60 / 73
新宿
しおりを挟む
この"赤いヤツ"と対面する度に思い出す。
陸田先輩から逃げたあの日を。
あの人はまだ大学にいるんだろうか?
今ならどうにかできるんだろうか?
「ッ!! 一旦下がってッ!!」
私の声が響く。
思いが尽きないまま、戦いは進む。
戦う理由なんて一つなのに。
〈白雪の飛棍棒(スノーホワイト・ブーメラン)〉をズノウから選ぶと、鎌は青いブーメランへとなり、それを全力で投げた。
これには自動で〈N-飛弾〉が付与され、Nは敵の数によって変わる。
3つとなったブーメランは、それぞれの腕を貫通して吹き飛ばした。
私だって、何も変わってないわけじゃない。
返ってくるブーメランによって、さらに反対の腕も引き裂いた。
これでアイツらはもう銃を使えない。
今まではルイの〈虹女神の真加護〉でヤツらの銃撃等を防いでいたけど、今はヒナが頼り。
ヒナが代わりの〈天魔神の超重力〉を張ってくれている。
撃たれても、弾が勢いを無くして目の前で下へ落ちていく。
これがなかったら何回死んでる事か。
たぶんこういった違いが"ELかそうでないか"なのかも。
上を見上げたってもう遅い。
最後はヒナの黒い雨と、ニイナの矢の雨が襲い、地下関係無く雨塗れとなった。
地面がかなり変形してしまっている。
「さすがですね先輩。私には追い付けません」
「そうですか? ニイナちゃんもすごいですけど」
「私はELECTIONNERでは、ないですから」
外した黒能面を見て、どこか遠くを見ているような顔。
彼女もまた、"選ばれたかった"という気持ちの表れ。
まるで"初めて見た時のヒナ"のよう。
あの時のヒナもELに憧れていた。
私には"あの力"で、ELに充分近付いてると感じたけど。
それでは足りないんだろう。
でも、私たちは選ばれたくて選ばれたわけじゃない。
ルイのおかげ、何もかも...
「行きましょう。止まってるとまた来ます」
先を歩き出すニイナ。
ヒナがこちらへと駆け寄って来た。
「ね、ユキちゃん。ニイナちゃん卑下しすぎのような」
「前のあなたみたいね」
「あー...」
「ヒナの言葉が効くのよ、良くも悪くもあの子には」
アスタ君の件で余計に葛藤があったんじゃないかな。
選ばれてれば、もっとやれたのにって。
...言えた立場じゃない
選ばれた私は"大事な人"を置いて行ったのに...
この後も何度かモンスターやネルトと対峙した。
赤いヤツらほどじゃないにしても、常に油断は出来ない。
###
「新宿駅ね」
ここに来るまでに全く人を見かけなかった。
一人もいないなんて、新宿でそんな事ある?
見かけたのは"無用なサイネージ"だけ。
AI総理の宣伝、最新AIの紹介、新施設のあらすじなど。
...どこまでも侵食されている
いつもは緑の光漂う新宿駅、今は赤く光っている。
駅構内を歩いていると、やっと人を見かけた。
「あ、やっと人がいましたね」
ヒナが少し安堵する。
よく見ると、あの人たちの背中には大きく"新宿花伝"と書いてある。
"新宿花伝"?
目立つ緑の服に黒く大きな文字。
纏まったどこかのグループ?
その中に一人。
目を疑う存在がいた。
あれって...
あれって...!!!
― 蝶の羽根に、よく似た形の銃剣。
絶対に間違いない。
絶対にそうだ。
私は一目散に走った。
背中にピンクの文字で"新宿花伝"とある人物のもとへ。
いるならなんで連絡くれないの?
こっちからは出ないくせに!!
生きてた!
ちゃんと生きてた!!
そう思い、肩に手をやった。
振り向いたその顔は、
...
......
.........
「......え」
「ユキちゃん待ってください!」
ヒナとニイナが近寄る。
「...誰?」
言う人物は...
...
......
.........
― ルイではなかった
「なに?」
「あ、いや...」
「今ここで何をしてるんですか?」
ニイナが聞く。
「わざわざ対処してあげてんの。見て分からない?」
「...なにその態度」
「はぁ?」
「まぁまぁ、ニイナちゃん」
あっちも数人の男が"あの女"をなだめている。
"あの女"は「ELでもない雑魚風情が」とキレている。
性別も性格も、何もかもルイと違った。
一つも似ていなかった。
陸田先輩から逃げたあの日を。
あの人はまだ大学にいるんだろうか?
今ならどうにかできるんだろうか?
「ッ!! 一旦下がってッ!!」
私の声が響く。
思いが尽きないまま、戦いは進む。
戦う理由なんて一つなのに。
〈白雪の飛棍棒(スノーホワイト・ブーメラン)〉をズノウから選ぶと、鎌は青いブーメランへとなり、それを全力で投げた。
これには自動で〈N-飛弾〉が付与され、Nは敵の数によって変わる。
3つとなったブーメランは、それぞれの腕を貫通して吹き飛ばした。
私だって、何も変わってないわけじゃない。
返ってくるブーメランによって、さらに反対の腕も引き裂いた。
これでアイツらはもう銃を使えない。
今まではルイの〈虹女神の真加護〉でヤツらの銃撃等を防いでいたけど、今はヒナが頼り。
ヒナが代わりの〈天魔神の超重力〉を張ってくれている。
撃たれても、弾が勢いを無くして目の前で下へ落ちていく。
これがなかったら何回死んでる事か。
たぶんこういった違いが"ELかそうでないか"なのかも。
上を見上げたってもう遅い。
最後はヒナの黒い雨と、ニイナの矢の雨が襲い、地下関係無く雨塗れとなった。
地面がかなり変形してしまっている。
「さすがですね先輩。私には追い付けません」
「そうですか? ニイナちゃんもすごいですけど」
「私はELECTIONNERでは、ないですから」
外した黒能面を見て、どこか遠くを見ているような顔。
彼女もまた、"選ばれたかった"という気持ちの表れ。
まるで"初めて見た時のヒナ"のよう。
あの時のヒナもELに憧れていた。
私には"あの力"で、ELに充分近付いてると感じたけど。
それでは足りないんだろう。
でも、私たちは選ばれたくて選ばれたわけじゃない。
ルイのおかげ、何もかも...
「行きましょう。止まってるとまた来ます」
先を歩き出すニイナ。
ヒナがこちらへと駆け寄って来た。
「ね、ユキちゃん。ニイナちゃん卑下しすぎのような」
「前のあなたみたいね」
「あー...」
「ヒナの言葉が効くのよ、良くも悪くもあの子には」
アスタ君の件で余計に葛藤があったんじゃないかな。
選ばれてれば、もっとやれたのにって。
...言えた立場じゃない
選ばれた私は"大事な人"を置いて行ったのに...
この後も何度かモンスターやネルトと対峙した。
赤いヤツらほどじゃないにしても、常に油断は出来ない。
###
「新宿駅ね」
ここに来るまでに全く人を見かけなかった。
一人もいないなんて、新宿でそんな事ある?
見かけたのは"無用なサイネージ"だけ。
AI総理の宣伝、最新AIの紹介、新施設のあらすじなど。
...どこまでも侵食されている
いつもは緑の光漂う新宿駅、今は赤く光っている。
駅構内を歩いていると、やっと人を見かけた。
「あ、やっと人がいましたね」
ヒナが少し安堵する。
よく見ると、あの人たちの背中には大きく"新宿花伝"と書いてある。
"新宿花伝"?
目立つ緑の服に黒く大きな文字。
纏まったどこかのグループ?
その中に一人。
目を疑う存在がいた。
あれって...
あれって...!!!
― 蝶の羽根に、よく似た形の銃剣。
絶対に間違いない。
絶対にそうだ。
私は一目散に走った。
背中にピンクの文字で"新宿花伝"とある人物のもとへ。
いるならなんで連絡くれないの?
こっちからは出ないくせに!!
生きてた!
ちゃんと生きてた!!
そう思い、肩に手をやった。
振り向いたその顔は、
...
......
.........
「......え」
「ユキちゃん待ってください!」
ヒナとニイナが近寄る。
「...誰?」
言う人物は...
...
......
.........
― ルイではなかった
「なに?」
「あ、いや...」
「今ここで何をしてるんですか?」
ニイナが聞く。
「わざわざ対処してあげてんの。見て分からない?」
「...なにその態度」
「はぁ?」
「まぁまぁ、ニイナちゃん」
あっちも数人の男が"あの女"をなだめている。
"あの女"は「ELでもない雑魚風情が」とキレている。
性別も性格も、何もかもルイと違った。
一つも似ていなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
闇に飲まれた謎のメトロノーム
八戸三春
SF
[あらすじ:近未来の荒廃した都市、ノヴァシティ。特殊な能力を持つ人々が存在し、「エレメントホルダー」と呼ばれている。彼らは神のような組織によって管理されているが、組織には闇の部分が存在する。
主人公は記憶を失った少年で、ノヴァシティの片隅で孤独に暮らしていた。ある日、彼は自分の名前を求めて旅に出る。途中で彼は記憶を操作する能力を持つ少女、アリスと出会う。
アリスは「シンフォニア」と呼ばれる組織の一員であり、彼女の任務は特殊な能力を持つ人々を見つけ出し、組織に連れ戻すことだった。彼女は主人公に協力を求め、共に行動することを提案する。
旅の中で、主人公とアリスは組織の闇の部分や謎の指導者に迫る。彼らは他のエレメントホルダーたちと出会い、それぞれの過去や思いを知ることで、彼らの内面や苦悩に触れていく。
彼らは力を合わせて組織に立ち向かい、真実を追求していく。だが、組織との戦いの中で、主人公とアリスは道徳的なジレンマに直面する。正義と犠牲の間で葛藤しながら、彼らは自分たちの信念を貫こうとする。
ノヴァシティの外に広がる未知の領域や他の都市を探索しながら、彼らの旅はさらなる展開を迎える。新たな組織やキャラクターとの出会い、音楽の力や道具・技術の活用が物語に絡んでくる。
主人公とアリスは、組織との最終決戦に挑む。エレメントホルダーたちと共に立ち上がり、自身の運命と存在意義を見つけるために奮闘する。彼らの絆と信じる心が、世界を救う力となる。
キャラクターの掘り下げや世界の探索、道具や技術の紹介、モラルディレンマなどを盛り込んだ、読者を悲しみや感動、熱い展開に引き込む荒廃SF小説となる。]
ワークロボット社
シュレディンガーのうさぎ
SF
舞台は2180年で、人間そっくりなアンドロイドが世界に普及しているという設定です。
そんな世界でアンドロイド業界を支配する会社『ワークロボット社』に秘書(セクレ)として勤めることになった人間、サラがその会社のCEOや従業員たちと絆を深めながら、アンドロイドと人間がどのような関係であるべきかを模索していきます。
*気が向いたら続きを書くという感じになります。
どうぶつたちのキャンプ
葵むらさき
SF
何らかの理由により宇宙各地に散らばってしまった動物たちを捜索するのがレイヴン=ガスファルトの仕事である。
今回彼はその任務を負い、不承々々ながらも地球へと旅立った。
捜索対象は三頭の予定で、レイヴンは手早く手際よく探し出していく。
だが彼はこの地球で、あまり遭遇したくない組織の所属員に出遭ってしまう。
さっさと帰ろう──そうして地球から脱出する寸前、不可解で不気味で嬉しくもなければ面白くもない、にも関わらず無視のできないメッセージが届いた。
なんとここにはもう一頭、予定外の『捜索対象動物』が存在しているというのだ。
レイヴンは困惑の極みに立たされた──
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
天使の歌声を追って俺はVtuberになることを決意する!
菅原みやび
SF
【これは戦う、近未来のVtuber達の物語……】
20XX年の近未来、全人類は、とある理由により地下に潜伏することになる。
昔日本だった場所の地下にある一つ【地下未来都市 天神】。
そこに住むゲーム大好き少年【白野 無紅(しらの むく)】はネットで知り合った知人【黒野 瑠璃(くろの るり)】と友人の【青井 優(あおい ゆう)】のアドバイスを受けVtuberのオーディションを受けることに。
無紅がVtuberを受ける一番の理由はオーディション事務所【国津アルカディア】が運営していた旧作のVRゲームで一人の天使と出会った事……。そう、無紅はその天使にもう一度会うために国津アルカディアのVtuberになることを決意したのだ。
オーディションの結果は驚いたことになんと合格‼ その結果に素直に喜ぶ無紅。
実はこの事務所、新しいVRゲーム【アルカディアアドベンチャー】のシンガー枠のテスターを探しており、社員の一人である瑠璃が無紅を予め候補選定していたからだったのだ!
候補選定理由は『無紅が無類のゲーム好きであり、その熱意と様々な実績がゲーム業界に貢献している。そして貢献していく』と面接官一同に伝わったこと。更には特殊能力【フィーリングコピー】を持っていたから。
フィーリングコピー。それは、無紅が無意識に良いと思った対象人物の特技をそっくり自分のものにしてしまうというもの。実は無紅は無意識に昔聴いた【天使の歌声】をフィーリングコピーしていたのだった。
また、それとは別に無紅には驚くべき秘密が隠されているのだが、当の本人は気づいていない。
こうして、無紅は高校の学園生活をしながら、Vtuberとして成長しつつ、VRゲーム【アルカディアアドベンチャー】の世界を冒険していくことになるのだが……。
実は、このアルカディアアドベンチャーは、ただのVRオンラインゲームでは無くて……。
近未来地下都市で繰り広げられる、無紅と友人達のVtuber活動兼、思い人である天使を探す、【笑いあり、感動あり、複雑に絡んだ色恋沙汰あり、そして涙あり】の冒険活劇が今スタートする!
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる