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想いは雪の下へ
しおりを挟むシンシンと。空から静かに優しく、そして冷たく雪が舞い降りる。
もう、指一本動かすことも出来ない私には、自身の体に積もっていく雪を払う事が出来ない。
私の体からは咲き誇るかのように、赤い花が広がるのが止まらないが、雪はそれを覆い隠すかのように静かに静かに降り続いていく。
「ははっ……。私らしい最後と言えるのだがな」
国の為に戦い、王を王子を、姫を守って戦って来た。
あの、優しい王家の方々を守って散って行けるのならば、それこそ騎士の誉れというもの。後悔などすることも無い。
「……、いや、そうでも無いか」
戦いに行く時に、姫に泣きつかれた。
行かないで欲しいと。私の傍にいて欲しいと。
誰よりも優しく、そして美しかった姫。お傍で長く仕える事が出来、家族のいなかった私には、どれだけ救われた事だろうか。
出来るならば、ずっとお傍にいたかった。貴女がやがて婚約者の国に嫁がれる時が来ても。お傍でお守りしていたかった。
『 ──、これからも傍にいてね。約束よ』
あぁ、約束を守れなくなってしまった。騎士として失格だ。お許しください。
……本当は、私は本当は……姫様と……。
……、いや、私のこの胸の内にある愚かな感情には、蓋をしてしまおう。そして、このまま誰にもこの気持ちを知られること無く、冷たくなる体と共に無くなればいいのだ。
「姫様……どうぞ貴方様に、これから先幸多からん事を」
呟きは声にならず、血を吐くだけとなり、やがてその血すらも私ごと全て、全てが雪の下に埋もれ、そして消えていった。
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