いつのまにか美少女になっていた悪戯な幼馴染と俺の話

かめのこたろう

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第2話 ドッグオン

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 すぐ目の前でじっと見つめてくる瞳。
 綺麗に通った鼻筋の先、ピンクの唇はすっと結ばれて。
 
 今、俺は長年一緒にいた幼馴染であるコイツの肩をつかんだまま固まっていた。

 
 晴れて付き合いだした俺達。
 だからといっていきなりそれまでの関係が変わったわけじゃない。 

 長い時間をかけて培われた心置けない腐れ縁のあけっぴろげなやりとり。
 お互いの部屋に平気で出入りして入り浸ってはだらだら話したり遊んだり。

 時々、あれ俺達って付き合ってるんだよな?って疑問に思うほど自然なままに続いていた。

 でも確かに俺は想いを伝えたし。
 コイツはコクって頷いて。


 すごくうれしそうに笑ったんだけど。


 その時が過ぎたら、また何時もの感じに戻ってしまった。
 むしろ不自然な態度になりそうだからあんまり意識しようとしていないのかもしれない。
 だってずっと慣れ親しんできた関係があまりにも居心地がよかったから。
 想いを告げたとはいえさらにその先に進んでしまうと何かが壊れてしまうような気がしたから。

 そして相変わらずコイツは昔どおりの悪戯を繰り返し。
 俺はそのたびにドギマギして笑われる。

 でも今日。
 いよいよ一歩を踏み出そうと決めた。

 恋人としてやらなくちゃいけないことを一つ乗り越えようと決心した。

 何時ものように俺の部屋でふざけてじゃれついてきた時に。
 制服の白いシャツにスカート姿のコイツの肩を掴んで自分の方に向けたんだ。
 身体をちょっとひねって、足を崩した横すわりの体勢。
 そうして逃げられないように捕まえたつもりだった。

 その途端、ふざけた感じが無くなって何時に無く真面目な顔で見つめてくる。
 この頃伸びてきて、ショートカットとはそろそろいえない長さの髪の向こうから。
 静謐な光りを湛えた大きな瞳が雄弁に俺に語りかけてくる。

 
 うん、いいよ。
 待ってた。
 

 俺はそれを受けて完全に固まってしまった。
 先ほどまでの決心はどこへやら、真っ直ぐに俺を受け入れようという想いをはっきりと示すコイツの態度と表情、仕草に心をわしづかみにされて更なる緊張に叩き込まれたんだ。
 むしろ逆に俺の方が追い詰められたような感じですらあった。

 そうして動けなくなってどれだけ時間が経ったろうか。
 座り込んで少し捻った身体の両肩を掴んだ俺とそうされたままじっと見つめ返すコイツ。

 いつしかそのあまりに空けてしまった間(ま)の長さに心がくじけかけていた。
 もうタイミングを逃してしまったような気持ちに襲われて投げ出したくなった。

 だめだ、今回はやめよう。
 なんだか動けない。
 掴んだ手を離して冗談めかしてごまかしちゃおう。

 そう心の中を言い訳で満たしながら指の力を抜こうとした瞬間。

 それまで大きく見開いていた瞳を閉じて。
 少し顔を上向きにしてきた。

 僅かに開いた唇を差し出すように。


 齎された効果は絶大だった。

 
 ついさっきまで情けないほど怯えて萎えきっていた俺は一瞬でいなくなった。
 ただ突き上げられる衝動に従って考えることもなく身体は動いていた。


 その日。
 俺達はファーストキスをした。
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