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彼の望み(マリルノ視点)
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「珍しい学園?」
「ええ。何でもその学園では、身分の別なく教育が受けられるそうで、それが非常に多くの人たちをナテナに呼び寄せ、活気づける要因となっているそうです。
国王様はこの国にもそのような学園を新設したいと考えられて、使節団を送ることに決めたとおっしゃられていました」
それを聞いたダグラスさんは首を傾げました。
「身分の別なくというのなら、もうこの国の中にもいくつかあるんじゃないのか?
私が若かった頃と違って、最近の学園には、貴族だけでなく自由市民も入学することのできるところが多くあると聞くのだが」
「それはそうなんですが……」
アルダタさんは遠慮がちな顔で、私の方を見ました。
学園に通っている私の前では、その実態を言いにくいのかもしれない。私はそう考えて、ダグラスさんに申し上げました。
「たしかにこの国の学園においても、貴族の中に混じる自由市民の姿が以前よりも見られるようになりました。
しかしその割合は、まだまだ非常に少ないのです。貴族80人に対して1人いれば多い方、というくらいの感覚でしょうか。
それも同年代の子供の人数は、貴族よりも自由市民の方が明らかに多いにも関わらず、です」
「そりゃあ、割合にすれば少ないかもしれないが……」
ダグラスさんはまだ納得していないご様子で続けました。
「貴族の方々とは違って、自由市民の子は一家の稼ぎ頭じゃないですか。
もし全ての自由市民の子が学校に通うなんてことになったら、一体その家の親たちは、どうやって生活していけば良いんです?」
「それは……」
私は言葉に詰まりました。
どんなに私が理想の話をしても、自由市民の方々から見れば、私たち貴族は恵まれた家に生まれた存在でしかありません。
私たちが机に座って勉学に勤しんでいる間、彼らは畑を耕し、家畜の世話をして、あるいはどこかへ下働きに出かけ、ようやく食い扶持を得ています。
自由市民の一家から働き手である子を奪うのなら、畑や家畜の世話をし、その家にお金を入れるのは誰がするというのでしょう。
「ですから、それを調査しに行くのです」
俯いていた顔を上げると、アルダタさんの目が燦々と輝いていました。
「ナテナの学園には多くの自由市民の子が集まると言います。
いえ、子供だけではありません。働き盛りの大人も、それを過ぎた老人さえも、誰もがこぞって学園に集まるというのです。
しかしだからといって、生活が行き詰まっているという話は聞きません。そういう状況にあるのなら、そもそもその学園に人は集まらないでしょう。
私はそこで何が起こっているのかが知りたい。
最初はただ国王様に、「何かこれからのことで希望があるなら遠慮なく教えてほしい」と言われて、お恐れながら正直に、「文字以上のことを学べる場所があるなら、そこへ行ってみたい」と打ち明けただけなのです。
すると国王様が使節団の話をしてくださいました。文字が書けるなら、こちらとしても同行させる意味があると。
私はその話を受けたとき、単純に役に立てるということを嬉しく思ったのです。
しかし段々と話を聞いているうちに、私はその調査内容自体に、ナテナにあるという夢のような学園そのものに、強く惹きつけられたのです。
そのような学園が本当に成立しているのか。成立しているのなら、そこでは何が起きているのか。
自分自身の目でそれを確かめることが、私の新たな望みになったのです」
「ええ。何でもその学園では、身分の別なく教育が受けられるそうで、それが非常に多くの人たちをナテナに呼び寄せ、活気づける要因となっているそうです。
国王様はこの国にもそのような学園を新設したいと考えられて、使節団を送ることに決めたとおっしゃられていました」
それを聞いたダグラスさんは首を傾げました。
「身分の別なくというのなら、もうこの国の中にもいくつかあるんじゃないのか?
私が若かった頃と違って、最近の学園には、貴族だけでなく自由市民も入学することのできるところが多くあると聞くのだが」
「それはそうなんですが……」
アルダタさんは遠慮がちな顔で、私の方を見ました。
学園に通っている私の前では、その実態を言いにくいのかもしれない。私はそう考えて、ダグラスさんに申し上げました。
「たしかにこの国の学園においても、貴族の中に混じる自由市民の姿が以前よりも見られるようになりました。
しかしその割合は、まだまだ非常に少ないのです。貴族80人に対して1人いれば多い方、というくらいの感覚でしょうか。
それも同年代の子供の人数は、貴族よりも自由市民の方が明らかに多いにも関わらず、です」
「そりゃあ、割合にすれば少ないかもしれないが……」
ダグラスさんはまだ納得していないご様子で続けました。
「貴族の方々とは違って、自由市民の子は一家の稼ぎ頭じゃないですか。
もし全ての自由市民の子が学校に通うなんてことになったら、一体その家の親たちは、どうやって生活していけば良いんです?」
「それは……」
私は言葉に詰まりました。
どんなに私が理想の話をしても、自由市民の方々から見れば、私たち貴族は恵まれた家に生まれた存在でしかありません。
私たちが机に座って勉学に勤しんでいる間、彼らは畑を耕し、家畜の世話をして、あるいはどこかへ下働きに出かけ、ようやく食い扶持を得ています。
自由市民の一家から働き手である子を奪うのなら、畑や家畜の世話をし、その家にお金を入れるのは誰がするというのでしょう。
「ですから、それを調査しに行くのです」
俯いていた顔を上げると、アルダタさんの目が燦々と輝いていました。
「ナテナの学園には多くの自由市民の子が集まると言います。
いえ、子供だけではありません。働き盛りの大人も、それを過ぎた老人さえも、誰もがこぞって学園に集まるというのです。
しかしだからといって、生活が行き詰まっているという話は聞きません。そういう状況にあるのなら、そもそもその学園に人は集まらないでしょう。
私はそこで何が起こっているのかが知りたい。
最初はただ国王様に、「何かこれからのことで希望があるなら遠慮なく教えてほしい」と言われて、お恐れながら正直に、「文字以上のことを学べる場所があるなら、そこへ行ってみたい」と打ち明けただけなのです。
すると国王様が使節団の話をしてくださいました。文字が書けるなら、こちらとしても同行させる意味があると。
私はその話を受けたとき、単純に役に立てるということを嬉しく思ったのです。
しかし段々と話を聞いているうちに、私はその調査内容自体に、ナテナにあるという夢のような学園そのものに、強く惹きつけられたのです。
そのような学園が本当に成立しているのか。成立しているのなら、そこでは何が起きているのか。
自分自身の目でそれを確かめることが、私の新たな望みになったのです」
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