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停電

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「んで、なんでお前大学にいたんだよ?」
「あぁ、これ見ろよ」

 俺の部屋のソファでくつろぎながら、シンヤはSNSの画面を俺のL.S.へと共有した。
 そこには赤く光ってる建物内で"あの謎の機械"に襲われたという内容が幾つも表示されていた。
 見る限り、どこの場所にも"赤いヤツは1体ずついる"と書いてある。

「これ見てお前らのいる場所見たらよぉ、イヤな予感がするだろ?」
「確かに」
「わざわざ来て窓割ってくれたのね、危ないのに」
「まぁな。大事な親友のためなら何とやらってヤツだ、なぁルイ?」
「いや俺に振るなよ...あ、もう一つ聞きたい事がある。お前どうして"UnRule"を起動すればいいって知ってたんだ?」
「それはな。まぁ今やどこにでも情報が出てるたぁ思うが、俺の知り合いがよぉ、始めてみたら何か急に"剣"が出てな? それが"本物みたい"で、それでピンときたってわけだ。俺も始めたらこんなのが出てきたぜ」

 シンヤは格好つけるようにして、全身が"赤く細長い銃"を出現させた。

「お前のはこんなのが出てきたのか」
「へぇ~、みんな違うのね」

 ちなみにシンヤのL.S.を見ると、周りが付けているL.S.と変わらず、それは"事前予約当選者じゃない"事を表していた。
 俺とユキの武器も出して見せると、端の方を見始めた。

「おい、これ!!」
「なんだよ?」
「二人ともここを見てみろよ」

 これらはどうやら普通の武器では無いらしい。
 端の方に"EL"のマークが付いていると違うという。

 まだ詳しくは分からないらしいが、"威力が違ったり、特別な能力が付いていたりする"という事は判明してるそうだ。
 俺の銃は他と何が違うんだろうか?
 威力がヤバい、とかそんくらいに見えるが。

 だけどコイツじゃ、唯一あの"赤いヤツ"は倒せなかったんだよな。
 まだアイツは大学内をうろうろしているんだろうか?

 銃からは"0"が浮き出ており、もうこれ以上何もできなさそうに見える。
 それと同時に、"さっきの出来事が本当だった"のを突き付けてくる。

「お前らのL.S.形も色も違うし、そうかなとは思ったけどやっぱりだったか」
「シンヤは"一般側"だったのか?」
「おう。一緒に予約したのによ~なんで俺だけ当たらねえんだ!?」
「まぁそう僻むなって、別に大きな違いなんてねぇよ」
「いいや、俺はあると思うね。"ELマークの武器"は絶対チートの強さだ」
「話してるところ悪いんだけど、ルイに一つ聞いていい?」
「ん?」
「あの4階での"隠しエレベーター"なんだけど...」
「あぁあれな、わるいな話してなかったわ。あれはL.S.から"原田先生の顔をホログラム表示"して認証させたんだよ」
「へぇ~」
「実はあの場所だけカメラの性能がちょっと古いみたいで、あれでもいけるらしい」
「そうそう、俺とルイだけ研究室の人に特別に教えてもらったんだぜ? いいだろ?」
「う~ん、いいかどうかは置いてといて、まさかの知識で助かったってわけね」
「おいおい、置いとくんじゃねぇよ新崎さん!」

 あれこれしていると、時刻はPM21:52。
 武器の交換をしてみたりしたが、やっぱりダメだった。

 この質感や重量は何回触っても本物。
 これが未だに理解できない。
 どういう仕組みなんだ?

 考えながら、俺は"ある事"を思い出した。

「なぁ、そういや総理って"夜も会見する"って言ってたよな?」
「言ってたわね。もしかしてそろそろ始まる?」
「さぁな~時間は特に言ってなかったし、"会える人は会いましょう"とか訳わかんねぇ事言ってたけどよぉ...つまりはあれか? "あの人型のアンドロイドに殺されなかったヤツは見れますよ"、的な?」
「...今回の事からして、それしかないだろうな」
「こんな特別感出して、誰が喜ぶのよ」
「"国の借金が返せる可能性がある"だの何だの意味不明な事言ったかと思えば、急に真逆な100万配り出してよぉ。国民を喜ばせるだけ喜ばせといて、その隙に一気に落とす寸法ってか。犯罪国家日本だなマジで」
「政府はこんな事して何の得があるの? 国会議員は誰も反対してないのかしら?」

 シンヤもユキも言ってる事は正論。
 100万で一旦喜ばせといて、その間に殺して金を奪う...
 今日の昼前に見たSNSの情報が頭をよぎった。

 "―人間を殺してその分を取り上げるんじゃないか?"

 その言葉の通りになりつつある。
 やっぱり、あの時の違和感は...

 次の瞬間、部屋の電気が消えた。

「ん? なんだぁ!?」
「停電? ルイ、電気切って無いよね?」
「俺じゃない。停電だ、これは」

 暗い静寂の中、イスから立ち上がろうとしたら近くで小さい電子音がした。
 それは俺の部屋の自動ドアの前で止まった。

 停電のため、自動ドアは普通のドアに切り替えられている。
 電子音が鳴るモノはそのドアを開け、躊躇なく入って来た。

「うぉ!?」
「なに!?」
『ルイ様。ブレーカーが落ちていないにも関わらず、"どの場所も"電気が付きません。緊急事態のため、電力会社へご報告をしておきました』
「ありがとう。この辺りを照らしてくれないか」
『分かりました』
「Piitaかよ、ビックリさせんなよな~」
「ほんとよ...」
『ビックリさせてしまい、申し訳ありません』

 Piitaは"家庭用AIロボット"だ。
 これは2か月前くらいから販売開始され、今では小売価格に抑えられてとんでもなく人気がある。
 出た当初に買っちまった俺はめっちゃ損したわけだが、そう思わせないくらい多機能を有している。

 料理や洗濯等も出来るが、料理はたまに自分でするようにしている。
 特にユキといる時は、どっちがAIより美味いもの作れるかで競っていたりする。

「おい!! SNS見てみろよ!! ここだけじゃねえ!! 東京だけが全部停電らしいぞ!?」
「は!? 東京だけ!?」

 即座にL.S.で見ると、
「ブレーカー付いてて電気付かないの草」「電力会社連絡しても繋がらないんだけど」「AI総理は経済政策よりこれを先に何とかしろよ」
 情報が散乱してはいるが、画像を見る限りは東京だけが停電のように見える。
 これ以上は今は分かりそうにない。

 てか"東京だけ"ってなんだ?
 わずかな明かりを頼りに窓から外を見てみると、どこも同様に暗闇だった。
 ただ例外なのが、"赤い発令の場所だけ"は赤く光り続けていた。

「あそこだけは、"例外"ってか」
「...光り続けてるわね」

 隣のユキが手を握ってきた。
 少しの震えを感じる。

 ユキだけでも、もう怖い思いをさせないようにしないと。
 不気味なスカイツリーを見続けていると、L.S.のホログラムディスプレイが幾つか勝手に展開された。

『皆様、こんばんは』
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