異界の探偵事務所

森川 八雲

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試練

暗闇の部屋

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「やあ、おはよう」

「おはようございます」

朝食を済ませ、参道へ出る

「それじゃあ、早速始めようか」
「はい、よろしくおねがいします。でも、何をすれば…?」

「そうだね、まず試練だけど、もしかしたら死ぬかも知れない。それはいいかい?」
そんなに軽く言うものではないだろう…

「どうせ一人だし、悲しむ人も居ないし…でも強くなると誓ったので死ぬつもりはありません」

「いい心がけだねぇ、これは楽しみだ」
「楽しみ…ですか?」
「ああ、実際にシバルバの試練を受けるのを見られるんだ」
ニコニコして言う

「シバルバと試練について詳しく教えて下さい」
「僕も文献でしか知らないからねぇ、それを念頭に置いて聞いてほしい」
「わかりました」

「昨日少し話したようにシバルバは俗に言う地獄だ」
「そして魂がそこへ行くと数々の試練が待ち受けている」
「試練に耐えられない者はシバルバの神々によって永遠の罰を受けることになる」

「シバルバには死と破壊を司る二柱の神、フンカメとヴクブカメが居てシバルバを支配しているんだ」
「まぁ双子の英雄に討ち取られたわけなんだけどね」

「それじゃあ試練はどうなるんですか?」
「問題ないよ、僕の読みが当たってればね」



「さあら、始めようか。まずはそのナイフを地面に突き立ててごらん」
「こう…ですか?」
「そうそう、で、意識をナイフに集中するんだ」

目を閉じ意識を集中させるが、何も見えてこない

「う~ん、もうちょっと、こう、魂ごとナイフに吸い込まれるようなイメージで」

「…ん…何か見えてきました…」
「流石は教授の娘さんだ、やはり素質があるねぇ」

「これは…大きな門?」
暗闇の中にとても大きな門が現れた
それは石のブロックで作られたようなとても開きそうもない、重そうな門だ

「それがシバルバの門だね中に入ってごらん。でも、試練に飲み込まれたらいけないよ。死んじゃうからねぇ」
相変わらず死に関して軽い感じで話す

「さ、いってらっしゃい」
そう言うが刹那、また真っ暗闇になった

さっきと違うのは実際にそこに自分が居るという感覚
目を開けているのに全く見えない
五体全てが闇の中にいる感覚だ

どれくらい時間が経っただろうか
もう何日もここに居る感覚がする
自分の手で体を触ろうとしても何も感覚がない

普通であれば何も感覚が無い状態で何時間も過ごせば精神が破壊されるだろう
そういう拷問があると聞いたことがある

何も見えない、何も聞こえない
いや、一つだけ聞こえるものがある

私は生きている
私は強くなりたい

その思いだけが、その願いが私の全てだ!

すると、なにか人のような物が現れた
見えていないが人のような物という感覚がある
「なんだお前は。死んでもいないのに何故ここに居る」
「試練を受けにきました。あなたは誰ですか?」

「んん…お前に恐怖心は無いのか?…我はシバルバを統べる二柱が一人フンカメだ」

薫の話に出てきた死と破壊を司る神だ

「フンカメさん、私は試練を受けにきました。死んでなくても受けられますか?」

「ふふ、その臆さない態度は称賛に値する。もちろんだ、ただし試練を突破できなければお前の魂に永遠の罰を与える」
「試練を突破したらどうなるんですか?」

「ははは、面白い。たかだか子供が突破するつもりでいるのか。見事突破できればそれ相応の力を与えよう」
「私は強くなると誓いましたから」

「はは!なるほど、望み通り力を与えよう!」
「え?試練は?」
いきなり過ぎて訳がわからない

「ここは暗闇の試練の部屋だ。私が現れた時点で突破しているのだよ」

あっけに取られる

「しかし、普通であれば発狂して廃人になるんだが、なぜお前は平気なんだ」

「それは、心臓の音が聞こえるんです。私の心臓の音です。生きているんです。それで耐えることができました」

「なるほど、コ○ラでも似たようなシーンがあったな…」
「○ブラ?」
「ごほん!なんでもない。この暗闇の部屋の力は闇黒だ」
「闇黒…」
「先程お前が体験した何もない世界だ。この力で相手を呪うと現世に居ながら暗闇の世界に飲み込まれる」

「傍から見れば何も起こっていないが、呪われた対象はここと同じ闇黒の世界が訪れる」

「だが、お前が突破できた様に呪いの対象者も突破できるかもしれん」

「油断はしない事だ」

「死んでいない少女よ、縁があったらまた会おうぞ!」

「はははははははははは!」

後半一方的に喋って帰って行ってしまった…

そして、現実世界に帰ってきた

「やぁ、おかえり」
薫が前に立っている
試練の前とスーツが違う

「た、ただいまです…?」
「君は2日間試練を受けていたんだよ」
「え?2日もですか?!」
「ここで見張るのも大変だったねぇ」
「何を仰るんですか、つい先程まで入浴されていたではありませんか」
「ははは!ま、それは良いとして、何か力は手に入ったのかい?」

「はい、闇黒の呪いだそうです。フンカメさんが言ってました」
「フンカメさんねぇ、はは!これは良い。面白いねぇ」

「でも二柱は双子の英雄に討たれたのでは?」
「ああ、それね。天国も地獄も神も悪魔も全ては"概念"なんだよ」
「そこに在ると思えば在るし、無いと思えば無い」
「どういうことですか?」

「さっき挙げた物たちはどの宗教も神話も似たようなものだと思わないかい?誰かが見たわけでもないのにさ」
「確かにそうですけど…」

「つまり、そこに在ると信じる力が信仰なんだよ」
「はぁ」
「英雄に討たれたという信仰、二柱の神という信仰、その両方が存在するんだと思うねぇ」

「わかりやすく言うと、誰も死んでない廃墟が勝手に噂がついて心霊スポットになる感じかな?」

「あの、微妙な例えがわかりにくくしてるんですが…」

「それじゃつぎフンカメさんに会ったら聞いてみます」

「気が早いねぇ、2日間も飲まず食わずだったんだから、今日はもう休みだ。体調を整えて明日挑戦すれば良いよ」

そう促されて食事をし、風呂に入ってベッドで横になる

感覚的に試練が1時間もかかってない気がするが
体は正直だ
余程疲れていたのだろう、いつの間にか寝てしまっていた…
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