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はぁ……何だったんだろ、さっきの……。
朝から散々な目に遭ったあたしは、重い溜め息をつきながら2ーAと書かれた教室のドアを開けた。
突風みたいなのを受けた後、何かするん、ふわって……上手く説明出来ない感覚だったなぁ。気のせいじゃないと思うんだけど、でも、あの後特に変わったこともないし―――工事の関係で突如発生した変則的な風? みたいなのが吹きつけてきただけだったのかなぁ……。
「おっはよ~、陽葵」
悩めるあたしに友人の紬が明るい声をかけてきた。
あたしのフルネームは岩本陽葵。仲のいい子からは「陽葵」って呼ばれている。
「おはよ、紬」
立ち止まって挨拶を返したその時、ちょうど後ろから来た男子とカバンがぶつかってしまった。
おっ……と。
軽くよろめいて相手を確認したあたしは、次の瞬間、思わずぎょっとして、自分の目を疑った。
「あ、悪い岩本さん」
そう謝ってくれたのは同じクラスの喜多川くんだった。細身で背が高く、緩いクセのある黒髪に知的な眼鏡といった見た目の通り頭がいいらしい。物静かなグループに所属していて、同じクラスだけどこれまであまり喋ったことはなかった。
そんな彼にあたしがぎょっとしてしまったのは、何故か視界に映る彼の顔が、まるでスポットライトでも当てたかのようにキラキラ輝いて見えたからだ。
えっ、何、これ? 何か視界がおかしいんだけど。
あたしはこれでもかというくらい目をまん丸にして、彼の顔を凝視した。多分向こうからしたら、スゴく間抜けな顔をしていたんじゃないかと思う。
でもあたしにはそんなことを気にしている余裕がなかった。
だって―――だって、目に映る喜多川くんが何でか、神々しいまでの輝きを纏って、キラキラと煌めいて見えていたんだから!
いったいナゼ!? 何度か瞬きしたけれど、謎のキラキラは収まらない。
キラキラっていうか、あれだ、お母さんが読んでた昔の少女漫画、あれに出てくる美少年の背景効果みたいな感じっていうのかな、バックに花とか背負ってスッゴいキラキラを強調した感じで出てくるあれが現実の生身の人間に起こっている感じと言えば分かってもらえる!?
それがろくに喋ったこともない、ただのクラスメイトの喜多川くんに起こっているから、ビックリし過ぎて固まってしまってるワケ!
いや、決して喜多川くんをおとしめているワケじゃなくて、何の交流もない彼がそんなふうに見えてしまう自分自身のこの状況にとにかくビックリしているっていうか!
無言でしばらく見つめ合った後、妙な顔をしたまま固まっているあたしからそっと視線を外した喜多川くんは、そのまま脇を通り過ぎて自分の席へと歩いて行った。
その様子を見ていた紬がニヤニヤ笑いながら、面白そうにあたしの顔を覗き込んできた。
「なーに陽葵、朝から感じ悪~い。喜多川と何かあったの?」
そこで初めて我に返ったあたしは、ハッと紬に視線をやってから、慌てて喜多川くんを振り返った。
あっ……そうだよね、あたし今、スゴく感じ悪かったよね!
喜多川くんは謝ってくれたのに何のリアクションも返さないまま、ただただガン見するとか……うわぁ、有り得ないわ。サイテーじゃん。
しかしながら問題の現象は未だ収まらず、席に着いた彼の後ろ姿ですらキラキラ後光が差しているように見えてしまう。
―――何なの!? このキラキラフィルター現象は!?
あたしは大いに戸惑いながら、ぐるりと他のクラスメイト達を見渡してみた。
紬も、他の女子も男子も、いつも通り変わらず普通に見える。なのにやっぱり、喜多川くんだけがキラキラ輝いて見える……!
―――ナゼ!?
突然の怪現象に見舞われてしまったあたしは、一人盛大に頭を抱えた。
マジで意味分かんないんだけど!?
岩本陽葵十六歳、高校二年の春の終わり―――なぜか突然、ただのクラスメイトの一人がキラキラ輝いて見えるようになってしまいました―――。
朝から散々な目に遭ったあたしは、重い溜め息をつきながら2ーAと書かれた教室のドアを開けた。
突風みたいなのを受けた後、何かするん、ふわって……上手く説明出来ない感覚だったなぁ。気のせいじゃないと思うんだけど、でも、あの後特に変わったこともないし―――工事の関係で突如発生した変則的な風? みたいなのが吹きつけてきただけだったのかなぁ……。
「おっはよ~、陽葵」
悩めるあたしに友人の紬が明るい声をかけてきた。
あたしのフルネームは岩本陽葵。仲のいい子からは「陽葵」って呼ばれている。
「おはよ、紬」
立ち止まって挨拶を返したその時、ちょうど後ろから来た男子とカバンがぶつかってしまった。
おっ……と。
軽くよろめいて相手を確認したあたしは、次の瞬間、思わずぎょっとして、自分の目を疑った。
「あ、悪い岩本さん」
そう謝ってくれたのは同じクラスの喜多川くんだった。細身で背が高く、緩いクセのある黒髪に知的な眼鏡といった見た目の通り頭がいいらしい。物静かなグループに所属していて、同じクラスだけどこれまであまり喋ったことはなかった。
そんな彼にあたしがぎょっとしてしまったのは、何故か視界に映る彼の顔が、まるでスポットライトでも当てたかのようにキラキラ輝いて見えたからだ。
えっ、何、これ? 何か視界がおかしいんだけど。
あたしはこれでもかというくらい目をまん丸にして、彼の顔を凝視した。多分向こうからしたら、スゴく間抜けな顔をしていたんじゃないかと思う。
でもあたしにはそんなことを気にしている余裕がなかった。
だって―――だって、目に映る喜多川くんが何でか、神々しいまでの輝きを纏って、キラキラと煌めいて見えていたんだから!
いったいナゼ!? 何度か瞬きしたけれど、謎のキラキラは収まらない。
キラキラっていうか、あれだ、お母さんが読んでた昔の少女漫画、あれに出てくる美少年の背景効果みたいな感じっていうのかな、バックに花とか背負ってスッゴいキラキラを強調した感じで出てくるあれが現実の生身の人間に起こっている感じと言えば分かってもらえる!?
それがろくに喋ったこともない、ただのクラスメイトの喜多川くんに起こっているから、ビックリし過ぎて固まってしまってるワケ!
いや、決して喜多川くんをおとしめているワケじゃなくて、何の交流もない彼がそんなふうに見えてしまう自分自身のこの状況にとにかくビックリしているっていうか!
無言でしばらく見つめ合った後、妙な顔をしたまま固まっているあたしからそっと視線を外した喜多川くんは、そのまま脇を通り過ぎて自分の席へと歩いて行った。
その様子を見ていた紬がニヤニヤ笑いながら、面白そうにあたしの顔を覗き込んできた。
「なーに陽葵、朝から感じ悪~い。喜多川と何かあったの?」
そこで初めて我に返ったあたしは、ハッと紬に視線をやってから、慌てて喜多川くんを振り返った。
あっ……そうだよね、あたし今、スゴく感じ悪かったよね!
喜多川くんは謝ってくれたのに何のリアクションも返さないまま、ただただガン見するとか……うわぁ、有り得ないわ。サイテーじゃん。
しかしながら問題の現象は未だ収まらず、席に着いた彼の後ろ姿ですらキラキラ後光が差しているように見えてしまう。
―――何なの!? このキラキラフィルター現象は!?
あたしは大いに戸惑いながら、ぐるりと他のクラスメイト達を見渡してみた。
紬も、他の女子も男子も、いつも通り変わらず普通に見える。なのにやっぱり、喜多川くんだけがキラキラ輝いて見える……!
―――ナゼ!?
突然の怪現象に見舞われてしまったあたしは、一人盛大に頭を抱えた。
マジで意味分かんないんだけど!?
岩本陽葵十六歳、高校二年の春の終わり―――なぜか突然、ただのクラスメイトの一人がキラキラ輝いて見えるようになってしまいました―――。
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