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花と衣装。

117話

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 翌日月曜日、午後。

 学校の授業も終わり、アニーはひとりヴァルトに到着。

「こんにちはっス。今日も働きますよー」

 ブッフでの勤務をこなした後、早く働きたくて仕方がなかったアニーは、シフトの時間より前倒しで勤務することにした。店長権限。

「うん、今日もよろしくね」

 バックヤードのテーブルにノートパソコンを置き、作業するダーシャは振り返り、アニーに返事をする。

「はいっス、せっかくなのでボクだけでもディアンドルで——」

 そこでアニーは言葉が途切れる。大変なことに気づいた。

「店長?」

「ん?」

「ヒゲが——」

 ない。

 ダーシャは満足そうに顎を撫でる。

「うん、剃ってみた。心機一転だね。よろしく」

 少し爽やかになってしまったダーシャに対し、なにか違う生き物を見るような目で、アニーはカタカタと震える。

「は、はい……っス……」

 距離を取りながらアニーが更衣室のドアに向かうと、バックヤードへ勢いよくカッチャが入ってくる。

「あー? なにそれ? ディアンドル? どうすんのそれ。あんたが着るの?」

 アニーの手にある民族衣装に反応した。

 仲間を見つけたように、アニーは同調を煽る。

「カッチャさんもどうっスか!? いやー、やっぱりディアンドルって憧れあるじゃないですか。ウチの店でも導入してみたら——」

「却下。別に今のでいいし。制服に可愛さは求めない」

 今のシックなほうが好きだし、とカッチャは反応薄く吐き捨てる。

 予定が崩れたアニーは、表情を曇らせる。多数決で言うと、ユリアーネも含めてディアンドル派は負け。この瞬間、制服の変更は無くなった。

「ぬぅぅ……!」

「ていうかユリアーネはどうしたの? 今日は休み?」

 あれ以降、いつもセットとして考えていたので、カッチャは変な違和感を感じた。

 なぜかアニーが誇らしげに語りだす。

「ユリアーネさんは少し学校に残ってます。きっと、美しさが認められてしまったんですねぇ……さすがです」

 やはりボクの目に間違いはなかったんですねぇ、と自分を褒めた。

「ふーん……まぁいいか」

 特に興味はないのでカッチャは適当に受け流す。

 しかし気にせず、アニーは昨日のことを思い出して浸り出した。

「可愛かったですよ、ディアンドル。いつものシックな感じとはまた違って、いつまでも見ていたかったっス——」
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