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新宿

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 この"赤いヤツ"と対面する度に思い出す。
 陸田先輩から逃げたあの日を。

 あの人はまだ大学にいるんだろうか?
 今ならどうにかできるんだろうか?

「ッ!! 一旦下がってッ!!」

 私の声が響く。

 思いが尽きないまま、戦いは進む。
 戦う理由なんて一つなのに。

 〈白雪の飛棍棒(スノーホワイト・ブーメラン)〉をズノウから選ぶと、鎌は青いブーメランへとなり、それを全力で投げた。
 これには自動で〈N-飛弾〉が付与され、Nは敵の数によって変わる。

 3つとなったブーメランは、それぞれの腕を貫通して吹き飛ばした。
 私だって、何も変わってないわけじゃない。

 返ってくるブーメランによって、さらに反対の腕も引き裂いた。
 これでアイツらはもう銃を使えない。

 今まではルイの〈虹女神の真加護〉でヤツらの銃撃等を防いでいたけど、今はヒナが頼り。
 ヒナが代わりの〈天魔神の超重力〉を張ってくれている。

 撃たれても、弾が勢いを無くして目の前で下へ落ちていく。
 これがなかったら何回死んでる事か。
 たぶんこういった違いが"ELかそうでないか"なのかも。

 上を見上げたってもう遅い。
 最後はヒナの黒い雨と、ニイナの矢の雨が襲い、地下関係無く雨塗れとなった。
 地面がかなり変形してしまっている。

「さすがですね先輩。私には追い付けません」
「そうですか? ニイナちゃんもすごいですけど」
「私はELECTIONNERでは、ないですから」

 外した黒能面を見て、どこか遠くを見ているような顔。
 彼女もまた、"選ばれたかった"という気持ちの表れ。

 まるで"初めて見た時のヒナ"のよう。
 あの時のヒナもELに憧れていた。

 私には"あの力"で、ELに充分近付いてると感じたけど。
 それでは足りないんだろう。

 でも、私たちは選ばれたくて選ばれたわけじゃない。
 ルイのおかげ、何もかも...

「行きましょう。止まってるとまた来ます」

 先を歩き出すニイナ。
 ヒナがこちらへと駆け寄って来た。

「ね、ユキちゃん。ニイナちゃん卑下しすぎのような」
「前のあなたみたいね」
「あー...」
「ヒナの言葉が効くのよ、良くも悪くもあの子には」

 アスタ君の件で余計に葛藤があったんじゃないかな。
 選ばれてれば、もっとやれたのにって。

 ...言えた立場じゃない
 選ばれた私は"大事な人"を置いて行ったのに...

 この後も何度かモンスターやネルトと対峙した。
 赤いヤツらほどじゃないにしても、常に油断は出来ない。

 ###

「新宿駅ね」

 ここに来るまでに全く人を見かけなかった。
 一人もいないなんて、新宿でそんな事ある?

 見かけたのは"無用なサイネージ"だけ。
 AI総理の宣伝、最新AIの紹介、新施設のあらすじなど。
 ...どこまでも侵食されている

 いつもは緑の光漂う新宿駅、今は赤く光っている。
 駅構内を歩いていると、やっと人を見かけた。

「あ、やっと人がいましたね」

 ヒナが少し安堵する。
 よく見ると、あの人たちの背中には大きく"新宿花伝"と書いてある。
 "新宿花伝"?

 目立つ緑の服に黒く大きな文字。
 纏まったどこかのグループ?

 その中に一人。
 目を疑う存在がいた。

 あれって...

 あれって...!!!

 ― 蝶の羽根に、よく似た形の銃剣。

 絶対に間違いない。
 絶対にそうだ。

 私は一目散に走った。
 背中にピンクの文字で"新宿花伝"とある人物のもとへ。

 いるならなんで連絡くれないの?
 こっちからは出ないくせに!!

 生きてた!
 ちゃんと生きてた!!

 そう思い、肩に手をやった。
 振り向いたその顔は、

 ...

 ......

 .........

「......え」
「ユキちゃん待ってください!」

 ヒナとニイナが近寄る。

「...誰?」

 言う人物は...

 ...

 ......

 .........

 ― ルイではなかった

「なに?」
「あ、いや...」
「今ここで何をしてるんですか?」

 ニイナが聞く。

「わざわざ対処してあげてんの。見て分からない?」
「...なにその態度」
「はぁ?」
「まぁまぁ、ニイナちゃん」

 あっちも数人の男が"あの女"をなだめている。
 "あの女"は「ELでもない雑魚風情が」とキレている。

 性別も性格も、何もかもルイと違った。
 一つも似ていなかった。
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