンと寝台に座ったままボトルを受け取りながら言うアシェルに、アークエイドは小さく溜め息を吐いた。

「もしかして脱がされたかった?さすがにこの格好の僕に脱がされるのは、嫌かなって思ったんだけど。」

「自分で脱ぐ。でも、どうせアシェのことだから、上に乗るとか言うんだろ。」

どこか確信を持ったように言いながら制服を脱いでいき、アークエイドは産まれたままの姿になる。
羨ましいほどに均整の取れた筋肉のついた身体がそこにあった。

そんな膝立ちのままのアークエイドの腰を引き寄せ、鍛えられた胸板に顔を埋める。

「良いな……綺麗な筋肉がついてて。マッチョまでにはなりたくないけど、これくらいの細マッチョになりたい……。」

「折角綺麗に引き締まった身体なのに、それ以上筋肉をつけてどうする。」

「根本的な力不足って、筋肉がないと補えないでしょ。技術を磨いても、越えられない壁があるんだもの。」

チュッチュと、胸板とそこにある飾りにキスを落としていく。
胸も開発してやりたいところだが、中々大人しくアシェルに身を委ねてはくれないので長期戦だ。

「どうせ一回じゃ終わらないんでしょ?嫉妬の色が見える時はしつこいって、ちゃんと覚えたからね。」

このワンピースを着て皆の前に出た時から、ずっとアークエイドの瞳に嫉妬の色が混じっている。
なんとなく帰らないんだろうなとは考えていたが、予想が的中するとは思わなかった。

「別に嫉妬してなくても、何回でもアシェのことを愛したいんだけどな。」

「ローション使うと口でしたくないから、先にフェラで抜いてあげるね。アークは絶倫だし、一回抜いても次いけるでしょ。」

最後にもう一度綺麗な胸板にキスをして四つん這いになる。
アークエイドが膝立ちなので、丁度いい高さだ。

しっかりと硬くなり天を向くアークエイド自身を、下から舐めあげる。
アークエイドの表情を見ながら舐めていると、視線が混じりサッとアークエイドの頬が染まった。

「それは、駄目な奴だろ……。」

「クスッ……何がダメなのか分かんないなぁ。」

ぺろぺろと舐めながら、熱い屹立を唾液塗れにしていく。

「上目づかいで、腰まで揺らして。そんな表情で……なんでそんな煽るような行動ばっかり……。」

「ふふ、だってこうした方がえっちぃでしょ?刺激も良いけど、視覚でも楽しまなくっちゃ。」

「解ってはいたが、狙ってされてると思うと複雑な気分だ。」

「アークは何も考えずに、気持ち良くなれば良いんだよ。」

先走りを溢れさせる先端にチュッとキスをしてから、すぼめた口に迎え入れる。
ゆっくりと、閉じた場所をこじ開けるように口に含めば、アークエイドから小さな呻き声が零れた。

一旦限界まで奥に入れて根元まで咥えてから、ゆっくりと抽送する。
あまり奥まで入れるとえづいてしまうので、舌で疑似的な行き止まりを作りながら。たっぷりと唾液を溜めた口内で熱い塊を犯す。

じゅぽじゅぷと音をわざとたてながら、動きを速くしたり遅くしたり、緩急をつけて動いていく。

動きを遅くした時の、アークエイドのもどかしそうな表情や腰の動きが可愛い。
もっとその可愛い姿が見たくて浅くゆっくり頭を動かしていると、不意に頭を抑えられた。

「んっ!」

グッと深くまで口腔内を犯され、抗議するようにぽかぽかと脚を叩くが、力が弱まる気配がない。

「人の、反応っ、楽しんでるだろ?あんなに焦らされて、我慢できるか。悪いが、少し激しくする。」

言いながら引き抜かれかけた熱塊が、またグンと突き入れられた。

「っ!?ごほっ、っは、ごほっ。」

えづいてしまい、その息苦しさに涙が浮かぶ。
そのえづいた拍子に頭がズキンと痛んだ。

咳込んだ時に溢れた唾液が、口の端を、喉を伝って垂れていく。

「苦しかったか、悪い。でも、そんなアシェの姿が堪らないと思ってしまうな。」

言いながら今度は深くなりすぎないように、それでも激しくアークエイドに口腔内を犯される。
好き勝手に犯されて涙と涎で悲惨な状態だろう。
それが男性の欲に刺さるようだが、アークエイドも例に漏れないようだと、酸欠気味で熱に浮かされぼんやりする頭で思った。

「はぁ、つ。アシェ、もう出る……!」

「っ、はぁ、んぅ……。なんで抜いたのぉ……アークの馬鹿……。」

口に出すのを躊躇ったのか、腰を押さえていたのに抜け出して引き抜かれたアークエイド自身は、行き場を無くしてしまった白濁をアシェルの顔にぶちまけた。

「悪い。……でも、抜かないとまた飲むだろ。あぁ、ヤバいな。」

涙を浮かべたまま、上気した表情のアシェルは四つん這いをやめぺたんと座る。
綺麗な白肌を汚した白濁と零れた唾液が、頬や顎を伝っていく。

そんな自分が汚したアシェルの姿に、アークエイドは興奮するのを感じる。
同時に、これが自分だけに見せてくれる姿ではないことも思い出してしまう。

「んぅ……汚れちゃったじゃない……。」

口腔内を激しく犯され、少しふわふわとする頭のまま。
アシェルは自分の顔に出された白濁を指ですくい、ペロッと舐めた。
独特の匂いと苦味が口の中に広がる。

「~~っ、綺麗にしてやるから舐めるなっ。」

「やだ、勿体ないもん……。」

溢しては駄目だ、飲まなくては駄目だと、頭のどこかで警鐘がなってるのだ。
絶対にアークエイドは怒ったりしないと、アシェルはちゃんと解っているのに。
それにアークエイドが出したものなら舐めるのは苦ではない。

「勿体ないって……『クリーン』。もう無いから無理だろ。」

「うん。……『ウォーター』。」

アシェルの掌に水が湧き出てくるのをごくごくと飲む。
本当は口を濯いだ方がいいのだろうが、そのままにしておくよりマシだろう。

そんな姿が不思議なのか、アークエイドは首を傾げている。

「自分のを咥えた口とキスしたくないでしょ?ねぇ、キスしてよ。」

そうすればきっと、このズキズキとした痛みも消えるはずだと。なんとなくそんな予感がする。

「キスは良いが……何を考えている?」

アークエイドはアシェルと眼を合わせているのに、どこか噛み合ってないような違和感を感じて問いかける。

「キス、したいなって。」

「どこを……誰を見ている?」

どこかふわふわとした気分のまま答えたアシェルに、アークエイドからさらに質問が飛んでくる。

(どこを……ダレを?)

そう問われて初めて、アシェルは記憶を思い出そうとしていたことに気付く。

「……目の前にはアークしかいないのに、幼馴染が見えた気がした。なんでだろ……。」

幼馴染はアシェルの幼馴染ではない。
前世のアシェルむかしの幼馴染だ。

アシェルの焦点がアークエイドに合うと頭痛は収まった。
無意識のうちに記憶を引っ張り出そうとして、頭痛が止まらなかったのだと知る。

それと同時に、アークエイドにギュッと抱きしめられた。

「ちょ、アーク。苦しい。」

「戻ったな。幼馴染って、俺達じゃないだろ。」

「あ、うん。前世のだと思う。顔も名前も覚えてないから、見えるわけないのにね。」

なんで昔の幼馴染達が見えた気がしたのか分からないが、これ以上考えるとまた頭痛が起きそうなので考えるのを止める。

「そうか……。今日はもう着替えて寝るか?そのままじゃ流石に皺になるだろ。」

「でも……まだシたいんじゃないの?」

「別にそれだけじゃない。アシェと一緒に居れるだけでも良いんだ。」

そう言って腕から解放されたので、結い上げて貰った髪の髪飾りを外してサイドテーブルに置いていく。

「そう?っていうか、その口ぶりだと泊まるやつだよね?使用人達に怒られても知らないからね。」

少し型のついた銀髪を手櫛で整え、クローゼットからネグリジェを取り出す。

何の躊躇いもなくパサリとワンピースを脱いだアシェルに、アークエイドは頭を抱えた。

「室内を歩くときは裸足で歩くな、スリッパを履け。そして当たり前のような顔をして、目の前で裸になるな。下着を取るな。」

締め付けが邪魔とばかりに、ブラジャーまで外してネグリジェを着るアシェルに苦言が飛んでくる。

「この前散々裸見たでしょ?いまさらじゃない。なんか、アークってサーニャみたいなこと言うんだね。」

サクッと着替え終え、アシェルは寝台に戻る。
アークエイドも脱いでいた下着だけ着けて『ストレージ』に制服を放り込んで、寝間着にするシャツとスラックスを出して着た。

「それは世話係や母親みたいって意味か。」

「サーニャは乳母だからそうかも。母親は知らないから解んないよ。メアリーお義母様はメルの母親であって、僕の母親じゃないしね。」

ごろんと寝台の上に横になるとアークエイドが掛布団を掛けてくれて、その腕に抱きしめられる。

魔力の筋を伸ばしてランプの灯を消す。
カーテンの隙間から僅かに月明かりが射しこんで、寝室の中を薄暗く照らした。

「それは、メイディー夫人が聞いたら悲しみそうだな。」

「そう?お腹を痛めて産んだ子が一番可愛いって言うじゃない。多分メアリーお義母様は子供好きじゃないしね。」

その中でも特に女の子は苦手そうだ。というのが、アシェルが幼いころに導き出した答えだ。
今でもそれは、間違った発想だったとは思っていない。

アシェルが娘であるよりも息子である方が。
メルティーの姉であるよりも兄である方が。
メアリーからの嫌な視線は飛んでこないのだから。

「そうか?それならわざわざ非公式お茶会の送り迎えはしないと思うが……。それこそ、いつも来ていた乳母に任せればいい話だろ。」

「体裁か、お父様に頼まれたんじゃないかな。別に頑張って母親をやってもらわなくて良いんだよ。そもそも母親を知らないから、欲しいと思ったこともないし。子供もは嫌いみたいだけど、僕が男の子でいればメアリーお義母様は嫌な眼をしないから、それで十分。」

アシェルの身体に回されている腕にぎゅっと力が入った。

「それが男装の理由か?」

「うん、最初はね。別に女であることに拘りはないし、お兄様のお下がり着たらすっごく似合ってたからね。我ながら、アル兄様よりカッコイイかもって思っちゃったもん。」

「くくっ。アシェはいつも次兄のことを、女顔だと言ってるな。」

「アル兄様もお父様も、ぱっちり垂れ目なんだもん。可愛い顔してると思わない?僕の顔じゃ、ドレス着ても違和感あるか、すっごい意地悪そうな顔に見えちゃうしね。何だかんだで男として生活する方がしっくりきてるし。お父様からもすんなり許可を貰ったしね。」

「アベル医務官長か……。婚約もしてないのに。それどころか付き合ってもないのに同衾してるってバレたら、八つ裂きにされそうだな。」

「さすがに王子様相手にそんなことしないと思うよ?僕を無理やり手籠めにしたとかなら、八つ裂きの可能性あるけど。」

多分アベルは、自分で決めてやったことにはあまり何も言ってこない気がする。

アベルも兄達も過保護気味というか、愛情を惜しみなく与えてくれるのだが、実際のところ放任主義に近いものがある。
リスクを伴うことでも、知的欲求を満たしたい欲望を知っているからだろうか。
行動に制限をかけることは無いのだ。

心配されることはあれど、結局のところ自分の行動は自己責任だから、討伐に出るのだって強制的に辞めさせられることもなかった。
許可をくれたアベルは良いとして。アレリオンとアルフォードからはさすがに妨害されるかと思っていたのに、心配と注意して魔の森に行くように言われただけだったのだから。

「つまり、アシェの同意がなければ八つ裂きだったってことだな。」

「まぁ、その前に僕が何かしてると思うけどね。」

「……俺が言うのもなんだが、もう少し抵抗したほうが良いと思うぞ?俺の時も、クリストファー・ミルトンの時も抵抗してないだろ。シオン・ミルトンに至っては、何故か手懐けてるしな。」

シオンのことを手懐けた覚えはないのだが。
元々彼はしょっちゅうアシェルに話しかけて来ていた。手合わせを通して他人から知人に昇格しただけのクラスメイトだ。

「抵抗して相手を悦ばせるより、やり返してやった方が楽じゃない?大抵僕が勝てる自信あるし。力じゃどんなに頑張っても男には勝てないんだからさ。それに、やられっぱなしって気に入らないし。」

「その自信と、負けず嫌いはどこからくるんだ。」

「ふふ。だって僕、上手でしょ?」

「……較べる相手はいないが、否定できないな。」

チュッチュと唇を啄まれる。
アークエイドはこの軽いキスが好きなようだ。というより、キス魔だと思う。

薄明りの中、愛おしそうにアシェルを見つめる、熱の籠ったサファイアブルーの瞳が見える。

「……やっぱりシたりてないんじゃないの?」

「シたくないわけじゃないが、別にヤりたいだけじゃないからいいんだ。こうして俺の腕の中にアシェがいるだけでも、幸せなんだからな。」

「ふぅん。それが特別な好きってことだよね。僕には解んないな。」

アシェルにとって大切か大切じゃないかの二つだ。
知人は大切じゃないけど、交流のある人。それ以外はただの他人だ。

大切なモノの中では、家族以外ならアークエイドが一番ではあるけれど、特別な好きではない。
あくまでアークエイドが王子様だったから守らないとと思うだけだ。きっと他の人が王子様なら、その人が一番でその他が同列だっただろう。

「解ってもらえるまで頑張るさ。」

「……諦めたほうが良いと思うけどな。まぁいいや、おやすみ、アーク。明日の授業、サボるつもりはないからね。」

「あぁ、おやすみアシェ。」

チュッと頬におやすみのキスを貰ったので、アシェルもお返しをして瞼を閉じる。
暖かな腕の中は居心地が良く、すぐに睡魔は訪れた。




アークエイドは腕の中で、すぅすぅと無防備な寝顔を見せるアシェルを見つめる。

学院祭の論文発表や素材に没頭するアシェルの世界は、アークエイド達と違う世界が見えていると思っても、それは思考や発想が違うからこその違う世界だと思っている。
知識に貪欲な上に、アシェルは恐らく天才と呼ばれる類の人物だと。

だが、以前アークエイドがアシェルが女性であることを追求した時と、今日のあの瞳は一体どこを見ていたのだろうか。
一瞬で感情——アシェルの言う色が抜け落ちた瞳は、何も映していないのだ。

目の前にいるのに、アシェルが消えてしまいそうな錯覚さえ覚える。

アシェルにあまり“思い出”は思い出させない方が良いのかもしれない。
アークエイドには何がきっかけで、あの何も映さない瞳になってしまうのかが分からないから。

アークエイドは愛しい人の額にチュッと口付けし、瞼を閉じた。
腕の中の温もりを感じ、確かにアシェルはここに居るのだと思いながら眠りに落ちた。
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