12 / 12
咆哮
しおりを挟む
「嘘!嘘よ!私が幽霊なんて嘘よ!絶対違う!私は幽霊なんかじゃない!私はまだ死んでなんかないわ!」
エリザベートは叫び、ベッドの上でゼインにしがみついた。
「ゼイン、そいつは危険だ…こっちへ来い!」
グレイの長髪の男が、少し離れた所からゼインに向かい手を差し出す。
途端に…何故か分からないが…
この前、雪の窓越しに初めてチラリと見た、ただそれだけの男のはずなのに…
ゼインの胸はドクドクと激しく鼓動を打ち、異様に熱くなる。
ずっと前から知っているような、どこか懐かしくて、切なくて泣きたくなる。
「さぁ…ゼイン…私の所へ来い…来い…ゼイン…」
グレイの髪の男の声は命令口調だが、どこか愛の囁やきのような滴るような甘さがある。
ゼインは体がたまらなくなり、その言葉に従いベッドを降りようとした。
だが…
「ダメ!行っちゃダメ!アイツはもの凄く悪い奴なの!」
エリザベートが、尚小さい手で必死にしがみつく。
「エリザベート?」
ゼインが戸惑って彼女の顔を覗きこむと、涙が溢れ出したブルーのはずの瞳が白く光っていた。
そして…
「ダメ…行ってはダメ…もう…寂しいのは嫌…嫌なの…お前は、私の兄上になるのよ。それに、あの男は…あの男は邪狼神だから…行ってはダメ!」
エリザベートのその声は、幼女と思えない低い男のもののように変わっていた。
(邪狼神?…彼が?…)
ゼインは、グレイの髪の男を見て
体を固めた。
(なら…俺が教皇様の為に殺すの
は、彼なのか?…)
呆然としていると、突然…
エリザベートの横で同じようにゼインにしがみついていたかわいいグリーンドラゴンが、羽を広げ飛んで、グレイの髪の男の前に降り立った。
バキバキバキバキバキバキ!
ミチミチミチミチミチミチ!
あんなに小さかったドラゴンの体が、耳障りな音を立て…
みるみるこの部屋の高い天井ギリギリまで背が伸びた。
体全体もおぞましい程に筋骨隆々に变化し、目付きも血走り凶暴になった。
「グオーー!!!グオーー!!!グオーー!!!グオーー!!!」
巨大化したドラゴンは、グレイの髪の男に向かい激しく咆哮しながら片足を踏み鳴らした。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
その衝撃で、部屋の高価そうな花瓶や絵画が落ちて破壊され、家具の幾つかが倒れ、壁にも複数の亀裂が入った。
しかし、グレイの髪の男は、その声の起こす強い風に髪を靡かせながら、地響きにも腕組し全く平然とし動じない。
「ジータ!邪狼神をやっておしまい!」
エリザベートは、又野太い声で、
グリーンドラゴンに命令した。
エリザベートは叫び、ベッドの上でゼインにしがみついた。
「ゼイン、そいつは危険だ…こっちへ来い!」
グレイの長髪の男が、少し離れた所からゼインに向かい手を差し出す。
途端に…何故か分からないが…
この前、雪の窓越しに初めてチラリと見た、ただそれだけの男のはずなのに…
ゼインの胸はドクドクと激しく鼓動を打ち、異様に熱くなる。
ずっと前から知っているような、どこか懐かしくて、切なくて泣きたくなる。
「さぁ…ゼイン…私の所へ来い…来い…ゼイン…」
グレイの髪の男の声は命令口調だが、どこか愛の囁やきのような滴るような甘さがある。
ゼインは体がたまらなくなり、その言葉に従いベッドを降りようとした。
だが…
「ダメ!行っちゃダメ!アイツはもの凄く悪い奴なの!」
エリザベートが、尚小さい手で必死にしがみつく。
「エリザベート?」
ゼインが戸惑って彼女の顔を覗きこむと、涙が溢れ出したブルーのはずの瞳が白く光っていた。
そして…
「ダメ…行ってはダメ…もう…寂しいのは嫌…嫌なの…お前は、私の兄上になるのよ。それに、あの男は…あの男は邪狼神だから…行ってはダメ!」
エリザベートのその声は、幼女と思えない低い男のもののように変わっていた。
(邪狼神?…彼が?…)
ゼインは、グレイの髪の男を見て
体を固めた。
(なら…俺が教皇様の為に殺すの
は、彼なのか?…)
呆然としていると、突然…
エリザベートの横で同じようにゼインにしがみついていたかわいいグリーンドラゴンが、羽を広げ飛んで、グレイの髪の男の前に降り立った。
バキバキバキバキバキバキ!
ミチミチミチミチミチミチ!
あんなに小さかったドラゴンの体が、耳障りな音を立て…
みるみるこの部屋の高い天井ギリギリまで背が伸びた。
体全体もおぞましい程に筋骨隆々に变化し、目付きも血走り凶暴になった。
「グオーー!!!グオーー!!!グオーー!!!グオーー!!!」
巨大化したドラゴンは、グレイの髪の男に向かい激しく咆哮しながら片足を踏み鳴らした。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
その衝撃で、部屋の高価そうな花瓶や絵画が落ちて破壊され、家具の幾つかが倒れ、壁にも複数の亀裂が入った。
しかし、グレイの髪の男は、その声の起こす強い風に髪を靡かせながら、地響きにも腕組し全く平然とし動じない。
「ジータ!邪狼神をやっておしまい!」
エリザベートは、又野太い声で、
グリーンドラゴンに命令した。
0
お気に入りに追加
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
完結【日月の歌語りⅠ】腥血(せいけつ)と遠吠え
あかつき雨垂
BL
◆◇謎に包まれた吸血鬼×生真面目な人狼◇◆
《あらすじ》ある人狼に追われる年経た吸血鬼ヴェルギル。退廃的な生活を送ってはいたけれど、人外の〈協定〉の守護者である、人狼達の〈クラン〉に追われるほどの罪は犯していないはずだった。
ついに追い詰められたヴェルギルは、自分を殺そうとする人狼クヴァルドの美しさに思わず見とれてしまう。鋭い爪が首に食い込むのを感じながら、ヴェルギルは襲撃者が呟くのを聞いた。
「やっと……やっと追い詰めた」
その声に祈りを連想したのは、頭をひどく打ったからだろうか──。
だが、彼の望みは想い人の復讐だった。
「人違いだ」と説明するも耳を貸さないクヴァルドに捉えられ、人狼の本拠地へと連行されるヴェルギル。そして天敵同士である人狼と吸血鬼は、手を組んで同じ敵を追うことになるが──。
「吸血鬼」小さな声で、クヴァルドが言った。「なんで、俺を?」
同じことを、ヴェルギルもまた自問していた。
何故、この男なのだ?
イムラヴの血を引く人狼は珍しい。だが、それだけが理由ではない。見事な毛皮に惹かれたからか? あるいは、哀れを催すほど真面目で高潔だから? 故郷の歌を見事に歌い上げたあの声のせいか? それとも、満たされない憧憬を抱えた彼に同情した?
わからない。これほど不確かなことがこの世に存在することを、いま初めて知った。
ヴェルギルは口の中で、〈嘘の守護者〉リコヴへの祈りを口にした。それから肩をすくめて、こともなげに言った。
「わたしは悪食でね」
それぞれの思惑を抱えつつ、激しく惹かれてゆくふたり。だが、ヴェルギルにはどうしてもクヴァルドを裏切らねばならない理由があった。やがてふたりの道行きに、国中を戦禍に巻き込みかねない陰謀の暗雲が立ちこめ──!?
異世界の島国・ダイラを舞台にした、ハイファンタジーBL《日月の歌語り》シリーズ1作目。
ようよう白くなりゆく
たかせまこと
BL
大学時代からつきあっていた相手に、実は二股かけられていた。
失恋して心機一転を図ったおれ――生方 郁――が、出会った人たちと絆を結んでいく話。
別サイトにも掲載しています。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ゴミ捨て場で男に拾われた話。
ぽんぽこ狸
BL
逃げ出してしまった乎雪(こゆき)にはもう後が無かった。これで人生三回目の家出であり、ここにきて人生の分岐点とも思われる、苦境に立たされていた。
手持ちのお金はまったく無く、しかし、ひとところに留まっていると、いつの間にか追いかけてきた彼に出くわしてしまう。そのたびに、罵詈雑言を浴びせられるのが、心底いやで気力で足を動かす。
けれども、ついに限界がきてそばにあった電柱に寄りかかり、そのまま崩れ落ちて蹲った。乎雪は、すぐそこがゴミ捨て場であることにも気が付かずに膝を抱いて眠りについた。
目を覚まして、また歩き出そうと考えた時、一人の男性が乎雪を見て足を止める。
そんな彼が提案したのは、ペットにならないかという事。どう考えてもおかしな誘いだが、乎雪は、空腹に耐えかねて、ついていく決心をする。そして求められた行為とペットの生活。逃げようと考えるのにその時には既に手遅れで━━━?
受け
間中 乎雪(まなか こゆき)24歳
強気受け、一度信用した人間は、骨の髄まで、信頼するタイプ。
攻め
東 清司(あずま せいじ)27歳
溺愛攻め、一見優し気に見えるが、実は腹黒いタイプ。
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる