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2.⑤
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そのあまりにも優しい声に、今日初めて会ったはずなに気を許し過ぎてると思いながらも、私は涙を止められなくて、肩を振るわせながら声を殺して泣いた。
その間、鈴浦さんはまた無言でハンカチを差し出して、私の背中をトントンと優しく撫でると、もっと賑やかな場所にしてあげれば良かったねと呟くから、心にジンときた。
(優しいなあ、もう)
初対面の鈴浦さんの口から、誰かに言って欲しかった優しい言葉が出たと思うと、辛さを理解してくれた嬉しさと、自分への情けなさで余計に涙が出てしまう。
私にとって大輔への気持ちは、決して切れずに持て余すような腐れ縁なんかじゃなかった。
物心ついた時から大輔の言葉や表情に一喜一憂し、彼に彼女ができる度に落ち込んだ。だからこそ、大輔が私との結婚を視野に入れた話をする度に、どうしようもなく幸福で堪らなかった。
でもそれは受け身過ぎたのだと、今頃になって反省したところで現実を変えることは出来ない。
あまりにも子供染みた自分の情けなさに苦笑して、やっと気持ちが落ち着いてくると、鈴浦さんは私に配慮してなのか、パンケーキを黙って口に運んで自然を装ってくれている。
ただ側に居てくれるだけで、こんなにも心強いことがあるなんて、鈴浦さんには感謝してもし切れないなと反省して、私はようやく泣き止んで顔を上げた。
「鈴浦さん」
「ん?」
「ありがとうございました。泣いたらちょっとスッキリしました」
「そっか。我慢ばっかりはしんどいからね」
「なんだか私ばっかり。鈴浦さんだって辛い思いをされたのに、気遣っていただいてすみません」
「気を遣った訳じゃないから気にしないで。それに俺のことは良いよ。家に帰って一人で枕を濡らすから」
パンケーキを頬張りながらおどけた様子で鈴浦さんは笑うけど、最後の言葉はきっと正直な気持ちなんだろうと思うと一緒になって笑うことが出来ない。
「泣くのは格好悪いことじゃないと思います」
「……うん」
「だから鈴浦さんも、無理しないでくださいね」
「無理か。そうだね、無理してるのかも」
「鈴浦さん……」
「慰めてって言ったらどうするの」
「え?」
「パーティーに出るつもりだったなら、この後の予定はなくなったよね」
「ええ、まあそうですけど」
「もう少し、ゆっくり話したいんだけど」
呟くように答えると、鈴浦さんの手がそっと私の手に重なる。
「あ、の……」
「ダメかな」
ダメというのはどういう意味なんだろうか。
いや、この熱い眼差しの意味ならなんとなく察しがつく。
「ダメ……ではないです」
「優しいね。絆されやすいのかな」
鈴浦さんは自分から誘ったくせにそんなことを言う。随分とイジワルな反応にカッと顔が熱くなる。
「お話を聞くだけです」
「ごめん。ちょっとイジワルだったね」
そう言いながらも鈴浦さんは、私の手の甲をゆっくりと撫でて指先を遊ばせるのをやめない。
「あの、手を」
「ん?」
分かっているくせに、勿体ぶるように私の顔を見つめて首を傾げる。意味ありげに手をなぞられて、こんな美しい顔で見つめられたら、いくら私でも変な期待が生まれてしまう。
「鈴浦さん、あの」
「なあに」
その間、鈴浦さんはまた無言でハンカチを差し出して、私の背中をトントンと優しく撫でると、もっと賑やかな場所にしてあげれば良かったねと呟くから、心にジンときた。
(優しいなあ、もう)
初対面の鈴浦さんの口から、誰かに言って欲しかった優しい言葉が出たと思うと、辛さを理解してくれた嬉しさと、自分への情けなさで余計に涙が出てしまう。
私にとって大輔への気持ちは、決して切れずに持て余すような腐れ縁なんかじゃなかった。
物心ついた時から大輔の言葉や表情に一喜一憂し、彼に彼女ができる度に落ち込んだ。だからこそ、大輔が私との結婚を視野に入れた話をする度に、どうしようもなく幸福で堪らなかった。
でもそれは受け身過ぎたのだと、今頃になって反省したところで現実を変えることは出来ない。
あまりにも子供染みた自分の情けなさに苦笑して、やっと気持ちが落ち着いてくると、鈴浦さんは私に配慮してなのか、パンケーキを黙って口に運んで自然を装ってくれている。
ただ側に居てくれるだけで、こんなにも心強いことがあるなんて、鈴浦さんには感謝してもし切れないなと反省して、私はようやく泣き止んで顔を上げた。
「鈴浦さん」
「ん?」
「ありがとうございました。泣いたらちょっとスッキリしました」
「そっか。我慢ばっかりはしんどいからね」
「なんだか私ばっかり。鈴浦さんだって辛い思いをされたのに、気遣っていただいてすみません」
「気を遣った訳じゃないから気にしないで。それに俺のことは良いよ。家に帰って一人で枕を濡らすから」
パンケーキを頬張りながらおどけた様子で鈴浦さんは笑うけど、最後の言葉はきっと正直な気持ちなんだろうと思うと一緒になって笑うことが出来ない。
「泣くのは格好悪いことじゃないと思います」
「……うん」
「だから鈴浦さんも、無理しないでくださいね」
「無理か。そうだね、無理してるのかも」
「鈴浦さん……」
「慰めてって言ったらどうするの」
「え?」
「パーティーに出るつもりだったなら、この後の予定はなくなったよね」
「ええ、まあそうですけど」
「もう少し、ゆっくり話したいんだけど」
呟くように答えると、鈴浦さんの手がそっと私の手に重なる。
「あ、の……」
「ダメかな」
ダメというのはどういう意味なんだろうか。
いや、この熱い眼差しの意味ならなんとなく察しがつく。
「ダメ……ではないです」
「優しいね。絆されやすいのかな」
鈴浦さんは自分から誘ったくせにそんなことを言う。随分とイジワルな反応にカッと顔が熱くなる。
「お話を聞くだけです」
「ごめん。ちょっとイジワルだったね」
そう言いながらも鈴浦さんは、私の手の甲をゆっくりと撫でて指先を遊ばせるのをやめない。
「あの、手を」
「ん?」
分かっているくせに、勿体ぶるように私の顔を見つめて首を傾げる。意味ありげに手をなぞられて、こんな美しい顔で見つめられたら、いくら私でも変な期待が生まれてしまう。
「鈴浦さん、あの」
「なあに」
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