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第一章 非公式お茶会
38 王都組最後の非公式お茶会②
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Side:アークエイド12歳 冬
今日は王都組の集まる、最後の非公式お茶会だ。
何故か秋のお茶会以上にある差し入れのカードを書き写していると、個人から複数人へ個別に包まれていた。
その内容もインクが断トツで多く、ノート、修正液と文具が目立つ。
そしてその宛名も、王都組四人だけでなく、辺境組四人の名前まで書かれている。
茶菓子の量はいつもに比べ、かなり控えめだ。
何事かと思っていたが、やっぱり仕掛け人はアシェルだった。
仕分けをしながら薄々気づいてはいたのだ。
数人なら分かるが、今回はほとんど全員から文具が贈られている上に、もう学院に入学しているご令嬢から贈られたものまであった。
毎回ある程度破棄することになる菓子類のことを思うと、これからよく使うことになる消耗品というのは都合がいいが、よくご令嬢達が納得したものだと思う。
大体は形として残るものを贈りたがるのではないだろうか。
と、思ったのだが、それもアシェルが口先だけで何とかしていた。
最近は朝の差し入れ現場を見に行ってないが、多分アシェルはご令嬢達に約束させたのではないかと思う。
理由をきっちり説明したうえで、あの甘い声と綺麗なマスクで約束させられたご令嬢が約束を破ったところをみたことがない。
アシェルは約束を破られるのが嫌いなので、ご令嬢達も気を付けているのだろう。
——相変わらず女性を掌の上で転がすのが上手すぎる。
こんな調子で王立学院に入学することを考えると、頭が痛い。
兄上達から聞いたところによると、朝の差し入れを行っていたご令嬢達を中心にファンクラブができているという。
アシェルの兄達含め、三兄弟に対するファンクラブだ。
長男が三男と入れ替わりで卒業してしまうのを、ファンに嘆かれていると聞いた。
アシェルが三男ではなく長女だと知っている人間は少ない。
少ないのはライバルが減って良いことだと思うのに、男のライバルではなく、無駄に女のライバルが増えていっている気がするのは気のせいだろうか。
学院に入るまでの二か月の間にどうにかして会えないか、誘ってみるのもいいかもしれない。
アシェルにグレイ兄上への卒業プレゼントを聞かれたが、タイミングが良かったので元々婚約祝いとして贈るつもりだった侍女をまとめてプレゼントということにするつもりでいた。
不思議そうな顔をされたが、お相手はシルコット辺境伯爵家の次女、シルフィード・シルコット嬢だ。
兄上がアプローチを始めた時から、近い年頃の者を孤児院から引き取り、王太子妃に仕えることができるように教育を始めたのだ。
シルフィード嬢の人柄も問題なさそうなので、贈る侍女とも上手く折り合いをつけてくれると思う。
アシェルとメルティーは悩んだ末にプレゼントを決めたが、恐らくあの長兄は何を貰っても喜ぶに違いない。
昼食が終わると、エラートとマリクは元気に外に駆け出して行った。
上着も着ずに出て行ったが寒くないのだろうか。慌てて侍女達も足早に追いかけていく。
アシェルはいつも通り書庫に籠るのかと思ったら、外套を羽織って外に出る準備をしていた。
「今日は外に出るのか?」
「うん。長年通った離宮だけど、今日で見納めでしょ。せっかくだから、ゆっくり敷地内を見て回りたいなって。」
なるほど。確かに普通であれば、王宮の敷地内は勝手にうろうろできるものではない。
アシェルが散歩に行くのならば、アークエイドが一人で書庫に居ても意味はないのでついていくことにする。
「そうか……一緒に行ってもいいか?」
断られないだろうとは思いつつも、一応問いかけてみる。
「僕は別に構わないけど、アークからしたら珍しいものじゃないでしょ?」
「構わないなら準備する。ちょっと待ってくれ。」
予想通りの答えを貰い、侍女に上着と外套を着せて貰った。
「待たせたな。」
「いうほど待ってないよ。それじゃのんびり周ろうか。」
そう言ったアシェルが左手を差し出して一拍の後、慌てて引っ込めた。
「ごめん、ついメルと庭を散歩する時の気分で。」
癖でごめんねと謝っているが、先程すぐに手を取らなかったことが悔やまれる。
だが、右手を繋ぐのは駄目だ。
咄嗟の時に右手が使えないのは困る。
そう思って左手を差し出してみる。
その手を見て困惑した様子のアシェル。
「手……繋いでいくの?」
「その方が温かいだろ。」
もっともらしい理由をつけてみる。夏じゃなくてよかった。
「僕冷え性だよ?流石に申し訳ないよ。」
さらっと断られたが、手を繋ぎたくないからではないらしい。
有無を言わせずその手を取れば、ひんやりした感触と握り返してくる力を感じる。
「それならなおさらだ。いくぞ。」
「ん、ありがと。」
二人で手を繋いで庭へ出る。
庭に出てすぐの芝生が広がる草原エリアでは、エラートとマリクが警備の騎士まで巻き込んで模擬戦をやっていた。
毎年毎月のように繰り返されている光景に、声はかけずにそのまま通り過ぎていった。
そのまま歩いて、今度は庭園エリアに入る。
庭師が手入れをしてくれていて、冬でも目につくように咲き誇る花が植わっている。
「冬でもこれだけ楽しめる庭園って凄いよね。」
アシェルの感心したような声に「そうか?」と返せば、表情が少し暗くなったり明るくなったり、忙しそうにしながら話してくれる。
「我が家はこんなに緑も花も残ってないよ。特にハーブ園の方は、冬は結構寂しいかなぁ。あ、でも地上の葉っぱが枯れてたように見えても、春になると一斉に芽吹くから、その時はちょっとわくわくするかな。植物の生命力って凄いなって思うよ。」
「それは一度見てみたいものだな。」
「ふふ、機会があったら見においでよ。壮観だからさ。」
アシェルのいう春とはいつだろうか。早ければ学院に入る前に見せてもらえたらいいなと思う。
帰りの時間までにいい誘い文句が思い浮かばなければ、邸に招待してもらうよう伝えてみよう。
ゆったりと歩きながらアシェルは、庭園にある植物を見て色々な話をしてくれる。
その知識や薬学に対する熱をわくわくと良い笑顔で話され、いつまでもその笑顔を見ていたいと思ってしまう。
楽しそうなアシェルの姿を見ながら、隅々まで庭園エリアを見て回ったあとは森林エリアへ踏み込んだ。
細い小道がL字で、庭園エリアから北西の離宮へ繋がるように伸びている。
冬でも空を覆うように葉が茂っているため、森林エリアは木陰になっている。
陽射しを感じなくなった瞬間、アシェルの身体が一瞬ぶるっと震えた。
「寒いか?」
「ん、ちょっとだけ。でも手が温かいから大丈夫だよ。」
本当に寒かったのは一瞬だけのようで、笑顔でギュッと手を握りこんでくれる。
「そうか。」
そのまま二人で小道に沿ってのんびり歩き、森林エリアの中ほどまで来た。
(ここは……。)
去年の秋にアシェルとリリアーデが、少し奥まったところで唇を重ねていたところだった。
思わず立ち止まってしまい、それに気付かず歩みを進めたアシェルを引っ張るような形になってしまう。
振り返ったシェルの顔には疑問符が浮かんでいる。
何も言わずに急に立ち止まれば、誰でも不思議に思うだろう。
「ここ。」
「どうしたの?」
「リリィとキスしてただろ?」
覗き見してしまったことを言うつもりはなかったのに、現場を見てしまうと言ってしまいたくなった。
何を考えているのか慌てているアシェルを横目に、アークエイドは言葉を続けた。
「俺が見たのは何か話して、リリィとキスを始めたところまでだ。後からデュークに聞いたが、リリィは潜在消費を起こしてたらしいな。」
事情は後から聞いたが、あの光景を目撃した時のショックは大きかった。
小道から逸れている場所に二人で居るなと思ったら、リリアーデを逃げれないように囲って抱き寄せた上で口づけをしたのだ。
唇を離した後は、更に濃厚な舌を絡めるキスだった。
アシェルの表情は見えなかったが蕩けたリリアーデの表情が見え、覗き見するものではないと思いその場を離れた。
しかしデュークから事情を聴くまでは、腹の奥底にどろどろとした嫉妬が渦巻いていて、やり場のない怒りが溢れてしまいそうだった。
俺の独占欲に性別や友人かなどは関係ないらしい。
「あーうん。待って。え、本当に見てたの?キスシーンを幼馴染に見られてたって、知りたくなかったかも。恥ずかしすぎるんだけど。」
早口で捲し立てるアシェルは、顔を真っ赤にして左手で覆ってしまった。
そのあまりにも可愛い姿に、くくっと笑いが零れる。
「普段から恥ずかしいセリフを言ってのけるアシェでも、それは恥ずかしがるんだな。」
「ちょっと、人を何だと思ってるのさ。」
「女ったらしだろ?」
「えー最近言われなくなって、ほっとしてたのになぁ。」
「言わなくても、皆そう思ってるだけだ。」
「うわー酷い。」
冗談を言い合うように掛け合いをしながら、お互いクスクス笑い合った。
ひとしきり笑ったあと、アシェルのキスシーンを思い出し桜色の唇をじっと見つめる。
右手をその細い顎の下に添え、くいっと軽く上げてやれば目線が合う。
初めて会った頃は少しアシェルの方が高いくらいだったのに、いつの間にか背丈は追い抜いてしまった。
親指でそっと唇を撫でれば、小さく「あ、アーク……?」と呟かれ吐息を感じる。
「……し慣れてそうだったな。キス。」
「そう……かな?」
柔らかい唇を撫でながら問えば、何とも言えない答えが返ってくる。
どう見ても経験者。それも、かなり遊び慣れているように感じた。
前世がどうこうという話をしていたので、もしかしたら経験豊富なのだろうか。
ここには居ない人間に、しても仕方ない嫉妬をしてしまう。
二人の間に沈黙が流れた。
アシェルの唇の柔らかさを堪能するように撫でたり、ふにふにと押してみたりするが、相変わらずこういった手を振り払う気配はない。
「今までにも誰かとキスしたことがあるのか?」
「まさか。リリィがファーストキスだよ。……それにあれは治療だから、ファーストキスに数えていいのかも分からないくらいだし。」
そうか、リリアーデとのキスが初めてなのか。
治療がキスというのも変な話だが相手が女性だっただけ、まだ救いがあるのだろうか。
男相手のファーストキスは、俺がしたいと思った。
本当は今この場で、この柔らかい唇を奪ってしまいたい衝動を抑え、顎に添えた手を離した。
「そうか。」
「うん。」
未練を振り払うために歩き出せば、手を繋いだアシェルも隣に寄ってきて、一緒に歩いてくれる。
今はまだこの距離感だが、いつになったら好きと伝え、その白い肌に心置きなく触ることが出来るようになるだろうか。
そんなことを考えながら歩いた。
森林エリアを抜けて南下すると、王宮と離宮を繋ぐ渡り廊下に行き当たる。
視界の端に映った一人の男を無視して、さっさと離宮の方へ歩みを進めたのに、背後から声がかかる。
「これはこれは、アークエイド殿下。ご友人と仲良くお散歩ですかな。」
流石に無視するわけにもいかず振り向けば、副宰相のウォレン侯爵が立っている。
隣で慌てて手を離そうとするアシェルを逃がしたくなくて、逆に握りこんだ。
せっかくアシェルと一緒に居るのを邪魔されたくなかったのにと、少しイラっとしてしまう。
「……ウォレン侯爵殿。本日の執務は?」
「勿論仕事中ですよ。女王陛下への伝言を伝えに来ただけですので。」
「副宰相殿がわざわざか。」
何しに来たんだという嫌味を込めて言えば、何事もなかったかのように躱される。
「他に手空きの者がおりませんでしたからな。……ところで、殿下。隣の彼を紹介してはいただけないのですかね。」
ウォレン侯爵が、アシェルを値踏みするように見ている。
今すぐアシェルを連れて逃げ出したいほど嫌な気分だが、紹介してくれと言われてしないわけにもいかなかった。
「……友人のアシェル殿だ。」
そう言ってパッとアシェルの手を離す。
礼をとるにあたり手を繋いだままでは無理だからだが、あともう少し手を繋いで歩けたのにと名残惜しく感じる。
「ただいま殿下の紹介に預かりました。メイディー公爵の子、アシェルと申します。以後お見知りおき下さい。」
「ほぉ。私はイヴェール・ウォレン、侯爵を名乗らせていただいている。王宮で副宰相をさせていただいているよ。アシェル殿の話は、うちの娘からよく聞いているよ。ミリアリア・ウォレンと言えば覚えがあるかな?」
「ウォレン嬢の父君でしたか。お嬢様には大変お世話になりましたのに、ご挨拶が遅くなってしまって申し訳ありません。学院に入られたご息女は息災でしょうか?」
「毎月楽しみにしていた時間が無くなって、嘆いておりましたよ。そうだ、良かったらお二人を食事に招待したいのですが、いかがでしょうか?」
二人が表面上の笑顔で会話をしていたが、不意に話を振られた。
背を向けた相手をわざわざ呼び止めたのはこの誘いが本命かと、少し思案し口を開いた。
「この場にいるのは公けにはしていない。ホームパーティーへの誘いなら、それぞれの家へ手紙を出してくれ。」
もっともらしい言い訳を述べるが、ウォレン侯爵は首を振る。
「おぉ、言葉が足りませんでしたな。我が家への招待ではなく、我が家の運営するレストランへご招待したいのですよ。」
「……レストランへ?」
「えぇ。お二人だけで食事ができるように個室を用意させていただきますし、お食事代もこちらが負担しますので、お気になさらずに食事をしていただきたいのです。」
てっきり侯爵やその娘との食事だと思っていたのに、こちらに都合の良すぎる予想外の内容に、何を望んでいるのか探りを入れる。
「ウォレン侯爵のメリットがないな。」
「いえ、ただ提供するだけではなく、食事のあとアンケートにお答えいただきたいのですよ。是非、うちのレストランのサービスが高位貴族の方にも通用するのか。もし悪い点があればご指摘いただいて、サービスの改善に努めたいのです。」
全く動じた様子のないまま、ウォレン侯爵はレストランへ二人を招くことのメリットを並べる。
確かに王族と公爵子息からの視点では、所作やマナーなど求めるレベルは変わってくるが、そこまで重視するだろうか。
だが、本当にアンケートとサービスの向上だけが目的であれば、アシェルと出かける口実にもなるので悪くはない話だった。
念のため釘を刺しておく。
「アンケートに答えるのは問題ない。だが、これを理由に優遇することもなければ、そこから繋がる縁ができるわけでもない。それでもいいんだな?」
「もちろんです。貴重なご意見を聴ける機会ですので、是非お越しいただきたい。」
「アシェ。一緒に食事に行ってくれるか?勿論断ってくれても構わないが。」
言質をとれば、あとはアシェルの意思だけだ。
命令にならないように気を付けてアシェルに問いかける。
「ウォレン侯爵のご厚意に感謝します。どれほど参考になるかわかりませんが、是非ご協力させていただければと思います。」
アシェルが話を受けてくれてほっとする。
これで一緒に出掛けられそうだ。
「そうですか!ありがとうございます。店の詳細については後程、殿下へお伝えさせていただきますね。お二人でご都合の良い日時を教えて頂けましたら、こちらで店の方へは連絡しますので。」
「分かった。用件はそれだけか?」
「はい、お時間を頂きありがとうございました。」
「失礼する。」
ぺこりと頭を下げるウォレン侯爵に背を向け、離宮へと戻った。
サロンの入り口に近づいてきた頃、不安気なアシェルが口を開く。
「ねぇ、アーク。食事会引き受けて大丈夫だった?」
「どちらでもいいと思ったからアシェに聞いたんだ。問題ない。」
内心は引き受けてくれて嬉しいとは伝えられない。
ほっと表情を緩めたアシェルも可愛い。
「そっか、ならよかったよ。」
「日時を決めてしまいたいが……少し待っててくれ。母上に報告だけはしておく。」
「うん、分かった。」
サロンに入り外套と上着を侍女に預け、母上に事の次第を話す。
事後報告については特に何も言われなかった。
逆に食事会の話を楽しみにしているわ、と言われたが、普段王宮内で顔を合わせる事なんてないだろう。が、恐らく呼び出されるんだろうなと、先のことを考えると少し気が重くなった。
今日は王都組の集まる、最後の非公式お茶会だ。
何故か秋のお茶会以上にある差し入れのカードを書き写していると、個人から複数人へ個別に包まれていた。
その内容もインクが断トツで多く、ノート、修正液と文具が目立つ。
そしてその宛名も、王都組四人だけでなく、辺境組四人の名前まで書かれている。
茶菓子の量はいつもに比べ、かなり控えめだ。
何事かと思っていたが、やっぱり仕掛け人はアシェルだった。
仕分けをしながら薄々気づいてはいたのだ。
数人なら分かるが、今回はほとんど全員から文具が贈られている上に、もう学院に入学しているご令嬢から贈られたものまであった。
毎回ある程度破棄することになる菓子類のことを思うと、これからよく使うことになる消耗品というのは都合がいいが、よくご令嬢達が納得したものだと思う。
大体は形として残るものを贈りたがるのではないだろうか。
と、思ったのだが、それもアシェルが口先だけで何とかしていた。
最近は朝の差し入れ現場を見に行ってないが、多分アシェルはご令嬢達に約束させたのではないかと思う。
理由をきっちり説明したうえで、あの甘い声と綺麗なマスクで約束させられたご令嬢が約束を破ったところをみたことがない。
アシェルは約束を破られるのが嫌いなので、ご令嬢達も気を付けているのだろう。
——相変わらず女性を掌の上で転がすのが上手すぎる。
こんな調子で王立学院に入学することを考えると、頭が痛い。
兄上達から聞いたところによると、朝の差し入れを行っていたご令嬢達を中心にファンクラブができているという。
アシェルの兄達含め、三兄弟に対するファンクラブだ。
長男が三男と入れ替わりで卒業してしまうのを、ファンに嘆かれていると聞いた。
アシェルが三男ではなく長女だと知っている人間は少ない。
少ないのはライバルが減って良いことだと思うのに、男のライバルではなく、無駄に女のライバルが増えていっている気がするのは気のせいだろうか。
学院に入るまでの二か月の間にどうにかして会えないか、誘ってみるのもいいかもしれない。
アシェルにグレイ兄上への卒業プレゼントを聞かれたが、タイミングが良かったので元々婚約祝いとして贈るつもりだった侍女をまとめてプレゼントということにするつもりでいた。
不思議そうな顔をされたが、お相手はシルコット辺境伯爵家の次女、シルフィード・シルコット嬢だ。
兄上がアプローチを始めた時から、近い年頃の者を孤児院から引き取り、王太子妃に仕えることができるように教育を始めたのだ。
シルフィード嬢の人柄も問題なさそうなので、贈る侍女とも上手く折り合いをつけてくれると思う。
アシェルとメルティーは悩んだ末にプレゼントを決めたが、恐らくあの長兄は何を貰っても喜ぶに違いない。
昼食が終わると、エラートとマリクは元気に外に駆け出して行った。
上着も着ずに出て行ったが寒くないのだろうか。慌てて侍女達も足早に追いかけていく。
アシェルはいつも通り書庫に籠るのかと思ったら、外套を羽織って外に出る準備をしていた。
「今日は外に出るのか?」
「うん。長年通った離宮だけど、今日で見納めでしょ。せっかくだから、ゆっくり敷地内を見て回りたいなって。」
なるほど。確かに普通であれば、王宮の敷地内は勝手にうろうろできるものではない。
アシェルが散歩に行くのならば、アークエイドが一人で書庫に居ても意味はないのでついていくことにする。
「そうか……一緒に行ってもいいか?」
断られないだろうとは思いつつも、一応問いかけてみる。
「僕は別に構わないけど、アークからしたら珍しいものじゃないでしょ?」
「構わないなら準備する。ちょっと待ってくれ。」
予想通りの答えを貰い、侍女に上着と外套を着せて貰った。
「待たせたな。」
「いうほど待ってないよ。それじゃのんびり周ろうか。」
そう言ったアシェルが左手を差し出して一拍の後、慌てて引っ込めた。
「ごめん、ついメルと庭を散歩する時の気分で。」
癖でごめんねと謝っているが、先程すぐに手を取らなかったことが悔やまれる。
だが、右手を繋ぐのは駄目だ。
咄嗟の時に右手が使えないのは困る。
そう思って左手を差し出してみる。
その手を見て困惑した様子のアシェル。
「手……繋いでいくの?」
「その方が温かいだろ。」
もっともらしい理由をつけてみる。夏じゃなくてよかった。
「僕冷え性だよ?流石に申し訳ないよ。」
さらっと断られたが、手を繋ぎたくないからではないらしい。
有無を言わせずその手を取れば、ひんやりした感触と握り返してくる力を感じる。
「それならなおさらだ。いくぞ。」
「ん、ありがと。」
二人で手を繋いで庭へ出る。
庭に出てすぐの芝生が広がる草原エリアでは、エラートとマリクが警備の騎士まで巻き込んで模擬戦をやっていた。
毎年毎月のように繰り返されている光景に、声はかけずにそのまま通り過ぎていった。
そのまま歩いて、今度は庭園エリアに入る。
庭師が手入れをしてくれていて、冬でも目につくように咲き誇る花が植わっている。
「冬でもこれだけ楽しめる庭園って凄いよね。」
アシェルの感心したような声に「そうか?」と返せば、表情が少し暗くなったり明るくなったり、忙しそうにしながら話してくれる。
「我が家はこんなに緑も花も残ってないよ。特にハーブ園の方は、冬は結構寂しいかなぁ。あ、でも地上の葉っぱが枯れてたように見えても、春になると一斉に芽吹くから、その時はちょっとわくわくするかな。植物の生命力って凄いなって思うよ。」
「それは一度見てみたいものだな。」
「ふふ、機会があったら見においでよ。壮観だからさ。」
アシェルのいう春とはいつだろうか。早ければ学院に入る前に見せてもらえたらいいなと思う。
帰りの時間までにいい誘い文句が思い浮かばなければ、邸に招待してもらうよう伝えてみよう。
ゆったりと歩きながらアシェルは、庭園にある植物を見て色々な話をしてくれる。
その知識や薬学に対する熱をわくわくと良い笑顔で話され、いつまでもその笑顔を見ていたいと思ってしまう。
楽しそうなアシェルの姿を見ながら、隅々まで庭園エリアを見て回ったあとは森林エリアへ踏み込んだ。
細い小道がL字で、庭園エリアから北西の離宮へ繋がるように伸びている。
冬でも空を覆うように葉が茂っているため、森林エリアは木陰になっている。
陽射しを感じなくなった瞬間、アシェルの身体が一瞬ぶるっと震えた。
「寒いか?」
「ん、ちょっとだけ。でも手が温かいから大丈夫だよ。」
本当に寒かったのは一瞬だけのようで、笑顔でギュッと手を握りこんでくれる。
「そうか。」
そのまま二人で小道に沿ってのんびり歩き、森林エリアの中ほどまで来た。
(ここは……。)
去年の秋にアシェルとリリアーデが、少し奥まったところで唇を重ねていたところだった。
思わず立ち止まってしまい、それに気付かず歩みを進めたアシェルを引っ張るような形になってしまう。
振り返ったシェルの顔には疑問符が浮かんでいる。
何も言わずに急に立ち止まれば、誰でも不思議に思うだろう。
「ここ。」
「どうしたの?」
「リリィとキスしてただろ?」
覗き見してしまったことを言うつもりはなかったのに、現場を見てしまうと言ってしまいたくなった。
何を考えているのか慌てているアシェルを横目に、アークエイドは言葉を続けた。
「俺が見たのは何か話して、リリィとキスを始めたところまでだ。後からデュークに聞いたが、リリィは潜在消費を起こしてたらしいな。」
事情は後から聞いたが、あの光景を目撃した時のショックは大きかった。
小道から逸れている場所に二人で居るなと思ったら、リリアーデを逃げれないように囲って抱き寄せた上で口づけをしたのだ。
唇を離した後は、更に濃厚な舌を絡めるキスだった。
アシェルの表情は見えなかったが蕩けたリリアーデの表情が見え、覗き見するものではないと思いその場を離れた。
しかしデュークから事情を聴くまでは、腹の奥底にどろどろとした嫉妬が渦巻いていて、やり場のない怒りが溢れてしまいそうだった。
俺の独占欲に性別や友人かなどは関係ないらしい。
「あーうん。待って。え、本当に見てたの?キスシーンを幼馴染に見られてたって、知りたくなかったかも。恥ずかしすぎるんだけど。」
早口で捲し立てるアシェルは、顔を真っ赤にして左手で覆ってしまった。
そのあまりにも可愛い姿に、くくっと笑いが零れる。
「普段から恥ずかしいセリフを言ってのけるアシェでも、それは恥ずかしがるんだな。」
「ちょっと、人を何だと思ってるのさ。」
「女ったらしだろ?」
「えー最近言われなくなって、ほっとしてたのになぁ。」
「言わなくても、皆そう思ってるだけだ。」
「うわー酷い。」
冗談を言い合うように掛け合いをしながら、お互いクスクス笑い合った。
ひとしきり笑ったあと、アシェルのキスシーンを思い出し桜色の唇をじっと見つめる。
右手をその細い顎の下に添え、くいっと軽く上げてやれば目線が合う。
初めて会った頃は少しアシェルの方が高いくらいだったのに、いつの間にか背丈は追い抜いてしまった。
親指でそっと唇を撫でれば、小さく「あ、アーク……?」と呟かれ吐息を感じる。
「……し慣れてそうだったな。キス。」
「そう……かな?」
柔らかい唇を撫でながら問えば、何とも言えない答えが返ってくる。
どう見ても経験者。それも、かなり遊び慣れているように感じた。
前世がどうこうという話をしていたので、もしかしたら経験豊富なのだろうか。
ここには居ない人間に、しても仕方ない嫉妬をしてしまう。
二人の間に沈黙が流れた。
アシェルの唇の柔らかさを堪能するように撫でたり、ふにふにと押してみたりするが、相変わらずこういった手を振り払う気配はない。
「今までにも誰かとキスしたことがあるのか?」
「まさか。リリィがファーストキスだよ。……それにあれは治療だから、ファーストキスに数えていいのかも分からないくらいだし。」
そうか、リリアーデとのキスが初めてなのか。
治療がキスというのも変な話だが相手が女性だっただけ、まだ救いがあるのだろうか。
男相手のファーストキスは、俺がしたいと思った。
本当は今この場で、この柔らかい唇を奪ってしまいたい衝動を抑え、顎に添えた手を離した。
「そうか。」
「うん。」
未練を振り払うために歩き出せば、手を繋いだアシェルも隣に寄ってきて、一緒に歩いてくれる。
今はまだこの距離感だが、いつになったら好きと伝え、その白い肌に心置きなく触ることが出来るようになるだろうか。
そんなことを考えながら歩いた。
森林エリアを抜けて南下すると、王宮と離宮を繋ぐ渡り廊下に行き当たる。
視界の端に映った一人の男を無視して、さっさと離宮の方へ歩みを進めたのに、背後から声がかかる。
「これはこれは、アークエイド殿下。ご友人と仲良くお散歩ですかな。」
流石に無視するわけにもいかず振り向けば、副宰相のウォレン侯爵が立っている。
隣で慌てて手を離そうとするアシェルを逃がしたくなくて、逆に握りこんだ。
せっかくアシェルと一緒に居るのを邪魔されたくなかったのにと、少しイラっとしてしまう。
「……ウォレン侯爵殿。本日の執務は?」
「勿論仕事中ですよ。女王陛下への伝言を伝えに来ただけですので。」
「副宰相殿がわざわざか。」
何しに来たんだという嫌味を込めて言えば、何事もなかったかのように躱される。
「他に手空きの者がおりませんでしたからな。……ところで、殿下。隣の彼を紹介してはいただけないのですかね。」
ウォレン侯爵が、アシェルを値踏みするように見ている。
今すぐアシェルを連れて逃げ出したいほど嫌な気分だが、紹介してくれと言われてしないわけにもいかなかった。
「……友人のアシェル殿だ。」
そう言ってパッとアシェルの手を離す。
礼をとるにあたり手を繋いだままでは無理だからだが、あともう少し手を繋いで歩けたのにと名残惜しく感じる。
「ただいま殿下の紹介に預かりました。メイディー公爵の子、アシェルと申します。以後お見知りおき下さい。」
「ほぉ。私はイヴェール・ウォレン、侯爵を名乗らせていただいている。王宮で副宰相をさせていただいているよ。アシェル殿の話は、うちの娘からよく聞いているよ。ミリアリア・ウォレンと言えば覚えがあるかな?」
「ウォレン嬢の父君でしたか。お嬢様には大変お世話になりましたのに、ご挨拶が遅くなってしまって申し訳ありません。学院に入られたご息女は息災でしょうか?」
「毎月楽しみにしていた時間が無くなって、嘆いておりましたよ。そうだ、良かったらお二人を食事に招待したいのですが、いかがでしょうか?」
二人が表面上の笑顔で会話をしていたが、不意に話を振られた。
背を向けた相手をわざわざ呼び止めたのはこの誘いが本命かと、少し思案し口を開いた。
「この場にいるのは公けにはしていない。ホームパーティーへの誘いなら、それぞれの家へ手紙を出してくれ。」
もっともらしい言い訳を述べるが、ウォレン侯爵は首を振る。
「おぉ、言葉が足りませんでしたな。我が家への招待ではなく、我が家の運営するレストランへご招待したいのですよ。」
「……レストランへ?」
「えぇ。お二人だけで食事ができるように個室を用意させていただきますし、お食事代もこちらが負担しますので、お気になさらずに食事をしていただきたいのです。」
てっきり侯爵やその娘との食事だと思っていたのに、こちらに都合の良すぎる予想外の内容に、何を望んでいるのか探りを入れる。
「ウォレン侯爵のメリットがないな。」
「いえ、ただ提供するだけではなく、食事のあとアンケートにお答えいただきたいのですよ。是非、うちのレストランのサービスが高位貴族の方にも通用するのか。もし悪い点があればご指摘いただいて、サービスの改善に努めたいのです。」
全く動じた様子のないまま、ウォレン侯爵はレストランへ二人を招くことのメリットを並べる。
確かに王族と公爵子息からの視点では、所作やマナーなど求めるレベルは変わってくるが、そこまで重視するだろうか。
だが、本当にアンケートとサービスの向上だけが目的であれば、アシェルと出かける口実にもなるので悪くはない話だった。
念のため釘を刺しておく。
「アンケートに答えるのは問題ない。だが、これを理由に優遇することもなければ、そこから繋がる縁ができるわけでもない。それでもいいんだな?」
「もちろんです。貴重なご意見を聴ける機会ですので、是非お越しいただきたい。」
「アシェ。一緒に食事に行ってくれるか?勿論断ってくれても構わないが。」
言質をとれば、あとはアシェルの意思だけだ。
命令にならないように気を付けてアシェルに問いかける。
「ウォレン侯爵のご厚意に感謝します。どれほど参考になるかわかりませんが、是非ご協力させていただければと思います。」
アシェルが話を受けてくれてほっとする。
これで一緒に出掛けられそうだ。
「そうですか!ありがとうございます。店の詳細については後程、殿下へお伝えさせていただきますね。お二人でご都合の良い日時を教えて頂けましたら、こちらで店の方へは連絡しますので。」
「分かった。用件はそれだけか?」
「はい、お時間を頂きありがとうございました。」
「失礼する。」
ぺこりと頭を下げるウォレン侯爵に背を向け、離宮へと戻った。
サロンの入り口に近づいてきた頃、不安気なアシェルが口を開く。
「ねぇ、アーク。食事会引き受けて大丈夫だった?」
「どちらでもいいと思ったからアシェに聞いたんだ。問題ない。」
内心は引き受けてくれて嬉しいとは伝えられない。
ほっと表情を緩めたアシェルも可愛い。
「そっか、ならよかったよ。」
「日時を決めてしまいたいが……少し待っててくれ。母上に報告だけはしておく。」
「うん、分かった。」
サロンに入り外套と上着を侍女に預け、母上に事の次第を話す。
事後報告については特に何も言われなかった。
逆に食事会の話を楽しみにしているわ、と言われたが、普段王宮内で顔を合わせる事なんてないだろう。が、恐らく呼び出されるんだろうなと、先のことを考えると少し気が重くなった。
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その間、実家に帰ってきたお姉様を目当てに、ビトイはやって来た。
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★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
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