魔眼

藤原 秋

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情動

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 階段を駆け上がってきたドルクは、負傷したわたしと戦闘の跡を目の当たりにして、大きなこげ茶色の双眸を見開いた。

「……フレイア! 大丈夫ですか!?」

 言いながらわたしに駆け寄り傷の具合を確かめる彼に、満身創痍のわたしは頬を緩めて頷いた。

「うん、大丈夫。クンツ支給の剣は脆いな……壊劫インフェルノのありがたみがよく分かったよ。持ってきてくれて、ありがとう」
「すみません、遅くなって。こっちも色々あって、手間取ってしまって―――この男は?」

 詫びながらわたしの傍らに倒れ伏す黒衣の男に視線を走らせたドルクに、その素性を簡潔に話す。

「例のシュライダー。暗器の使い手でちょっと苦戦したけど、あんたが渡してくれたナイフのおかげで助かった。ほら、意味ありげな鍵を手に入れたぞ」

 口角を上げてそれを見せつけるようにすると、ドルクはどこか切なげな表情になって淡く微笑み、傷だらけのわたしにそっと額を寄せた。

「役に立って良かったです。本当は、オレ自身があなたの隣に立って役に立ちたかったんですけど……さすがですね。厳しい条件だったでしょうに―――あなたは、強い」
「褒めてくれる?」

 冗談ぽく尋ねると、もちろんです、と耳元で囁かれ、負傷の痛みを忘れるくらいの充足感に満たされた。

「色々話したいところではありますけど、まずは傷を治しましょう。どこか身体を休められるところを探してきます」

 そう言い置いて周辺を探りに行ったドルクはすぐに戻ってきた。わたしを抱き上げどこかへ連れて行こうとする彼にみんなのことを尋ねると、手短に説明された。

「解放した人達はアレクシスとリルムに安全な場所へ誘導してもらうよう頼みました。アデライーデとクラウス先生はベルンハルトと一緒にキューちゃんの洞窟へ向かっています」
「キューちゃんに何かあったの?」
「詳しいことは分かりませんが、海へ出たがっているようなんです。アデライーデの結界を通じてそういう反応があったみたいで」

 少なくとも、クンツの手の者から襲撃を受けているような状況ではないわけだな。

 その事実にそっと胸をなで下ろす。

「そういえば、海の様子がおかしいんだって? それと関係あるのかな」
「分かりません。ただ、あの異変が自然現象でないことは確かですね。外はもう嵐のような状況で、波がおかしなうねりを見せています。地元の老人や漁師達は海神ハルマナーンの怒りに違いない、と騒いでいて」

 そう語りながらドルクは二階のある一室のドアを開けた。

 その部屋には天蓋付きの大きなベッドとシャワールームがしつらえられており、鏡台やテーブルセットなんかも置かれていて、豪華な宿泊施設のようになっていた。

「ゲストルームになっているみたいです。ざっと確認してみましたが二階の部屋はほぼこんな感じですね。このフロアには他に誰もいないようです。通路の突き当たりに上階へ続く階段がありましたから、クンツがいるとしたらその先でしょう」

 ドルクの話を頷きながら聞いていたわたしは、スプリングの利いたベッドの上へ下ろされたその時になって初めて、ある重大なことに気が付いた。

 ―――そういえば、わたし……ここに来るまで、ものスゴく不衛生なところにいたんだった……。

 それに思い至って、青ざめる。

 ドルクは何も言わないけど、もしかしたらわたし自身スゴく臭っているのかもしれない。いや、絶対に臭い! あんなところにいて、臭いが移らないわけがない!

 それに、その過程で悪い菌が付着していないとも言い切れない。こんな状態のままドルクに傷を治してもらったりしたら、そのせいで彼が体調を崩してしまうような二次被害も起こりかねない。

 血の気が引くのを覚えながら、わたしは彼に向かって訴えた。

「ド、ドルク……やっぱりいい、傷を治さなくて。我慢出来るから」
「フレイア? 何を言ってるんですか?」

 耳を疑う様子の彼にわたしは事情を説明したけど、それを聞き終えたドルクは何でもないことのように一蹴した。

「匂いも汚れも、オレは気になりませんよ。それより、あなたの傷の方が痛そうで気になります。左の足首の腫れ具合とか、結構ひどいですよ? 放っておくなんて無理です」
「わたしは気になる! 無理だ!!」

 悲鳴のような声を上げてかぶりを振ったわたしは、ふと室内のシャワールームに目を留めた。

 そうだ! 水着を着ているんだし、この上からさっと洗い流して、それから傷を治してもらえればいいんだ!

 名案だと思ったけど、ドルクは否定的な見方をした。

「満身創痍のこの状態で石鹸を付けてシャワーを浴びたら、相当沁みますよ?」
「このまま治してもらうより、マシだ!」

 こんな時に悠長にシャワーを浴びている場合じゃないとは思うけど、やっぱり傷は痛むし、出来ればドルクに害のない状態で治してもらいたい。わたしにはそれが最善策だと思えた。というより、それしか考えられなかった! 好きなひとの傍で自分から異臭が漂っているなんて、耐えられない!

 頑として譲らないわたしに、ドルクが溜め息をつきながら言った。

「フレイア、今まで聞かれなかったので言いませんでしたが、実は傷を治す方法は何も」
「ドルク、さっと済ませるから! 少し待ってて」
「フレイア、話を聞いて下さい。あなたが痛い思いをしなくても、傷は治」
「痛みには強いから、大丈夫!」

 諭そうとするドルクの言葉を遮って、わたしは足を引きずるようにしながらシャワールームへと駆け込んだ。

 斬り裂かれたラッシュガードを脱ぎ去り、コックを捻って勢いよく水を出しながら、備え付けの高級そうな石鹸を手早く泡立て、覚悟を決めて水着の上から全身に塗りたくる。

 いっ……いったあぁぁぁぁーい! 半端なく沁みる!

 涙で視界を歪ませながら、白色から濁った色へと変色していく泡を目にし、さっきの状態で治療してもらうなんてやはりとんでもないことだった、と奥歯を噛みしめる。

 よし、後は洗い流すだけだ。

 わたしは気合を入れてシャワーの水圧に耐え、高貴な香りのする汚れた泡を流し去った。

 うう……い、痛かった……。

 自虐のような怒涛の清めが終わり、わたしは浴室に置かれていた吸水性の良いタオルで全身を押さえるようにして水気を拭いながら、ドルクの待つ室内へと戻った。

 彼はもう魔眼を開眼させていて、燃え立つような金色の瞳へと変貌しながらわたしを待っていた。

 久し振りに目にした彼の魔眼に、ドキリと心臓が音を立てる。

「……おまたせ」

 ぎこちなく声をかけながら、最後に軽く頭を拭いて、ところどころ血に染まったバスタオルを傍らに置く。左足を引きずるようにしながらベッドの真ん中辺りまで行き、そちらを投げ出して右膝を立てた状態で座って、上半身を少し反らすようにしてベッドの左右についた手で支え、傍らに立つ彼を見上げた。

「お願い……します」

 何と言えばいいのか分からなくて妙な敬語使いになったわたしを見下ろし、ドルクは小さく息をついた。

「頑固でせっかちなんですから……人の話は最後まで聞いた方がいいですよ」

 シャワールームに駆け込む前に彼の話をちゃんと聞かなかったことを咎められて、わたしは首をすくめた。

「ゴメン……気がいちゃって。今なら聞くよ」
「もういいです。そんなに眼を充血させて……痛い思いをして。これからまた、少し痛いのを我慢しないといけないのに」
「分かってる……」

 でも、それ以上に嫌だったんだ。耐えられなかったんだ。

 わたしのせいで、あんたを具合悪くさせてしまうかもしれない可能性が。

 あんたの傍で、異臭を漂わせてしまっているだろう自分の状態が。

 口を尖らせて視線をうつむけていると、ベッドが軋んだ音を立てて沈み、左足のふくらはぎとかかとにドルクの手がかけられた。ゆっくりと大切に持ち上げるようにして、腫れあがった足首にそっと口づけられる。触れられる痛みとそこから流れ込んでくる癒しの力に、上半身を支える肩が小さく揺れた。

 温かく湿ったドルクの舌が優しく触れる度、脈打つようだった痛みと熱が和らいでいくのが分かる。

 そういえばこんなふうに彼に「治療」をされるのは久々だった、と今更のように思い出した。

 治療される度に思うことだけど、痛みが薄らいでくると、彼の唇の熱や濡れた舌の感触が如実に感じられるようになってしまって、今度は違う意味でこらえなければいけなくなる。

「……っ」

 頬を上気させながらその状況に耐えていると、一番ひどかったその箇所からドルクの唇が離れ、ホッと力を抜いたのも束の間、膝の裏に手をかけられて左脚を大きく開かせられ、ドキッと鼓動が跳ね上がった。

「あっ……」

 唇から思わず動揺の声が漏れる。

 分かっている、ドルクがそうしたのは大腿の内側に走る傷を治療しようとしてのことだって。ただ、そんなふうに脚を開かされるとは思っていなかった。

 動揺を治め切れないうちに、脚の間に身体を滑り込ませるようにしたドルクにそこへ口づけられて、反射的に腰が跳ねる。逃げようとするわたしの動きを抑えようと彼のもう一方の手が脚の付け根に添えられて、そのきわどい位置に心臓が激しく波打った。

「……!」

 そこ……そこはもう、本当に脚の付け根ギリギリだ。少しでも指を動かされたら、そこはもう脚とは呼べない場所になってしまう。

 傷の痛みが薄らいできたこともあって、ドルクの舌の動きがひどく淫靡いんびに感じられてしまい、その光景を直視出来なくて、わたしはぎゅっと目をつぶった。

 ―――変に意識するな、わたし! これは治療行為なんだから!

 でも、目をつぶってしまうと、より感覚が研ぎ澄まされて、彼の舌の動きが明確に感じられてしまって―――。

「ぅんっ……!」

 鼻にかかった声が抜け、わたしは慌てて口を押えた。

「痛みますか……?」
「大、丈夫……」

 途切れながら返す自分の声が震えている。どうしよう。顔が熱い。身体が火照りを帯びて、心臓が壊れそうな音を奏で、触れられる箇所がじわじわと甘い熱に浸食されていく。

 やがて大腿から彼の唇が離れ、落ち着こうと深く息を吸い込みかけたわたしは、今度は反対側の膝裏をドルクにすくい上げられて、小さく狼狽の声を上げた。

「やっ……!」

 左の膝裏を持ち上げられたままだったから、そちらも持ち上げられて大きく両脚を割り開かれたような格好になり、あまりの恥ずかしさにうろたえる。

「そっ、そっちはケガしてない!」
「……ああ、こっちはふくらはぎだけですね」

 全身を朱に染め、叫ぶようにして伝えるわたしとは対照的にドルクの声はあくまでも冷静で、まるで自分だけが過剰に反応してしまっているかのような状況に、羞恥心で胸が詰まった。

 左の膝裏からドルクの手が離れて恥ずかしい姿勢から解放され、右のふくらはぎに優しく口づけられて、震える吐息をそっとこぼす。

 ああ……ダメだ、このままだと心臓がどうにかなってしまう。ひどいところは治してもらったし、もう―――。

「ドルク、もういい、もう―――」

 弱々しく治療の打ち切りを申し出たわたしの腹部にドルクの手がすっと伸ばされて、煌めく金色の双眸が脚の間からこちらを仰ぎ見た。

「―――ここは?」

 血の滲む腹部の傷を指先でつ、となぞられ、そこに走った微かな痛みと甘い疼きに息を潜めると、上体を起こした彼ににじり寄られ、腰が引けた。

「そこは……大したことないから、いい。もう、行こう」

 そう言って逃げるように瞳を逸らしたわたしの腰にドルクの腕が回り込み、手前に引き寄せるようにした。

「さっき言いましたよね。あなたの傷が痛そうで、見ていて気になるから放っておけないって」
「ひどいところは、もう、治してもらったから。大丈夫だよ」
「それはあなたの主観でしょう? オレの主観とは違う」

 きっぱりと言い切られて正面から輝く魔性の瞳に見据えられ、その迫力に気圧される。そのままゆっくりと体重をかけられて、気が付けばベッドに背をつけていた。

「あっ……」

 有無を言わせず腹部の傷にドルクの熱い唇が落とされて、わずかな痛みと生まれた甘やかな熱がわたしを苛む。その上を柔らかく這う、どこか淫らな動きの舌に反応してしまいそうになり、わたしは吐息を噛み殺した。

「……っ!」

 腰に回されたドルクの手は微妙な触れ加減で緩やかな上昇と下降を繰り返し、彼のもう一方の手は指と指を絡めるようにしてわたしの手を捕えている。

 さっきまでとは明らかに変わったドルクの雰囲気と彼の手の動きに戸惑いを覚えながら、わたしは官能に震える唇を開いた。

「ちょ……! 何か、手の動き、やらしい……!」
「ああ……そういうつもりで触っていますから」

 耐えかねて身じろぎするわたしに当然のようにそう返し、ドルクは薄く笑った。

「感じます?」
「……!」

 逆にそう尋ねられて、顔から火を噴きそうになる。真っ赤な顔で唇を引き結ぶわたしを魔狼の表情で見やり、ドルクは蠱惑的に囁いた。

「もっと感じていいですよ……」

 腹部の傷を癒し終えた煽情的な唇が、わたしに知らしめるようにゆっくりと脇を伝い上がり、二の腕の傷へとたどり着く。

 わざと感じるように触れているのだと告げられて、ただでさえ熱い身体が更に熱くなった。

 な……何で、急に、こんなっ……。

「ド……ドルクッ……」

 混乱して、どうしたらいいのか分からず、与えられる刺激に身体を震わせながら彼の名を呼ぶわたしの掌を、握り込んだ彼の指があやすように優しく撫でる。

 二の腕の傷を癒し終えたドルクの唇が肩をたどり、戯れるように甘噛みして、首筋を柔らかく吸うようにいらい、わたしの口から喘ぎを散らして、頬の傷を舌先で優しくなぞる。

 あ……ダ、ダメ、心臓……心臓、壊れそう……!

 瞳を潤ませ吐息を乱すわたしの顔を、燃え立つような金色の双眸が正面から捉えて、器用な指先で唇を弄ぶようにした。

「……他に、痛むところは?」

 静かなのに逆らえない魔性の声で尋ねられて、わたしは胸を震わせながら正直に答えてしまう。

「頬の、内側……催眠剤で眠らないように、強く噛んだ……」

 唇を弄んでいた指の動きが止まり、ドルクの整った顔がゆっくりと近付いてくる。これから何をされるのか悟って、胸が痛いくらいに高鳴った。

 ―――ああ。

 世界が切り取られて、響く鼓動の音だけに支配される。吸い寄せられるように瞼を閉じたわたしの唇に彼の熱いそれが柔らかく重なり、深く、深く口づけられると、形容出来ない甘い痺れに射抜かれ、呼吸を忘れてしまいそうになった。

 どこか危うさを感じさせる熱い唇がしっとりとわたしの唇を包み込んで、甘く、甘く蕩かしていく。澄んだ冬の空気にも似た彼の香りにいだかれて、理性が突き崩されていくような魔性の恍惚を味わった。

 ―――ああ、これだ。

 明滅する意識の向こう側で、待ち望んでいた感触を得られた悦びに、全身が打ち震える。

 ずっとずっと、こうされたかった―――。

 求めてやまなかったその熱に支配され、ただの一人の女になっていく自分を感じる。左の鼓動が苦しいくらい胸を叩いて、切なくしなる感覚が下腹部へと響いていき、わたしの思考を溺れさせていった。

 久し振りの彼の感触に吐息を弾ませ酔いしれているうちに頬の内側の傷を癒されて、気が付けばいつの間にか治療行為は終わり、ただ愛情のこもったキスをされていた。

 優しく舌を絡められて、わたしもただそれに応えようと無心に彼を求め続ける。巧みな彼のキスに身も心も蕩かされて、抑えつけていた感情が荒ぶり、溢れ出した。

 ―――ああ、わたし、このひとが、好きだ。

 泣きたいような思いにも似た、叫び出したいほどの激情が胸に渦巻く。

 大好きだ―――大好きなんだ、どうしようもないほどに―――。

 溢れる―――溢れ出す。制御の利かない、熱情が。

「……抑えが利かないな、オレは―――」

  ひとしきり求め合った後、わたしからそっと唇を離したドルクが自嘲気味に呟いた。名残惜しい気持ちで彼を見やるわたしの頬を掌で包み込むようにして見つめ返しながら、どこか苦し気に微笑む。

「格好つけてあなたの言葉を待つと言っておきながら―――触れた途端に、自制が利かなくなる―――」

 狂おしいほどの激情を内包したたぎるような光を放つ彼の魔眼が、わたしを映して揺れている。

 ああ―――わたしと、同じだ。

 そう思った。

 分かるよ、ドルク。わたしも、あんたと同じだから。

 こういうのって、関係ないんだな。時とか―――場合とか。

 色々考えて、理屈をつけて、こうしようああしようって思ったりはするけれど―――その時が来ると、どうしようもなく、ただ、溢れ出す―――そういうものなんだな……。

 愛しく想う、その気持ちは。

「フレイア―――オレは、あなたが―――」

 猛る想いの奔流に堰を切りかけるドルクの形の良い唇にそっと指を伸ばしてその先を止め、わたしは熱で潤んだ瞳を彼に向けて、口を開いた。

「好きだ……」
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