ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした

黒足袋

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第六章 布教に行きたい

#95 チームミーティング

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 夜宵がチーム戦の為に一時的に魔法人形マドールに復帰する話を彼女の両親にしたところ、あっさりと了承された。
 元々勉強面だけでなく、夜宵に友達がいないことも心配の種だったらしい。
 友人と夏休みの思い出作りになるならむしろ応援すると彼女の母から言われた。
 そして翌日、俺は水零と夜宵を初めて自分の家に招いた。

「ここがヒナのお家なんだ」
「素敵な家ね。私と太陽くんの愛の巣にぴったり」
「そいつはどうも」

 興味深そうにあたりをキョロキョロ見回す夜宵は小動物チックで可愛い。
 あと水零の問題発言はスルーさせてもらう。
 彼女達をリビングまで案内すると、先に来ていた琥珀がソファに座っていた。
 軽く挨拶し、テーブルを囲う形で夜宵と水零にも着席を促す。
 俺はテーブルにお茶菓子を並べて、それが終わるとソファに腰かけた。
 そこで光流がお盆に人数分のコップを載せてきてテーブルに置く。
 コップに麦茶を注ぎ各人の前に配り終えると、光流も腰を下ろした。

――何故か俺の膝の上に。

「あのー、光流ちゃん。何をしてるのかな?」

 俺がそう問うと、彼女は悪びれる様子もなく答える。

「何って、これからミーティングなので、私も着席したまでです。お兄様の膝の上は妹の指定席ですよ」
「いや、普通に邪魔なんだけど。そこにいるとお兄ちゃんお茶も飲めないしね」
「でしたらお兄様には私が飲ませてあげますね。あっ、それとも口移しの方がいいでしょうか?」

 悪戯っぽく笑いながら俺の方へ振り向いて見せる。
 お、おかしいな。
 光流が甘えん坊なのはいつものことではあるが、お客さんの前ではもうちょっとお行儀のいい立ち振る舞いをする筈。
 一体、今日に限ってどうしてしまったのか。

「あら、兄妹仲がいいのね。微笑ましいわ」

 クスリと笑いながら水零がそんな感想を漏らす。

「羨ましいなヒナ。光流ちゃん、私の膝にも乗ってくれないかな」

 口に指をあてて、物欲しそうにこちらを見る夜宵。
 こっちはこっちで危ない気配がするんですが。
 諦めて光流を膝に乗せたまま話を進めることにする。

「みんな、今日は集まってくれてありがとう。これからこの五人でチームを組んでコスモ達とのエキシビションマッチに向けて準備をしていくわけだが、まずは初対面の人もいるだろうから自己紹介からしていこうと思う」
「なら太陽くん、最初は私からでいい?」

 水零の立候補を断る理由もない。
 自己紹介一番手は彼女に決まった。

「じゃあまずは水零頼む」
「はい! はい!」

 元気よく挙手して彼女は椅子から立ち上がる。
 いや、立つ必要はなくね?

「星河水零です! 太陽くんとは中一の時、同じクラスで知り合って以来、大の仲良しで――」

 言いながら彼女は俺の右側に近寄り、腕をとる。
 そしてその勢いのまま俺の腕を抱きしめた。

「ちょ、おい水零!」
「それでそれでえ、受験のときは一緒の高校いこうねって二人で約束したの。太陽くんはね、私の志望校と同じところに入るために猛勉強してくれたんだから。それくらい強い絆で結ばれてる関係でーす」

 おい、その話をここで言うのか。

「ええええ! お兄様が今の学校を選んだのって、そんな甘酸っぱい青春な理由があったんですか! 妹的初耳です!」
「そうっすよ先輩! 後輩的初耳っす!」

 俺の膝に座ったままの光流と、隣に座っていた琥珀が驚きの声を上げる。
 夜宵もポカンとした表情を浮かべていた。
 いやあ、やっぱり騒ぐよなこの話。
 誤解、とも言い切れないし全て事実なので訂正のしようがないのだが。
 いや、それよりも水零に抱きつかれていることの方が問題だ。

「水零! いい加減離れなさい!」
「えー、なんで?」

 いや、だって水零さん。
 そのね、そんなに密着されると柔らかくて暖かくて、あといい匂いがして精神衛生上大変よろしくないのです。

「膝の上が妹ちゃんの指定席なら、太陽くんの腕は親友の私の指定席ってことでいいでしょ」

 語尾にハートマークでも付きそうなくらい可愛らしい声で彼女は言い放つ。
 どうやら俺の腕を離す気はないらしい。
 そしてその光景を見て、光流と琥珀が息を呑んだのが分かった。

「み、水零さんの、大きなお胸がお兄様の腕に密着して形を変えて」
「こ、これが伝説の『当ててんのよ』ってやつか」
「いえ、これはむしろ『挟んでるのよ』です!」

 こいつが過剰なスキンシップで俺を困らせてくるのは今に始まったことじゃないが、今日はいつにも増して積極的だった。
 光流といい水零といい、一体何があるんだ。

「いいから離れなさい。ほら、みんなの目があるから」

 そう注意するも、水零は目を細め、悪戯っぽく笑って返した。

「じゃあ、みんなが見てないところなら太陽くんに、もっとくっついていいってことかしら? それは楽しみね。あとでいっぱい激しいことしましょう」
「しない! しないから!」

 多分、俺は一生こいつに勝てない気がする。
 こういう時、そんな諦めの感情が胸に浮かぶのだった。
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