異界の探偵事務所

森川 八雲

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樹乃森 隆

最上 薫

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おかしいな…確かに父からもらった名刺にはこの森の奥に印がある

「間違ってるのかな?」
そう言いながらスマホで地図を見る

「ここら一体森なんだけど…印はこの奥だなぁ…」

父との別れ際の言葉を思い出す…
「その…名刺…入れの…中に大…魔神…大社が…ある…。裏に…地図が…ある…からそこ…へ行き…なさい。きっと…助けに…なるから…」
ストレッチャーで運び出された父はそのまま息を引き取った

「助けになると言われても、辿り着けないんじゃあね…」

目を閉じ森の奥へ意識を集中させる

何かを感じるが何かは分からない

向こうから閉ざされているような感覚

アーティファクトの力を借り、さらに集中をする

ぼんやりと建物らしきものが見えてくる

そろそろ集中力も限界だ

脂汗が頬を伝う

「はぁっ!はあ…はあ!」

目を開けると先程まで森だった所に獣道が見える

「あれ?こんな道あったっけ?え…気付かないわけがないんだけど…」

間違いなくこんな獣道は無かった

「これ…入っても良いのかな…」

ソロリ、ソロリと足を運ぶ

数メートル進むと開けた場所に出る

「え?航空写真だと森だったのに!?」

「大魔神大社…ここで間違いない」

建物の方へ進むと、急に後ろから声をかけられた
「やあ、樹乃森教授の娘さんだね」



!?

確実に人は居なかった!気配も無かった!
体ごと振り返りながら構える

「あなたは?!」
しまった!ナイフは鞄の中だ!

「ごめんごめん、驚かせてすまなかったねぇ」
目を細めニコニコしている

「申し遅れました。僕はここの跡取り息子の"最上 薫"といいます」

「私はあなたの言ったとおり、樹乃森の娘です」

「たしか…爽さん…だったねぇ」

「えぇ、そうです」

「父がここに行くようにと…」

「あぁ、解っているよ、お父さんの事は残念だったねぇ」

「父が死んだことも知っているんですか?!」

「最後に挨拶にきたからねぇ。枕元にだけど」

この人はどこまで知っているのか…少し不安を覚える

「さて、ではちょっと失礼するよ」
そう言うと視界から薫が消えた
しかし気配は後ろにある

「はっ!」
とっさに薫のパンチを逸らし左手で掌底を打ち込む

しかしソレは空を切る

いつの間にか左側に居た

ヒュッ!
キックが顔の前で止まる

「うん、なかなか良い反応速度だ。その年でそこまでできれば大人にだって勝てるだろうね」

確かに大人には勝てる、護身用にと父から鍛錬されたものの1つだ

しかし戦うのはヒトとは限らない
あの時もっと強ければと…

「どうやって…目の前から消えたんですか…」

「ソレも含めて説明するよ、立ち話もなんだし中で話そう」

薫は手招きして社務所へ案内した

中に入ると部屋に様々な武器が飾ってある
どうやら神庫も兼ねている様だ

「君が持ってるナイフを見せてごらん」

「どうぞ…」

これは遺品整理をしていた時に出てきた物の一つだ
それはチャートでできていて刃は丸みを帯びている
おそらく祭事用のナイフだろう
刃はの長さはおよそ20センチ程だろうか
銃刀法に当てはまらないので護身用に持つことにしていた

「これはなかなかのものだねぇ」
「それが何か解るんですか?」

「う~ん…話すと長くなるから端的に言うと…」

そのナイフはマヤ文明の生贄の儀式に使うもので
生贄の胸に突き刺し斧で首を落とし、精霊に魂を捧げるのだ
その際に魂の一部がナイフに残っているという
ただし、その魂はシバルバ地獄へ通じているのだそうだ…

「これは厳重に保管されていなかったかい?」
「ええ、豪華な化粧箱に御札が貼ってあって、いかにもな感じでした」

「で、強い力がありそうだから護身用に持ち歩いている感じかねぇ」
「そうです、これなら警察に見つかっても玩具と言えば大丈夫かと」

「しかし…これは悪魔のナイフだねぇ。大丈夫なのかい?」
「父を…助けられなかったんです…デーモンを呼び出しても…」

「なるほど、それでもっと力が欲しいんだねぇ」
「そうです!もうあんな思いは二度としたくないんです!」

「わかった、わかった。それじゃあ今日はここに泊まっていくといい。部屋を用意させるよ」
「え、でも、そんな…」

「一番良い部屋を用意してあげて」
「かしこまりました」
「え?!」
いつの間にか薫の後ろに巫女服の女性が立っていたのだ

「彼女に付いていくといい、修行は明日から始めるからゆっくり休むといいねぇ」

とりつくしまもなく泊まることになってしまった
しかし、同じ女性がいる事に少し安心した

部屋へ案内されるといつの間にか先程の女性が居なくなっていた
流石にもう驚かない

ベッドへ飛び込むとどっと疲れが出てきた

緊張しっぱなしだったな…修行も何をやるんだろう…

「あ、ご飯やお風呂はどうするんだろう?!」
頭で思ってた事が口をついて出た

するとドアをノックされた

「失礼します」
先程の女性の声だ
「あ、はい!どうぞ」
女性はドアを開ける
「お食事の用意ができました、こちらへ」
聞こえてたのかしら…
「お食事の後はお風呂へご案内しますね」
少し笑いながら言う
やっぱり聞こえてた?!

食堂…と、いっても薫と先程の女性(巫女)と自分しかいない

「やあ、さっきぶりだね」
「ど、どうも…」

テーブルに食事が並べられる

食べながら薫が言う
「明日の修行は…修行じゃなくて試練かな?それを受けてもらうつもりだ」
「試練ですか?」

「そう、君のナイフにちなんだ試練だねぇ」

「このナイフは何なんですか?さっきはマヤ文明の物だと聞きましたが」

「うん、シバルバって言ったろう?そこはいわゆる地獄なんだけど、いろんな部屋があってね、暗闇の部屋とか刃の部屋とかね」
「はぁ…」
「各部屋の試練を乗り越えて能力が手に入るんだ」
「戦うんですか?」
「う~ん…どうだろうねぇ、知識としては知ってるんだけど、試練を受けたことがないからねぇ」

「その儀式の時に使われたナイフなんだ。ま、その時にまた詳しく話すよ」

その後、父の事を話してくれた

薫の父親がまだ神官だった頃、手に負えない物をよく持ってきていたらしい
ではなぜあのナイフが家にあったのか?
どうもそのナイフだけは手放したくなくて自分で封印をして持っていたそうだ
薫の父親が言うにはナイフの魂に惹かれていたらしい
アーティファクトの使い方も薫の父親が教えていた
それを私は父から学んだ
まだ完璧ではないが…

「じゃあ食事も済んだ事だし、お風呂入ってきなよ」
「では、こちらへどうぞ」

食堂を後にし浴場へ向かう

「着替えはここへ置いておきますので、ごゆっくり」

体を洗い、湯船に浸かる…
ヒノキだろうか、落ち着く香りがする…

「いつの間にかこんな事になっちゃったな…」

「家とかどうしようか…」

相続や遺品整理などとても中学生一人ではできない

「はぁ…そういうのも相談してみようかな…」

バスローブに着替え部屋へ戻る

「マヤ文明の遺跡なんてとっくの昔に掘り尽くされたと思ってたのにな」

「どうして教えてくれなかったんだろう…」

今となっては何もわからない
現状与えられたもので判断していくしかない

「パパ、私強くなるよ」
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