魔法学院の護衛騎士

球磨川 葵

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第6話 等級と属性魔法

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 「はぁーい、お待たせしました、今日からこのクラスの担当になります、ミノリ・イブリアントです、よろしくね」

 元気よく挨拶するミノリ、急いできたのか分からないが、髪がややぼさぼさにになっており、きっとまた何かドジをやらかしたのだろうという事が見受けられる。相変わらずの様だ。

「さて! 今日から授業が始まるわけですが、新しい子がいるみたいなので自己紹介を――」

 こちらを見るミノリ、そして全力で首を横に振る俺。
 頼む、察してくれ、俺一人の為に自己紹介を全員させるのも気が引ける上に、名前だけでも覚え……られない事はないが面倒だ。
 まぁ必要以上に目立つ必要はないってのが一番だけどな。
 
「――と、思いましたが色々と初日はやることがありますので、休み時間などに各自お願いいたします」

 俺の必死のアピールが伝わったのか、何とか回避できたようだ。グッジョブミノリ。
 
「では! 早速始めていきますね~まずは基本的な所から説明していきます。知っている人もいるかとは思いますが、復習という事でしっかりと聞いてくださいね!」

 教卓の後ろにある緑色で大型の板に向かって杖を振るミノリ、すると杖が触れてないというのに、文字が浮かび上がってくる。
 これも魔法具なのだろう、色も様々使える様だ。

「まずこの世界『アリステリア』そして我が国のArt's(アーツ)も含め複数の国家が存在します、そしてArt's(アーツ)には大まかに3つの区画があり――」

 静かにミノリの話を聞く生徒と騎士。
 中にはそんな常識の話をされてもと明後日の方向を見ている奴もいるが、大半は真剣に聞いているようだ。

「――そして第3区画ですが……ここのお話は飛ばしますね、とりあえず皆さんはあまり関りがない所でしょう」

 そう、ここにいる奴らは関わる事なんてない。
 余程変な奴か、第1か第2で何かやらかして逃げ込んだか、やむを得ない事情があるかのどれかだ。
 少なくともこいつらが第3区画に入ったとしても1日と持たずに逃げ出すだろう。
 それ程危険な場所で、対処のしようがない場所なのである。

「次に魔法の説明に入ります、魔法は主に第5等級から第1等級まで分かれており、魔法を使用するには基本的には媒体と魔力を通す為の宝石が必要です。宝石をそのまま持つ事は身体に影響を及ぼす可能性があるので媒体にはめ込むのが一般的になっています」

 自らの杖を見せるミノリ。
 そこには翠の宝石が杖の先端部分に埋め込まれていた。

「5等級は黄色、4等級は青、3等級は赤、2等級は翠、1等級は銀の宝石を使用しますので、そちらで見分けると良いでしょう。宝石を入れ込むにあたって、私は使い勝手が良いので杖にしています。できるだけ魔法を発動しやすい様にしましょう」

 くるくると杖を回転させ再び板に書き始める。

「魔法発動する際には基本的には詠唱が必要です。威力や規模、範囲等によって様々ですが、詠唱とは魔法を放つイメージを固め、それを開放する為に行いますので、個人により変動するものもあります。『基本的に』というのも、皆さんは一部の方を除いて第3等級なので必ず詠唱は必要になりますね」

 ミノリの発言からにどうやら第2等級の魔法使い様とやらもいるらしい、第2等級と言えば教員クラスらしいが、学院生として登校しているということは何か事情があるのか……俺なんかが関わることはないだろう。

「――というのも、第3等級から、第2等級になるには基礎魔法、無詠唱が条件の一部となりますので、第2等級の人は基礎魔法無詠唱できると思ってよいでしょう。皆さんで無詠唱ができる! という方は昇級試験に向けて頑張ってみるのもいいかもしれませんね」

 ニコニコとした表情でファイト! と握りこぶしを作りポーズをとるミノリ。

「次に属性です。人によって適正属性があります。地、水、火、風、全部で4つの属性があり、地属性魔法が得意でも風属性魔法は全く使えない~などですね。」

 私は風属性ですね~と付け加える。

「それともう一つ『無』未だに多くは解明されていない属性になります。『無』特有の魔法があるらしいですが……これはお伽噺のようなものですね、私も今まで見たことはありません」

 少しざわつきだす教室。『無』なんて属性あったんだな、俺は聞いたことなかったが、周りの生徒が無属性には代償があるやら、使ったら化け物になってしまう~やら本当か嘘かもわからない話が飛び交っている。
 それを見ながらニコニコとミノリは話を続ける。

「はい! そこで! 今回は学院生の皆さんに、この属性判定をしたいと思います~今まで得意と思っていたのが実は別の系統だった! なんてよくあるので楽しみにしててくださいね。そしてその間、騎士の人はバレット先生が、中庭で実技訓練を行うそうです~」

 ええ~と落胆の声が聞こえてくる、主に騎士からだ。
 他にもあのバレット先生が?!などの声も聞こえてくる。

「ミノリ先生~騎士は属性見ないんですかー?」

 一部の生徒が質問を始める。同じことを思っていたのか他の騎士たちもその返答を待っているようだ。

「そうね~、学院生はともかく、騎士の魔法を重視しないようにしているみたい。『騎士の役目は護衛だから、詠唱する前に盾にならんか!』 ってバレット先生が言っていたわね。国の魔法騎士隊では入隊テストの際に見られるらしいけど……この学院はあくまで個人の護衛としての騎士ですからね」

 確かに理にかなっている。
 詠唱中は無防備になる、例え第2等級になろうと、高度な魔法を使うとなれば詠唱時間も長くなるだろう、それを護るのが騎士の役目と考えると納得はいく。そもそも無詠唱できるなら学院生として入る方が利口だろう。
 など考えていると、隣のウインドが下を向き何やら暗い表情をしているのが目についた。

「どうした、変な物でも食ったか?」
「……え? ああ……ありがとうクロト、大丈夫だよ」
「……ならいいが」
「うん、心配かけてごめん」

 そう言うといつもの表情に戻り笑顔を見せるウインド。
 何やら訳アリそうに見えるが、本人がそういうなら気にすることではないだろう。

「はい、では学院生の皆さんは私について来てください~騎士の皆さんは中庭に向かってくださいね~!」

 ミノリの言葉を聞くと騎士と学院生に分かれ移動し始める。
 
「それじゃクロトまた後でね」
「おう」
 
 別れを告げるとシロナはユキナとリーフの3人でミノリの後へと続いて教室の外へと出ていった。

「私たちも行きましょうか」
「そうですね」
「普通に馴染んでるな、この赤眼鏡」

 このオカマ? に色々ツッコみたいところ満載なのだが、問いただした所で大した答えが返ってきそうにない感じがするので、気にしないことにした。
 

 3人で教室から移動し、入学試験でも行った中庭に到着する。
 そこには以前と変わらず、中庭の風景とは似合わない、威圧感を放っているバレットがいた。
 鎧の柄が以前見た時と少し変わっているような感じがするが……取り替えたのだろうか?
 俺たちが最後だったようであり、こちらにバレットが気づくと口を開き始めた。

「どうやら全員集まってきた様じゃの、儂はこの学院の実技を主に担当しておる、ペーラ・バレットじゃ」

 それを聞いた生徒達はやや興奮しながらざわついた。
 おぉ! やはりそうか! 竜殺し! 元魔法騎士隊隊長! など聞こえる
 どうやら思ったより凄い人物だったみたいだ。

「ふむ、儂を知っている奴も多いようだの、手間が省けて良かったわい。 さて、ここにおるのは皆騎士ということになるが、あくまでもお前さんらは『騎士見習い』という事を忘れるでないぞ、ここを卒業して晴れて正式な騎士となるのじゃ、勿論、実力さえあれば騎士隊に志願しても構わん」

 そう、騎士としての学院でもあるが、国家騎士である、アーツ魔法騎士隊としての登竜門である事でも有名らしい。
 学院に入らず志願もできるが、親が貴族や相当の実力者でないと難しいらしい。

「まだまだお前さんらはひよっこが多い。ここでみっちりと儂が鍛えてやるから安心せい!」

 ガハハと笑うバレット。元魔法騎士隊隊長という事なら心強い事だろう。他の騎士…‥見習いの表情も明るく見える。
 
「今日はとりあえずお前さん達の実力をある程度把握しようと思う、儂が指定する組み合わせで実戦形式で戦ってもらおうかの」

 そう言うと、バレットはホイホイとペアを作っていく。
 6組、7組と出来ていき、そして何故か俺一人が残っていた。
 俺はバレットの近くまで移動して口を開いた。

「おいオッサン、初日からイジメってどうかと思うぜ?」
「馬鹿言え、ある程度同じ技量同士で組んでおるからじゃ、お前さんはゆっくり見学しとれ」
「何だ、試験で負けたから弱い子はサービスしてくれてるのか?」
「何とぼけとる逆じゃろ」

 まぁ当然と言えば当然だが、他の騎士から視線を浴びてしまう。俺のバレットへの態度の事もあるだろうが……。
 どうしたもんかと考えていると、バレットが大きく手を鳴らした。すると皆バレットに再度注目する。

「よし、では各自始めてもらう、ルールは相手が戦闘不能状態になるか、降参するまでじゃ。魔法の使用も許可する。学園内の結界でお前さんらでは致命傷を負う事はないと思うが、骨が折れるくらいは覚悟するんじゃぞ」

 いや、骨折るのもこいつらにとっては致命傷なのでは?? と思ったがバレット基準ではそうでないらしい。
 この学院内では制服とリンクして特殊な結界が張ってあるらしく、余程の事がない限りは学院生も騎士も致命傷を負うことはないとの事だが……。
 聞いた話ではあるが学院内に制御する場所があるとかないとか……。

「では、はじめ!!」
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