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「うおおおおおおぉーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 プツンと頭の中のどこかが切れた俺は叫びながらミホミの両足を掴んでいきなり全力で徹底的な電気あんまを開始した。 

「きゃーーーーっ! アハハハハハッ、イキナリっ! イキナリはずるいって!! にゃはははははは!!」

 すぐに始まるミホミの叫び声。
 でもそれは辛いってよりも、愉しさ半分、くすぐったさ半分みたいな感じだった。

「うひひひひひっ、あはははははっ、ウハハハハハハハっ!」

 細い足首を強く握って只管足を動かし続ける。
 ドドドドドドドドとドリルで穴をあけるように振動を与え続ける。

「ちょ、あひゃひゃひゃひゃっ、ちょっと……っ!」

 少し笑い顔が崩れてくる。
 それをただ映している俺の目。

「ううーーーーーーっ、そ、そろそろっ! うひひひ、や、やばいかなっ?」

 半笑いでちょっと焦ったような表情になる。
 うっすらと頬が赤くなってきた。

「あーーーーーっ! ね、ねぇっ! 一旦止めてくんないいいいーーーっ!?」

 一瞬俺の動きを振り切ろうと身体に力が入ったのがわかった。
 でも俺はしっかりと足首と股間の三点で固定して離さない。
 機械的な刺激を与え続けて、その動きさえ封じてしまう。

「っ! ーーーーーっ! ちょちょちょちょっともう限界なんだってばぁ! ねえ!」

 もう笑ってはいない。
 苦しそうで切羽詰ったような必死な顔になりつつある。
 そこには上機嫌な笑みは完全に消えうせていた。

「にゃははははははっ!! も、もうムリだってっ! なんか怒ってんのぉっ!? あやまる、あやまるからぁっ!!」

 ミホミがナニを言ってもどんな顔をしても動きを止めることは無い。

「だ、だからっ! ううっーーーーーっ! ちょっ……やっ、やばいって!! このっ、~~~~っ、ば、ばかぁっ! ~~~~~~~っ!!」

 段々しゃべることも辛くなってきたようだった。
 明確な言葉が少なくなって呻き声や言葉にならない叫びだけになって。
 抵抗することもできずに全身を強張らせて只管耐えることしかできなくなったらしい。

 そのミホミの様子に俺は自分でもよくわからないけど、「今しか無い」って確信した。

 もうどうせこんな風にバレバレになっちゃったんだから、どっかのタイミングで認めざるを得ないんだろうからって。
 だったら今、ミホミもまともに考える余裕なんてなさそうな、このドサクサにまぎれてもう言っちゃえって。
 後から考えるとめちゃくちゃな理屈だけど、その時の俺はもうそれしかないって思っちゃったんだ。

 はい、そうです、完全におかしくなってますね。
 自分でもそう思います。

 でもしょうがないんです。
 男の子ってそういうところがあるんです。


 そして遂に。


「俺は……っ、俺はぁーーーーっ! ミホミが……好きだぁーーーーーーーーーーっ!!」


 一瞬ビクッとミホミの身体が大きく跳ねた。 

「ああああんたぁーーーっ、こここここんな状態でそんなことーーーーーーっ!! 言ってんじゃないわわわわわわよーーーーーーっ!!」

 俺は何にも聞こえないしわからないから、ミホミが何を言おうと止める事は無い。

「ミホミがぁーーーーーーっ! ミホミぃがーーーーーーーっ! ……好きなんだぁーーーーーーーーーーっ!!」

 もうミホミの方を見てもいない。
 思いっきり目をつぶりながら湧き上がる熱いものに身を任せて、衝動のままに身体を動かし続ける。

「ああああああーーーーーっ、わわわわわわ、わかったっ! わかったからっ! 一旦やめてぇーーーーーっ!!」

「好きだ好きだ好きなんだぁーーーーーーーーーーーっ!!」

 その高速で力強い連打に強張っていたミホミの身体が何度もとんだりはねたりを繰り返したような気がした。
 明らかにそれまでとは違う何かがミホミの中で起こっているのは確実だった。

 でも俺はもう沸騰しきった頭で何を見ても何を聞いてもわからない、仮にわかりそうになってもわからないフリをしてやり続けた。
 この激しい動きと感情の昂ぶり、勢いですべてを乗り切れると思い込んで。
 そう自分を暗示して騙してごまかして。
 くそ恥ずかしい、悔しい、照れくさいのを今だけは忘れたくて。

 終わった後でどうなるかなんてこれっぽっちも考えないようにして、ひたすら「好きだ」っていいながらミホミに電気あんまをやり続けたんだ。


「いぎにゃーーーーーーーーっ!!」
 

 俺達以外に誰もいない吉岡家の中には、永らくミホミの絶叫が轟き続けた。

………

 その後、ふと気がつくと汗みどろではぁはぁ息をついている俺の前にぐったりと死んだように動かないミホミの姿があった。
 やがてむっくりと起き上がったミホミに、俺は思いっきりぶっ飛ばされて。


 絶対服従を誓わされた後、付き合うことになった。


 ぼこぼこに顔中を腫らした俺を正座させた前で、今日のことは絶対に他言しないように念を押すミホミ。
 本人の名誉のためにはっきりとは言えないが、あの電気あんまの徹底的な追い込みでちょっと人に言えないような惨状になってしまったからだ。

 そしてこの秘密を守らせるにはすぐそばで常に目を光らせてずっと一緒にいるしかない、一生アタシの面倒をみさせるしか無いって、殺気さえ感じる物凄い視線で言い放った。
 その時のミホミの顔はこれまでの人生で見たものの中でも一番怖かった。

 でもその後に顔をそらして。


「すすすす、好きならフツーにそう言えばいいのよ! 全くバカなんだから!」


 そう言ったときの様子は満更でもなさそうだったから、俺は全身の力が抜けてがっくりとうなだれた。
 


 その後、電気あんまをやりあうことは無くなった。

 あれはお互い好きっていう感情がまだよくわからないときにしかできない、はっきりと好きあってるどうしじゃ絶対にできないことなんだって。
 男とか女とか関係ないただの幼馴染の時だけのやりあいなんだって、きちんと付き合い始めてからはっきりと理解できた。
 特に年齢を重ねて、普通のカップルみたいな積み重ねが溜まっていくほど、後から思い出してあまりの恥ずかしさに悶絶する。
 勿論、ミホミもそうだろう。
 絶対に殺されるから口には出せないけど。

 そうして学校の年次が変わって、校舎が変わって、制服が変わっていっても俺とミホミは一緒にいて。
 他人にはおろか自分たちどうしでも絶対に口に出せない特別な思い出を胸の中に秘めながら、どこにでもいる普通のカレシとカノジョの時間を積み重ねていって。
 やがて本当の意味で結ばれたその後で。
 もっと大人になってからまた電気あんまをやりあうようになるんだけど。



 それはまた別の話なんだ。




 おわり
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