167 / 202
第9章
全身タイツの恵子ちゃん
しおりを挟む
朝の騒動で気が張って疲れていたのか、恵子はソファでいつの間にか寝落ちしていました。
「う、ふああ、はあ、いつの間にか寝ちゃったわ。うわっ、もうすぐ2時だ、よいしょっと」
ソファから起き上がって、有り合わせで昼食の用意をします。
「頼子さん、絶対大丈夫よね。でも耳の病気とは思わなかったなあ。耳って大事なんだ‥」
食事を摂りながらでも、やはり頼子のことは気になります。
恵子自身、あまり食欲がありません。
「しっかり食べなきゃダメだよね」
一通り食べ終わると、すぐに片付けて2Fへ上がりました。
今日の午後から明日、明後日と特に予定もなく、誰かが尋ねてくる宛もありません。
「学校が始まってから、週末はお泊まり会をやったり、出かけたりしてゆっくり休んだことなかったわ。せっかくの休みだからゆっくりしちゃおうっと」
恵子はさっそく朝まで着用していた全身タイツに履き替えます。
「やっぱり全身タイツはいいわ!タイツを通して見る世界はいつも新鮮ね。本当に新しい自分、新しい世界だわ!」
恵子は鼻歌を歌いながら、1Fへ降りました。
リビングでゆっくり休もうと思いましたが、せっかくいい天気なので靴を履いて、プールサイド側から庭に出てみました。
今日はカラッと晴れていて少し風がそよぎ、暑くもなく寒くもなく、全身タイツで外に出るにはちょうどいい状態です。
全身タイツを汚したくないので、ビニールシートを芝生の上に敷いて、靴を脱いで仰向けに寝転ぶと、ポカポカの暖かい光が全身タイツに降り注ぎます。
「ああ、日差しがすごく気持ちいいわ。う~ん、これだけですごく幸せ!」
小半刻ほど日向ぼっこをした後、起き上がってビニールシートを片付け、少し散策をしようと庭を離れました。
家の脇を通って表の道に出たところで、「キャッ」「うわっ」と立て続けに小さな悲鳴が聞こえました。
(こんな時間に誰がいるの?)
恵子が驚いて声の方を見ると、あのいつもの園児2人組が全身タイツの恵子にびっくりしてお母さんにしがみついています。
お母さん二人も明らかに警戒しています。
「あっ、驚かせてごめんなさい」
「え?なんか聞いたことある声。恵子ちゃん?」
「この声、恵子ちゃんだ」
園児たちは恐る恐るお母さんから離れます。
「うん、そうよ。びっくりさせてごめんね」
恵子は後頭部のファスナーを下げて、二人に顔を見せました。
お母さんたちも、不審者が恵子ということで安堵したようです。
「うわあ、恵子ちゃん、全部タイツになっちゃった!」
「すごい、すごい!みんなタイツだ!」
「このタイツねえ、全身タイツっていうのよ」
「へえ、全身タイツなんだ!」
「ねえ、恵子ちゃん、さっきみたいに顔もタイツにしてよ」
恵子はフードを顔に被せ、後頭部のファスナーを閉めました。
「うわあい、顔もタイツで隠れてる!すごい、すごいよ、恵子ちゃん!」
二人は大はしゃぎでタイツ脚やタイツお尻を触ります。
「ほんとにタイツだ。すごく気持ちいいタイツだ!」
「このタイツ、本当に気持ちいいのよ。それでちょっと散歩してたのよ。驚かしてごめんね」
「ううん、恵子ちゃんなら平気だよ。ねえ、写真撮ろうよ。ママ、全身タイツの恵子ちゃんと写真撮って!」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ」
流石に恥ずかしくてたじろぐ恵子ですが、二人はお構いなしです。
お母さんたちも初めて見る全身タイツに興味津々です。
子どもたちと全身タイツの恵子の写真を何枚も撮っています。
「それにしても恵子さんはスタイル抜群よね」
「全身タイツが恵子さんのスタイルを引き立ててるわ」
恵子は嬉しくもあり恥ずかしくもありです。
「ちょっと触ってもいいかしら?」
「あ、はい、いいです」
「うわっ、すごく柔らかくて優しい肌触りで気持ちいいわ」
「顔もタイツで覆われて、中からは外が見えるの?」
「この全身タイツは中からうっすら見えるんです。すべてが白い世界に見えるんですよ。中から見えない全身タイツもあります」
恵子はとても恥ずかしかったのですが、全身タイツの恵子を認めてもらえたのはすごく嬉しく思いました。
「ねえねえ、恵子ちゃん、広場で一緒に遊ぼうよ」
どうやら二人は恵子の家のすぐ側の、幼稚園の広場で遊ぶためにいたようです。
返事をする間もなく恵子は二人に手を引っ張られていきました。
二人は恵子のタイツをいっぱい触り、お尻タッチやおっぱいタッチをして恵子が恥ずかしがるのを喜び、一緒に鬼ごっこをしたり、芝生に寝転んだりして、全身タイツの恵子と楽しいひと時を過ごしました。
恵子も夢中で二人と遊び、すごく充実した時間を過ごすことができました。
その様子をお母さんたちが動画撮影していて、先ほどの写真と一緒にママ友たちにすぐに共有されて、他の園児たちやお母さんたちの間で「全身タイツの恵子ちゃん」が話題沸騰になったことを、恵子はまだ知りません。
「さあ、そろそろ帰るわよ」
小半刻が過ぎて、園児たちが帰る時間になりました。
「恵子さん、遊んでくれてありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったです」
恵子がお母さんたちに挨拶するためにファスナーを下げて顔を出そうとしました。
「恵子ちゃん、顔を出したらダメだよ!全身タイツなんだから顔もタイツのままじゃなきゃダメ!」
強い調子で怒られてしまいました。
お母さんたちも思わず大笑いです。
「はい、ごめんなさい」
「ねえ、恵子ちゃん、明日も遊んでね。ねえ、ママ、いいでしょ?」
「そういえば恵子さん、学校は?」
「実は今日から学校閉鎖なんです。だから遊ぶのは本当はあまりよくないんです。先に言わなくて、ごめんなさい」
恵子は頭を下げました。
「え?恵子ちゃんと遊んだらダメなの?」
恵子は二人とも涙を浮かべてる様子が分かりました。
「明後日まではよくないかな。金曜日なら遊べるよ」
「じゃあ、金曜日に遊ぼうよ!ママ、いいでしょう?」
「恵子さんがいいなら、いいわよ」
「私なら大丈夫です」
その瞬間、二人とも大はしゃぎです。
「やった、やった!」
「また恵子ちゃんと遊べる!ちゃんと全身タイツだよ!」
「分かったわ、全身タイツでいるわよ。さあ、二人とも気をつけて帰ってね」
その時、二人は顔を見合わせて少し膨れ気味です。
「あれ、二人ともどうしたの?」
「恵子ちゃん、もう何度も会ってるんだから、そろそろ名前で呼んでほしいな!」
「あ、ごめんなさい。伊織ちゃんに美咲ちゃん、またね」
「恵子ちゃん、また遊ぼうね、バイバイ!」
恵子は四人の姿が見えなくなるまで手を振りました。
恵子をお気に入りの伊織も、真由をお気に入りの美咲も、後にS女子学院の制服を着ることになりますが、まだそれは何年も先のことです。
「う、ふああ、はあ、いつの間にか寝ちゃったわ。うわっ、もうすぐ2時だ、よいしょっと」
ソファから起き上がって、有り合わせで昼食の用意をします。
「頼子さん、絶対大丈夫よね。でも耳の病気とは思わなかったなあ。耳って大事なんだ‥」
食事を摂りながらでも、やはり頼子のことは気になります。
恵子自身、あまり食欲がありません。
「しっかり食べなきゃダメだよね」
一通り食べ終わると、すぐに片付けて2Fへ上がりました。
今日の午後から明日、明後日と特に予定もなく、誰かが尋ねてくる宛もありません。
「学校が始まってから、週末はお泊まり会をやったり、出かけたりしてゆっくり休んだことなかったわ。せっかくの休みだからゆっくりしちゃおうっと」
恵子はさっそく朝まで着用していた全身タイツに履き替えます。
「やっぱり全身タイツはいいわ!タイツを通して見る世界はいつも新鮮ね。本当に新しい自分、新しい世界だわ!」
恵子は鼻歌を歌いながら、1Fへ降りました。
リビングでゆっくり休もうと思いましたが、せっかくいい天気なので靴を履いて、プールサイド側から庭に出てみました。
今日はカラッと晴れていて少し風がそよぎ、暑くもなく寒くもなく、全身タイツで外に出るにはちょうどいい状態です。
全身タイツを汚したくないので、ビニールシートを芝生の上に敷いて、靴を脱いで仰向けに寝転ぶと、ポカポカの暖かい光が全身タイツに降り注ぎます。
「ああ、日差しがすごく気持ちいいわ。う~ん、これだけですごく幸せ!」
小半刻ほど日向ぼっこをした後、起き上がってビニールシートを片付け、少し散策をしようと庭を離れました。
家の脇を通って表の道に出たところで、「キャッ」「うわっ」と立て続けに小さな悲鳴が聞こえました。
(こんな時間に誰がいるの?)
恵子が驚いて声の方を見ると、あのいつもの園児2人組が全身タイツの恵子にびっくりしてお母さんにしがみついています。
お母さん二人も明らかに警戒しています。
「あっ、驚かせてごめんなさい」
「え?なんか聞いたことある声。恵子ちゃん?」
「この声、恵子ちゃんだ」
園児たちは恐る恐るお母さんから離れます。
「うん、そうよ。びっくりさせてごめんね」
恵子は後頭部のファスナーを下げて、二人に顔を見せました。
お母さんたちも、不審者が恵子ということで安堵したようです。
「うわあ、恵子ちゃん、全部タイツになっちゃった!」
「すごい、すごい!みんなタイツだ!」
「このタイツねえ、全身タイツっていうのよ」
「へえ、全身タイツなんだ!」
「ねえ、恵子ちゃん、さっきみたいに顔もタイツにしてよ」
恵子はフードを顔に被せ、後頭部のファスナーを閉めました。
「うわあい、顔もタイツで隠れてる!すごい、すごいよ、恵子ちゃん!」
二人は大はしゃぎでタイツ脚やタイツお尻を触ります。
「ほんとにタイツだ。すごく気持ちいいタイツだ!」
「このタイツ、本当に気持ちいいのよ。それでちょっと散歩してたのよ。驚かしてごめんね」
「ううん、恵子ちゃんなら平気だよ。ねえ、写真撮ろうよ。ママ、全身タイツの恵子ちゃんと写真撮って!」
「え?ちょ、ちょっと待ってよ」
流石に恥ずかしくてたじろぐ恵子ですが、二人はお構いなしです。
お母さんたちも初めて見る全身タイツに興味津々です。
子どもたちと全身タイツの恵子の写真を何枚も撮っています。
「それにしても恵子さんはスタイル抜群よね」
「全身タイツが恵子さんのスタイルを引き立ててるわ」
恵子は嬉しくもあり恥ずかしくもありです。
「ちょっと触ってもいいかしら?」
「あ、はい、いいです」
「うわっ、すごく柔らかくて優しい肌触りで気持ちいいわ」
「顔もタイツで覆われて、中からは外が見えるの?」
「この全身タイツは中からうっすら見えるんです。すべてが白い世界に見えるんですよ。中から見えない全身タイツもあります」
恵子はとても恥ずかしかったのですが、全身タイツの恵子を認めてもらえたのはすごく嬉しく思いました。
「ねえねえ、恵子ちゃん、広場で一緒に遊ぼうよ」
どうやら二人は恵子の家のすぐ側の、幼稚園の広場で遊ぶためにいたようです。
返事をする間もなく恵子は二人に手を引っ張られていきました。
二人は恵子のタイツをいっぱい触り、お尻タッチやおっぱいタッチをして恵子が恥ずかしがるのを喜び、一緒に鬼ごっこをしたり、芝生に寝転んだりして、全身タイツの恵子と楽しいひと時を過ごしました。
恵子も夢中で二人と遊び、すごく充実した時間を過ごすことができました。
その様子をお母さんたちが動画撮影していて、先ほどの写真と一緒にママ友たちにすぐに共有されて、他の園児たちやお母さんたちの間で「全身タイツの恵子ちゃん」が話題沸騰になったことを、恵子はまだ知りません。
「さあ、そろそろ帰るわよ」
小半刻が過ぎて、園児たちが帰る時間になりました。
「恵子さん、遊んでくれてありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ楽しかったです」
恵子がお母さんたちに挨拶するためにファスナーを下げて顔を出そうとしました。
「恵子ちゃん、顔を出したらダメだよ!全身タイツなんだから顔もタイツのままじゃなきゃダメ!」
強い調子で怒られてしまいました。
お母さんたちも思わず大笑いです。
「はい、ごめんなさい」
「ねえ、恵子ちゃん、明日も遊んでね。ねえ、ママ、いいでしょ?」
「そういえば恵子さん、学校は?」
「実は今日から学校閉鎖なんです。だから遊ぶのは本当はあまりよくないんです。先に言わなくて、ごめんなさい」
恵子は頭を下げました。
「え?恵子ちゃんと遊んだらダメなの?」
恵子は二人とも涙を浮かべてる様子が分かりました。
「明後日まではよくないかな。金曜日なら遊べるよ」
「じゃあ、金曜日に遊ぼうよ!ママ、いいでしょう?」
「恵子さんがいいなら、いいわよ」
「私なら大丈夫です」
その瞬間、二人とも大はしゃぎです。
「やった、やった!」
「また恵子ちゃんと遊べる!ちゃんと全身タイツだよ!」
「分かったわ、全身タイツでいるわよ。さあ、二人とも気をつけて帰ってね」
その時、二人は顔を見合わせて少し膨れ気味です。
「あれ、二人ともどうしたの?」
「恵子ちゃん、もう何度も会ってるんだから、そろそろ名前で呼んでほしいな!」
「あ、ごめんなさい。伊織ちゃんに美咲ちゃん、またね」
「恵子ちゃん、また遊ぼうね、バイバイ!」
恵子は四人の姿が見えなくなるまで手を振りました。
恵子をお気に入りの伊織も、真由をお気に入りの美咲も、後にS女子学院の制服を着ることになりますが、まだそれは何年も先のことです。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?
田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。
受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。
妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。
今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。
…そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。
だから私は婚約破棄を受け入れた。
それなのに必死になる王太子殿下。
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた
東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」
その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。
「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」
リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。
宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。
「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」
まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。
その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。
まただ……。
リシェンヌは絶望の中で思う。
彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。
※全八話 一週間ほどで完結します。
今さら救いの手とかいらないのですが……
カレイ
恋愛
侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。
それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。
オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが……
「そろそろ許してあげても良いですっ」
「あ、結構です」
伸ばされた手をオデットは払い除ける。
許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。
※全19話の短編です。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】
皇 翼
恋愛
「昔からそうだ。……お前を見ているとイライラする。俺はそんなお前が……嫌いだ」
幼馴染で私の初恋の彼――ゼルク=ディートヘルムから放たれたその言葉。元々彼から好かれているなんていう希望は捨てていたはずなのに、自分は彼の隣に居続けることが出来ないと分かっていた筈なのに、その言葉にこれ以上ない程の衝撃を受けている自分がいることに驚いた。
「な、によ……それ」
声が自然と震えるのが分かる。目頭も火が出そうなくらいに熱くて、今にも泣き出してしまいそうだ。でも絶対に泣きたくなんてない。それは私の意地もあるし、なによりもここで泣いたら、自分が今まで貫いてきたものが崩れてしまいそうで……。だから言ってしまった。
「私だって貴方なんて、――――嫌いよ。大っ嫌い」
******
以前この作品を書いていましたが、更新しない内に展開が自分で納得できなくなったため、大幅に内容を変えています。
タイトルの回収までは時間がかかります。
幸せなのでお構いなく!
棗
恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。
初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。
※なろうさんにも公開中
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる