24 / 51
24.路地での襲撃
しおりを挟む
ドワーフ達の工房で、僕とエミリア姉上は、昼過ぎまでエミ―と道具作りについて語り合った。
このまま話し続けると、エミ―の作業の邪魔になるということで、僕達は工房を後にした。
大通りを目指して細い路地を歩いていると、周囲から何やら気配を感じる。
違和感を察知した僕は、エミリア姉上の手を握って足を早めた。
「いきなり、早足になってどうしたの?」
「変な気配を感じる。姉上も気をつけて」
何度か路地の角を曲がって気配から逃げようとしたけど、違和感が消えない。
これはちょっとマズイかもと思い始めた時、路地の前から人影が現れた。
振り返って後ろを見ると、後ろからも人影が迫ってくる。
どうやら完全に囲まれたようだ。
冒険者風の男が、剣を構えて舌なめずりをする。
「へへへ、逃げようとしたってムダだぜ」
「お前達は何者だ?」
「思った通り、近くで見ると二人共、かなりの上玉だぜ。女の方は少し年齢が経っているが、仕込めば、夜が楽しみだ」
「私はまだ十六よ!」
エミリア姉上、怒るところは、そこじゃないから!
男達の様子から、こちらの話しを聞く耳はなさそうだ。
「大人しく捕まれよ。ガキ相手にムダな労力は使いたくないんだ」
「イアンは必ず私が守るんだから!」
そうエミリア姉上は叫びながら、頭上に向けて手を伸ばし、光魔法を放った。
爆発的な光が周囲に広がり、油断していた男達は光を見て、一瞬の内に目をやられ、悲鳴をあげて地面に転げまわる。
それと同時に僕は「暗殺者」の加護を開放して、身体を強化した脚を活かして、まだ呆然と立っている男達の背後へと回り、手刀で意識を刈り取った。
時間にして五分ほどで光は消え、細い路地には気絶した男達が倒れている。
僕達王家は幼少の頃から剣術、体術などの基礎訓練を叩きこまれ、今でも暇な時に王宮騎士団の兵士から指導を受けている。
それに、それぞれに固有の加護を持っているから、生半可な腕の者なら僕達を倒すことは難しい。
地面に倒れている男達に冷たい視線を送り、エミリア姉上が手をパンパンと叩く。
「これからどうするの?」
「襲われた理由も聞きたいし、このまま放置しておくこともできないね。とりあえず街の警備兵に来てもらうのが良さそうだね」
「わかったわ。私が呼んでくる」
エミリア姉上はニコリと笑うと、路地を大通りの方向へ走っていった。
あんなに勢いよく走っていかなくても、途中で転ばなければいいけど。
しばらく待っていると、エミリア姉上が警備兵を連れて戻ってきた。
警備兵達はキビキビと体を縄で縛り、平手打ちで男達の意識を取り戻させる。
そして縄を繋いで詰所へと連行していった。
このまま警備兵に任せてしまえばいいのだけど、なぜ襲われたのか理由を知らないと気持ちが悪いよね。
僕とエミリア姉上は話し合って、男達が連行された警備兵の詰所へ行くことにした。
詰所を訪ねると、先ほどとは違う警備兵が入口に立っていた。
「ここは兵の詰所だぞ。子供の来るような所ではない。さっさとどこかへ行け」
一般の警備兵が僕やエミリア姉上のことを知らないのは仕方がない。
僕は懐から王家の紋章を刻んだ短剣を取り出し、警備兵に見せる。
「僕の名はイアン・クリトニア。先ほど路地で僕達を襲った男達のことを知りたい。詰所の中へ入れてくれるかな?」
「その紋章は王家……まさかイアン殿下ですか。どうか先ほどの無礼をお許しください。私には病気の母親と、まだ幼い息子と娘がいます。どうか不敬罪だけはご勘弁を」
庶民が王家を愚弄することは、不敬罪で死刑となる。
警備兵がビビッて恐れ慄いても無理ないな。
「僕達のことを知らなかったのだからいいよ。それより中に入れてくれる?」
「はい、只今、お連れ致します」
詰所の中に一緒に入ると、警備兵は片手を広げて、同僚の警備兵に向けて叫んだ。
「イアン殿下が城より視察に来られた! 皆、無礼がないように!」
「俺、隊長に伝えてくる!」
一人の若い兵士が焦った表情で椅子から立ち上がり、脱兎のごとく詰所から出ていった。
なんだか予想と違って、大事になってきたぞ。
心の中でハラハラしていると、隣にいたエミリア姉上が僕の肩にポンと手を置く。
「警備兵達にしてみれば、王家が兵の詰所を訪れるなんて思ってもいない異例のことよ。大騒ぎになっても仕方ないわ。今回は諦めましょう」
「そ……そうだね……」
頭の中に、ローランド兄上と、 シルベルク宰相の怒った顏が目に浮かぶ。
城に戻ったら、素直に謝ろう。
警備兵に案内されて、階段をおりて地下室へ向かうと、ちょうど僕を襲った男達が、警備兵から尋問を受けていた。
全ての男達の尋問を終えると、調書を取っていた兵士が椅子から立ち上がり、胸に拳を当てて僕達に敬礼をする。
「殿下達の服装から、裕福な金持ちの子供と判断し、かどわかそうとしたようです。殿下達を襲った男達は人さらいの常習犯であることが判明いたしました。どうやら背後にいる「蜘蛛」の組織に子供達を売りさばいていたようです」
「蜘蛛」の組織!? そんな組織が王都にあるのか!
今まで聞いたこともないけど、いったいどんな組織なんだ?
このまま話し続けると、エミ―の作業の邪魔になるということで、僕達は工房を後にした。
大通りを目指して細い路地を歩いていると、周囲から何やら気配を感じる。
違和感を察知した僕は、エミリア姉上の手を握って足を早めた。
「いきなり、早足になってどうしたの?」
「変な気配を感じる。姉上も気をつけて」
何度か路地の角を曲がって気配から逃げようとしたけど、違和感が消えない。
これはちょっとマズイかもと思い始めた時、路地の前から人影が現れた。
振り返って後ろを見ると、後ろからも人影が迫ってくる。
どうやら完全に囲まれたようだ。
冒険者風の男が、剣を構えて舌なめずりをする。
「へへへ、逃げようとしたってムダだぜ」
「お前達は何者だ?」
「思った通り、近くで見ると二人共、かなりの上玉だぜ。女の方は少し年齢が経っているが、仕込めば、夜が楽しみだ」
「私はまだ十六よ!」
エミリア姉上、怒るところは、そこじゃないから!
男達の様子から、こちらの話しを聞く耳はなさそうだ。
「大人しく捕まれよ。ガキ相手にムダな労力は使いたくないんだ」
「イアンは必ず私が守るんだから!」
そうエミリア姉上は叫びながら、頭上に向けて手を伸ばし、光魔法を放った。
爆発的な光が周囲に広がり、油断していた男達は光を見て、一瞬の内に目をやられ、悲鳴をあげて地面に転げまわる。
それと同時に僕は「暗殺者」の加護を開放して、身体を強化した脚を活かして、まだ呆然と立っている男達の背後へと回り、手刀で意識を刈り取った。
時間にして五分ほどで光は消え、細い路地には気絶した男達が倒れている。
僕達王家は幼少の頃から剣術、体術などの基礎訓練を叩きこまれ、今でも暇な時に王宮騎士団の兵士から指導を受けている。
それに、それぞれに固有の加護を持っているから、生半可な腕の者なら僕達を倒すことは難しい。
地面に倒れている男達に冷たい視線を送り、エミリア姉上が手をパンパンと叩く。
「これからどうするの?」
「襲われた理由も聞きたいし、このまま放置しておくこともできないね。とりあえず街の警備兵に来てもらうのが良さそうだね」
「わかったわ。私が呼んでくる」
エミリア姉上はニコリと笑うと、路地を大通りの方向へ走っていった。
あんなに勢いよく走っていかなくても、途中で転ばなければいいけど。
しばらく待っていると、エミリア姉上が警備兵を連れて戻ってきた。
警備兵達はキビキビと体を縄で縛り、平手打ちで男達の意識を取り戻させる。
そして縄を繋いで詰所へと連行していった。
このまま警備兵に任せてしまえばいいのだけど、なぜ襲われたのか理由を知らないと気持ちが悪いよね。
僕とエミリア姉上は話し合って、男達が連行された警備兵の詰所へ行くことにした。
詰所を訪ねると、先ほどとは違う警備兵が入口に立っていた。
「ここは兵の詰所だぞ。子供の来るような所ではない。さっさとどこかへ行け」
一般の警備兵が僕やエミリア姉上のことを知らないのは仕方がない。
僕は懐から王家の紋章を刻んだ短剣を取り出し、警備兵に見せる。
「僕の名はイアン・クリトニア。先ほど路地で僕達を襲った男達のことを知りたい。詰所の中へ入れてくれるかな?」
「その紋章は王家……まさかイアン殿下ですか。どうか先ほどの無礼をお許しください。私には病気の母親と、まだ幼い息子と娘がいます。どうか不敬罪だけはご勘弁を」
庶民が王家を愚弄することは、不敬罪で死刑となる。
警備兵がビビッて恐れ慄いても無理ないな。
「僕達のことを知らなかったのだからいいよ。それより中に入れてくれる?」
「はい、只今、お連れ致します」
詰所の中に一緒に入ると、警備兵は片手を広げて、同僚の警備兵に向けて叫んだ。
「イアン殿下が城より視察に来られた! 皆、無礼がないように!」
「俺、隊長に伝えてくる!」
一人の若い兵士が焦った表情で椅子から立ち上がり、脱兎のごとく詰所から出ていった。
なんだか予想と違って、大事になってきたぞ。
心の中でハラハラしていると、隣にいたエミリア姉上が僕の肩にポンと手を置く。
「警備兵達にしてみれば、王家が兵の詰所を訪れるなんて思ってもいない異例のことよ。大騒ぎになっても仕方ないわ。今回は諦めましょう」
「そ……そうだね……」
頭の中に、ローランド兄上と、 シルベルク宰相の怒った顏が目に浮かぶ。
城に戻ったら、素直に謝ろう。
警備兵に案内されて、階段をおりて地下室へ向かうと、ちょうど僕を襲った男達が、警備兵から尋問を受けていた。
全ての男達の尋問を終えると、調書を取っていた兵士が椅子から立ち上がり、胸に拳を当てて僕達に敬礼をする。
「殿下達の服装から、裕福な金持ちの子供と判断し、かどわかそうとしたようです。殿下達を襲った男達は人さらいの常習犯であることが判明いたしました。どうやら背後にいる「蜘蛛」の組織に子供達を売りさばいていたようです」
「蜘蛛」の組織!? そんな組織が王都にあるのか!
今まで聞いたこともないけど、いったいどんな組織なんだ?
142
お気に入りに追加
1,782
あなたにおすすめの小説
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
【完結】悪気がないかどうか、それを決めるのは私です
楽歩
恋愛
「新人ですもの、ポーションづくりは数をこなさなきゃ」「これくらいできなきゃ薬師とは言えないぞ」あれ?自分以外のポーションのノルマ、夜の当直、書類整理、薬草管理、納品書の作成、次々と仕事を回してくる先輩方…。た、大変だわ。全然終わらない。
さらに、共同研究?とにかくやらなくちゃ!あともう少しで採用されて1年になるもの。なのに…室長、首ってどういうことですか!?
人見知りが激しく外に出ることもあまりなかったが、大好きな薬学のために自分を奮い起こして、薬師となった。高価な薬剤、効用の研究、ポーションづくり毎日が楽しかった…はずなのに…
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))中編くらいです。
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが
リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!?
※ご都合主義展開
※全7話
本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~
日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。
そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。
ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。
身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。
様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。
何があっても関係ありません!
私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます!
『本物の恋、見つけました』の続編です。
二章から読んでも楽しめるようになっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる