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第二章 おでかけに行きたい

#9 一日遅れのお返事

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「来てしまった」

 自分のスマホを見ながら、俺はそう呟く。
 スマホに写るのはツイッターの画面。
 何が来たと言えば、それは通知だ。
 DMに一件のメッセージが届いたことを示す通知が表示されていた。

 昨夜、ヴァンピィさんこと夜宵に向けて一緒に服を見に行こうと誘うメッセージを送った。
 既読はすぐについたので、返事もすぐ来ると思っていた。
 しかし待てども待てども一向に彼女からの反応はなく。流石に不安になって来た。
 これだけ返事に時間がかかるということは、きっと相手を困らせてしまったのだろう。
 人間関係を維持するためには、お互いの距離感を把握することが大事だ。
 俺はネットの世界ではヴァンピィさんと仲良くなったつもりでいたが、リアルに踏み込んでいい関係性ではなかったのだ。
 失敗したかもしれない。やはり出会ったばかりで二人で出かけるなんて性急過ぎたんだ。
 きっと夜宵はどうしたら穏便に断れるか、文面に悩んでいたのだろう。
 時間が経てば経つほど、返信が届くのが怖くなった。それがついさっき届いたのだ。

 怖い、読むのが怖い。
 きっと断られる。
 きつい言葉でこちらを拒絶する文面が並べられているのか、それとも社交辞令を並べ立てながら丁重にお断りされるのか。
 画面をタップしてDMを開く。たったそれだけのことにとてつもない勇気がいる。
 うう、くそお! どうせ断られてるんだろ! わかってるよ、とっとと読んでやるよ!
 DMを開き、ヴァンピィさんからのメッセージを読む。

――返信が遅くなってごめんなさい。それと誘っていただき、ありがとうございます。
――私はコミュ障だし、友達と遠くへ出かけることも今までなかったから、男の子からお出かけの誘いを貰って、正直どうしたらいいのかわかりませんでした。
――ただ誘ってもらえたこと自体はとても嬉しいです。

 あっ、これは駄目な奴だ。
 お気持ちはありがたいですが、なんやかんやの理由があって丁重にお断りしますって流れだ。

――不安な気持ちもありますが、折角のお誘いなので行きたいと思います。
――ヒナならきっと優しくエスコートしてくれるよね。

 あれ?
 あ、あれ?
 えっ、つまり、これはオッケーってこと?
 ていうか、最後の一文だけ敬語じゃなくなってて、そこが本当に夜宵の本音だってわかって。
 やべえ、メチャクチャ嬉しい。
 する! めっちゃエスコートする! 世界一優しくする!
 それから俺は舞い上がって、日付と時間の相談をDMで済ませた。
 うああああああ、そうだ、行く店とか交通手段とか調べないと。
 それとお昼食べる場所とか決めておかないと。
 服は何着てこうか?
 今から当日まで準備することは山ほどあるぞおおおおおお!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 一方その頃、夜宵と水零のLINE画面には、夜宵の魂の叫びが書き込まれていた。

『服を買いに行く服がない!』
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