Parfumésie 【パルフュメジー】

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重々しく。

121話

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 予想通りなヴィズ。食い下がるようなことはせず、あっさりと引く。

「そう。なら仕方ないわね。それで話は変わって、そっちの香水のクラシック曲だけど……」

「唐突だな」

 一気に話の話題が変わり、ニコルも切り替えに追いつくのに必死。いや、ありがたいけど。

 当のヴィズとしては、自身の興味を優先する。学校の課題などよりも、曖昧で不確定な香水作りの音は刺激的だ。

「あら。別にリサイタルや学校の講義の邪魔になる、なんて思ってないのよ。これはこれで楽しいし」

 むしろ、感性を伸ばすのであれば、楽譜を眺めるよりも、目に見えない部分を考えるのは重要。そういう考えもあるのか、という勉強になる。

 話を振ってもらったということで、相変わらずなにもできないはずのニコルだが、香水作りの先頭に立つだけは立つ。

「ならいっか。聴いて驚け。今回は世にも恐ろしい曲名の『死の——」

「『死の舞踏』? どれ?」

 まだタイトルを言っている途中だが、遮ってブランシュに問うヴィズ。

 その言葉の意味をブランシュは理解している。

「サン=サーンスのほうです。ピアノとヴァイオリンでいけますね」

 本来はもう少し弦楽器がいたほうがいいのだが、このシンプルな構成であればより、ヴァイオリンが引き立つ。

 自分の役割を奪われた形のニコル。

「へ? どれって、なに?」

 そんなにたくさんあるの? と両者の顔を凝視。

 たしかに説明が不足していたことをブランシュは認識している。ついでに補足。

「『死の舞踏』という曲は多数あって、そのうちで有名なものがリストの管弦楽曲と、サン=サーンスの交響詩。さらにサン=サーンスの交響詩を、リストがピアノ独奏用に編曲したものやオーケストラ用。さらにさらにリスト版を編曲したホロヴィッツ版まであります。少しややこしいんです」

「……ふーん」

 よくわからないが、自分が教えられていたのはそのうちの一曲。たくさん人の名前が出てきたことで、ニコルの許容量から溢れ出した。ホロヴィッツは数秒後には記憶から消えているだろう。

 恐ろしくも美しい。そんな名曲を合わせるとなると、興奮からヴィズの指が動き出す。

「その曲であればいけるわ。今から少しやってみる?」

 今までの『雨の歌』『新世界より』とはまた違う、幻想的で破壊的な死神のヴァイオリンを聴いてみたくなった。一刻も早く。

 引っ込み思案なブランシュは、学園内で弾くことを躊躇う。自身は音楽科ではないから。

「……いいんですか? でも、今の時間だとホールを使用されている方もいらっしゃるでしょうし……」
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