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第一学年 第一学期

10 せっかく仲直りしたのに悪役令嬢に目をつけられてしまった。【桜SIDE】

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「──デュナミス!」
「っ、うわ、」

 思いっきり、デュナミスを抱きしめる。デュナミスは挙動不審だ。
 
「あ、忘れてた。抱きしめていい? デュナミス?」
「だ、抱きしめてからいうヤツがあるか! 全くもう、君というやつは……」

 デュナミスは私の背中に腕を回し、ため息を吐く。

「君と過ごすこれからの学園生活は随分と退屈しなさそうな気がするよ」
「あはは。私と友達になって、デュナミス!」
「……あぁ。勿論だ。自分の妖精にあんなに本心を晒されてしまってはな」

 そう言うとデュナミスは固まってしまっている女の人達に目を向けた。

「そういうわけなんだ。すまない君達。君達の好意は嬉しいのだが、私は、サクラと友人になりたいんだ。黙って見守ってくれると嬉しい。……もしサクラに手を出したら君達でも容赦はしないぞ」
「……あ、……あ……、」

 彼女達はとてもショックを受けているようだ。ひとまず放っておいた方がいいだろう。
 そうして私がデュナミスの手を引いてやっと部屋に向かおうとすると、また誰かが私達の正面から歩いてくる。
 その人は──紫色の宝石であり、蓮の想い人──リリス・イム・ミルファイアだった。
 私とデュナミスは再び足を止めることになった。後ろから、女の人達が息を呑む音が聞こえる。

「──何の騒ぎですの?」
「あ、あぁ……り、リリス様……!!」

 リリスは私とデュナミスをジロジロ見ると、目を細めた。デュナミスが随分緊張している。

「貴女は確か編入生の方でしたわね。ご入学おめでとう。進学パーティーではご挨拶できませんでしたけれど」
「り、リリス様……も、申し訳ありません! この子にはリリス様にちゃんとご挨拶するように、私が教えてなかったのです。私の責任です」
「デュナミスさんがそうおっしゃるなら、これ以上は何も言いません」

 なるほど。今のはつまり「進学パーティーでは私に普通挨拶しに来るだろうボケ」っていう意味なのか。貴族語って難しいなぁ。私は大袈裟にリリスに頭を下げる。

「サクラと申します、リリス様。お初にお目にかかります」
「……そう、貴女はサクラ虫けらさんと言うのですね」
「!」

 こ、この人、今サクラって書いて虫けらって呼んだよね!? は、腹立つ~!
 でもリリスが典型的な悪役令嬢キャラでちょっと安心したかも。敵意をむき出しにされた方が、こちらも敵意で返せるし。

「……サクラさん、進学パーティーでは随分とレックス様の名前を連呼していたとか。彼は私の婚約者です。彼の魅力に勝手に引っかかるのは自由ですが、それをお忘れなきように」
「っ、」

 きぃいいいっ! ゲーム内ではそんなに腹立たなかったけど、こうやって面として言われるとすっごく腹立つ! なにこいつ~!!
  い、いやでも、王太子のことを好きな下民の私の方がこの世界では変な存在なのか。リリスは別に当たり前のことを言っているだけだ。
 冷静に行こう私。冷静に……。

「何の事だか分かりません。失礼します、リリス様」
「……生意気な子、」

 リリス様の横を通り過ぎる際、ポツリと彼女にそう言われる。
 私は「悪役令嬢乙」と心の中で呟きながら、デュナミスを連れて部屋に向かった。


***

00話見ているから分かると思うけれど、この後リリスたんが桜にちょっかいかける度に「※今はこんな態度だがこの悪役令嬢、この後結構あっさりデレるのである!!」ってテロップを心の目でつけていただけると面白くなりそうです。
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