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86話*

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 夕飯を食べたあと、友人達と少し話してから、自室に戻った。すでに風呂は沸いていたが、腹いっぱいなので、もうしばらく時間を置いた方が良いだろう。

 そう思いながらソファに座ろうとしたところ、金の触手が伸びてきて、身体を持ち上げられた。そうして俺を抱えた状態で、ソファに腰掛けるリュカ。じっと見つめれば額にキスされ、頭にすりすりと頬を寄せられる。

 謁見の間にて闇組織への処遇が決定した翌日から、リュカは多忙になり、俺達は朝から晩まで離れるようになった。だからか2人きりになると、すぐに抱き締めてくる。
 俺も離れていた時間を埋めたいし、彼に包まれてキスされるのは嬉しい。だがいつも先に行動されてしまうので、ちょっと悔しい。俺からも抱き締めてキスしたいのに、タイミングを計る時間すらくれないのだ。

 たまには抗議しようとグイグイ頭で押し返してみれば、リュカは顔を上げ、困ったように首を傾げてきた。

「ザガン? どうしたの?」

 声をかけてきた、その頬にキスをする。よし、満足した。コクコク頷けば、彼は驚いたように瞬きしたあと、ふふっと笑みを零す。

「ザガン可愛い。ねぇザガン、今日はどうだった? 出掛け先で、何か問題は無かった?」
「今日訪ねたところは人口1200人ほどの小さな村だったからか、闇属性の差別に対する意識は、あまり変わっていないようだった。魔物も1体もいなかったな。だがいつも通り、問題は無い」

 俺はこの4ヶ月、朝迎えに来てくれる女神リュヌと、フェンリル、ライトドラゴンと共に、国内のあちこちを訪問していた。
 女神達の目的は、2神が復活したことで国民達の意識がどう変化したか、および諸々の現地調査である。他にも何百組もの調査グループが形成され、それぞれに各地を訪問している。
 俺はそこに便乗させてもらおうと、女神に頼んだのだ。少しでも闇属性への差別を無くしたいから。

 ドラゴンの飛行スピードはペガサスより断然速く、王都から王国端まで3時間もあれば到着する。なので移動時間はあまり掛からないものの、ソレイユ王国は広大で、都市や町、村といった自治体は、3万以上もある。訪問先で仕事もしなければならない為、1日1ヶ所が限界だ。

 人口10万以上の都市に分類されている自治体では、流通が盛んなので情報が届きやすいし、100体は魔物が住んでいる。魔清を纏っているスピリット達が街を闊歩すれば、神ソレイユの復活を身近に感じずにはいられないだろう。それに都市では、魔物同伴の闇属性達も活動してくれているので、差別はおのずと減ってくれるはず。

 だが人口5千以下の、村に分類される自治体には、魔物が1人も住んでいない場合が多い。夜に月が浮かぶようになり、全国紙には2神復活および千年前の真実が掲載された。それでも実際に神の御前に立たなければ、国がどれほど変化しているか感じにくいものだ。

 なので村を訪れると、相変わらず差別される……どころではなく、ドラゴンやフェンリルの出現により、大混乱になる。王都や大都市から遠いところに住んでいる村人達にとっては、まだまだ物語や教科書にしか出てこないような、架空レベルの魔物である。
 そうして焦っているところに女神が思念によって話しかければ、必ず武器を捨ててひれ伏してきた。ほんの僅かな威圧だけでも頭を上げられなくなるのが、神という存在である。

 魔物が住んでいれば、女神が訪れた時点で姿を見せるので、そうでないなら住んでいない。
 あとはフェンリルとドラゴンが、村人達にきちんと全国紙の内容を把握しているか、ついでに闇属性への差別ついてはどう考え、対処しているかも聞いてくれる。きっとどの村でも、闇属性が生まれた場合は殺しているか、母親ごと捨てているのだろう。そうでなければ、小さな村では生きていけない。しかし女神リュヌの前でそのような内容を言えるはずがなく、彼らはひたすら震えながら謝罪するだけ。

 俺はというと、そんな村人達に、王都や大都市がどう変化しているか伝えていた。

 神ソレイユがよく空を駆けていて、そこらに下りては国民と交流していること。王都の人口は100万以上だが、人化していた魔物は1万を越えており、闇属性への差別どころではなくなっていること。今まで居場所が無かった闇属性達は、新たに建設された神立大図書館に匿われ、平穏に暮らしていること。それと女神の眷属である俺が、神の眷属であり第2王子であるリュカと結婚し、6月には結婚式を挙げることも。
 全国紙に何度も掲載されている内容ばかりだが、改めて人から聞くことで、国の変化をより身近に感じられるはずだ。

 女神リュヌの圧倒的強さに圧されている彼らは、人間というだけで安心するのか、黒髪を晒している俺の言葉でもきちんと聞いてくれる。
 小規模な村で、差別をいきなり無くすのは難しいかもしれない。だから今後この村に闇属性の赤子が産まれた時には、せめて殺さずに、差別の薄まっている自治体に預ける。そんな選択肢もあることを知っておいてほしい。もちろん迫害せずに親元で育てられるのなら、そうしてほしいけれど。

 他の確認事項は、税金関係、警備関係、各ギルド、教育機関、裁判所、教会などいろいろあるが、どれも女神達の仕事であり、俺は一切関与していない。冒険者らしく冒険者ギルドに行き、依頼を確認してから、村の外を見回っている。

 今はまだ神ソレイユの怨念がたくさん残っているので、モンスターと遭遇すれば問答無用で攻撃してくる。だが怨念が薄れれば、襲ってくるモンスターは減るだろう。それにスピリットも出現するようになる。
 スピリットでも獰猛な奴はいるし、逆に刺激さえしなければ、近くを歩けるモンスターもいる。どの魔物が危険で、どの魔物が危険でないのか。常に注意深く観察し、情報を更新していかなければならない。

「リュカの方は、どうだった? 明日から3日間休むからと、たくさん仕事を押し付けられるような、酷いことはされなかったか?」
「ふふ。大丈夫、そんなことはされないよ。両親に兄上、爺様達。他にも王家みんなで協力して、仕事してるからね。それに優秀な文官もたくさんいるし、何より大臣達がすごいよ。5千年間ソレイユ王国を支えてきた方達なだけあって、事務能力がとんでもなく高いんだ」
「お前が無茶していないなら、俺としては問題無い。家族も元気のようだな」

 リュカは相変わらず、家族ととても仲が良い。俺も結婚報告時に話したが、リュカの家族らしく、良い人達ばかりだった。特に王太子は、リュカのことをいろいろ教えてくれた。リュカが結婚相手を見つけてくるとは思わなくて、とても驚いたとも。

『この子はどうしてか、幼い頃からあまり感情が動かなくてね。何をしても喜ばない、悲しみもしない。けれど剣術も座学もあまりに優秀だったから、周囲からは恐れられていたよ。私からすれば、話しかけたらちゃんと聞いてくれるし、言葉も返してくれる、素直で可愛い弟だったんだが』
『いつも心配してくださる兄上を、俺はずっと尊敬しているし、大好きですよ。でも可愛いのはザガンです』
『旅に出るまで、このような言葉を返してくる男でもなかった。だから大切な人が出来たという手紙が届いた時は、とても驚いたが、本当に嬉しかったよ。リュカに、誰かを好きになれるほどの感情があったのだと。――ザガン殿。弟と出会い、その想いに応えてくださったこと、心より感謝します』

 さすがはリュカの兄、素晴らしいほどの人格者である。リュカが旅先でことあるごとに手紙を送るくらい、頼っていたのも頷ける。

 ちなみにソレイユ王に対して、謁見の間では闇属性として喧嘩腰な態度を取ったが、挨拶時はきちんと敬語で話した。リュカの父親であり、リュカが心から尊敬しているので、俺も敬意を示すべきである。
 結婚についても、反対されなくて良かった。もし了承されなかったら、リュカを大森林に拐わなければならなかった。

 彼らには結婚式の相談も乗ってもらい、6月に決定した。挙式と披露宴は王城でやり、翌日には国民に披露しながら神立大図書館に移動、大図書館にて2次会。王が王城から出られず、クラージュも大図書館から出られないので、俺達が移動することになった。

「そうだ。帰りに大図書館に寄って、クラージュに2次会の準備を頼んできた」
「ありがとう。クラージュ、やってくれるって?」
「ぐちぐち文句は言われた。なんで私に頼むんですか、そもそも結婚式の2次会とはどういうものなんですか、仕方無いので調べてあげますけどね、雰囲気の要望くらいはあるでしょう、とかなんとか。文句を言いながらも、嬉しそうだった」
「ふふ、引き受けてくれたなら良かった。要望は、何か伝えた?」
「参加者が俺の友人達とノエル、神ソレイユと女神リュヌ、うちの使用人、クラージュのところの希望者だけなので、気軽なものにしてほしいと伝えておいた。豪華な食事を出すだけでも良いと。……でも1つくらい、皆が楽しめる企画があると嬉しい、とも付け足しておいた」

 正直俺も詳しくないから、それ以上は言えなかった。ただクラージュと話していた際、女神が隣にいたからか、聞き耳を立てていた魔物達がいた。そしてあれこれ意見を出し始めたせいで収拾付かなくなったので、あとはクラージュに任せて、屋敷に帰ってきたのである。

 そう説明すると、リュカは小さく苦笑を零した。

「みんなが協力してくれるんだね。どんなパーティーになるのか、今から楽しみだね」

 頷く。クラージュに準備を任せれば、闇属性達も安心して参加出来るだろう。資金はいくらでも出すので、クラージュ自身を含め、参加してくれる皆が楽しめるパーティーにしてほしい。リュカは多忙なので手伝えないが、俺は帰宅前なら図書館に寄れるので、いくらでも打ち合わせが可能だし。……俺が役立つかどうかは、置いておく。

 まぁさすがに、幹事を引き受けてくれたクラージュへの謝礼は、俺達だけで用意しなければならないが。何をやれば喜ぶのかまったく想像出来無いので、それとなく調査するか。

 そんなことを考えていると、ふと左手を取られた。首を傾げつつリュカを見上げれば、指輪付近にちゅっとキスされる。

「そろそろお風呂に入ろっか。明日は休みだから、一緒に……ね?」

 ん、確かにそろそろ入れそうだ。というわけで、懐からスッと、あるものを出す。すると気付いたリュカは、大きく目を見開いた。

「えっと。もしかして、これを使いたいの?」

 コクコク頷く。もちろん使いたい。せっかく友人から貰ったのだから、この期に絶対使いたい。

「そっか。それでずっと、懐に大事にしまっていたんだね。……もうホント、ザガンは可愛いなぁ。もちろん使うよ。一緒に、いっぱい気持ち良くなろうね」

 指摘されるのはだいぶ恥ずかしかったが、それでも欲望には逆らえないので、大人しく抱き上げられておいた。





 リュカに見せたのは、彼の誕生日にカミラから貰った、セックス用ローションである。
 ノエルからのぬいぐるみや、ニナの写真立てはベッドサイドに飾っているし、ミランダがくれたペア食器は夕食時に使用している。ベネット特製弁当は早々に食べており、シンディがくれた本は読み終えて本棚に入れている。

 だがカミラから貰ったローションだけは、今まで時間が取れなくて使えなかったのだ。明日からは休みで、女神が迎えにくるのは昼過ぎ。この機会に、使わない手は無い。

 脱衣所で下ろされたら、スライムゼリーで作られた、大きなスライムバスマットも出す。2人同時に寝そべっても、余るほどのサイズだ。事前に買っておいたもので、これがあればローションで滑ってしまっても怪我をしないし、寝転がりながら出来る。それからバスクッションも。どんな体勢でやるにしろ、横になるならクッションは必需品だ。

 そう説明したところ、リュカは両手で顔を覆い、天井を仰いだ。

「俺とのローションエッチ、そんなに楽しみにしてくれていたなんて。もう、ザガンが尊すぎて、どうにかなりそう」
「わかったから、早く準備しろ。……先に入っているからな」

 身悶えているリュカを横目にさっさと服を脱いで、浴室に入る。ドアを閉めて、はぁと一息。
 くそっ、顔が熱い。さすがに恥ずかしすぎて、リュカを待っていられなかった。

 ……別に良いではないか、準備万端でも。いつもと違うセックスをすごく心待ちにしていても、良いではないか。いざ身体を繋げた時に、ローションのせいで滑ってどこかを打ち付けるなんて事態になったら、セックスどころではなくなるぞ? リュカが大好きだからこそ、リュカを感じてひたすら気持ち良くなりたいし、リュカにも心から満足してほしいのだ。
 とにかく俺達はもう夫夫ふうふなのだから、こっそりバスマットを買っておいた程度で、大げさに喜ばないでほしい。

 内心で文句を言いつつも、タイルにバスマットを敷いて、シャワーを掛けて温める。少しすればリュカが入ってきて、マットに膝を付いていた俺を、背中から抱き締めてきた。

「先に湯船に浸かって温まらないと、風邪引いちゃうよ?」
「…………もう5月だ、そんなに寒くない」
「だぁめ。万が一でも体調崩したら、明日出掛けられないでしょ。数分だけでも浸かろう」

 まだ羞恥を引き摺っていたので、顔を背けて突っ撥ねたところ、正論で窘められてしまった。ついでにシャワーヘッドを片付けられたので、大人しく湯船に浸かる。するとリュカは隣に入ってきて、俺の腰を引き寄せながら、ふふっと笑みを零した。

「ごめんねザガン。嬉しすぎて、つい舞い上がっちゃった。許してくれないかな?」
「……別に、謝るようなことではない。リュカに喜んでもらえて、俺も嬉しい。ただ、どうにも恥ずかしくて、我慢出来無かっただけで」
「そっか。ザガン、準備しておいてくれて、ありがとう。一緒に買いに行けなくて、ごめんね。今度時間が出来た時は、街でデートしようね」

 ちゅ、ちゅ、と頭やこめかみにキスされるので、顔を向けると、唇にもキスしてくれた。今朝ぶりの口付け。柔らかな感触に、愛しさが募る。もっと深く合わせたそうに唇を啄ばめられ舐められたので、口を開けば、すぐに舌が入ってきた。舌先が触れ合い、ぞくりとした感覚に身体が震える。

「ん、んむ……ふ、……んぅ、」

 舐めて、舐められて、たくさん刺激し合いながら、リュカのものと混ざった唾液を嚥下する。光の魔力がとても気持ち良くて、隙間から零れる息が熱くなる。リュカ、好きだリュカ。もっとお前を感じたい。

 もっと近付きたくて彼の首に両腕を回せば、リュカは俺の腰を引き寄せて、抱き締めてくれた。胸から股間までが密着し、よりリュカを感じられて、愛しさが溢れる。あぁ、リュカが勃起している。もちろん、俺も。けれど湯の中にいるせいか上手く擦り付けられず、弱い快感がもどかしい。

「ふ……ザガン、……は、ふ……、ん……」
「はぁ、ん……リュカ、ん、ん……む、ふぁ……っ」

 キスしながらゆるゆる股間を動かしていたら、腰を抱いていたリュカの手が、尻を撫でてきた。指でアナルの縁をクリクリ刺激され、胎内が疼いてキスどころではなくなってしまう。すぐにでも、リュカのペニスが欲しくなる。

「ん、ぁ……リュカ。もう、温まった……」
「うん、そろそろ出よっか。ふふ、ザガンったら、キスだけでとろとろ」
「ん……♡」

 柔らかな微笑、その双眸から強烈な欲望を感じ、さらに胎内が疼いた。リュカが、俺を求めてくれている。

 急いで立とうとしたら、リュカに抱き上げられた。落とさないよう、触手まで絡められる。
 こんなふうに抱えられるのにも、だいぶ慣れた。なるべく人前ではしないようにと約束したのが、半年前。あれから実際、よほど切羽詰っていなければ、2人の時しか抱き上げられていない。

 そっとバスマットに下ろされ、リュカも膝を付いてくる。

「どんな体勢でやりたい?」
「リュカが下になれ」

 クッションをバスマット端に置いて、ぽふぽふ叩く。するとリュカは苦笑しながらも寝転がり、そこに頭を置いた。その間にもローションの蓋を開け、ドバッと手に出して、適当に自分の身体に塗っていく。

 まずは1回イっておかないと、後ろが疼いて耐えられそうにない。早くリュカが欲しい。それをリュカもわかっているのか、それともリュカも耐えられないからか、静かに見守ってくれる。

 胸から腹、ペニスにベタベタ塗ったあと、彼に跨り、乳首が触れ合うように位置を調整しながら、身体を倒していった。ぬるり、ぬるり。ゆっくりと身体を擦り付けながら、リュカにもローションを塗っていく。

「はん、ぁ……はぅ、ん……リュカ……ん」
「ん……ザガン、気持ち良い……?」
「気持ち、いい……あ、ん……リュカ……」

 リュカと素肌が触れ合うのは心地良く、さらに乳首が刺激されて、すごく気持ち良い。それにぬるぬるした感触は、普段と違っていて興奮する。リュカはどうだろうか? 気になってリュカを見れば、気持ち良さそうに目を細めながら吐息を零していた。俺の視線に気付くと、背中に置かれていた手がぽんぽん叩いてくる。

「ザガン、俺も気持ち良いよ……君が一生懸命動いてくれるの、すごく、興奮する」
「ん……それなら、良かった。……ふ、あ」

 何度も乳首を擦り付けていると、ジンジンした弱い快感に侵食されていく。乳首だけでは、イけそうでイけない。それに胸板を合わせているので、身長差のせいでペニス同士は触れていなかった。彼の勃起したペニスは、俺の睾丸から尻の谷間を行き来している。

 リュカにもっと感じてほしくて、上半身を預けたまま腰を上下に動かせば、はぁと熱い吐息を零してきた。良かった、気持ち良さそうだ。時折アナルに先端が引っ掛かると、入りたそうに腰を動かしてくる。しかし縁をクンッと弾くだけ。その感覚にゾクゾクして、震えてしまう。

 そろそろ入れて良いだろうか? それともまだ、前戯を楽しんでいたいか。

「ん、は……ねぇザガン。もう、ザガンの中に、入りたいな。君のエッチなお尻で、俺を包んでくれる?」
「ん……」

 悩みつつも腰を動かしていたら、リュカが囁いてきた。官能的な甘い声に蕩けそうになりながら、それでもどうにか身体を起こして、ペニスの先端にアナルをくっ付ける。

 この体勢の時は、いつも両手で腰を掴み、支えてくれるリュカ。しかし今日はローションでぬるぬる滑って上手くいかないからか、太腿に触手まで巻き付いてくる。そんなふうに支えられながら、ゆっくり、腰を下ろしていく。

「あ……ん、ふぁ……、あ……ん……♡」

 熱いペニスが、狭まっていた胎内を徐々に広げていった。湧いてくる快楽に、全身が小さく戦慄く。
 もしも支えられていなかったら、勢いよく奥まで飲み込んでしまっていただろう。リュカがいてこそのセックスなのに、自分だけが先にイくのは寂しい。リュカと一緒に気持ち良くなりたい。だからリュカも、俺の様子を窺いながら、少しずつ支えを緩めていくのだ。

「あぁ……ん、……ん、んん……ふぁ……」

 ぬぷり、ぬぷり。ゆっくり受け入れていき、とうとう全部を飲み込んだ。足の力を抜いて、べったり座っている状態。熱いペニスが奥の奥まで埋まっている感覚に、全身がビクビク痙攣する。

「んん……、リュカ……ぁん、ん……は、あふ」
「ザガン……は、ザガンの中、あったかくて、すごく、気持ち良い」
「ん、よかった……ふ、……俺も、きもち、い……」

 目を瞑り、リュカの大きさや熱さをじっくり堪能する。はぁ、リュカでいっぱいに満たされていて、とても幸せだ。胎内を軽く締めてみると、よりまざまざと感じられて、より充足感に包まれる。リュカ、好きだ、大好き。

「俺も、ザガンが好きだよ。愛してる」

 どうやら声に出ていたらしい。目を開ければ、リュカは頬を紅潮させながらも、優しく微笑んでいた。幸せそうな笑みに、胸がきゅっと甘く締め付けられる。愛しさが溢れてくる。

 もっと、もっとリュカが欲しい。そしてもっと、俺で気持ち良くなってほしい。

「リュカ、動きたい。……いいか?」
「もちろんだよ。いっぱい、君を感じさせて?」

 コクリと頷き、腰を上げた。そしてすぐに腰を下ろす。ずるずると、腸壁が擦れる感覚が堪らない。前立腺もカリで掻いて、さらに快楽を得る。

 もっともっとたくさん感じたくて、上下運動を繰り返し、括約筋から結腸までを自分の思うままに刺激した。そうしてどんどん湧いてくる快楽に、酔いしれる。気持ち良い、気持ち良い、リュカ、リュカ。

「ふぁ、あ、リュカ……ん、んあ、あ、……ん」
「はぁ……ザガン、ん……俺のペニス、気持ちい……っ?」
「ん、いい……きもち、いい、……あ、ぁふ♡」
「良かった。俺も、すごく、イイよ」

 途切れ途切れに言葉を紡いだあと、はぁと吐息を零し、熱い眼差しで見上げてくるリュカ。感じている姿が艶かしく、愛しくて、さらに胎内をきゅうきゅう締め付けてしまう。

 すると我慢出来無くなったのか、リュカは苦しげに眉根を寄せると、グッと突き上げてきた。ちょうど腰を落としたタイミングだったせいで、奥の奥まで抉られる。ブワブワッと快楽が溢れて、尻から脳天まで駆け抜けていく。

「ひうっ! ……う、ぁんん……っ♡」

 背中が大きく撓った。全身がガクガク痙攣する。奥までズップリ飲み込んだまま、大きく身体が震えるから、余計に締め付けて感じていた。危ない、イくところだった。でもどうにか我慢した。リュカと一緒にイきたいから。

 はぁ、気持ち良い。リュカのペニス、すごく気持ち良くて、身体が蕩けてしまいそうだ。

「あん……あ、んっ……ん、んっ♡」
「ザガン、……ふ、は、……んっ」

 求めるまま、互いに腰を動かしていた。いっぱい胎内を嬲られながら、ペニスをぎゅうぎゅう締め付ける。奥をちゅぷん、ちゅぷんと突かれ、時々結腸奥まで入り込んでくると、あまりの快感にイきそうになる。

 イきたい、でもまだリュカから与えられる快楽に浸っていたい。もっと、もっと。あ、あ、駄目だ、そんなに奥を、ぐりぐりされたら。

「あ、あぅ、……イく、ぁん、もうイってしまう。ふあ……リュカ、リュカ」
「ッ……ザガ、ン、……うん、一緒に……ッ!」
「ふぁあ、あ、ぁん、ん、んんん――――……ッ!♡」

 ビクビクビクゥッと背中が戦慄き、大きく弓形に反れた。目の眩むような快楽が弾けて、射精する。全身が震える。気持ち良い、気持ち良い。奥でドプドプ出されたリュカの精液も、とても気持ち良い。パチパチと光の魔力が弾けて、痺れるような感覚。

「ふぁあ、……ぁ、ああ……♡」

 強烈な快感が鎮まってくると、頭も身体も、ふわふわした心地に包まれた。腸壁からリュカの魔力が浸透して、リュカに染まっていく。リュカ、好きだ、愛している。

「リュカ、はん……、リュカ……」
「はぁ……うん、うん、すごく、気持ち良かったよ。……ほら。おいで、ザガン」

 余韻に浸りながら呼吸を整えていたリュカは、名を呼ぶとすぐに応えて、両腕を広げてきた。横になって休憩したかったので、遠慮無く倒れさせてもらう。ずるっとペニスが抜けて、狭まった括約筋に腰が震えたが、それでも寝そべると、優しく背中を撫でてくれた。
 ほっと息をついて、俺も快感の余韻に浸りながら、呼吸を整える。

「今日も俺ので、いっぱいになったね。ふふ、ザガン、俺のザガン」

 とても幸せそうに、ちゅっちゅっと額にキスしてくる。リュカに抱かれて俺も嬉しいし、リュカが嬉しいから、さらに嬉しくなる。幸福感で満たされる。

 しばらくはリュカのあたたかな温もりに包まれながら、胎内から身体中へと巡っていく光の魔力に酔いしれていた。湯船から立ち上っている湯気で、身体の熱が引いても寒くはない。だが次第に物足りなくなり、尻をもぞもぞ動かしてしまう。

 また、入れてもらえるだろうか? それに先程は性急だったので、今度はゆっくり触れ合いたい。

「…………リュカ」
「うん? そろそろ触って良いのかな?」

 柔らかく微笑みながら顔を覗き込んでくるリュカに、コクコク頷く。すると彼はふふっと笑みを零した。

「ありがとう。また一緒に、たくさん気持ち良くなろうね」

 ちゅっと眦にキスしてきたリュカは、身体を起こすと、ローションボトルを掴んだ。俺も起きるべきか考えながら、とりあえず動向を見守る。リュカはボトルの中身をたっぷり手に出して、彼自身にローションを塗った。胸や腹、ペニス。先程俺が射精した精液と混ざって、テラテラ光る。

 それから再び横になると、俺を背中から抱き締めてきた。ぬるぬるした感触が背中や尻に伝わってくる。リュカの普段より熱くなっている体温も。気持ち良いし、幸せだ。

 リュカの精液が溜まっている下腹部を優しく撫でられ、まだ勃っていないペニスを弄られたあと、睾丸も揉まれた。

「ふぁ……ん、……ん、……リュカ」
「ふふ、気持ち良いね。お尻、もじもじしてて可愛い」

 リュカの言うように、どうしても尻が動いてしまう。リュカの再び勃起したペニスに、緩くなっているアナルを擦り付けてしまう。ローションのせいか、それとも先程出された精液のせいか、ぬちぬち艶かしい音が鳴る。

 そうして感じている間にも、乳首を摘まれた。左右ともゆっくり捏ねられると、胸からも快感が湧いてきて、さらに身悶えた。優しい愛撫をくれるリュカの手に、酔いしれる。

「あ、ん……、ふぁ……ん……」
「今日もぷくりと勃ってる。可愛い、ザガン、すごく可愛い」
「んん、は……リュカ、ぁ、あん……なか、」

 くりくり乳首を弄られるのは気持ち良いが、イけるほどではないせいか、だんだん胎内が切なくなってきた。またリュカにペニスを入れてほしい。俺を中を、リュカでいっぱいに満たしてほしい。

 愛撫されるだけ我慢出来無くなり、アナルにペニスを引っ掛けてみた。先程咥えたばかりで緩くなっている括約筋に、くぽりと先端が嵌る。このまま尻を押し付ければ、きっと簡単に埋まるだろう。しかし先程はリュカから望んでくれたので、今度は俺が。

「……リュカ。また、リュカが欲しい。……入れてくれるか?」

 恥ずかしかったが、それでもチラリとリュカの方へ視線を向けつつ、望みを告げる。すると蕩けるような優しい微笑と、頬への柔らかなキスをくれた。

「もちろんだよ。愛してる、ザガン。……――俺だけの、ザガン」
「リュカ……。俺も、ぁ……あん、ん……ふぁ、あ♡」

 リュカの愛に包まれて、じぃんと胸があたたかくなって。俺も愛していると返そうとしたら、入ってきたペニスに感じて、言葉が途切れてしまった。先程出された精液を腸壁に染み込ませるように、ゆっくりゆっくり、抽挿しながら奥まで埋まってくる。身体も心も、リュカでいっぱいに満たされて、とても幸せだ。

 背中も密着するよう寄せていけば、すぐに抱き締めてくれた。気持ち良いね、と囁かれたのでコクリと頷き、意識して胎内を締める。リュカも、もっともっと気持ち良くなってくれるように。

 そうしてゆったり身体を繋げながら、愛するリュカと、甘い時間を過ごした。

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