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受難
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アシュは、グレンの父王から御役御免の許可を得て、城を1人出た。
だが、あれだけ自由になる事を望んでいたはずなのに…
何故か、自分自身の体が足元がフワフワフラフラと頼りない。
そう…まるで、アシュの心を、城に置いて来てしまったように心元無かった。
それから急に…ポツポツと小雨が降ってきた。
これもまるで、アシュの代わりに誰かが泣いてくれているようだった。
暫く頭から濡れながら歩き、実家にかなり近くなると、町角のパン屋、肉屋、通りすがりの人達がアシュを見て、ヒソヒソ話しているのが分かった。
実家近所の噂はとにかく、下世話な話し程出回るのが早い。
ほんの数時間で、アシュが城に王子の愛人として上がった事が皆に知れてしまった事を彼は察した。
そして、いちいち反応するのもイヤなので、ただ黙々と歩いて人通りの少ない路地を選び入った。
だが…突然
アシュは、背後から何者かにハンカチに含まれた何かをかがされ、意識を無くした。
それから、どれ位時間がたったのか…
アシュは、まだまだ虚ろながら意識が戻った。
しかし、瞼は重くて開かない。
体も指一つ動かせ無い。
でも…
誰かが、どこか柔らかい上に横たわるアシュの髪を優しく撫でているのは分かる。
「う…ん…」
その手付きがグレンに似ていたので、アシュはそれを、心地良さそうな唯一今出せる声で受けいれた。
やがてその手は、アシュのおでこの生え際や閉じたままの瞼、頬を、やたら時間をかけて愛撫しながら降りていく。
「う…ん…う…ん」
アシュは、絶対にグレンだと思いその気持ち良さに、まだ意識がハッキリしない中、体の芯が溶け始めていた。
(グレン様…グレン様…)
やがて徐々に意識がハッキリし、アシュは、そう心の中で呼んだ男が絶対に目の前にいると瞼を上げた。
しかし…
「えっ?!」
柔らかいベッドに横たわるアシュを、上から覆いかぶさるようにして見詰めていたのは…
全く違う、見ず知らずの男だった。
しかも、
グレンに負けず劣らずの逞しい体躯。
そして、美しい長い金髪と整った冷静そうな美貌を持っていた。
だが、あれだけ自由になる事を望んでいたはずなのに…
何故か、自分自身の体が足元がフワフワフラフラと頼りない。
そう…まるで、アシュの心を、城に置いて来てしまったように心元無かった。
それから急に…ポツポツと小雨が降ってきた。
これもまるで、アシュの代わりに誰かが泣いてくれているようだった。
暫く頭から濡れながら歩き、実家にかなり近くなると、町角のパン屋、肉屋、通りすがりの人達がアシュを見て、ヒソヒソ話しているのが分かった。
実家近所の噂はとにかく、下世話な話し程出回るのが早い。
ほんの数時間で、アシュが城に王子の愛人として上がった事が皆に知れてしまった事を彼は察した。
そして、いちいち反応するのもイヤなので、ただ黙々と歩いて人通りの少ない路地を選び入った。
だが…突然
アシュは、背後から何者かにハンカチに含まれた何かをかがされ、意識を無くした。
それから、どれ位時間がたったのか…
アシュは、まだまだ虚ろながら意識が戻った。
しかし、瞼は重くて開かない。
体も指一つ動かせ無い。
でも…
誰かが、どこか柔らかい上に横たわるアシュの髪を優しく撫でているのは分かる。
「う…ん…」
その手付きがグレンに似ていたので、アシュはそれを、心地良さそうな唯一今出せる声で受けいれた。
やがてその手は、アシュのおでこの生え際や閉じたままの瞼、頬を、やたら時間をかけて愛撫しながら降りていく。
「う…ん…う…ん」
アシュは、絶対にグレンだと思いその気持ち良さに、まだ意識がハッキリしない中、体の芯が溶け始めていた。
(グレン様…グレン様…)
やがて徐々に意識がハッキリし、アシュは、そう心の中で呼んだ男が絶対に目の前にいると瞼を上げた。
しかし…
「えっ?!」
柔らかいベッドに横たわるアシュを、上から覆いかぶさるようにして見詰めていたのは…
全く違う、見ず知らずの男だった。
しかも、
グレンに負けず劣らずの逞しい体躯。
そして、美しい長い金髪と整った冷静そうな美貌を持っていた。
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