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「平気平気。ちょうど母が遊びに来ててね、宿題見てくれるから助かるわ。私はすぐ怒っちゃうからね」
「友梨さんが怒るイメージないですけど」
「怒る怒る。毎日なんかしら怒鳴ってるわよ」
子どもたちの兄弟ゲンカのエピソードを、菜穂ちゃんともその話でよく盛り上がるんだと笑いながら話す友梨さんに、家族を持つってどんな感覚なのか憧れのような気持ちが芽生える。
だけど恋人どころか、一晩限りなんて馬鹿なことをしてしまう私には、多分まだまだ先の話なんだろうけど。
「着いたよ」
「え、ここですか」
やたらと長く続く外壁に、こんな家に住める人は凄いなと思っていた矢先、その壁の終点とも言える門の前で友梨さんが足を止めた。
白亜の大御殿とは、こういう家を言うのではないだろうか。
外観は古い洋館のようにも見えるけど、手入れが行き届いていて、お化け屋敷みたいな印象はまるでなくて、高級住宅街にある富裕層が住む邸宅なのは確かだろう。
「驚いた?」
「そうですね、想像より凄く大きなお宅で」
「そうなのよ。だから管理が大変すぎて、両親は別のマンションに住んでるのよ」
友梨さんは困ったように笑うと、鍵を取り出して門を開けて中に入り、私に門を閉じるように声を掛けてから、庭を抜けて玄関のドアを開けた。
「さ、入って」
「お邪魔します」
大理石だろうひんやりとした玄関には、四畳ほどのウェイティングスペースがあって応接テーブルが置かれている。
「ヤダ、ごめん香澄ちゃん。あのバカ来てるみたい」
「えっと、管理の方ではなくてですか? 別のどなたかいらっしゃるんですか」
「うん。あ、でも気にしないで、すぐ追い出すから」
にっこり笑う友梨さんにそう言われ、改めて玄関を見ると、紳士物の靴が確かに脱ぎ散らかした状態で放り出されている。
友梨さんの知り合いで、この家に勝手に入れる人がいるということだろうか。
「ごめんね香澄ちゃん、とりあえずリビングに行こうか」
「え? あ、はい」
先導する友梨さんの後を追って、豪奢な造りの玄関ホールを抜けて廊下を進むと、一つ目の扉を開けた広いリビングに案内される。
「ここは冷房が入ってるみたいね。とりあえず、お茶とお菓子用意するから、悪いけど香澄ちゃんは、ここで待っててもらえるかしら」
「そんな、お気遣いなく。お部屋を見たらすぐにお暇しますから」
「良いの良いの。部屋も何個かあるから、どこの部屋が良いか見てもらわないといけないし」
友梨さんに座るように促されたソファーに腰掛けると、部屋中に飾られたおしゃれなインテリアに視線を走らせて、生まれて初めて見る暖炉に目を奪われる。
「私、暖炉って初めて見ました」
「そうだよね、滅多に見ることないよね。うちの両親は普通の会社員だけど、祖父の代までは手広く事業をしてたから、不動産がいくつか残ってるのよ。ここもその一つね」
「凄いですね。別世界の話っぽいです」
「私にとってもそうよ。実際、親に遺されても困るから、亡くなるまでに処分するように言ってるんだけどね。あ、でもまだまだ先の話だから」
友梨さんはそう言い残すと、お茶の支度をしてくるからと言って部屋を出て行った。
「こんな豪邸に住めと?」
一人残されて改めて部屋を見渡すと、そんな言葉が口から漏れる。
センスの良いインテリア雑貨に観葉植物、外観と違って内装はリフォームしてあるのか、古い感じは一切なくてこのリビングだけしか見てないけど、洗練されたイメージだ。
それにリビングの窓の外はウッドデッキが張り出していて、さっき通ってきた広い庭が見える。
「ここでビール飲んだら美味しいだろうな」
「友梨さんが怒るイメージないですけど」
「怒る怒る。毎日なんかしら怒鳴ってるわよ」
子どもたちの兄弟ゲンカのエピソードを、菜穂ちゃんともその話でよく盛り上がるんだと笑いながら話す友梨さんに、家族を持つってどんな感覚なのか憧れのような気持ちが芽生える。
だけど恋人どころか、一晩限りなんて馬鹿なことをしてしまう私には、多分まだまだ先の話なんだろうけど。
「着いたよ」
「え、ここですか」
やたらと長く続く外壁に、こんな家に住める人は凄いなと思っていた矢先、その壁の終点とも言える門の前で友梨さんが足を止めた。
白亜の大御殿とは、こういう家を言うのではないだろうか。
外観は古い洋館のようにも見えるけど、手入れが行き届いていて、お化け屋敷みたいな印象はまるでなくて、高級住宅街にある富裕層が住む邸宅なのは確かだろう。
「驚いた?」
「そうですね、想像より凄く大きなお宅で」
「そうなのよ。だから管理が大変すぎて、両親は別のマンションに住んでるのよ」
友梨さんは困ったように笑うと、鍵を取り出して門を開けて中に入り、私に門を閉じるように声を掛けてから、庭を抜けて玄関のドアを開けた。
「さ、入って」
「お邪魔します」
大理石だろうひんやりとした玄関には、四畳ほどのウェイティングスペースがあって応接テーブルが置かれている。
「ヤダ、ごめん香澄ちゃん。あのバカ来てるみたい」
「えっと、管理の方ではなくてですか? 別のどなたかいらっしゃるんですか」
「うん。あ、でも気にしないで、すぐ追い出すから」
にっこり笑う友梨さんにそう言われ、改めて玄関を見ると、紳士物の靴が確かに脱ぎ散らかした状態で放り出されている。
友梨さんの知り合いで、この家に勝手に入れる人がいるということだろうか。
「ごめんね香澄ちゃん、とりあえずリビングに行こうか」
「え? あ、はい」
先導する友梨さんの後を追って、豪奢な造りの玄関ホールを抜けて廊下を進むと、一つ目の扉を開けた広いリビングに案内される。
「ここは冷房が入ってるみたいね。とりあえず、お茶とお菓子用意するから、悪いけど香澄ちゃんは、ここで待っててもらえるかしら」
「そんな、お気遣いなく。お部屋を見たらすぐにお暇しますから」
「良いの良いの。部屋も何個かあるから、どこの部屋が良いか見てもらわないといけないし」
友梨さんに座るように促されたソファーに腰掛けると、部屋中に飾られたおしゃれなインテリアに視線を走らせて、生まれて初めて見る暖炉に目を奪われる。
「私、暖炉って初めて見ました」
「そうだよね、滅多に見ることないよね。うちの両親は普通の会社員だけど、祖父の代までは手広く事業をしてたから、不動産がいくつか残ってるのよ。ここもその一つね」
「凄いですね。別世界の話っぽいです」
「私にとってもそうよ。実際、親に遺されても困るから、亡くなるまでに処分するように言ってるんだけどね。あ、でもまだまだ先の話だから」
友梨さんはそう言い残すと、お茶の支度をしてくるからと言って部屋を出て行った。
「こんな豪邸に住めと?」
一人残されて改めて部屋を見渡すと、そんな言葉が口から漏れる。
センスの良いインテリア雑貨に観葉植物、外観と違って内装はリフォームしてあるのか、古い感じは一切なくてこのリビングだけしか見てないけど、洗練されたイメージだ。
それにリビングの窓の外はウッドデッキが張り出していて、さっき通ってきた広い庭が見える。
「ここでビール飲んだら美味しいだろうな」
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