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 生まれて初めての異性との交感。
 大好きなあの子を深く正しく理解して分かりあえたような心地よさと満足感に包まれたまま、しばらくの時間が経ちました。

 至福としか言いようがない、恍惚の余韻に酔いしれながらも少しづつ冷静になっていきます
 すべすべしたパンツの感触も、複雑な魅力に満ちた匂いも、ずっと堪能し続けていくうちに、だんだん慣れていくようでした。

 どろどろに溶けて不可逆的に混沌としたはずの自我が徐々に再構築されていくに従い、そんな自分を自覚していきます。

 そうして落ち着いてくるとなんだか今度は物足りないような気持ちになってきました。
 我ながら信じられないことに、あれだけ感動して夢中になったはずのパンツとの邂逅もすでに色あせて過去のものになりつつあったのです。

 いやあれほどの衝撃を受けたからこその渇望だったのでしょうか。
 一度知ってしまった甘美な感覚をもう一度さらに強く深く求めたいという本能のなさせるものだったのでしょうか。

 僕はもっと彼女と一つになりたいと強く思いました。
 パンツを嗅いだあの瞬間に至ってしまった強烈な一体感をもう一度味わいたい、今ではもう失われつつあるあの感覚を再び感じたいと。

 次の瞬間、天啓のような閃きが宇宙の開闢のように突然訪れました。
 このパンツを使って、匂いを嗅いだり感触を楽しんだりする以上に彼女を感じることができるかもしれないその方法。

 僕はぴったりと顔に押し付けていたパンツを名残惜しく想いながら引き離し。
 座っていたベッドの上に丁寧に置くと、おもむろに自分が纏っていた衣服を脱ぎだしました。

 早瀬さんのパンツが見ているすぐ前で、ストリップを続けます。

 やがて一糸まとわぬ完全な全裸になってから恭しく捧げ持つように、また彼女のパンツを掲げ。
 両サイドをつまむようにして、全貌を改めて確認した後。

 膝を曲げて一気にパンツの穴に足を通しました。
 ちっちゃなパンツが限界まで延ばされて、裂けないかという不安に襲われました。

 でも想像以上にしなやかな伸縮性を発揮してくれた彼女のパンツは、徐々に引き上げるほどに僕の下半身を万遍なく包んでいき。
 ところどころはみ出したり不格好になりつつも、とうとう完全に合体することができたのでした。

 そして訪れる、さらなる神秘現象。
 匂いを嗅いで感触を堪能したときとはまるで別次元の法悦。

 彼女と本当の意味で一つになってつながることができた実感でいっぱいになりました。

 僕は今、早瀬さんが纏っていたパンツに下半身を完全に包まれました。
 性器やお尻も含めて、彼女と全く同じ感覚と状況と物質を共有したのです。

 僕が早瀬さんで、早瀬さんが僕で。
 脳裏に鮮やかに描かれる遥かな幻想、無限に続くだまし絵のような円環。

 これほどの一体感は実際のセックスですら味わえないのではないかと思いました。
 あっくんに対する優越感のようなものすら、湧き出してくる気がします。

 僕はその日、ずっと彼女のパンツを履いて過ごしました。
 傍目にはしっかりズボンをはいて上着を着て、素知らぬ顔で普段と同じ格好をしていましたが。
 両親を始め、家族全員は僕の様子になんらの異常も感じ取ることはなかったはずですが。

 でも彼ら彼女らが見慣れた衣服の下では、早瀬さんそのものと言って過言ではないピンクの小さなパンツを纏って過ごしていました。

 みんなで居間でTVを見て。
 ご飯を食べて、少しだけ片付けを手伝って。

 お風呂に入るときだけ、一瞬だけ脱ぎましたけど。

 湯船から上がって身体を拭いたらすぐにまた身にまとい、その上にパジャマを着ます。


 とろけるような幸福感に包まれたまま布団に入ると、あたかも彼女と同衾しているような感覚でずっとドキドキが続きました。
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