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まさかの選択肢ミス
しおりを挟むどうやら、彼が断罪相手のようだ。
金色の髪にブルーの瞳。
スラリとした体格で、身長も高めだ。
しかし柔らかそうな瞳は、今私を睨みつけている。
王道を行くキャラからして一番のメインキャラだとは思われるが、アーシェはそのヒロインのライバル役の悪役令嬢だったのだろう。
しかし、彼を目の前にしても何も思い出せない。
アーシェさん、貴女はヒロインに何をしてしまったんだい。
心の底から、私は彼女にそう問いたかった。
ある意味彼女は幸せだ。この断罪から一番に逃げ出したのだから。
「私は何もしていません。何も、思い出せないのです……。どうか、信じてください」
手枷と足枷の音が響く。
力が入ったあまり、動かそうとした私の体をそれらが阻む。
何もしてないかどうかは実際分からないけど、何も思い出せないのはホントのことだ。
そもそも本人でもないということが伝えられればいいのだが、そんなことを今言ってしまえば頭がおかしくなってしまったと思われてしまう。
あくまで冷静に、この断罪を回避しなければ。
「まだそんなことを言っているんだね。君は嫉妬の余り、ユイナに数々の嫌がらせをした挙げ句、彼女の飲み物に毒を入れたんだぞ」
「そんなこと、私……」
なんてことをしてくれたの、アーシェさん。
これはもう、断罪確定じゃないの。
いやいや、断罪ルート先が処刑だったらシャレにならないわよ。
さっき死んでアーシェになったばかりで、私はまた死ぬの?
それはさすがにそれだけは勘弁して欲しい。
せめて、せめて処刑ルートだけは回避しないと。
追放ルートなら、まだ生き残れるかもしれない。
「してない。そんなこと、していません。お願いです、信じて下さい、殿下」
「したんだよ、アーシェ。罪を認めなければ、どうなるか分かっているな?」
スルリと殿下の手が、牢屋の外から私に伸びてくる。
綺麗な汚れを知らなさそうなその手は、そのまま私の首を優しく掴んだ。
自分でも、体がガタガタと震えているのが分かった。
「これが最後だよ。分かるね? アーシェ。君は僕を愛する余り嫉妬に狂い、ユイナの飲み物に毒を入れた。さぁ、その口で罪を認めるんだ」
「私……は、殿下を愛する余り……」
「殿下ではないと、前にも言ったはずだ。ルドルフ、ルドと呼べと」
「ルド様……」
「そうだ、いい子だ。さぁ、続けて?」
怖くて怖くて、涙が溢れてくる。
しかし、殿下、ルドはそんな私を満足そうに見つめていた。
「私はルド様を愛する余り嫉妬に狂い、彼女の飲み物に……毒を入れました」
罪を認めてしまった。
やったのか、やってなのかさえも分からない罪を。
しかし、こうするより他に命が助かる道はなさそうだった。
自ら罪を認めたのだ。
せめて断罪ルートの先が、追放ルートであって欲しい。
痛いのだけは嫌だ。
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