34 / 42
高校生編
29 春の海で(7)
しおりを挟む
調理場まで行くと礼央くんはもうきていた。
僕もエプロンを借りて、手を洗って準備万端。
お昼はソーキそば、ミニタコライスとモリモリ!
僕のたっての要望でシークァーサードレッシングが知りたかったのでシークァーサードレッシングを使ってチョップドサラダを作ってもらうことにした。
チョップドサラダには青パパイヤを使うらしい。
ソーキそば用のソーキを煮込む。
黒糖と泡盛を使って醤油と生姜を入れて臭み消しに長ネギの頭も入れておく。
ダシはカツオと鶏ガラ。
麺は出来合いのもので与那覇さんの知り合いの製麺所から取り寄せてるらしい。
タコライス用のお肉はウスターソースとケチャップにチリパウダーを混ぜるのが基本らしい。あとは醤油とお砂糖とお酒。
これなら寮でも作れそう。
ソーキも角煮で作れば沖縄そばって名前になって簡単だと教えてもらった。
料理を作りながら礼央くんと僕は与那覇さんに色々と質問していく。
豚肉を使った料理が多くて、あとはランチョンミートもよく使うらしい。
南国特有の野菜なんかも使うけど、今の時代なら普通にスーパーや通販で手に入るから帰ってからも作れそう。
「そういえば与那覇さんも番持ちなんですよね?」
「お?ああ、ここで働く条件として番持ちのアルファかオメガと決まってるからな。俺んとこは『運命の番』じゃないけどな。」
「へぇ。」
「まぁ、凛様も居るし、未央様も番無しだから。都築さん…って本家の料理長からの紹介で今回来たんだけど、俺に声かけたのもそもそも俺が番持ちだったからな。」
あ、シェフさんって都築さんっていうのか…。
そうか僕も未亜さんも番がまだいないから、なんかあったらたいへんだもんな。
「そういえば凛連絡したの?」
「あ、うん。唯にも連絡したんだけど…ものすごい肉食系女子みたいな提案されて困っちゃった。」
「はは、唯っぽいね。なんとかなりそう?」
「うーん。頑張ってみる。」
「凛様誘惑でもするんですか?」
「あ!え…っとはい…。」
「ははは、凛様に言われれば大翔様も喜ばれるんじゃないですか?」
「そ、そうですかね…?与那覇さんも番のお相手に、その…誘惑されたら嬉しいですか?」
「うちのにですか?そら嬉しいですよ。尻尾振って頑張っちゃいますね。」
が!!!頑張っちゃうのか…そうか…大翔も嬉しいって思ってくれるかな…。
「男は単純な生き物ですからね、そら大好きな相手に言われて嫌になんてなりませんよ。シャツの裾でもちょっと握って上目遣いでお願いすれば100%ですよ。」
ふむふむ…シャツの裾をちょんと握って上目遣い…。
上に乗っかれっていう唯の提案よりは実行できそうかも…。
「それならできるかな…。」
「何かあれば相談に乗りますよ。」
「うん、ありがとうございます。」
「凛、ヒロくんにあんまり心配させないようにね。」
「わかってるよ!」
礼央くんは心配性だな、大丈夫!…だと思う…。
料理も準備できた。
作りたいと思ってたシークァーサードレッシングもレシピを教えてもらえたから寮でも作ろう!
気づけば時計の針はてっぺんを少し過ぎた頃、与那覇さんにお礼を言って礼央くんと僕は食堂へ戻るとみんな既に揃っていた。
「大翔!お仕事終わった?」
「ああ、終わったよ。凛はどうだった?」
「うん、いろいろ教えてもらった!」
そう、色々教えてもらった。料理のこともだけど、今一番の課題である大翔を誘惑する作戦についても助言貰えたし。がんばるぞ!
「ふふ、なんか楽しそう。」
「うん。がんばるね!」
「…何を?」
「ないしょ!」
ふふふ!何となくできそうなことが見つかったら急にやる気が出てきてしまった!
この時大翔がちょっと不満そうな顔をしていた事に、僕は気付いていなかった。
「大翔、これ礼央くんと僕が作ったんだけどどう?」
「ん、美味しいよ。」
「良かった!寮でも作るね。」
「ああ。」
みんなでご飯を食べて、コーヒーをのんでリビングでまったり過ごす。
この島に来た時はみんなゆったり過ごすんだって。
夏場に来た時は泳いだりするらしいけど、海開きは終わってるらしいけど今日は少し涼しいから泳ぐことは出来ない。
ゴールデンウィークの時期でも暖かい日はシュノーケリングなら出来るらしいから居る間に出来たらいいな。
そんな話をしながらまた各自ヴィラに戻っていく。
未亜さんは今日は一番近くの島に友達を迎えに行くらしい。
僕たちもヴィラに戻る前に少し浜辺を散歩しようとリビングを出ようとすると、与那覇さんに話しかけられた。
「凛様。」
「あ、与那覇さん。」
「これ、今日のランチのレシピです。礼央様の分もあるので後でお渡しいただけますか?」
「ありがとうございます!」
レシピだ!よかった!頭では覚えてたから後でまとめようと思ってたんだけど、これがあればまとめる必要はなさそう。
「頑張ってくださいね。」
「ふふ、ありがとうございます。がんばりますね。」
コソッと小声で応援されてしまった。
僕は笑顔で頷いて大翔の元に戻る。
「どうしたの?」
「今日のレシピ貰ったんだ。」
「…随分仲良くなったんだね。」
「そ、そうかな?」
あの相談の件は大翔に話せないから、なんとなく誤魔化して見たけど…大翔は納得してなさそうな顔だ。
僕は大翔の腕をとって散歩に行こうと促すと、ちょっと憮然とした態度だけど歩き出してくれた。
木製のアプローチを歩いて浜辺に出る。
昨晩のハンモックはすでに片付けられてた。僕はサンダルを脱いで裸足で砂浜を歩く。
すごく細かい白浜の砂は柔らかくて裸足で歩くと気持ちがいい。
さっきもらったレシピは封筒に入れられていたので持ってきていたサコッシュにしまって、片手にサンダル。空いた方の手で大翔と手を繋いで砂浜を歩く。
「ねえ、凛?」
「なぁに?」
「…さっき与那覇さんと何話してたの?」
「ん?あーーー、料理のこと相談してたんだ。」
「ふーん。」
「大翔?」
僕が歩こうとすると大翔はその場に立ち止まってしまった。
大翔は僕の手を引き寄せて僕を腕の中に閉じ込める。
「大翔?」
大翔が正面から僕の体をぎゅっと抱きしめる。
僕の肩に額を乗せているから表情は見えない。
そっと大翔の背中に手を回してポンポンと優しく叩いてみるけど、大翔は全然動かない。
大翔の首筋に鼻を寄せると、少しだけ大翔の香りがする。でもいつもみたいに甘くなくって、少し不安を感じる香り。
昔何かの本で読んだ、『運命の番』の場合番う前でも相手の香りで感情を読めることがあるらしい。
相手のフェロモンに混じる汗の成分が微妙に変化するのを感じることができるとか。
だから今この大翔から感じる、香りに混じる少しの違和感。
大翔は不安なの…?
「大翔…部屋、もどろ?」
「…りん。」
「なに?」
「何隠してるの?」
…僕が感じてるってことは、大翔も勿論この匂いの違いを感じてるって事だ。
僕は人よりフェロモンの量が少ないって言われてるし、今だってヒートをできるだけ遅らせるために少しだけ強い薬を処方してもらってる。
だから本当に少ししか香っていない筈。
香りじゃなくて、僕の表情とかでも直ぐバレちゃうんだった。
「…凛…、あの人には話すのに俺には話してくれないの?」
あの人って、与那覇さんの事?かな?…話せないのは大翔との事だからなんだけど…。
今言ってもいいかな…。
これ以上隠そうとしても多分…大翔のこと不安にさせちゃうばかりな気がする。
「…あのね、相談してたの。でも、与那覇さんだけじゃなくて、礼央くんとか、明くんとか…あと姉の唯にも。」
「…うん。」
「今日午前中に電話してたのをたまたま与那覇さんが聞いてて、それで…ちょっとだけ話しただけ。」
「それは俺には相談できない事?」
「…う、うん。」
「…。」
「大翔との事だから、大翔には相談できなかったの。ごめんね。」
「俺との事?」
肩に額をくっつけたまま話を聞いてた大翔が勢いよく顔を上げると、僕の顔を覗き込む。
「…それって悪い事?良い事?」
…良い事…なのかな…?
悪い事…ではないと思うけど…。なんて言ったら良いんだ?
「悪い…事じゃないと思うけど…その…。」
「じゃあ良い事?」
「良い事…なのかなぁ…。難しいな…。」
「…。」
だめだ、このままのらりくらり話してても良い事なさそう。
…こ、ここで…使うべきなのか…さっき伝授されたやつ…。
今大翔と僕の間には少しだけ隙間ができてる。
今ならできるんじゃないかな…。よし!!やるぞ!
「あ、あのね…。」
僕は大翔のシャツの裾をキュッと小さく引っ張る。
僕が少し目線だけ大翔の方に向けると、僕をみる大翔の視線と交差した。
「…さ、さいごまでして欲しいなって…。思って…。ヒートの時までしないって言われたけど…。」
「でも、僕…大翔と…し、したいなって…大事にしてくれてるのは、わかってる、んだけど。」
「…だめ…?」
途中恥ずかし過ぎて目線を外してしまったけど、何とか最後だけは大翔の目を見れた気がする。
裾を掴む手が少しだけ震えてる。
大翔は固まったまま何も言ってくれない。
やっぱだめだった?
はしたないって…思われちゃったかな。
あまりにも大翔が動かないので、僕は大翔の目を見ながら首を傾げる。
あれ?大翔?どうしちゃったんだろ。
「ぐっ…。」
「ん?」
大翔は再び僕のことを抱きしめると頭の上からため息が聞こえた。
やっぱり呆れられちゃったかな、せっかく大翔が我慢するって言ってくれてるのに、僕がそれを覆すのってダメだよね。
「…大翔、だ、ダメならいいんだ…気にしないで。あの、僕も…その、我慢する…。」
ちょっとだけ声が震えそうだった。
なんとか平気な感じで言えそうだなって思ってたら僕の唇に柔らかいものが当たった。
目を開くと目の前に大翔の顔があって、それがキスだと気付いた。
「え、ひろ…んっ、ふぁっ。」
大翔の名前を呼ぼうとすると再び大翔の唇に塞がれてしまった。
今度は触れるだけじゃなくて、少し空いた隙間から舌をねじ込まれて口の中を暴かれていく。
大翔の厚い舌に絡め取られ、上顎を擦るように刺激させると僕の口から吐息が溢れる。
「ンッ、ぁ、んむっ、ひろ、んンッ」
口から溢れる吐息ごと飲み込まれて、舌先を擦り合わせ、絡めて、吸われる。僕の下唇に溢れた涎を舐めらて軽く甘噛みされると、少しだけ体が震えた。
大翔は僕の体を抱き上げると、そのままキスを繰り返しながら歩き出す。
「ん、ァ、、ひろと?」
「凛、あんまり可愛いこと言わないで。」
「え、あ…あの。」
「部屋に戻る。」
「え、あ、うん。」
「戻ったら抱くから。」
「あ、あの。」
「抱いて欲しいんでしょ?お望み通り抱いてあげる。中には出せないけど、いっぱい奥を突いて…ちょっと余裕ないから立てなくしちゃうかも。」
縦抱きにしたぼくの双丘の割れ目にそっと手を当てて服の下に隠れた蕾を指先で刺激する。
宣言をされて、蕾を刺激されると僕の腰のあたりがズクンと鈍く響く。
抱いて貰えると思った途端に僕の蕾から少しだけ蜜が溢れるような気がした。
「俺以外のアルファに相談したり、俺に隠し事した事は納得いってないから。」
「大翔?」
「凛の体にわからせてあげるよ。そんな事したくなくなるようにね。」
…耳元で囁く大翔は満面の笑みなんだけど、なぜだか背中がゾクゾクした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回R18回です。
初めての…。なのにお仕置き分からセ…。
僕もエプロンを借りて、手を洗って準備万端。
お昼はソーキそば、ミニタコライスとモリモリ!
僕のたっての要望でシークァーサードレッシングが知りたかったのでシークァーサードレッシングを使ってチョップドサラダを作ってもらうことにした。
チョップドサラダには青パパイヤを使うらしい。
ソーキそば用のソーキを煮込む。
黒糖と泡盛を使って醤油と生姜を入れて臭み消しに長ネギの頭も入れておく。
ダシはカツオと鶏ガラ。
麺は出来合いのもので与那覇さんの知り合いの製麺所から取り寄せてるらしい。
タコライス用のお肉はウスターソースとケチャップにチリパウダーを混ぜるのが基本らしい。あとは醤油とお砂糖とお酒。
これなら寮でも作れそう。
ソーキも角煮で作れば沖縄そばって名前になって簡単だと教えてもらった。
料理を作りながら礼央くんと僕は与那覇さんに色々と質問していく。
豚肉を使った料理が多くて、あとはランチョンミートもよく使うらしい。
南国特有の野菜なんかも使うけど、今の時代なら普通にスーパーや通販で手に入るから帰ってからも作れそう。
「そういえば与那覇さんも番持ちなんですよね?」
「お?ああ、ここで働く条件として番持ちのアルファかオメガと決まってるからな。俺んとこは『運命の番』じゃないけどな。」
「へぇ。」
「まぁ、凛様も居るし、未央様も番無しだから。都築さん…って本家の料理長からの紹介で今回来たんだけど、俺に声かけたのもそもそも俺が番持ちだったからな。」
あ、シェフさんって都築さんっていうのか…。
そうか僕も未亜さんも番がまだいないから、なんかあったらたいへんだもんな。
「そういえば凛連絡したの?」
「あ、うん。唯にも連絡したんだけど…ものすごい肉食系女子みたいな提案されて困っちゃった。」
「はは、唯っぽいね。なんとかなりそう?」
「うーん。頑張ってみる。」
「凛様誘惑でもするんですか?」
「あ!え…っとはい…。」
「ははは、凛様に言われれば大翔様も喜ばれるんじゃないですか?」
「そ、そうですかね…?与那覇さんも番のお相手に、その…誘惑されたら嬉しいですか?」
「うちのにですか?そら嬉しいですよ。尻尾振って頑張っちゃいますね。」
が!!!頑張っちゃうのか…そうか…大翔も嬉しいって思ってくれるかな…。
「男は単純な生き物ですからね、そら大好きな相手に言われて嫌になんてなりませんよ。シャツの裾でもちょっと握って上目遣いでお願いすれば100%ですよ。」
ふむふむ…シャツの裾をちょんと握って上目遣い…。
上に乗っかれっていう唯の提案よりは実行できそうかも…。
「それならできるかな…。」
「何かあれば相談に乗りますよ。」
「うん、ありがとうございます。」
「凛、ヒロくんにあんまり心配させないようにね。」
「わかってるよ!」
礼央くんは心配性だな、大丈夫!…だと思う…。
料理も準備できた。
作りたいと思ってたシークァーサードレッシングもレシピを教えてもらえたから寮でも作ろう!
気づけば時計の針はてっぺんを少し過ぎた頃、与那覇さんにお礼を言って礼央くんと僕は食堂へ戻るとみんな既に揃っていた。
「大翔!お仕事終わった?」
「ああ、終わったよ。凛はどうだった?」
「うん、いろいろ教えてもらった!」
そう、色々教えてもらった。料理のこともだけど、今一番の課題である大翔を誘惑する作戦についても助言貰えたし。がんばるぞ!
「ふふ、なんか楽しそう。」
「うん。がんばるね!」
「…何を?」
「ないしょ!」
ふふふ!何となくできそうなことが見つかったら急にやる気が出てきてしまった!
この時大翔がちょっと不満そうな顔をしていた事に、僕は気付いていなかった。
「大翔、これ礼央くんと僕が作ったんだけどどう?」
「ん、美味しいよ。」
「良かった!寮でも作るね。」
「ああ。」
みんなでご飯を食べて、コーヒーをのんでリビングでまったり過ごす。
この島に来た時はみんなゆったり過ごすんだって。
夏場に来た時は泳いだりするらしいけど、海開きは終わってるらしいけど今日は少し涼しいから泳ぐことは出来ない。
ゴールデンウィークの時期でも暖かい日はシュノーケリングなら出来るらしいから居る間に出来たらいいな。
そんな話をしながらまた各自ヴィラに戻っていく。
未亜さんは今日は一番近くの島に友達を迎えに行くらしい。
僕たちもヴィラに戻る前に少し浜辺を散歩しようとリビングを出ようとすると、与那覇さんに話しかけられた。
「凛様。」
「あ、与那覇さん。」
「これ、今日のランチのレシピです。礼央様の分もあるので後でお渡しいただけますか?」
「ありがとうございます!」
レシピだ!よかった!頭では覚えてたから後でまとめようと思ってたんだけど、これがあればまとめる必要はなさそう。
「頑張ってくださいね。」
「ふふ、ありがとうございます。がんばりますね。」
コソッと小声で応援されてしまった。
僕は笑顔で頷いて大翔の元に戻る。
「どうしたの?」
「今日のレシピ貰ったんだ。」
「…随分仲良くなったんだね。」
「そ、そうかな?」
あの相談の件は大翔に話せないから、なんとなく誤魔化して見たけど…大翔は納得してなさそうな顔だ。
僕は大翔の腕をとって散歩に行こうと促すと、ちょっと憮然とした態度だけど歩き出してくれた。
木製のアプローチを歩いて浜辺に出る。
昨晩のハンモックはすでに片付けられてた。僕はサンダルを脱いで裸足で砂浜を歩く。
すごく細かい白浜の砂は柔らかくて裸足で歩くと気持ちがいい。
さっきもらったレシピは封筒に入れられていたので持ってきていたサコッシュにしまって、片手にサンダル。空いた方の手で大翔と手を繋いで砂浜を歩く。
「ねえ、凛?」
「なぁに?」
「…さっき与那覇さんと何話してたの?」
「ん?あーーー、料理のこと相談してたんだ。」
「ふーん。」
「大翔?」
僕が歩こうとすると大翔はその場に立ち止まってしまった。
大翔は僕の手を引き寄せて僕を腕の中に閉じ込める。
「大翔?」
大翔が正面から僕の体をぎゅっと抱きしめる。
僕の肩に額を乗せているから表情は見えない。
そっと大翔の背中に手を回してポンポンと優しく叩いてみるけど、大翔は全然動かない。
大翔の首筋に鼻を寄せると、少しだけ大翔の香りがする。でもいつもみたいに甘くなくって、少し不安を感じる香り。
昔何かの本で読んだ、『運命の番』の場合番う前でも相手の香りで感情を読めることがあるらしい。
相手のフェロモンに混じる汗の成分が微妙に変化するのを感じることができるとか。
だから今この大翔から感じる、香りに混じる少しの違和感。
大翔は不安なの…?
「大翔…部屋、もどろ?」
「…りん。」
「なに?」
「何隠してるの?」
…僕が感じてるってことは、大翔も勿論この匂いの違いを感じてるって事だ。
僕は人よりフェロモンの量が少ないって言われてるし、今だってヒートをできるだけ遅らせるために少しだけ強い薬を処方してもらってる。
だから本当に少ししか香っていない筈。
香りじゃなくて、僕の表情とかでも直ぐバレちゃうんだった。
「…凛…、あの人には話すのに俺には話してくれないの?」
あの人って、与那覇さんの事?かな?…話せないのは大翔との事だからなんだけど…。
今言ってもいいかな…。
これ以上隠そうとしても多分…大翔のこと不安にさせちゃうばかりな気がする。
「…あのね、相談してたの。でも、与那覇さんだけじゃなくて、礼央くんとか、明くんとか…あと姉の唯にも。」
「…うん。」
「今日午前中に電話してたのをたまたま与那覇さんが聞いてて、それで…ちょっとだけ話しただけ。」
「それは俺には相談できない事?」
「…う、うん。」
「…。」
「大翔との事だから、大翔には相談できなかったの。ごめんね。」
「俺との事?」
肩に額をくっつけたまま話を聞いてた大翔が勢いよく顔を上げると、僕の顔を覗き込む。
「…それって悪い事?良い事?」
…良い事…なのかな…?
悪い事…ではないと思うけど…。なんて言ったら良いんだ?
「悪い…事じゃないと思うけど…その…。」
「じゃあ良い事?」
「良い事…なのかなぁ…。難しいな…。」
「…。」
だめだ、このままのらりくらり話してても良い事なさそう。
…こ、ここで…使うべきなのか…さっき伝授されたやつ…。
今大翔と僕の間には少しだけ隙間ができてる。
今ならできるんじゃないかな…。よし!!やるぞ!
「あ、あのね…。」
僕は大翔のシャツの裾をキュッと小さく引っ張る。
僕が少し目線だけ大翔の方に向けると、僕をみる大翔の視線と交差した。
「…さ、さいごまでして欲しいなって…。思って…。ヒートの時までしないって言われたけど…。」
「でも、僕…大翔と…し、したいなって…大事にしてくれてるのは、わかってる、んだけど。」
「…だめ…?」
途中恥ずかし過ぎて目線を外してしまったけど、何とか最後だけは大翔の目を見れた気がする。
裾を掴む手が少しだけ震えてる。
大翔は固まったまま何も言ってくれない。
やっぱだめだった?
はしたないって…思われちゃったかな。
あまりにも大翔が動かないので、僕は大翔の目を見ながら首を傾げる。
あれ?大翔?どうしちゃったんだろ。
「ぐっ…。」
「ん?」
大翔は再び僕のことを抱きしめると頭の上からため息が聞こえた。
やっぱり呆れられちゃったかな、せっかく大翔が我慢するって言ってくれてるのに、僕がそれを覆すのってダメだよね。
「…大翔、だ、ダメならいいんだ…気にしないで。あの、僕も…その、我慢する…。」
ちょっとだけ声が震えそうだった。
なんとか平気な感じで言えそうだなって思ってたら僕の唇に柔らかいものが当たった。
目を開くと目の前に大翔の顔があって、それがキスだと気付いた。
「え、ひろ…んっ、ふぁっ。」
大翔の名前を呼ぼうとすると再び大翔の唇に塞がれてしまった。
今度は触れるだけじゃなくて、少し空いた隙間から舌をねじ込まれて口の中を暴かれていく。
大翔の厚い舌に絡め取られ、上顎を擦るように刺激させると僕の口から吐息が溢れる。
「ンッ、ぁ、んむっ、ひろ、んンッ」
口から溢れる吐息ごと飲み込まれて、舌先を擦り合わせ、絡めて、吸われる。僕の下唇に溢れた涎を舐めらて軽く甘噛みされると、少しだけ体が震えた。
大翔は僕の体を抱き上げると、そのままキスを繰り返しながら歩き出す。
「ん、ァ、、ひろと?」
「凛、あんまり可愛いこと言わないで。」
「え、あ…あの。」
「部屋に戻る。」
「え、あ、うん。」
「戻ったら抱くから。」
「あ、あの。」
「抱いて欲しいんでしょ?お望み通り抱いてあげる。中には出せないけど、いっぱい奥を突いて…ちょっと余裕ないから立てなくしちゃうかも。」
縦抱きにしたぼくの双丘の割れ目にそっと手を当てて服の下に隠れた蕾を指先で刺激する。
宣言をされて、蕾を刺激されると僕の腰のあたりがズクンと鈍く響く。
抱いて貰えると思った途端に僕の蕾から少しだけ蜜が溢れるような気がした。
「俺以外のアルファに相談したり、俺に隠し事した事は納得いってないから。」
「大翔?」
「凛の体にわからせてあげるよ。そんな事したくなくなるようにね。」
…耳元で囁く大翔は満面の笑みなんだけど、なぜだか背中がゾクゾクした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回R18回です。
初めての…。なのにお仕置き分からセ…。
0
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
復讐も忘れて幸せになりますが、何がいけませんの?
藤森フクロウ
恋愛
公爵令嬢のフレアは、第一王子エンリケに婚約破棄を言い渡される。彼はいつも運命の人とやらを探して、浮気三昧だった。
才色兼備で非の打ち所のない婚約者として尽くしてきたフレア。それをあざ笑うかのような仕打ちだった。
だが、これをきっかけにエンリケ、そしてブランデルの破滅が始まる――すべては、フレアの手中だったのだ。
R15は保険です。別サイトでも掲載しています。
総計十万字前後のお話です。おまけ込で完結しました。
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
まひびとがたり
パン治郎
歴史・時代
時は千年前――日ノ本の都の周辺には「鬼」と呼ばれる山賊たちが跋扈していた。
そこに「百鬼の王」と怖れ称された「鬼童丸」という名の一人の男――。
鬼童丸のそばにはいつも一人の少女セナがいた。
セナは黒衣をまとい、陰にひそみ、衣擦れの音すら立てない様子からこう呼ばれた。
「愛宕の黒猫」――。
そんな黒猫セナが、鬼童丸から受けた一つの密命。
それはのちの世に大妖怪とあだ名される時の帝の暗殺だった。
黒猫は天賦の舞の才能と冷酷な暗殺術をたずさえて、謡舞寮へと潜入する――。
※コンセプトは「朝ドラ×大河ドラマ」の中高生向けの作品です。
平安時代末期、貴族の世から武士の世への転換期を舞台に、実在の歴史上の人物をモデルにしてファンタジー的な時代小説にしています。
※※誤字指摘や感想などぜひともお寄せください!
貞操逆転世界にイケメン転生した男がハーレム願望を抱くも即堕ち二コマで監禁される話
やまいし
ファンタジー
貞操逆転物のPVが伸びていたので軽めのを書きました。(内容が軽いとは言っていない)
何か要望があれば感想待ってます。
カクヨムマルチ
ONR2(オーエヌアールツー)
藤いろ
恋愛
真面目な警備員、揺れる心と守る誓い
女子校の警備員・丸笠は、初等部の生徒たちの無邪気な会話に心揺さぶられながらも、真面目に職務を全うする。生徒からの評価に一喜一憂する中、彼女たちを守る決意を新たにする。
猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます!
友坂 悠
ファンタジー
あたし、レティーナ。
聖女だけど何もお仕事してないって追放されました。。
ほんとはすっごく大事なお仕事してたのに。
孤児だったあたしは大聖女サンドラ様に拾われ聖女として育てられました。そして特別な能力があったあたしは聖獣カイヤの中に眠る魔法結晶に祈りを捧げることでこの国の聖都全体を覆う結界をはっていたのです。
でも、その大聖女様がお亡くなりになった時、あたしは王宮の中にあった聖女宮から追い出されることになったのです。
住むところもなく身寄りもないあたしはなんとか街で雇ってもらおうとしますが、そこにも意地悪な聖女長さま達の手が伸びて居ました。
聖都に居場所の無くなったあたしはカイヤを連れて森を彷徨うのでした……。
そこで出会った龍神族のレヴィアさん。
彼女から貰った魔ギア、ドラゴンオプスニルと龍のシズクを得たレティーナは、最強の能力を発揮する!
追放された聖女の冒険物語の開幕デス!
彼女の目に止まりたい
こうやさい
恋愛
彼女はものすごい美人なので結婚したがっているやつは沢山いる。
どうすれば彼女の目にとまることが出来るだろう。
一番恋愛色の強い話を諦めたけど恋愛で(おい)……ファンタジーだとファンタジー要素どこだろうみたいなヤツだし。貴族がいる現代かどうか怪しい一応外国っぽいとこって曖昧なシロモノはカテゴリ毎度悩む。
ちょっと分割がおかしいです。諦めたヤツはいつか形になるのだろうか?
今回から連載第二話の更新基準にするお気に入り数を変えます。最近お気に入り数に違和感持ってるせいもちょっとあるんだけど、それ以上に機械やら部屋やら人間やらがガチでヤバイ温度になってるので作業時間の短縮を。本文は書けてるのになんでこんな時間かかるんだろ?
投稿ペースと一緒に完結とかタグの追加や変更等も遅れ気味になる可能性があります。涼しくなってもペース戻らなきゃ何かが手遅れだったって事で。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
続きおよびセルフパロディは冒頭の需要の少なさから判断して予約を取り消しました(しおりとポイントは今回は条件変えてませんでしたが満たしていませんでした、念のため)。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/96929)で。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/790660466
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる