125 / 138
シリューとヨークと一緒
しおりを挟む
今日はシリューとヨークを連れての、空の旅。
旅と言っても、その辺をブラブラするだけで、日が暮れる前には帰るつもりだ。
行く場所もあるしね。
私は悠々と空を飛ぶシリューに乗って、ヨークは嬉しそうにシリューの周りをパタパタと飛んでいる。
「グルルゥ♪」
「わふっわふっ!」
シリューも楽しそうにヨークを眺めている。
はぁ……可愛いなぁ。
私は二人に癒されつつ、空のひんやりとした風を全身に受ける。
凄く気持ちいいんだけど【竜気】【剛体】【鎧皮】といった、身体強化系のスキルを使っておかないと、寒すぎて凍えそうになるんだよね。
というか放っておいたら凍傷になるんじゃないのかな?
「わんっ!」
「ヨーク、どうしたの?」
私が考え事をしていると、急にヨークが吠える。
ヨークもシリューもお利口さんだから、吠えたりして騒ぐ事がないんだけど、こういう場合は何かが近付いてくる……とかだと思う。
こんな寒い所まで、やってくる人は行商人であるルミーナさんとアンガスさんくらいだから、そうなると魔物しかいないよね。
お爺ちゃんは家にいるし。
ヨークとシリューの視線の先に、鳥っぽい魔物が飛んでいるのが見えた。
数は四匹で、シリューに気が付いたのか、慌てて方向転換しているのが分かった。
私からしたらヨークも大きいんだけど、シリューはそれよりもずっと大きいからね。
相手からしたら恐怖でしかないだろうし、逃げもするよね。
そして二人が居なかったら、私たぶん襲われてる……。
私が鳥の魔物を眺めていると、ヨークが私を見つめていた。
ヨークは尻尾をふりふりしながら待てをしている。
なんだい? その期待するような目は……と、少しだけ睨めっこをする。
「しょうがないなぁ……ヨーク、行ってきていいよ」
「わふぅ!」
私は、獲物を追いかけたい! みたいなヨークの眼差しに負けて待てを解除してあげる。
それにヨークは吠えて返事をすると、凄い勢いで魔物に向かっていった。
おお……速い。
ヨークは魔物の群れに追い付くと、空中にいながらピョンと跳ねるように飛び上がり、一匹の魔物に噛み付いた。
「ギェ?!」
鳥の魔物はヨークの動きに反応しきれずに、首辺りを噛みつかれたまま落ちていく。
今の動きは【疾空】と【跳躍】を使ったのかな?
【跳躍】は、ヨークの元になったと思われるフォレストドッグのスキルだし、【疾空】は《森林鷹狗》になった時に獲得したスキルだ。
となるとヨークは、《森林鷹狗》としてのスキルと、結合前のフォレストドッグとフォレストホークのスキルが使えるのかも……
「グルゥ!」
私がヨークのスキルについて考えていると、シリューが自分も! みたいな感じの視線を向けてきていた。
もしかするとヨークばっかりズルイ……みたいに思っているのかも。
ヨークは既に一匹を地面に引き摺り下ろして、首の骨をゴキリと噛み砕いているし、今日の獲物が一匹から四匹になっても大差ないよね?
お爺ちゃんやレイリーもいるし、余り過ぎるって事もないでしょ。
「ん……良いよ」
返事とともにシリューをポンポンと撫でてあげると、シリューも速度を上げて魔物に向かって突き進んでいく。
そして――
「グァッ!」
シリューが大きく口を開いた。
あ、それは……
シリューの口に魔力が集まっていき、それが放たれる。
【竜咆哮】……もしくは竜の息吹と呼ばれるソレは、前方を飛ぶ魔物達を消し飛ばした。
そう……跡形もなくなっちゃったのである。
「グゥ……?」
シリューがアレ? みたいな感じで首を傾げている。
まぁ…見た感じ、私の【竜咆哮】よりも規模が大きかった気もするし、そこいらの魔物に使うには少し威力が強すぎたかもね。
「よしよし……次に魔物を攻撃する時は【竜咆哮】を使わないで、ガブッとやってみよっか」
「グルルッ」
シリューを慰めながら、魔物を仕留めたヨークの所に移動してもらう。
シリューも結合前の魔物のスキルを所有しているはずだから、【牙撃】や【爪撃】を使えると思うんだよね。
まぁシリューに限らず、爪や牙を有している魔物なら、別にスキルなんて必要ない気もするんだけど……
ヨークは動かなくなった魔物の前で、褒めて! と言わんばかりに尻尾を振って待っていた。
「ヨーク魔物を仕留めてくれて、ありがとね。えらいえらい」
「わふぅん!」
ヨークを褒めてから、魔物を私の影の中へとしまう。
【潜影】と【丸呑み】のおかげで、こうやって荷物が増えても簡単に片付けられるようになったのは、本当にありがたいよね。
以前だったら、仕留めた魔物を捨て置くのが勿体無いからって、家に帰ってたし。
魔物を回収してからは空には上がらずに、今度は森の中を探検する事にした。
え……? シリューは森の中を移動できるのかって?
それが、この子……空を飛ばない場合は、木々の隙間をスルスルと縫うようにして進んでいくの!
体が大きいのに苦もなく進んでいけるのには驚いたよ。
大蛇……パラライズサーペントが元になっているから、出来る事なのかな?
まぁシリューに乗って森の中を進んでいるから、いつもより頭の位置が高くて木の枝がぶつかってくるんだけどね。
それらは【鎌撫】で、スパッと斬り落としてるけど。
そんな私達を魔物が遠巻きにして見ているのがわかる。
突如として、やってきた私達……というかシリューを警戒しているんだと思う。
そこへ空気を読まずに、距離を縮めてくる魔物がいた。
白い狼の魔物スノーウルフだ。数は七匹。
ちょっと数は多いけど、こっちにはヨークとシリューがいるから平気。
「ヨーク、シリューやっつけよっか」
「わんっ!」
「グァ!」
二人の返事を聞いてから、私はシリューから飛び降りてスノーウルフと向き合う。
ヨークが二匹を引き付けてくれている。
シリューは木々の間をスルスルと通り抜けて、バクリとスノーウルフに噛み付いた。
木々が障害になってない感じだから、動きが凄く早く感じる。
噛み付かれたスノーウルフは、すぐに動きが鈍くなったのが分かった。
あれは【麻痺付与】かな?
なんか私のより効きが良い気がする……おっとと!
背後から飛びかかってきたスノーウルフを避けながら、蹴りをお見舞いする。
うーん……もしかしなくてもスノーウルフの狙いは私かな?
他の個体がヨークとシリューを牽制して、残りが私を仕留める。
狩りとしては正しいのかな?
仮に私を仕留められたとしても、ヨークとシリューが見逃してくれるとは思えないけどねー。
私は【空弾】をスノーウルフに向けて幾つも放つ。
「ぎゃんっ」
【空弾】がビシバシと当たる度に怯むスノーウルフ。
スキル検証の為に使ってみたものの、なんか虐めてるみたいだ……
【空弾】を一発当てたくらいじゃ、動けなくさせるほどの傷は負わせられないみたいだけど、牽制としては十分に効果があるね。
相手が人なら、頭を狙えば昏倒させるくらいは出来そうかも。
とりあえず【空弾】を当てていたスノーウルフは【鎌撫】で仕留める。
そんな私の動きを警戒しながら、二匹のスノーウルフが私を挟撃しようと動き出した。
「すぅ~……」
私は大きく息を吸いながら、スノーウルフとの距離が縮むのを待つ。
そして飛びかかってきた瞬間を狙って――
「わっ!!!」
「っ?!」
私は叫んだ。
私の声に驚いて、スノーウルフ達は体勢を崩して地面に落ちる。
今のはもちろん、ただ大声を出したという訳じゃない。
【雄叫び】を使っての「わっ」だ。
さっきのはきっと、マグナスさんより騒がしかったはずだ。
スノーウルフ達は鼓膜がやられたのか、ただ怯んでいるだけなのかは分からないけど、すぐには動けなそうだ。
そこへ【贄魂喰ライ】を使って魔力を奪っていく。
……いただきました。
魔力回収が終わったところで、ヨークとシリューが自分達の獲物を咥えながら戻ってくる。
だけど、ヨークの耳がへにょんと垂れている。
何かあったのかな?
「どうしたの? もしかして怪我でもしちゃったの?」
「くぅん……」
何を言っているかは正確には分からないけど、怪我をした訳ではないらしい。良かった。
でも、そうすると何が…………あ。
「ヨーク…… さっきの【雄叫び】で耳が痛い……?」
「く~ん」
先程よりも、弱々しい鳴き声……どうやら、そうみたいだ。
「ゴメンね……煩かったよね?!」
ヨークの耳を撫でながら慌てて謝る。
多少距離があるから平気かな、と思ったけど平気じゃなかった!
今度からは周りに注意して使おう!
ヨーク…本当にゴメンね……
猛省しながら、獲物を回収していく。
それが終わったら、移動再開。
森の中を進んでいくと、雪で出来た建物が見えてくる。
「シーちゃん、いらっしゃい」
母さんが出迎えてくれた。
森を抜けた先は、母さんの為の家を作った場所だ。
こうして母さんに会いにくるついでに狩りをしている。
母さんは、私と父さんが仮設住宅を作った後、せっかく作ってくれたのだから……と言って、次の日には此処に移っている。
急かしちゃった感じにはなったけど、母さんも周囲を凍えさせているのを心苦しく思っていたみたいだったから、あまり気にしない事にしている。
「はい……こっちに来る途中で獲ってきたやつ」
「ありがとうね。……でもシーちゃん大変じゃない? 魔物くらい自分で獲れるわよ?」
私は仕留めた魔物を母さんに渡す。
「私のスキル練習のついでだから。それにヨークやシリューも手伝ってくれるから大変じゃないよ」
「そう? なら良いけど……ヨークとシリューもありがとう。シーちゃんを頼むわね」
「わんっ!」
「グルルッ!」
二人が嬉しそうに返事をする。
そして、しばらく母さんと過ごしてから、お家に帰る。
母さんの真化が終わるまでは、こんな感じの生活が続くと思う。
はぁー……母さんが真化したら、どんな風になるんだろ。
真竜に至った母さんの姿……楽しみだなー!
//////////////////////////////////////////////////////
後書き
シラハ「ねぇねぇ、なんで【雄叫び】使った時の叫び声が"わっ"なの?」
狐鈴「だってシラハのキャラ的に、そこでガオー! とか言わなくない?」
シラハ「まぁ……ないね」
狐鈴「だから"わっ"にしたの。それとも"動くな"とか"ぶるあぁぁぁ!"とかの方が良かった?」
シラハ「前者はともかく、後者じゃなくて本当に良かったよ……」
旅と言っても、その辺をブラブラするだけで、日が暮れる前には帰るつもりだ。
行く場所もあるしね。
私は悠々と空を飛ぶシリューに乗って、ヨークは嬉しそうにシリューの周りをパタパタと飛んでいる。
「グルルゥ♪」
「わふっわふっ!」
シリューも楽しそうにヨークを眺めている。
はぁ……可愛いなぁ。
私は二人に癒されつつ、空のひんやりとした風を全身に受ける。
凄く気持ちいいんだけど【竜気】【剛体】【鎧皮】といった、身体強化系のスキルを使っておかないと、寒すぎて凍えそうになるんだよね。
というか放っておいたら凍傷になるんじゃないのかな?
「わんっ!」
「ヨーク、どうしたの?」
私が考え事をしていると、急にヨークが吠える。
ヨークもシリューもお利口さんだから、吠えたりして騒ぐ事がないんだけど、こういう場合は何かが近付いてくる……とかだと思う。
こんな寒い所まで、やってくる人は行商人であるルミーナさんとアンガスさんくらいだから、そうなると魔物しかいないよね。
お爺ちゃんは家にいるし。
ヨークとシリューの視線の先に、鳥っぽい魔物が飛んでいるのが見えた。
数は四匹で、シリューに気が付いたのか、慌てて方向転換しているのが分かった。
私からしたらヨークも大きいんだけど、シリューはそれよりもずっと大きいからね。
相手からしたら恐怖でしかないだろうし、逃げもするよね。
そして二人が居なかったら、私たぶん襲われてる……。
私が鳥の魔物を眺めていると、ヨークが私を見つめていた。
ヨークは尻尾をふりふりしながら待てをしている。
なんだい? その期待するような目は……と、少しだけ睨めっこをする。
「しょうがないなぁ……ヨーク、行ってきていいよ」
「わふぅ!」
私は、獲物を追いかけたい! みたいなヨークの眼差しに負けて待てを解除してあげる。
それにヨークは吠えて返事をすると、凄い勢いで魔物に向かっていった。
おお……速い。
ヨークは魔物の群れに追い付くと、空中にいながらピョンと跳ねるように飛び上がり、一匹の魔物に噛み付いた。
「ギェ?!」
鳥の魔物はヨークの動きに反応しきれずに、首辺りを噛みつかれたまま落ちていく。
今の動きは【疾空】と【跳躍】を使ったのかな?
【跳躍】は、ヨークの元になったと思われるフォレストドッグのスキルだし、【疾空】は《森林鷹狗》になった時に獲得したスキルだ。
となるとヨークは、《森林鷹狗》としてのスキルと、結合前のフォレストドッグとフォレストホークのスキルが使えるのかも……
「グルゥ!」
私がヨークのスキルについて考えていると、シリューが自分も! みたいな感じの視線を向けてきていた。
もしかするとヨークばっかりズルイ……みたいに思っているのかも。
ヨークは既に一匹を地面に引き摺り下ろして、首の骨をゴキリと噛み砕いているし、今日の獲物が一匹から四匹になっても大差ないよね?
お爺ちゃんやレイリーもいるし、余り過ぎるって事もないでしょ。
「ん……良いよ」
返事とともにシリューをポンポンと撫でてあげると、シリューも速度を上げて魔物に向かって突き進んでいく。
そして――
「グァッ!」
シリューが大きく口を開いた。
あ、それは……
シリューの口に魔力が集まっていき、それが放たれる。
【竜咆哮】……もしくは竜の息吹と呼ばれるソレは、前方を飛ぶ魔物達を消し飛ばした。
そう……跡形もなくなっちゃったのである。
「グゥ……?」
シリューがアレ? みたいな感じで首を傾げている。
まぁ…見た感じ、私の【竜咆哮】よりも規模が大きかった気もするし、そこいらの魔物に使うには少し威力が強すぎたかもね。
「よしよし……次に魔物を攻撃する時は【竜咆哮】を使わないで、ガブッとやってみよっか」
「グルルッ」
シリューを慰めながら、魔物を仕留めたヨークの所に移動してもらう。
シリューも結合前の魔物のスキルを所有しているはずだから、【牙撃】や【爪撃】を使えると思うんだよね。
まぁシリューに限らず、爪や牙を有している魔物なら、別にスキルなんて必要ない気もするんだけど……
ヨークは動かなくなった魔物の前で、褒めて! と言わんばかりに尻尾を振って待っていた。
「ヨーク魔物を仕留めてくれて、ありがとね。えらいえらい」
「わふぅん!」
ヨークを褒めてから、魔物を私の影の中へとしまう。
【潜影】と【丸呑み】のおかげで、こうやって荷物が増えても簡単に片付けられるようになったのは、本当にありがたいよね。
以前だったら、仕留めた魔物を捨て置くのが勿体無いからって、家に帰ってたし。
魔物を回収してからは空には上がらずに、今度は森の中を探検する事にした。
え……? シリューは森の中を移動できるのかって?
それが、この子……空を飛ばない場合は、木々の隙間をスルスルと縫うようにして進んでいくの!
体が大きいのに苦もなく進んでいけるのには驚いたよ。
大蛇……パラライズサーペントが元になっているから、出来る事なのかな?
まぁシリューに乗って森の中を進んでいるから、いつもより頭の位置が高くて木の枝がぶつかってくるんだけどね。
それらは【鎌撫】で、スパッと斬り落としてるけど。
そんな私達を魔物が遠巻きにして見ているのがわかる。
突如として、やってきた私達……というかシリューを警戒しているんだと思う。
そこへ空気を読まずに、距離を縮めてくる魔物がいた。
白い狼の魔物スノーウルフだ。数は七匹。
ちょっと数は多いけど、こっちにはヨークとシリューがいるから平気。
「ヨーク、シリューやっつけよっか」
「わんっ!」
「グァ!」
二人の返事を聞いてから、私はシリューから飛び降りてスノーウルフと向き合う。
ヨークが二匹を引き付けてくれている。
シリューは木々の間をスルスルと通り抜けて、バクリとスノーウルフに噛み付いた。
木々が障害になってない感じだから、動きが凄く早く感じる。
噛み付かれたスノーウルフは、すぐに動きが鈍くなったのが分かった。
あれは【麻痺付与】かな?
なんか私のより効きが良い気がする……おっとと!
背後から飛びかかってきたスノーウルフを避けながら、蹴りをお見舞いする。
うーん……もしかしなくてもスノーウルフの狙いは私かな?
他の個体がヨークとシリューを牽制して、残りが私を仕留める。
狩りとしては正しいのかな?
仮に私を仕留められたとしても、ヨークとシリューが見逃してくれるとは思えないけどねー。
私は【空弾】をスノーウルフに向けて幾つも放つ。
「ぎゃんっ」
【空弾】がビシバシと当たる度に怯むスノーウルフ。
スキル検証の為に使ってみたものの、なんか虐めてるみたいだ……
【空弾】を一発当てたくらいじゃ、動けなくさせるほどの傷は負わせられないみたいだけど、牽制としては十分に効果があるね。
相手が人なら、頭を狙えば昏倒させるくらいは出来そうかも。
とりあえず【空弾】を当てていたスノーウルフは【鎌撫】で仕留める。
そんな私の動きを警戒しながら、二匹のスノーウルフが私を挟撃しようと動き出した。
「すぅ~……」
私は大きく息を吸いながら、スノーウルフとの距離が縮むのを待つ。
そして飛びかかってきた瞬間を狙って――
「わっ!!!」
「っ?!」
私は叫んだ。
私の声に驚いて、スノーウルフ達は体勢を崩して地面に落ちる。
今のはもちろん、ただ大声を出したという訳じゃない。
【雄叫び】を使っての「わっ」だ。
さっきのはきっと、マグナスさんより騒がしかったはずだ。
スノーウルフ達は鼓膜がやられたのか、ただ怯んでいるだけなのかは分からないけど、すぐには動けなそうだ。
そこへ【贄魂喰ライ】を使って魔力を奪っていく。
……いただきました。
魔力回収が終わったところで、ヨークとシリューが自分達の獲物を咥えながら戻ってくる。
だけど、ヨークの耳がへにょんと垂れている。
何かあったのかな?
「どうしたの? もしかして怪我でもしちゃったの?」
「くぅん……」
何を言っているかは正確には分からないけど、怪我をした訳ではないらしい。良かった。
でも、そうすると何が…………あ。
「ヨーク…… さっきの【雄叫び】で耳が痛い……?」
「く~ん」
先程よりも、弱々しい鳴き声……どうやら、そうみたいだ。
「ゴメンね……煩かったよね?!」
ヨークの耳を撫でながら慌てて謝る。
多少距離があるから平気かな、と思ったけど平気じゃなかった!
今度からは周りに注意して使おう!
ヨーク…本当にゴメンね……
猛省しながら、獲物を回収していく。
それが終わったら、移動再開。
森の中を進んでいくと、雪で出来た建物が見えてくる。
「シーちゃん、いらっしゃい」
母さんが出迎えてくれた。
森を抜けた先は、母さんの為の家を作った場所だ。
こうして母さんに会いにくるついでに狩りをしている。
母さんは、私と父さんが仮設住宅を作った後、せっかく作ってくれたのだから……と言って、次の日には此処に移っている。
急かしちゃった感じにはなったけど、母さんも周囲を凍えさせているのを心苦しく思っていたみたいだったから、あまり気にしない事にしている。
「はい……こっちに来る途中で獲ってきたやつ」
「ありがとうね。……でもシーちゃん大変じゃない? 魔物くらい自分で獲れるわよ?」
私は仕留めた魔物を母さんに渡す。
「私のスキル練習のついでだから。それにヨークやシリューも手伝ってくれるから大変じゃないよ」
「そう? なら良いけど……ヨークとシリューもありがとう。シーちゃんを頼むわね」
「わんっ!」
「グルルッ!」
二人が嬉しそうに返事をする。
そして、しばらく母さんと過ごしてから、お家に帰る。
母さんの真化が終わるまでは、こんな感じの生活が続くと思う。
はぁー……母さんが真化したら、どんな風になるんだろ。
真竜に至った母さんの姿……楽しみだなー!
//////////////////////////////////////////////////////
後書き
シラハ「ねぇねぇ、なんで【雄叫び】使った時の叫び声が"わっ"なの?」
狐鈴「だってシラハのキャラ的に、そこでガオー! とか言わなくない?」
シラハ「まぁ……ないね」
狐鈴「だから"わっ"にしたの。それとも"動くな"とか"ぶるあぁぁぁ!"とかの方が良かった?」
シラハ「前者はともかく、後者じゃなくて本当に良かったよ……」
5
お気に入りに追加
4,270
あなたにおすすめの小説
イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)
こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位!
死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。
閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話
2作目になります。
まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。
「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」
追放幼女の領地開拓記~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~
一色孝太郎
ファンタジー
【小説家になろう日間1位!】
悪役令嬢オリヴィア。それはスマホ向け乙女ゲーム「魔法学園のイケメン王子様」のラスボスにして冥界の神をその身に降臨させ、アンデッドを操って世界を滅ぼそうとした屍(かばね)の女王。そんなオリヴィアに転生したのは生まれついての重い病気でずっと入院生活を送り、必死に生きたものの天国へと旅立った高校生の少女だった。念願の「健康で丈夫な体」に生まれ変わった彼女だったが、黒目黒髪という自分自身ではどうしようもないことで父親に疎まれ、八歳のときに魔の森の中にある見放された開拓村へと追放されてしまう。だが彼女はへこたれず、領民たちのために闇の神聖魔法を駆使してスケルトンを作り、領地を発展させていく。そんな彼女のスケルトンは産業革命とも称されるようになり、その評判は内外に轟いていく。だが、一方で彼女を追放した実家は徐々にその評判を落とし……?
小説家になろう様にて日間ハイファンタジーランキング1位!
更新予定:毎日二回(12:00、18:00)
※本作品は他サイトでも連載中です。
孤児だけどガチャのおかげでなんとか生きてます
兎屋亀吉
ファンタジー
ガチャという聞いたことのないスキルが発現したせいで、孤児院の出資者である商人に売られてしまうことになったアリア。だが、移送中の事故によって橋の上から谷底へと転落してしまう。アリアは谷底の川に流されて生死の境を彷徨う中で、21世紀の日本に生きた前世の記憶を得る。ガチャって、あのガチャだよね。※この作品はカクヨムにも掲載しています。
異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう
クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです
こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。
異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。
女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる
紫楼
ファンタジー
もうじき結婚式と言うところで人生初彼女が嫁になると、打ち合わせを兼ねたデートの帰りに彼女が変な光に包まれた。
慌てて手を伸ばしたら横からトラックが。
目が覚めたらちょっとヤサグレ感満載の女神さまに出会った。
何やら俺のデータを確認した後、「結婚寸前とか初彼女とか昇進したばっかりと気の毒すぎる」とか言われて、ラノベにありがちな異世界転生をさせてもらうことに。
なんでも言えって言われたので、外見とか欲しい物を全て悩みに悩んで決めていると「お前めんどくさいやつだな」って呆れられた。
だけど、俺の呟きや頭の中を鑑みて良い感じにカスタマイズされて、いざ転生。
さて、どう楽しもうか?
わりと人生不遇だったオッさんが理想(偏った)モリモリなチートでおもしろ楽しく好きに遊んで暮らすだけのお話。
中味オッさんで趣味が偏っているので、昔過ぎるネタや下ネタも出てきます。
主人公はタバコと酒が好きですが、喫煙と飲酒を推奨はしてません。
作者の適当世界の適当設定。
現在の日本の法律とか守ったりしないので、頭を豆腐よりやわらかく、なんでも楽しめる人向けです。
オッさん、タバコも酒も女も好きです。
論理感はゆるくなってると思われ。
誤字脱字マンなのですみません。
たまに寝ぼけて打ってたりします。
この作品は、不定期連載です。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる