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 これが最後だからと、そこを強調してベンチに仰向けになるように言いつけます。
 もはや彼には逆らう力もないのでしょう、「まだ何かされるのか」という怯えを示したのもほんの僅か、諦めたようにふらふらと力なくぐったりと横になります。


「もう私の水着で興奮しないんだね?」

「は、はい……、しませんっ!」


 生意気に決意のようなものを感じさせるはっきりとした返事でした。
 なんだかイラっとさせられます。
 女子更衣室で水着を盗んで自慰行為しようとしていた最悪の変態が一丁前にと、ムカついてきます。

 でもそんな気持ちはおくびにもださずに。


「それが嘘じゃないと私も信じたいな……。 ほら……」


 仰向けにこちらを見上げる彼の顔に、再び競泳水着をゆっくりとかけていきます。
 ふわりと上から覆われるようにしてから、掌でやさしく押し付けて撫でるようにさすります。


「エッチなこと考えちゃ駄目だよ?」


「ふぁいっ!」


 くぐもりながらもいつになく力強い声。
 本気で頑張って努力して自分を乗り越えようとする克己心に溢れた響き。

 それがますます私を苛立たせ、攻撃的にしていくようでした。


「すーはー、すーはー……」


 しばらく彼の呼吸と水着の衣擦れの音だけがあたりに響きました。
 その間も私はじっと彼の股間を確認しています。
 わずかにも異変があれば即座に立件して告発する姿勢を崩すことなく注視します。


「すー……、はー……」


 心なしか、呼吸の周期が長くなったようでした。
 彼なりにこの態勢でリラックスできるコツでもつかんだのでしょう。

 そしてジャージの股間にはピクリとも反応は起きず、テントができる様子は微塵もありません。
 私は「こんにゃろ……」と思いながら、何か手を打つ必要があることを理解させられます。
 このまま平穏無事に終わらせるなんて、あっていいはずがありません。

 ……やるしかない。

 そう決心した私に迷いはありませんでした。


「ねえ……」


 おもむろに押し付けていた水着をすっと上にあげて外すと、困惑した視線が向けられました。
 そしてやさしく微笑みながら言い放ちます。


「ここが私の身体のどこに触れてたか、わかるよね?」


 私は両手で水着の股からお尻の部分が広がるように持ち方を調整します。
 そしてピンポイントで、彼の口と鼻にかぶせる形で押し付けていきます。


「んんっ!?」


 もがくような動きを制止しつつ、やさしく囁くように言葉を紡ぎます。


「わかる? 今、キミの顔を覆っているのは、私の……」


 アソコだよ……。


 狂おしく喘ぐように、可能な限りエッチな響きになるようにがんばりました。
 我ながら相当キモイ感じでしたけど、その分の努力ははっきりと目に見えて現れてくれました。


「ああっ……、そんな……っ! そんなぁっ……!!」」


 ムクムクっと。
 それはもう、効果てきめんに彼の股間のジャージは大きく山を描いて盛り上がったのです。
 それまでしんと静まり返っていた大地がいきなり活火山になったかのような変貌っぷり。


「ふっ……!」


 さっきまで小生意気に「ジブン、もう先輩の水着で興奮なんてしないっス!」みたいな感じで落ち着き払っていたのが、こんな情けない醜態をさらしてくれるんですから。
 私の「してやった」達成感と満足感といったらありませんでした。

 はっきり言って快感でした。
 自分の想う通り、いいように男性を反応させた優越で、目もくらむような思いでした。

 でもそんな内心は微塵も表に漏らすわけにはいきません。
 これは罰であり躾けなんだから、それを受けている側に僅かにも悟られるわけにはまいりません。
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