爺嬢

「妻だ」
5年振りに訪れた実家。父、洋平が何の前触れもなく口にした宣告により、初めて嬢の存在を認識する。
思い起こすと、嬢は今朝ここに来たときから父の近くに居た。けれど存在を認識していなかった。ヘルパーが付き添っていると思い込んでいたから、無意識に認識対象から排除していた。

父によると嬢の齢は19という。
父母の年齢差は70。しかも母と俺の孫が同い年。
もしも成人したばかりの孫が、後期高齢者と結婚したと告げてきたら――嬢の親類の心情を考えると、胃が痛む。

嬢を詐欺師と疑う第三者。嬢の正体は――。
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