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コッペパン2

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あーちゃんは、スクランブルエッグコッペパンが大好きだった。

だが、正確には…

翔太の作る、スクランブルエッグコッペパン…と言うべきだ。

翔太は、小さい頃から料理が得意で、よく卵の好きなあーちゃんの為に、おやつとして作って上げて一緒に仲良く食べた。

これが…たまたま偶然なのか?

それとも…やはり、目の前の彼は、あーちゃんなのか?

翔太は、一度あーちゃんを忘れたフリをする事に決めたものの、心が揺らぐ。

揺らぎ過ぎて、思わず体が固まった。

そして篤志の方は、動けないままトレーの上のパンを見詰める翔太を見て…

自分が勝ったと、「あーちゃん?」と、忘れているフリをしている篤志に尋ねてくれると口元に笑みを浮かべたが…

次の瞬間には、わざと戸惑う演技をして言った。

「あの…」

「あっ!すいません!すぐ、袋に入れますから!」

我に返った翔太は、耳まで真っ赤にすると、慌てて袋詰め作業して
会計もした。

でも、やはり…

目の前の彼に、あーちゃんかどうか?

その一言がどうしても聞けない。

「ありがとうございました…」

情けなく、震えそうになる指を堪え笑顔を造り、パンを入れた白いビニール袋を渡した。

一瞬、目の前の彼が、眉間に皺を寄せた気がしたが、翔太は貼り付けたような笑顔のまま彼の背中を見送った。

又、店頭は、翔太一人になった。

そして…

後悔なのかなんなのか分からないモノに一気に翔太の心は支配された。

これで良かったのか?悪かったのかも分からない。

けれど、ただ一つ分かるのは…

今すぐ泣きたいくらい…悲しいと言うことだけだった。

もう、二度と会う事は無いかもしれない…

そう…もう、二度と…

それから…

家に帰っても、食事をしても、ずっとその事ばかりが頭に浮かび、
次の日、祝日になった。

翔太は、祝日は開店から店を手伝う事になっていた。

体も心も重かったが、いつものように慣れた手付きで早めに開店準備を済ませた直後…

この日は、開店時間9時になった途端すぐに店の自動ドアが開いた。

だが、その客の姿に、翔太は唖然とした。

再び、昨日の彼が来店したのだ。

そして、今回は悩む素振りも無
く、凄いスピードで商品を選び、翔太のいる会計カウンターに持ってきた。

翔太は、カウンターに置かれたトレーの上の商品を見て、又、唖然とした。

そこには、又、すでに一つ一つ透明な袋入りのスクランブルエッグコッペパンが2つ、仲良さそうにぴったりくっついて並んでいた。




















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