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辺境の悪魔(ペドロル視点)
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「どこへ行かれるおつもりですか?」
暗くなった廊下の奥から、灯りを持った男が近づいてくる。
側近のガテスラ。どこを見ているかわからない妙に座った目、まるで常に仮面をかぶっているかのような、表情の乏しい顔。
本当に薄気味の悪い男だ。
「蛙の声がうるさくて眠れないから、少し外を歩こうかと思っただけだ。
そんなことでさえお前の許可がいるのか?」
「国王のご命令ですので」
ガテスラはほとんど口を開かない独特な話し方で、淡々と返してきた。
こいつと話していると、いつも苛々させられる。
「この時間、こんなクソ田舎で一体何ができるというのだ。
遊ぶところなど一つもないだろうが」
「娼婦でも引っかけられたら困りますので」
「そ、そんなことするわけないだろう!」
くそっ!
どいつもこいつも、苔にしやがって……
「もういい!」
俺はガテスラに背を向けて、自室の扉を強く閉めた。
暗くなった廊下の奥から、灯りを持った男が近づいてくる。
側近のガテスラ。どこを見ているかわからない妙に座った目、まるで常に仮面をかぶっているかのような、表情の乏しい顔。
本当に薄気味の悪い男だ。
「蛙の声がうるさくて眠れないから、少し外を歩こうかと思っただけだ。
そんなことでさえお前の許可がいるのか?」
「国王のご命令ですので」
ガテスラはほとんど口を開かない独特な話し方で、淡々と返してきた。
こいつと話していると、いつも苛々させられる。
「この時間、こんなクソ田舎で一体何ができるというのだ。
遊ぶところなど一つもないだろうが」
「娼婦でも引っかけられたら困りますので」
「そ、そんなことするわけないだろう!」
くそっ!
どいつもこいつも、苔にしやがって……
「もういい!」
俺はガテスラに背を向けて、自室の扉を強く閉めた。
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