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第五章 お泊りに行きたい
#72 最後の夜
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ヒナが風呂から上がると、夜宵はリビングで寛いでいた。
昨夜と同じくナイトキャップを被り、体にはタオルケットを巻いた姿だ。
「ヒナ、髪乾かしてあげるね」
先程の気まずい空気を払拭するように、夜宵は明るく提案する。
「ああ。サンキュ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
ヒナがソファに腰を下ろすと、夜宵はその隣で膝立ちになり、ドライヤーを彼の髪に吹き掛ける。
温風を当てられて夜宵の方を向くことができないため、ヒナは自分のスマホをいじって髪を乾かし終わるのを待つ。
スマホにはLINEの新着通知が来ていた。
中身を見ると家族のトークルームに光流が料理の写真をアップしていた。
『今日のお夕飯は美味しい美味しい目玉焼きハンバーグですよ』
その言葉通り、画面にはトロトロの目玉焼きが乗った手作り感の溢れる丸いハンバーグが写っていた。
それを見て、ヒナは決心する。
「ごめん夜宵。俺、明日にはウチに帰るわ」
「えっ」
唐突な言葉に夜宵は驚く。
彼女がドライヤーの電源を切ったところでヒナは夜宵の方を向き、自分のスマホを示して見せた。
画面を見て夜宵は感嘆の声を上げる。
「うわー、美味しそう。光流ちゃん料理上手いんだー」
しかしヒナが家に帰るという話と、この写真の関係性が見えてこなかった。
夜宵が不思議に思ってヒナに視線を戻すと、彼はポツリと呟きを返す。
「ハンバーグは俺の好物なんだよ」
「えっ、うん。そうなんだ」
と、言われてもやはり話の繋がりが見えてこない。
しかしヒナにはこのメッセージの意図がわかっていた。
きっと光流は今夜、美味しい夕食を作って仕事から帰ってきた両親と食卓を囲んでいるのだろう。
その写真を家族しか見ることのないトークルームにアップしたということは、これはヒナに向けたものなのだ。
彼は優しい眼差しでスマホを見ながら言葉を紡ぐ。
「光流はしっかりものだからさ。我が儘とか言わないんだよ。
代わりに俺の好きな料理の写真を上げて、帰ってきて欲しい、ってアピールしてるんだ」
「えっ、そうなの!?」
「そうなんだよ。あいつは本当は甘えん坊なのに、甘え方が遠回しなんだよ。そういうとこも可愛いんだけどさ」
ヒナが苦笑する。
そんな彼の妹想いな一面を見て、夜宵はなんだか微笑ましくなった。
妹に会うために夜宵の家に泊まるのは今日で終わりにする。
それが彼の出した結論。
夜宵は思う。
もしも自分が恋する乙女なら、こういう時、光流ちゃんに嫉妬とかするのが普通なのかな? と。
よくわからなかった。
わからないということは、やはり自分に色恋はまだ早いということだろう。
「よし、じゃあ今夜はヒナの歓送会として撤ゲーしよう!」
「ほどほどにしなさい。どうせ先に寝落ちするのキミだから」
そうして、お泊り最後の夜も更けていくのだった。
昨夜と同じくナイトキャップを被り、体にはタオルケットを巻いた姿だ。
「ヒナ、髪乾かしてあげるね」
先程の気まずい空気を払拭するように、夜宵は明るく提案する。
「ああ。サンキュ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
ヒナがソファに腰を下ろすと、夜宵はその隣で膝立ちになり、ドライヤーを彼の髪に吹き掛ける。
温風を当てられて夜宵の方を向くことができないため、ヒナは自分のスマホをいじって髪を乾かし終わるのを待つ。
スマホにはLINEの新着通知が来ていた。
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その言葉通り、画面にはトロトロの目玉焼きが乗った手作り感の溢れる丸いハンバーグが写っていた。
それを見て、ヒナは決心する。
「ごめん夜宵。俺、明日にはウチに帰るわ」
「えっ」
唐突な言葉に夜宵は驚く。
彼女がドライヤーの電源を切ったところでヒナは夜宵の方を向き、自分のスマホを示して見せた。
画面を見て夜宵は感嘆の声を上げる。
「うわー、美味しそう。光流ちゃん料理上手いんだー」
しかしヒナが家に帰るという話と、この写真の関係性が見えてこなかった。
夜宵が不思議に思ってヒナに視線を戻すと、彼はポツリと呟きを返す。
「ハンバーグは俺の好物なんだよ」
「えっ、うん。そうなんだ」
と、言われてもやはり話の繋がりが見えてこない。
しかしヒナにはこのメッセージの意図がわかっていた。
きっと光流は今夜、美味しい夕食を作って仕事から帰ってきた両親と食卓を囲んでいるのだろう。
その写真を家族しか見ることのないトークルームにアップしたということは、これはヒナに向けたものなのだ。
彼は優しい眼差しでスマホを見ながら言葉を紡ぐ。
「光流はしっかりものだからさ。我が儘とか言わないんだよ。
代わりに俺の好きな料理の写真を上げて、帰ってきて欲しい、ってアピールしてるんだ」
「えっ、そうなの!?」
「そうなんだよ。あいつは本当は甘えん坊なのに、甘え方が遠回しなんだよ。そういうとこも可愛いんだけどさ」
ヒナが苦笑する。
そんな彼の妹想いな一面を見て、夜宵はなんだか微笑ましくなった。
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それが彼の出した結論。
夜宵は思う。
もしも自分が恋する乙女なら、こういう時、光流ちゃんに嫉妬とかするのが普通なのかな? と。
よくわからなかった。
わからないということは、やはり自分に色恋はまだ早いということだろう。
「よし、じゃあ今夜はヒナの歓送会として撤ゲーしよう!」
「ほどほどにしなさい。どうせ先に寝落ちするのキミだから」
そうして、お泊り最後の夜も更けていくのだった。
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