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野卑短絡(ペドロル視点)
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俺はフォークとナイフを置いて、口を拭いた。
「もうお食べにならないのですか」
すぐにガテスラが、針でちくりと刺すような言葉を投げつけてくる。
「食欲がないのだ。昨晩、眠れなかったからな」
お前のせいだぞ、とガテスラのことを睨みつけてやる。
しかし動じる気配はない。気色の悪い目で俺を見返してくるばかりだ。
そして話し始める。
「無論、ペドロル様は知ってらっしゃると思いますが」
また説教か?
その嫌味な前置きはやめろ!
「今年の作物は全般的に凶作で、スパラの住民は今日明日の食事でさえ得るのに苦しんでおります。
出された食事を残されたとて何かあるわけではございませんが、そちらのお皿に残されている野菜たちも、飢饉にあえぎながら働いた農民たちの労働の結晶だということは、お忘れなきように」
「そこまで言うなら、お前が食えばいいだろう」
ガタンッ。
「どこに行かれるのです」
「この後は兵の視察があると言っていたじゃないか。自分の部屋でその支度をする。
わかっていることをいちいち聞くな!」
広間を出ると、すぐにガテスラも出てきた。
一定の距離を保ち、長い廊下を、俺が部屋に入るまでついてくる。
このつきまとい野郎めが……
バタンッ。
部屋の扉を閉める。
しかし扉の向こうの気配は、すぐにはなくならない。
俺がベッドに体を放り投げしばらくしてから、ようやく遠ざかる足音が聞こえてきた。
もううんざりだ。
たったひと月でこの有様なのだ。これが一年も続いてみろ。
確実に頭がおかしくなる。
ほとぼりが冷めるのを待つなんて出来ない。
そもそも、俺は悪いことなんて何一つしていないのだ。
若い男が複数の女に求められたって、それのどこがいけない?
男としての魅力があるということだ、誇るべきことじゃないか!
とにかく、俺は早く中央に呼び戻される必要がある。
そのためには……何か結果を出さなくてはならない……
「もうお食べにならないのですか」
すぐにガテスラが、針でちくりと刺すような言葉を投げつけてくる。
「食欲がないのだ。昨晩、眠れなかったからな」
お前のせいだぞ、とガテスラのことを睨みつけてやる。
しかし動じる気配はない。気色の悪い目で俺を見返してくるばかりだ。
そして話し始める。
「無論、ペドロル様は知ってらっしゃると思いますが」
また説教か?
その嫌味な前置きはやめろ!
「今年の作物は全般的に凶作で、スパラの住民は今日明日の食事でさえ得るのに苦しんでおります。
出された食事を残されたとて何かあるわけではございませんが、そちらのお皿に残されている野菜たちも、飢饉にあえぎながら働いた農民たちの労働の結晶だということは、お忘れなきように」
「そこまで言うなら、お前が食えばいいだろう」
ガタンッ。
「どこに行かれるのです」
「この後は兵の視察があると言っていたじゃないか。自分の部屋でその支度をする。
わかっていることをいちいち聞くな!」
広間を出ると、すぐにガテスラも出てきた。
一定の距離を保ち、長い廊下を、俺が部屋に入るまでついてくる。
このつきまとい野郎めが……
バタンッ。
部屋の扉を閉める。
しかし扉の向こうの気配は、すぐにはなくならない。
俺がベッドに体を放り投げしばらくしてから、ようやく遠ざかる足音が聞こえてきた。
もううんざりだ。
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確実に頭がおかしくなる。
ほとぼりが冷めるのを待つなんて出来ない。
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とにかく、俺は早く中央に呼び戻される必要がある。
そのためには……何か結果を出さなくてはならない……
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