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愛犬との散歩(マリルノ視点)
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アルダタさんから頂いた手紙を自分の部屋で読んだあと、私はいてもたってもいられなくなりました。
頭の中は、まるで火を当てられたフラスコの中の水みたい。ボコボコボコボコ、泡が弾けています。
私は子供のように、部屋を出て、階段を駆け下りました。
「あら、どうしたの」私を見たお母様が、きょとんとした顔で呼び止めました。
私は慌てて、手紙を背中に隠しました。
「ちょっと運動したくなって。バウちゃんの散歩をしてきていいかしら?」
「いいわよ。あまり遅くならないでね」
「はーい」
私が屋敷を出ると、バウウェルは私のことをちらりと見て、「どうせ遊んでくれないんでしょう?」とでも言いたげに、ぷいっと顔を背けてしまいました。
「そうか、せっかく散歩に行こうと思ったのに。じゃあ、一人で行っちゃうからね?」
しかし私がそう言うと、彼は我慢することができず、「しょうがないなぁ」というふりをしながら私にすり寄ってきました。
ふふっ。可愛い奴め。
私はまた彼の首をわしゃわしゃした後、「行こう!」と言って町へ向かいました。
昼下がり、天気が良いことも手伝ってか、町は人でごった返していました。
バウウェルは、屋敷の前で私を出迎えるときのようなやんちゃさを抑えて、ぴったりと私の隣を歩いています。他の人の邪魔にならないようにと、彼なりに気を遣っているのでしょう。
「いい子ね、バウちゃん」
バウウェルは私に褒められると、バウッ、とうれしそうに一吠えしました。
せっかくお散歩に来たのだし、彼を思い切り走らせてやりたい……
そうだ。
「バウちゃん、こっちおいで」
「バウッ!」
私はバウウェルを連れて、大通りを外れました。
それから、建物と建物に挟まれた細い道を通って、町の外れにある、古い教会を目指しました。
町の中心部に建てられた教会によってお祈りする人を多く失った、今では取り壊されるのを待つばかりの教会です。
あそこなら人もいないし、周りは草がぼうぼうと生えているだけの空き地だから、思う存分、バウウェルを走らせることができる……
私の胸は高鳴りました。
頭の中は、まるで火を当てられたフラスコの中の水みたい。ボコボコボコボコ、泡が弾けています。
私は子供のように、部屋を出て、階段を駆け下りました。
「あら、どうしたの」私を見たお母様が、きょとんとした顔で呼び止めました。
私は慌てて、手紙を背中に隠しました。
「ちょっと運動したくなって。バウちゃんの散歩をしてきていいかしら?」
「いいわよ。あまり遅くならないでね」
「はーい」
私が屋敷を出ると、バウウェルは私のことをちらりと見て、「どうせ遊んでくれないんでしょう?」とでも言いたげに、ぷいっと顔を背けてしまいました。
「そうか、せっかく散歩に行こうと思ったのに。じゃあ、一人で行っちゃうからね?」
しかし私がそう言うと、彼は我慢することができず、「しょうがないなぁ」というふりをしながら私にすり寄ってきました。
ふふっ。可愛い奴め。
私はまた彼の首をわしゃわしゃした後、「行こう!」と言って町へ向かいました。
昼下がり、天気が良いことも手伝ってか、町は人でごった返していました。
バウウェルは、屋敷の前で私を出迎えるときのようなやんちゃさを抑えて、ぴったりと私の隣を歩いています。他の人の邪魔にならないようにと、彼なりに気を遣っているのでしょう。
「いい子ね、バウちゃん」
バウウェルは私に褒められると、バウッ、とうれしそうに一吠えしました。
せっかくお散歩に来たのだし、彼を思い切り走らせてやりたい……
そうだ。
「バウちゃん、こっちおいで」
「バウッ!」
私はバウウェルを連れて、大通りを外れました。
それから、建物と建物に挟まれた細い道を通って、町の外れにある、古い教会を目指しました。
町の中心部に建てられた教会によってお祈りする人を多く失った、今では取り壊されるのを待つばかりの教会です。
あそこなら人もいないし、周りは草がぼうぼうと生えているだけの空き地だから、思う存分、バウウェルを走らせることができる……
私の胸は高鳴りました。
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