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あの早瀬さんのパンツを貰える。
この降ってわいたような僥倖、あまりの慶事に僕は最初うまく反応できませんでした。
文字通り、硬直して固まってしまい目を剥いて信じられないような顔をし続けていたと思います。
そんな僕の様子をことさら気にするでもなく、あっくんは「アイツには捨てたって言っとけばいいべ?」とか「すぐに取り来ねえのがわりいんだしな」などとどこかに視線を漂わせながらブツブツとつぶやいていました。
やがて徐々に我に返りながらどうやらこれが現実のことで、本当に目の前のヤンキーが可愛い彼女の下着をぽんと気前よく僕に与えてくれるらしい雰囲気を実感すると、打って変わって酷い興奮状態へと陥ったのでした。
早鐘のようになり続ける心臓とはぁはぁ荒い息。
絵にかいたような「アブナイ」感じそのままの僕はあっくんに「いつくれるのか」「どうやって渡されるのか」を身を乗り出して問い詰めます。
彼は相変わらず、すっかりこちらを軽蔑してばかにして汚物を見るような余裕の態度を変えることなく、「ああ、んじゃこれからウチに取り来いよ」とこともなげに答えます。
僕はこの瞬間、心からこのヤンキーとの出会いを神様に感謝しました。
本当に、本当に涙が出るほどあっくんという不良が存在してくれてこれほどありがたく、うれしく思ったことはありませんでした。
これまでさんざん使いっ走りにされたり、機嫌が悪いときに小突かれたり、見た目とか挙動を笑いものにされたことだって全然取るに足らないことでした。
むしろおつりを払わなくちゃいけないくらいです。
例えあちらの眼に僕がどれだけ無様で破廉恥で愚かしい生き物に映っていたとしても。
彼にとって「彼女のパンツ」なんてさほども価値の無いもので、使いっ走りに使っている下僕の変態にくれてやるのにわずかの負担も代償もない、気軽な行為だったとしても。
僕にとっては他の何をおいても欲しくてたまらない、およそ手に入れることなど不可能だから夢見たことすらない、計り知れない価値のある聖遺物に他なりませんでした。
それだけ憧れていた女の子のパンツというものは、グズでおバカでモテない人間にとって特別で神聖で絶対的なものだったのです。
彼女そのものとはまず間違いなく何らの関係も持つことができず、因果が隔絶していることが約束されているからこそ、その身にまとっていた下着の価値が恐ろしいほど巨大になっていたのでした。
あの子自身に触れることなんてどう間違っても不可能なことが確定しているのに、彼女のオマタとお尻、エッチな場所を万遍なく覆っていたものがもし手に入るのだとしたら……。
恐らく時間が許す限りその感触や匂いを楽しむことができるに違いありません。
ずっとそばにあって、いつでもどこでもどんな風にでも好きなように堪能できるんです。
ある意味、彼女以上の存在と言っても過言ではないでしょう。
あの子を所有することはできないのに、パンツはそれができるんです。
想いを寄せる相手そのものじゃない、その人にまつわる付属物だからこその価値。
きっとそんなものがあるに違いありません。
そう確信させるくらい、好きな人のパンツというのは暗い思春期、青春なんて言葉とはまるで無縁に過ごしてきた僕にとって特別な意味をもっていました。
まるで夢見心地の気分でふらふらと。
気が付いたらあっくんの家の前に立っていました。
滅多に来ることはない年季の入った木造家屋、ガラス張りの引き戸をガラガラと音を立てて開けて出てきたあっくんが黒いビニールに包まれたものを突き出してきます。
「んじゃな」
こうしてこちらの強い想いや興奮とは裏腹に、ひどくあっさりと早瀬さんのパンツは僕の元にやってきたのでした。
この降ってわいたような僥倖、あまりの慶事に僕は最初うまく反応できませんでした。
文字通り、硬直して固まってしまい目を剥いて信じられないような顔をし続けていたと思います。
そんな僕の様子をことさら気にするでもなく、あっくんは「アイツには捨てたって言っとけばいいべ?」とか「すぐに取り来ねえのがわりいんだしな」などとどこかに視線を漂わせながらブツブツとつぶやいていました。
やがて徐々に我に返りながらどうやらこれが現実のことで、本当に目の前のヤンキーが可愛い彼女の下着をぽんと気前よく僕に与えてくれるらしい雰囲気を実感すると、打って変わって酷い興奮状態へと陥ったのでした。
早鐘のようになり続ける心臓とはぁはぁ荒い息。
絵にかいたような「アブナイ」感じそのままの僕はあっくんに「いつくれるのか」「どうやって渡されるのか」を身を乗り出して問い詰めます。
彼は相変わらず、すっかりこちらを軽蔑してばかにして汚物を見るような余裕の態度を変えることなく、「ああ、んじゃこれからウチに取り来いよ」とこともなげに答えます。
僕はこの瞬間、心からこのヤンキーとの出会いを神様に感謝しました。
本当に、本当に涙が出るほどあっくんという不良が存在してくれてこれほどありがたく、うれしく思ったことはありませんでした。
これまでさんざん使いっ走りにされたり、機嫌が悪いときに小突かれたり、見た目とか挙動を笑いものにされたことだって全然取るに足らないことでした。
むしろおつりを払わなくちゃいけないくらいです。
例えあちらの眼に僕がどれだけ無様で破廉恥で愚かしい生き物に映っていたとしても。
彼にとって「彼女のパンツ」なんてさほども価値の無いもので、使いっ走りに使っている下僕の変態にくれてやるのにわずかの負担も代償もない、気軽な行為だったとしても。
僕にとっては他の何をおいても欲しくてたまらない、およそ手に入れることなど不可能だから夢見たことすらない、計り知れない価値のある聖遺物に他なりませんでした。
それだけ憧れていた女の子のパンツというものは、グズでおバカでモテない人間にとって特別で神聖で絶対的なものだったのです。
彼女そのものとはまず間違いなく何らの関係も持つことができず、因果が隔絶していることが約束されているからこそ、その身にまとっていた下着の価値が恐ろしいほど巨大になっていたのでした。
あの子自身に触れることなんてどう間違っても不可能なことが確定しているのに、彼女のオマタとお尻、エッチな場所を万遍なく覆っていたものがもし手に入るのだとしたら……。
恐らく時間が許す限りその感触や匂いを楽しむことができるに違いありません。
ずっとそばにあって、いつでもどこでもどんな風にでも好きなように堪能できるんです。
ある意味、彼女以上の存在と言っても過言ではないでしょう。
あの子を所有することはできないのに、パンツはそれができるんです。
想いを寄せる相手そのものじゃない、その人にまつわる付属物だからこその価値。
きっとそんなものがあるに違いありません。
そう確信させるくらい、好きな人のパンツというのは暗い思春期、青春なんて言葉とはまるで無縁に過ごしてきた僕にとって特別な意味をもっていました。
まるで夢見心地の気分でふらふらと。
気が付いたらあっくんの家の前に立っていました。
滅多に来ることはない年季の入った木造家屋、ガラス張りの引き戸をガラガラと音を立てて開けて出てきたあっくんが黒いビニールに包まれたものを突き出してきます。
「んじゃな」
こうしてこちらの強い想いや興奮とは裏腹に、ひどくあっさりと早瀬さんのパンツは僕の元にやってきたのでした。
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