上 下
10 / 10

10

しおりを挟む
 


 

「なあなあ。今度は、仕事抜きで温泉来ようよ」 

「いいですね。色々探してみましょうか」 

 泡ぶろでの行為を皮切りに、幾度も交わり合った俺と紅葉乃さんは、疲れ切っているのに爽快な気分、という状態でふたり布団に寝転んで、次回への思いを馳せる。 

「どこがいいかなあ。ここみたいに、個室に温泉が付いているのがいいな、俺」 

「俺もです。人目を気にしなくていい所がいいですよね」 

 そんな会話をしながらも、指を絡めたり、髪を撫でたりし合う。 

 この時間が、俺はとても好きだ。 

 激しく求め合うのとはまた違う、穏やかな優しさに包まれた幸福。 

「あと、観光もしたい!」 

「俺は、泡ぶろをもっと堪能したいです」 

 それなのに、ついぽろっと出る本音。 

「え?」 

 真面目に旅行の話をしていた紅葉乃さんが、その俺の発言にきょとんとなった。 

「折角だったのに、余裕が無くて余り見られなかったから」 

「・・・・・」 

「『泡人間~』とか言ってた紅葉乃さん、すっごくエロ可愛かったのに、ほんの一瞬で食っちゃったのが悔やまれます」 

「いやいやいや。息吹きかけてくれちゃったりなんかしたりなんかしたよね?」 

「日本語おかしくなっていますよ」 

「それくらい動揺してんだよ!なんだよ、泡ぶろ堪能って!」 

「正確に言えば、泡ぶろで紅葉乃さんを堪能したいんです」 

 ここまでくれば、隠したって仕方ない。 

 俺は正直に己の欲望を口にした。 

「そんな凛々しい顔して言うことか?」 

「だって、この顔、紅葉乃さん好きでしょ?」 

 にやりと笑えば、紅葉乃さんがぽかぽかと俺を叩く。 

「ずるいぞ、そういうの。でもさ、泡ぶろってなら、別に旅行先でなくてもいいんじゃねえの?」 

 そういえば、と言い出した紅葉乃さんは、自分が墓穴を掘ったことを知らない。 

「じゃあ、今度は俺ん家の風呂でしましょう。あそこ、結構な広さがあるから」 

 今俺が住んでるマンションは、紅葉乃さんと付き合うようになって、かなり厳しい条件で探した物件だけあって、セキュリティも万全だし、プライベートも守られる。 

 それに何より、俺が紅葉乃さんとの妄想をあれこれ繰り広げ、その場に相応しいと選んだだけあって風呂がとにかくいい。 

 

 泡ぶろになんて、最適じゃないか。 

 

「え?鏡ん家で、って・・え?」 

 いつのまにか、泡ぶろが決定事項になっていて驚いている紅葉乃さん。 

「楽しみにしていますね。はい、指きり~」 

「うん?指きり~・・って、鏡!?」 

 驚いているうちに、俺につられて指きりして動揺しまくる。 

 そんな紅葉乃さんもめっちゃ可愛い、と俺は、目をくるくるさせる紅葉乃さんに、触れるだけのキスをした。 

 

 

了 

 

 

 

 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

真面目系上司が陽キャ系新入社員に突かれてアヘアヘする話♡

てと
BL
陽キャ系新入社員×真面目系上司。 ♡喘ぎと濁点喘ぎとんほぉ♡な内容のBLです。

『田中のおじさま♡』~今夜も愛しのおじさまと濃厚ラブえっち♡♡♡

そらも
BL
過去にとある出逢いを経て知り合った『本名さえもちゃんとわかってない』自分よりも三十二歳も年上のバツイチ絶倫変態スケベおじさまとの濃厚セックスに毎夜明け暮れている、自称平凡普通大学生くんの夜のお話♡ おじさまは大学生くんにぞっこんラブだし、大学生くんもハジメテを捧げたおじさまが大大大っだ~いすきでとってもラブラブな二人でございますぞ♪ 久しぶりの年上×年下の歳の差モノ♡ 全体的に変態ちっくですのでどうぞご注意を! ※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。 ※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ダメですお義父さん! 妻が起きてしまいます……

周防
BL
居候は肩身が狭い

男が痴漢されたなんていえないが、このままでは開発されちゃいます!

ルルオカ
BL
毎朝の登校で、電車に乗ってくる眩いスーツすがたの彼。 スーツフェチにはたまらず「なんとかお近づきに」と思っていたら、尻のほうがもぞもぞして・・・。 アダルトなBL短編です。R18。 BL小説「男が痴漢されたなんていえるか!」のおまけです。 元の小説は短編集の電子書籍で読めます。 電子書籍の詳細を知れるブログのリンクは↓にあります。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

処理中です...