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21-①

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 ディナーを終えると、どこかに立ち寄ろうかと海の方まで足を伸ばし、大きな観覧車が見える海浜公園を散歩することになった。
「蒸し暑いな」
「そうですね。明日は雨かな」
「やっぱり今日も泊まればいいのに」
「ダメですって。本当に洗濯物が溜まってるし、部屋も掃除しないと」
「じゃあ俺が華んちに泊まる」
「別に構いませんけど、掃除と洗濯で、相手してる余裕ないですよ」
「決まりだな」
「本当に来るんですか」
「なんだよ。ダメなのか」
「いや。だって、それなら着替えとかどうするんですか」
「一旦俺の家に戻る」
「二度手間じゃないですか。それにうちは狭いですよ」
「良いんだよ、俺が華のそばに居たいだけなんだから」
「……嬉しいですけど」
 大型犬が尻尾を振っているみたいにはしゃぐ響騎さんを見ていると、なんだか可愛くてつい笑ってしまう。
「そういえば、ここも八月の末に花火大会があるよな」
「ああ、そうですね。でも凄く混雑しそうですよね」
「まあな。花火大会なんてそんなもんだろ」
「凄い楽しみです」
「そうだな」
 海を眺めながらたわいない話をすると、潮風が運ぶひんやりとした風が吹き抜けて髪が乱れ、首筋が剥き出しになる。
「首、まだ痕が残ってるな」
「本当ですよ……。暑いから髪はアップにしたいのに」
「じゃあ見えないところなら良い?」
 急に艶っぽく笑った響騎さんに首筋を撫でられて、劣情を孕んだその眼差しにカッと体が熱くなる。
「見えなくてもダメです」
「俺しか見えないとこにしてやるよ」
「結局つけるんじゃないですか」
「当然」
 勝ち誇ったように笑って私を抱き寄せると、キスがしたいと小さく呟いた。
 多分、その場でキスをするのは簡単なことだと思うけど、あえてそう口にしたのは、そういう意味があるからだと思う。
「そろそろ帰りましょうか」
「ん」
 指を絡めて手を繋ぐと、駐車場までの短い道のりを、とりとめのない会話をしながら足早に歩く。
 そして車に乗り込んだ途端、淡く街灯が照らす車内で性急にキスを貪り合うと、激しく舌を絡め合ってくちゅりと卑しい水音が跳ねる。
 こんなところでこれ以上はダメ。そう思うのに、不覚にも湧き上がるトキメキと、ほんの少しの罪悪感。
 響騎さんの熱を教え込まれた体は、こんな行為にさえ拒否する声が出せない。
「蕩けちゃって、イイ顔してるな」
「……んんっ、んふぅ」
 劣情を孕んだ眼差しに射貫かれて濃厚なキスを受け入れてしまえば、意図も容易く体を翻弄されてしまう自分が情けない。
 キスに意識を奪われて酸欠で溺れそうになると、くちゅりと湿った水音が跳ねて、ワンピースに潜んだ指先がショーツを器用にずらし、蜜の溢れる箇所に沈む。
「ぁんっ」
「本当、唆る声だよ」
「こんなっ、こんなところでやめ……んんっ」
 覗き込もうと思えば外から丸見えで、こんな無防備な車の中でなんて、有りもしない視線ばかり気になって気が気じゃない。
 濃厚なキスの合間に必死で抵抗しながら、ワンピースの裾がめくれないように押さえていた手で、イタズラに動き回ろうとする逞しい腕を掴んで遠退ける。
「そんな顔してるクセに我慢か」
 わざとらしく音を立てて滑った指先を舐めると、車を発進させようとしているのか、その手がそのままハンドルを握る。
「ちょっと、これで手拭いてくださいっ」
 慌ててバッグからウェットティッシュを探して差し出すと、甘えた声で強請られる。
「拭いてくれる? 下の口から溢れちゃったジュース」
「……バカなんじゃないですか」
 揶揄うばかりで受け取る様子がないので、さっきまで翻弄されていた手を取ると、その節くれだった指を拭う度に体の奥がはしたなく疼いてしまう。
「ほらな、その顔。やっぱり欲しいんだろ」
「響騎さんッ」
「まだ腰揺れてるぞ」
「もう!」
「まあ時間はたっぷりある」
 そのまま強引に抱き寄せられて、抵抗しようと声を上げるために開いた口は唇に塞がれ、口の中を知り尽くしたように潜り込んだ舌がまた思考さえ奪っていってしまう。
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