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舌戦(2)(マリルノ視点)

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「それはどういうことだろう……説明してもらおうか!」

 街路に響き渡った婚約者の怒声。

 彼の背後に建つ会館からは、パーティーを終えた位の高い方々がちらほら出てきて、こちらの様子を窺っています。

 しかし頭に血が上った彼はそのことに気が付かないようです。

 私は努めて冷静に言いました。

「説明させていただきます。
 
 あなたは、ご自身に仕えているアルダタという使用人を利用して、私を陥れようとなさりました」

 アルダタさんの名前を出した瞬間に凍りついた婚約者の顔。

 私はそれを見逃しませんでした。

「婚約解消を望んでいたのは紛れもなくあなたの方です。

 責任は全て、あなたにとってもらいます」

 婚約者の息が荒くなりました。

 ギリギリとこちらの耳にまで聞こえてきそうなくらい強く、歯を食いしばっています。

 そして吠えるように口を開きました。

「何の話をしている? 言いがかりだ!

 何を疑っているかは知らないが、証拠はあるのか!」



「証拠ならあります」

 そう言ったのは、私ではありませんでした。

 私はその声を聞いて、振り返りました。

「アルダタさん……」

 タラレッダさんに支えられたアルダタさんが、そこに立っていました。

 憂いのある美しい瞳に強い火を宿して、アルダタさんは卑怯な主を射すくめました。

「あなた様に命じられた、私自身が証言いたしましょう」
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