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18-⑦
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「私なんかの、どこがいいんですか」
「華だから。華は俺の全てだ」
こんな甘い言葉は言わなかったけれど、ぶっきらぼうなのに、時折真面目な顔をして、愛しくてたまらないって目で私を見つめるビビ先輩が大好きだった。
この人は何も変わっていない。
いや、少しばかり情熱的で大人の男性になったけれど、私を見る瞳はあの頃と同じでドキドキする。
「別れたいなんて一方的に言ったこと、後悔するくらい好きにさせる自信あるぞ」
「ふふ。またその話蒸し返します?」
「可愛いな、華」
囁くような小さな声が、耳元で私の名前を愛しげに呼ぶ。
響騎さんの声が、心からの想いが、くすぐったくて嬉しくて、だらりと行き場を失っていた腕を彼の背中に回して目一杯抱き締め返した。
これ以上ない満たされた気持ちで浦野さんの熱を感じていると、不意に車の窓をノックする音が響いてビクッとする。
「あ、忘れてた」
「響騎さん?」
「ちょっと待ってろ」
響騎さんがそう言って車を停めて窓を開けると、中を覗き込むように身を屈めた男性が、彼の頭を突然容赦なく叩いたのでギョッとしてしまう。
「てめえバカ野郎、こんなとこで盛ってイチャついてんじゃねえ。ご近所さんに丸見えじゃねえか。さっさと中に車停めろ。よう華恵ちゃん、久しぶりだな」
「洋嗣さん?」
ハッとして辺りを見ると、高校の頃よく通った響騎さんの実家、整備工場の前で車は停まっていた。
洋嗣さんは響騎さんのお父さんで、おじさまと呼ぶと怒るので下の名前で呼ばせてもらっていた。だから昔の癖でつい名前を呼んでしまった。
これにいい顔をしないのは響騎さんだ。
「オッサンで良いんだよ、こんな奴」
「いや、これはもう刷り込みみたいなもので」
「ああそうですか」
機嫌を損ねた響騎さんは子どもみたいで、その拗ねた感じが可愛くて口元に手を当てて笑いを堪えると、彼はそれに気付いた途端、満足そうな笑みを浮かべて機嫌を直したらしい。
そして工場の中に車を停めると、洋嗣さんの案内で奥のご自宅にお邪魔する。
「あらよく来たわね、華恵ちゃん。本当に、素敵な女性になったわね」
「おばさま。ご無沙汰してます」
笑顔がどこか上品で、話によると浦野の血を引くお嬢様なのが、この響騎さんのお母さんだ。
そんな彼女は久々の再会を喜んでくれて熱烈なハグで迎え入れられると、そんな私たちを尻目に、洋嗣さんと浦野さんが何気なく会話し始める。
「響騎。華恵ちゃん連れてきたってことは、あの狸を負かしてきたのか」
「どうだろうな。でも勝手にしろって言わせた」
「まあ、お前にしちゃ上出来だな」
浦野さんと同じくらいガタイの良い洋嗣さんは、浦野さんを羽交い締めにして頭をグリグリすると、楽しそうに笑ってそのまま彼を先に連れて行ってしまう。
「華恵ちゃん、本当に嬉しいわ。響騎はしつこいから、呆れたんじゃないの?」
「いいえ、とんでもないです。それに私のせいで、先輩に浦野の姓を名乗ることにさせてしまって、本当にごめんなさい」
「そんなことは気にしなくていいわよ」
「でも」
つい暗い顔をしてしまう私の背中をパンと叩くと、とりあえず中に入ってと、おばさまがスリッパを出してくれる。
「華恵ちゃん、悦司のことは覚えてる?」
「悦司くんですか? もちろん覚えてますよ」
響騎さんの歳の離れた弟、いつもニコニコ元気で、出会った当時はまだ小学生だった気がする。
「華だから。華は俺の全てだ」
こんな甘い言葉は言わなかったけれど、ぶっきらぼうなのに、時折真面目な顔をして、愛しくてたまらないって目で私を見つめるビビ先輩が大好きだった。
この人は何も変わっていない。
いや、少しばかり情熱的で大人の男性になったけれど、私を見る瞳はあの頃と同じでドキドキする。
「別れたいなんて一方的に言ったこと、後悔するくらい好きにさせる自信あるぞ」
「ふふ。またその話蒸し返します?」
「可愛いな、華」
囁くような小さな声が、耳元で私の名前を愛しげに呼ぶ。
響騎さんの声が、心からの想いが、くすぐったくて嬉しくて、だらりと行き場を失っていた腕を彼の背中に回して目一杯抱き締め返した。
これ以上ない満たされた気持ちで浦野さんの熱を感じていると、不意に車の窓をノックする音が響いてビクッとする。
「あ、忘れてた」
「響騎さん?」
「ちょっと待ってろ」
響騎さんがそう言って車を停めて窓を開けると、中を覗き込むように身を屈めた男性が、彼の頭を突然容赦なく叩いたのでギョッとしてしまう。
「てめえバカ野郎、こんなとこで盛ってイチャついてんじゃねえ。ご近所さんに丸見えじゃねえか。さっさと中に車停めろ。よう華恵ちゃん、久しぶりだな」
「洋嗣さん?」
ハッとして辺りを見ると、高校の頃よく通った響騎さんの実家、整備工場の前で車は停まっていた。
洋嗣さんは響騎さんのお父さんで、おじさまと呼ぶと怒るので下の名前で呼ばせてもらっていた。だから昔の癖でつい名前を呼んでしまった。
これにいい顔をしないのは響騎さんだ。
「オッサンで良いんだよ、こんな奴」
「いや、これはもう刷り込みみたいなもので」
「ああそうですか」
機嫌を損ねた響騎さんは子どもみたいで、その拗ねた感じが可愛くて口元に手を当てて笑いを堪えると、彼はそれに気付いた途端、満足そうな笑みを浮かべて機嫌を直したらしい。
そして工場の中に車を停めると、洋嗣さんの案内で奥のご自宅にお邪魔する。
「あらよく来たわね、華恵ちゃん。本当に、素敵な女性になったわね」
「おばさま。ご無沙汰してます」
笑顔がどこか上品で、話によると浦野の血を引くお嬢様なのが、この響騎さんのお母さんだ。
そんな彼女は久々の再会を喜んでくれて熱烈なハグで迎え入れられると、そんな私たちを尻目に、洋嗣さんと浦野さんが何気なく会話し始める。
「響騎。華恵ちゃん連れてきたってことは、あの狸を負かしてきたのか」
「どうだろうな。でも勝手にしろって言わせた」
「まあ、お前にしちゃ上出来だな」
浦野さんと同じくらいガタイの良い洋嗣さんは、浦野さんを羽交い締めにして頭をグリグリすると、楽しそうに笑ってそのまま彼を先に連れて行ってしまう。
「華恵ちゃん、本当に嬉しいわ。響騎はしつこいから、呆れたんじゃないの?」
「いいえ、とんでもないです。それに私のせいで、先輩に浦野の姓を名乗ることにさせてしまって、本当にごめんなさい」
「そんなことは気にしなくていいわよ」
「でも」
つい暗い顔をしてしまう私の背中をパンと叩くと、とりあえず中に入ってと、おばさまがスリッパを出してくれる。
「華恵ちゃん、悦司のことは覚えてる?」
「悦司くんですか? もちろん覚えてますよ」
響騎さんの歳の離れた弟、いつもニコニコ元気で、出会った当時はまだ小学生だった気がする。
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