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高校一年生・夏
26 夏の地方予選開幕
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その日、北村は音楽室のブラスバンド部を訪れた。
運動部をまとめる立場の北村であるが、ブラスバンド部は割と筋トレもしたりするので、それなりに顔見知りがいる。
その部長に対しての用事であった。
「ちょっといいか?」
「おう。あ、試合の応援か? 大丈夫、ちゃんと予定立ててるから」
「そっか。今年の夏はけっこう勝てそうだから、先に言っておこうと思ってさ」
「ああ、春はけっこう勝ったんだよな?」
「まあな、ベスト8」
「すげえな。ひょっとして歴代最高じゃね?」
「すごく昔に一度そこまで勝ってるけど、今年は夏休みに入ってからも、まだ残ってる予定だな」
北村はこういった冗談は言わない。どちらかというと、不言実行の男である。
それがここまで言うからには、かなりの成算があるのだろう。
「分かった。俺も一度ぐらい、夏の甲子園でラッパ吹いてみたかったしな」
「お前が今一年だったら、たぶん叶ったんだろうけどな」
一年生なら、可能性がある。
そこまで確信を持っているのだ、だが同時に、今年は無理だと冷静に考えている。
「あ、でもブラバン応援なら、OBでもいけるのか。羨ましいなあ」
心底そう言う北村に、部長は寂しさを感じた。
高校野球。このアマチュアのスポーツは、巨大な金を動かし、多くの人を魅了する。
しかし選手に与えられた機会は、二年と四ヶ月、五回しかないのだ。
北村たちは、ごく普通の野球部だ。白富東は運動部だけではなく文化部も、大きく表彰されることは少ない。
時々よく分からない部が何かの賞を取ったりするが、ブラスバンド部にしても、コンクールで金を狙うほどの熱心さはない。
「そういえば、何か外部のコーチが来たんだよな? その影響か?」
「それもあるけど、今年の一年の中に、まあ中心になるやつがいてな」
全ては、ジンの入学から始まったのだ。
才能で言えば直史と大介の存在も大きいが、ジンがいなければこの二人も、全力を発揮できたとは思えない。
再来年。ジンたちが最高学年になる。その時が白富東野球部の、最高の最強の夏になるはずだ。
そしておそらく大学に進学した北村は、テレビで甲子園の試合を見ながら、友人たちに言うのだ。俺はこいつらのキャプテンだったんだ、と。
「チアもほしいけど、うちはダンス部しかないしな」
「あ、じゃあそっちは俺が話しておくよ。メンバー全員は無理だろうけど、有志参加で」
「マジか。ありがたいわ」
夏に向けて様々な方面への挨拶と、連絡を行っていく。
監督就任の件などが特殊であったため、顧問の高峰も随分と忙しかったらしい。
問題になったのはプロアマ規定だ。MLBとはいえ、元選手でもコーチでもないとはいえ、セイバーが関係することは認められるのか。
だがそれを知ったセイバーは、あっさりとレッドソックスを辞めてしまった。
コーチ陣はセイバーの私的スタッフなので、球団とは関係ない。
そもそも球団関係者とは言え、フロントスタッフなので、話し合えば許可された確率も高かったのだが。
簡単に無職になってしまったセイバーに、校長などは恐縮してしまったが、セイバーは気にしない。
ここでちゃんと実績を残せば、普通にまた雇ってもらえるだろうからだ。
アメリカの会社は、そのあたりはとても柔軟である。
「校長が、甲子園に行ける可能性はどのくらいか、なんて言いましてね。さすがにそんなの分からないですけど」
ミーティングルームではまた、ホワイトボードを前にセイバーが話をしていた。
「実際のところ、どのくらいなんですか?」
ジンの発言に、セイバーは表情を変えずに答える。
「50%です。行けるか行けないかですので」
「いやそりゃ、統計的におかしいでしょ」
ジンが反論するが、おそらくセイバーはその反応は予想済みだったのだろう。
「相手の戦力とこちらの戦力を数値化して、それで行けるかどうかを判断するなら、10%前後かもしれませんね。そもそも勝つか負けるかの試合を七回行うので、確率はかなり低いですよ」
それは数字のマジックというものだろう。
「さて、緒戦の相手は久里浜高校と栄泉高校との試合の勝者ですが、この対戦はどう見ますか?」
「栄泉は一応私立で、ベスト16まで残ることもけっこうあります。久里浜は正直、特に特徴もないチームですね。弱小と言うほど弱くはないですが」
過去に栄泉と対決したことのある北村が言う。ちなみにその時は負けた。
どれだけ準備をしていても、相手はベスト16程度の力はあるチームである。何か一つ歯車が狂えば、そこで負ける可能性はある。
そして、負けたらこの夏は終わりだ。北村の高校野球が終わる。
「このトーナメント戦というのも、ちょっと合理的ではないと思うんですよね。普段からリーグ戦を行って、ある程度の勝率を収めたチームで、また何度かリーグ戦を行い、最終的に勝率の良かった二チームで、対戦を行えばいいと思うんですが」
セイバーはそう言うが、それはプロの世界である。
「興行的に成り立たないんですよ、それじゃ。そもそも強いところがちゃんと優勝するんじゃ、面白くないですしね」
甲子園幻想を持たない直史はそう言う。セイバーの言ったことは、大学野球リーグに似ているものだ。
全国の都道府県から集めた代表を、一つの会場で戦わせる。特に夏は、炎天下に過密日程で。
まあ春の選抜の代表校を決める、秋季大会はやや地方戦を重視したものと言えるだろう。
「どれだけ頑張っても報酬の出ない選手は大変ですね。プロに進めば別なんでしょうけど、それにしてもプロで成功するのはごく一部でしょうし」
「プロに行く覚悟のあるやつは、普通に強豪校に進学してますよ」
ただ直史が不思議に思うのは、高校の強豪でレギュラーを取れたとしても、プロにまでは行けない連中が、強豪校の厳しい練習に耐えることである。
確かに野球名門校などは、そこから社会人野球に行ったり、推薦で大学進学が狙えたりする。
しかし人生をそこまで一つの価値に依存して、つまらなかったり怖くなったりはしないのだろうか。
白富東の練習は、ジンたちが入学後に厳しくなったという。
打撃がどうとか、守備がどうとか、ただ漫然と厳しくなったわけではなく、ちゃんと体力を作るためのメニューが組まれ、打撃も守備も考えられたものだ。
頭を使う野球は、白富東の上級生にも受け入れられた。それでも練習に参加しないという選択はあり、上級生などは北村に連絡した上で休むこともある。
あと、日曜は休みだ。休養日を作らないと、体がちゃんと作られないので。
それに練習量は増えたが、練習時間自体はそれほど増えていない。
自主練をしている連中は多いだろうし、直史も家ではかなり投げ込んでいるのだが。
練習についてはセイバーが監督するようになってからも、明らかに厳しくなったり、長くなったりはしていない。
メジャーの選手などは練習時間が比較的短いなどということも聞くが、あれは既に技術的に充分な域に達しているからだろう。
プロならば伸ばせる限りは身体能力を限界まで伸ばすべきだし、ベテランはその能力を維持すべきだ。
そもそもセイバーは、練習量について、明確な基準を持っている。
無理はさせない、ということだ。
限界の先にこそ、到達出来る力がある。そういう限界を知るための練習も、必要なのだろう。
そもそも選手の限界を、監督であろうと勝手に決めてしまうのは人間的に失礼だ。
ただ彼女が重視するのは、単なる負荷の強度を上げることではない。それは怪我や事故の原因になるし、集中力が途切れた状態での練習は、リスクばかりが大きくなる。
ボディビルで言うならば、筋繊維が断裂し、それが回復していることに喜びを感じる。その程度が一番いいのだ。
根性を入れるために1000本のノックをするぐらいなら、適切なウエイトをすべきだ。ダッシュを繰り返し、瞬発力を上げるべきだ。
そしてピンポン球を使った近距離での動体視力トレーニング。精神力が勝負には重大なことは分かるが、限界を超えるような練習では、何人かの故障者は必ず出る。
それを容認してしまうほどに人材が豊富なら、それはそれでいい。そんな練習に賛成するなら、選手自身も愚かであるのだ。もっとも未成年にそのような過酷な練習をさせることを許すのは、やはりセイバーには理解しがたいが。
もっと簡単に、健全に、合理的に上手くなれる。そういう道を示したい。
そもそもいわゆる強豪のやり方では、今回のように短期間で成長させるのは無理だ。
セイバーの判断に北村やジンも同意し、練習は調整期間に入った。
そして県予選開幕前日に、背番号が渡される。
基本的には確実なスターティングメンバーが、背番号を貰っていく。
一年生で一桁なのは、六番ショートの大介だけであった。
岩崎は11番。ジンは12番。直史は18番を貰っている。
三年と二年からは背番号を辞退する者が二人ずついて、自ら他球場で行われる強豪校の偵察班をかってでた。
セイバーのスタッフの偵察はプロのものだが、高校生だからこそ気付くものがあるだろうと判断したのだ。
それでいいのかと最後まで北村は、特に三年には確認したが、二人の意思は固かった。
一年生があれだけ頑張っているのだから、自分たちも勝つために、本当に役立つことをしたくなったのだ。
野球は好きだし、プレイするのも好きだ。そして身近でものすごく努力をしているチームメイトが一番好きだ。
そこまで率直には言わなかったものの、意訳としてはそのようなものである。
献身。そんな単語が北村の頭をよぎった。
灼熱の七月。ついに夏の千葉大会が始まる。
開会式はプロ野球球団、千葉ロックマリンズの本拠地、通称マリスタで行われる。
この年の参加校はキリのいい170校。この中から甲子園に行くのが、たったの一校なのだ。
「次にここに戻ってくるのは、準々決勝か」
開会式を終えた北村は、三万以上の観衆が観戦できる、巨大球場を見上げた。
自分たちは戻ってくる。自信がある。慢心はしていない。
白富東の部員達は、誰もが落ち着いている。
それでいて、戦意に満ちている。
勝ちたい。勝てる。勝とう。そんな意識がある。
緒戦の突破をちゃんと注意していれば、その目標は達成できる。
シードのためまだ出番は先だが、やることは既にある。
土日に試合が行われる場合は、偵察班だけでなく、レギュラーも気になった試合は見に行っている。
そして一回戦が終わり、緒戦の相手も決まった。
意外なことに、注意点が存在した。
「古豪と言われる栄泉高校が九対七で勝ちましたが、戦力を温存していました」
そしてセイバーが見せたのは、栄泉の練習風景と、練習試合の様子であった。
「カナダからの帰国子女、一年生の大原君。145kmのストレートが武器の、本格派です」
一年生で岩崎より速いというのは、春日山の上杉弟以来であった。
まああちらは148kmを出していたので、より化物であったが。
「変化球は?」
北村が問う。速いだけならセイバーの買ってくれたマシーンで、160kmが体験出来る。
「今のところ使ってません。ただ時々ナチュラルに細かく動いていることはあるようですね。あと基本的にコントロールが悪いです。カウントを稼ぐために投げる、130km程度の速球が、結果的にチェンジアップ気味になってるようです」
微妙な相手である。ただ荒れ球というのは不安だが。
「ストレートの質はどうなんですか?」
これはジンの問いである。単純な速さはともかく、実際に投げてもらうと、直史のストレートは岩崎と遜色ないぐらいに感じることもあるのだ。
「ややクセがありますね。これがナチュラルに動く理由のようです。スピンは平均より高いので、もう少し早く感じるかもしれません」
せっかくシードを取ったのに、いきなりこの展開である。
「ですがこれは、チャンスでもありますね」
セイバーは無邪気な微笑を浮かべた。
「体力を完全に温存した、速球派投手を実際の試合で体験出来るわけですから。この程度のスピードなら、北村君と白石君は打てますよね?」
「打ちますよ」
平然と答える大介に、周囲の視線が集まる。
「だってセイバーさんの用意してくれたエクスカリバー(新型バッティングマシーン)は160kmまで出るでしょ? あれで甘いストライクを叩いて、鍛えた選球眼でボールを見逃す。遅いボールでストライクを取りに来たら、普通に打てますから」
攻略法としては、大介の言う通りである。だが大介自身は、おそらく厳しいところの速い球を、遠慮なく打ちに行くであろう。
速球派投手が厳しいコースを打たれたら、おそらくはかなりのショックを受けるはずだ。
その理屈の正しさに、選手たちは皆頷いた。
「あと、向こうの打線はあまり気にしない方がいいですね。九点を取っていますが、相手のピッチャーは特徴のない打ち頃の投手でした。うちなら五回コールドです」
白富東の打線は、一番から六番までは、凄まじい得点力を誇っている。
「一番の目的は、こちらの戦力を隠したまま勝つことですね。統計的には邪道ですが、勝ち進むためなら当然の選択です」
その前提の上で、セイバーは緒戦のスタメンを発表した。
一年生のスタメンは、大介だけである。
万一こちらの打線が機能しない時のために、確実に打ってくれる打者が一人は必要だった。
バッテリーは三年の鈴木と山田。つまり残った三年は全員がスタメンだ。ジンすら出場しない。直史と岩崎が外野を守ることもない。
三年に配慮したメンバーというわけではない。実際に鈴木で、それなりに抑えられるはずなのだ。
「万一後半で捕まったら、そうですね、より変化球の多い佐藤君がリリーフです」
もっともセイバーの期待値によると、その出番はないはずだが。
「体力温存のためにも、コールドを狙いましょう」
特に力を込めることもなく、セイバーはそう言った。
縁側に腰かけ、直史は手袋をはめてスパイクの泥を落としていた。
ユニフォーム一式に、バットやスパイクなど、野球は金のかかるスポーツだ。
「兄ちゃん、明日試合だろ? 応援しに行こうか?」
弟の武史が、横に座って言った。
「お前のところも最後の大会前だろ?」
武史はバスケットボールをしている。中学三年生なので、これが最後の大会だ。
「そうだけど、あんまり気合入ってないしなあ。俺が点取っても、マークがきつくなるだけだし」
直史もある程度バスケの知識はある。もっともそのほとんどはマンガと、衛星放送のNBAが中心だが。
直史と同じ中学の、一歳下の弟。だがバスケ部は、野球部に比べると強い。
昨今の人気があるのと同時に、単純にプレイに必要な人数が少ないからだ。
「PGのお前がしっかりしたら、なんとかなるんじゃないのか?」
ポイントガード。攻撃において最もボールを持つ時間が多い、チームにおける頭脳である。
武史はそこそこ身長もあるのだが、純粋にバスケが上手いので、司令塔となっている。
スラムダンクで言うなら宮城ではなく藤真あたりであろう。得点力があるタイプのPGなのだ。さすがに牧ほどのパワーはない。
ただ直史の目からは、自分のチームを活用するのに長けているとは言えない。
まあ比較がNBAのPGなので、それも無理はないのだが。
「監督からして勝つ気ないしなあ。一回戦負けは嫌だけど」
武史は直史より少しだけ背が低い。だが来年になれば、逆転されている可能性が高い。
「お前、高校生になったら、うちに入って野球やらね? 小学校ではピッチャーしてたしさ」
「今更かよ。まあ成績的には行けるだろうけど、三年のブランクはきついなあ。それにバスケより金かかるだろ」
「そこがなあ」
バスケ自体にはもうそれほど未練はない。
だが進学校に行ってまで、野球をやり直すというのも難しい。
佐藤家は極端な貧乏ではないが、使い道のない山林を所有していて、それにかかる税金が痛いのだと両親は言っていた。
ちなみに少しだけ離れた所に祖父母の家があり、定年後の現在は専業農家である。
両親も休日はたまに手伝っていて、それで子供たちの教育費を稼いでいる。
農家は定年がないのがいいのだ、と祖父はよく笑っている。
野球は金がかかるスポーツではある。が、もし金がかからないとしたら。
「備品のかなりの部分を、部で負担してくれるなら、やってみるか?」
「父ちゃんたちに聞かないと分からないけど、俺は別にそれでもいいよ。でも白富東弱いだろ? そこまでムキになる必要あるの?」
「今年から強くなったんだよ。春の大会は県のベスト8だし」
「じゃあ優勝したら入るってのは?」
「そんな成績収めたら、お前に頼らなくてもいい選手いっぱい入ってくるっての。優勝したら甲子園なんだぞ?」
「あ、そうなんだ。そっか、夏は県大会の次が甲子園か」
武史は足腰の強さなどは、中学時代の直史以上の部分がある。
バスケのPGは周囲の状況を把握しながら動くので、内野の適正もあると思う。
白富東は三年が抜けたら、三塁が少し弱くなる。また二塁はシニア組がいないため、あまり期待が出来ない。
まあジンの方もシニアの後輩などを、引っ張ってくる予定はあるようだが。
「考えてみれば、補欠になる可能性も高いな。素直にバスケしとけ」
「なんだよその言い方は」
「お兄ちゃん、何話してんの?」
そこへ二人の妹がやってくる。双子の桜と椿だ。
現在は中学三年生。どちらも文芸部に所属している。
武史と双子は、同じ学年だが三つ子ではない。また、両親も同じである。
武史が四月四日生まれで、双子が三月三十一日生まれなのだ。
ちなみに直史も四月生まれなので、今考えたら両親は、四人の赤ん坊を三年の間に得たことになる。
大変だったんだろうな、と自分も一歳上なだけだが、下の面倒はよく見ていた気がする直史である。
「明日の試合、応援に来るかどうかって」
「あ、あたし達は行くよ。けっこう強いんでしょ?」
「まあそうだけど、多分俺は投げないからなあ」
「あ~、やっぱり高校に行くと、ちゃんと人数がいるんだね」
中学時代は、人数が少ないからピッチャーだった。それは直史の本心であったが、人数がいても直史はエースだったろう。
いや、むしろキャッチャーをやっていたかもしれない。どうせ直史の全力投球を捕れるキャッチャーがいなかったので。
(シーナが中学で野球部やってくれてたら、もっと勝てたかもな)
それこそ今更の話である。
「まあ勝てそうならやっぱり応援行くよ。どっかで代打とかで出るかもしれないでしょ?」
「チーム的には、俺が出る必要もなく勝った方がいいんだけどな」
そうは言う直史であるが、応援があるのは嬉しい。中学時代は、何も期待されていなかったのだ。
「お爺ちゃんとお婆ちゃん誘っていくよ。タケは別に来なくてもいいけどさ」
「いや、俺だって行くって」
やかましい弟妹たちの声を聞きながら、直史はふと空を仰ぐ。
星が良く見える。明日はいい天気になりそうだ。
運動部をまとめる立場の北村であるが、ブラスバンド部は割と筋トレもしたりするので、それなりに顔見知りがいる。
その部長に対しての用事であった。
「ちょっといいか?」
「おう。あ、試合の応援か? 大丈夫、ちゃんと予定立ててるから」
「そっか。今年の夏はけっこう勝てそうだから、先に言っておこうと思ってさ」
「ああ、春はけっこう勝ったんだよな?」
「まあな、ベスト8」
「すげえな。ひょっとして歴代最高じゃね?」
「すごく昔に一度そこまで勝ってるけど、今年は夏休みに入ってからも、まだ残ってる予定だな」
北村はこういった冗談は言わない。どちらかというと、不言実行の男である。
それがここまで言うからには、かなりの成算があるのだろう。
「分かった。俺も一度ぐらい、夏の甲子園でラッパ吹いてみたかったしな」
「お前が今一年だったら、たぶん叶ったんだろうけどな」
一年生なら、可能性がある。
そこまで確信を持っているのだ、だが同時に、今年は無理だと冷静に考えている。
「あ、でもブラバン応援なら、OBでもいけるのか。羨ましいなあ」
心底そう言う北村に、部長は寂しさを感じた。
高校野球。このアマチュアのスポーツは、巨大な金を動かし、多くの人を魅了する。
しかし選手に与えられた機会は、二年と四ヶ月、五回しかないのだ。
北村たちは、ごく普通の野球部だ。白富東は運動部だけではなく文化部も、大きく表彰されることは少ない。
時々よく分からない部が何かの賞を取ったりするが、ブラスバンド部にしても、コンクールで金を狙うほどの熱心さはない。
「そういえば、何か外部のコーチが来たんだよな? その影響か?」
「それもあるけど、今年の一年の中に、まあ中心になるやつがいてな」
全ては、ジンの入学から始まったのだ。
才能で言えば直史と大介の存在も大きいが、ジンがいなければこの二人も、全力を発揮できたとは思えない。
再来年。ジンたちが最高学年になる。その時が白富東野球部の、最高の最強の夏になるはずだ。
そしておそらく大学に進学した北村は、テレビで甲子園の試合を見ながら、友人たちに言うのだ。俺はこいつらのキャプテンだったんだ、と。
「チアもほしいけど、うちはダンス部しかないしな」
「あ、じゃあそっちは俺が話しておくよ。メンバー全員は無理だろうけど、有志参加で」
「マジか。ありがたいわ」
夏に向けて様々な方面への挨拶と、連絡を行っていく。
監督就任の件などが特殊であったため、顧問の高峰も随分と忙しかったらしい。
問題になったのはプロアマ規定だ。MLBとはいえ、元選手でもコーチでもないとはいえ、セイバーが関係することは認められるのか。
だがそれを知ったセイバーは、あっさりとレッドソックスを辞めてしまった。
コーチ陣はセイバーの私的スタッフなので、球団とは関係ない。
そもそも球団関係者とは言え、フロントスタッフなので、話し合えば許可された確率も高かったのだが。
簡単に無職になってしまったセイバーに、校長などは恐縮してしまったが、セイバーは気にしない。
ここでちゃんと実績を残せば、普通にまた雇ってもらえるだろうからだ。
アメリカの会社は、そのあたりはとても柔軟である。
「校長が、甲子園に行ける可能性はどのくらいか、なんて言いましてね。さすがにそんなの分からないですけど」
ミーティングルームではまた、ホワイトボードを前にセイバーが話をしていた。
「実際のところ、どのくらいなんですか?」
ジンの発言に、セイバーは表情を変えずに答える。
「50%です。行けるか行けないかですので」
「いやそりゃ、統計的におかしいでしょ」
ジンが反論するが、おそらくセイバーはその反応は予想済みだったのだろう。
「相手の戦力とこちらの戦力を数値化して、それで行けるかどうかを判断するなら、10%前後かもしれませんね。そもそも勝つか負けるかの試合を七回行うので、確率はかなり低いですよ」
それは数字のマジックというものだろう。
「さて、緒戦の相手は久里浜高校と栄泉高校との試合の勝者ですが、この対戦はどう見ますか?」
「栄泉は一応私立で、ベスト16まで残ることもけっこうあります。久里浜は正直、特に特徴もないチームですね。弱小と言うほど弱くはないですが」
過去に栄泉と対決したことのある北村が言う。ちなみにその時は負けた。
どれだけ準備をしていても、相手はベスト16程度の力はあるチームである。何か一つ歯車が狂えば、そこで負ける可能性はある。
そして、負けたらこの夏は終わりだ。北村の高校野球が終わる。
「このトーナメント戦というのも、ちょっと合理的ではないと思うんですよね。普段からリーグ戦を行って、ある程度の勝率を収めたチームで、また何度かリーグ戦を行い、最終的に勝率の良かった二チームで、対戦を行えばいいと思うんですが」
セイバーはそう言うが、それはプロの世界である。
「興行的に成り立たないんですよ、それじゃ。そもそも強いところがちゃんと優勝するんじゃ、面白くないですしね」
甲子園幻想を持たない直史はそう言う。セイバーの言ったことは、大学野球リーグに似ているものだ。
全国の都道府県から集めた代表を、一つの会場で戦わせる。特に夏は、炎天下に過密日程で。
まあ春の選抜の代表校を決める、秋季大会はやや地方戦を重視したものと言えるだろう。
「どれだけ頑張っても報酬の出ない選手は大変ですね。プロに進めば別なんでしょうけど、それにしてもプロで成功するのはごく一部でしょうし」
「プロに行く覚悟のあるやつは、普通に強豪校に進学してますよ」
ただ直史が不思議に思うのは、高校の強豪でレギュラーを取れたとしても、プロにまでは行けない連中が、強豪校の厳しい練習に耐えることである。
確かに野球名門校などは、そこから社会人野球に行ったり、推薦で大学進学が狙えたりする。
しかし人生をそこまで一つの価値に依存して、つまらなかったり怖くなったりはしないのだろうか。
白富東の練習は、ジンたちが入学後に厳しくなったという。
打撃がどうとか、守備がどうとか、ただ漫然と厳しくなったわけではなく、ちゃんと体力を作るためのメニューが組まれ、打撃も守備も考えられたものだ。
頭を使う野球は、白富東の上級生にも受け入れられた。それでも練習に参加しないという選択はあり、上級生などは北村に連絡した上で休むこともある。
あと、日曜は休みだ。休養日を作らないと、体がちゃんと作られないので。
それに練習量は増えたが、練習時間自体はそれほど増えていない。
自主練をしている連中は多いだろうし、直史も家ではかなり投げ込んでいるのだが。
練習についてはセイバーが監督するようになってからも、明らかに厳しくなったり、長くなったりはしていない。
メジャーの選手などは練習時間が比較的短いなどということも聞くが、あれは既に技術的に充分な域に達しているからだろう。
プロならば伸ばせる限りは身体能力を限界まで伸ばすべきだし、ベテランはその能力を維持すべきだ。
そもそもセイバーは、練習量について、明確な基準を持っている。
無理はさせない、ということだ。
限界の先にこそ、到達出来る力がある。そういう限界を知るための練習も、必要なのだろう。
そもそも選手の限界を、監督であろうと勝手に決めてしまうのは人間的に失礼だ。
ただ彼女が重視するのは、単なる負荷の強度を上げることではない。それは怪我や事故の原因になるし、集中力が途切れた状態での練習は、リスクばかりが大きくなる。
ボディビルで言うならば、筋繊維が断裂し、それが回復していることに喜びを感じる。その程度が一番いいのだ。
根性を入れるために1000本のノックをするぐらいなら、適切なウエイトをすべきだ。ダッシュを繰り返し、瞬発力を上げるべきだ。
そしてピンポン球を使った近距離での動体視力トレーニング。精神力が勝負には重大なことは分かるが、限界を超えるような練習では、何人かの故障者は必ず出る。
それを容認してしまうほどに人材が豊富なら、それはそれでいい。そんな練習に賛成するなら、選手自身も愚かであるのだ。もっとも未成年にそのような過酷な練習をさせることを許すのは、やはりセイバーには理解しがたいが。
もっと簡単に、健全に、合理的に上手くなれる。そういう道を示したい。
そもそもいわゆる強豪のやり方では、今回のように短期間で成長させるのは無理だ。
セイバーの判断に北村やジンも同意し、練習は調整期間に入った。
そして県予選開幕前日に、背番号が渡される。
基本的には確実なスターティングメンバーが、背番号を貰っていく。
一年生で一桁なのは、六番ショートの大介だけであった。
岩崎は11番。ジンは12番。直史は18番を貰っている。
三年と二年からは背番号を辞退する者が二人ずついて、自ら他球場で行われる強豪校の偵察班をかってでた。
セイバーのスタッフの偵察はプロのものだが、高校生だからこそ気付くものがあるだろうと判断したのだ。
それでいいのかと最後まで北村は、特に三年には確認したが、二人の意思は固かった。
一年生があれだけ頑張っているのだから、自分たちも勝つために、本当に役立つことをしたくなったのだ。
野球は好きだし、プレイするのも好きだ。そして身近でものすごく努力をしているチームメイトが一番好きだ。
そこまで率直には言わなかったものの、意訳としてはそのようなものである。
献身。そんな単語が北村の頭をよぎった。
灼熱の七月。ついに夏の千葉大会が始まる。
開会式はプロ野球球団、千葉ロックマリンズの本拠地、通称マリスタで行われる。
この年の参加校はキリのいい170校。この中から甲子園に行くのが、たったの一校なのだ。
「次にここに戻ってくるのは、準々決勝か」
開会式を終えた北村は、三万以上の観衆が観戦できる、巨大球場を見上げた。
自分たちは戻ってくる。自信がある。慢心はしていない。
白富東の部員達は、誰もが落ち着いている。
それでいて、戦意に満ちている。
勝ちたい。勝てる。勝とう。そんな意識がある。
緒戦の突破をちゃんと注意していれば、その目標は達成できる。
シードのためまだ出番は先だが、やることは既にある。
土日に試合が行われる場合は、偵察班だけでなく、レギュラーも気になった試合は見に行っている。
そして一回戦が終わり、緒戦の相手も決まった。
意外なことに、注意点が存在した。
「古豪と言われる栄泉高校が九対七で勝ちましたが、戦力を温存していました」
そしてセイバーが見せたのは、栄泉の練習風景と、練習試合の様子であった。
「カナダからの帰国子女、一年生の大原君。145kmのストレートが武器の、本格派です」
一年生で岩崎より速いというのは、春日山の上杉弟以来であった。
まああちらは148kmを出していたので、より化物であったが。
「変化球は?」
北村が問う。速いだけならセイバーの買ってくれたマシーンで、160kmが体験出来る。
「今のところ使ってません。ただ時々ナチュラルに細かく動いていることはあるようですね。あと基本的にコントロールが悪いです。カウントを稼ぐために投げる、130km程度の速球が、結果的にチェンジアップ気味になってるようです」
微妙な相手である。ただ荒れ球というのは不安だが。
「ストレートの質はどうなんですか?」
これはジンの問いである。単純な速さはともかく、実際に投げてもらうと、直史のストレートは岩崎と遜色ないぐらいに感じることもあるのだ。
「ややクセがありますね。これがナチュラルに動く理由のようです。スピンは平均より高いので、もう少し早く感じるかもしれません」
せっかくシードを取ったのに、いきなりこの展開である。
「ですがこれは、チャンスでもありますね」
セイバーは無邪気な微笑を浮かべた。
「体力を完全に温存した、速球派投手を実際の試合で体験出来るわけですから。この程度のスピードなら、北村君と白石君は打てますよね?」
「打ちますよ」
平然と答える大介に、周囲の視線が集まる。
「だってセイバーさんの用意してくれたエクスカリバー(新型バッティングマシーン)は160kmまで出るでしょ? あれで甘いストライクを叩いて、鍛えた選球眼でボールを見逃す。遅いボールでストライクを取りに来たら、普通に打てますから」
攻略法としては、大介の言う通りである。だが大介自身は、おそらく厳しいところの速い球を、遠慮なく打ちに行くであろう。
速球派投手が厳しいコースを打たれたら、おそらくはかなりのショックを受けるはずだ。
その理屈の正しさに、選手たちは皆頷いた。
「あと、向こうの打線はあまり気にしない方がいいですね。九点を取っていますが、相手のピッチャーは特徴のない打ち頃の投手でした。うちなら五回コールドです」
白富東の打線は、一番から六番までは、凄まじい得点力を誇っている。
「一番の目的は、こちらの戦力を隠したまま勝つことですね。統計的には邪道ですが、勝ち進むためなら当然の選択です」
その前提の上で、セイバーは緒戦のスタメンを発表した。
一年生のスタメンは、大介だけである。
万一こちらの打線が機能しない時のために、確実に打ってくれる打者が一人は必要だった。
バッテリーは三年の鈴木と山田。つまり残った三年は全員がスタメンだ。ジンすら出場しない。直史と岩崎が外野を守ることもない。
三年に配慮したメンバーというわけではない。実際に鈴木で、それなりに抑えられるはずなのだ。
「万一後半で捕まったら、そうですね、より変化球の多い佐藤君がリリーフです」
もっともセイバーの期待値によると、その出番はないはずだが。
「体力温存のためにも、コールドを狙いましょう」
特に力を込めることもなく、セイバーはそう言った。
縁側に腰かけ、直史は手袋をはめてスパイクの泥を落としていた。
ユニフォーム一式に、バットやスパイクなど、野球は金のかかるスポーツだ。
「兄ちゃん、明日試合だろ? 応援しに行こうか?」
弟の武史が、横に座って言った。
「お前のところも最後の大会前だろ?」
武史はバスケットボールをしている。中学三年生なので、これが最後の大会だ。
「そうだけど、あんまり気合入ってないしなあ。俺が点取っても、マークがきつくなるだけだし」
直史もある程度バスケの知識はある。もっともそのほとんどはマンガと、衛星放送のNBAが中心だが。
直史と同じ中学の、一歳下の弟。だがバスケ部は、野球部に比べると強い。
昨今の人気があるのと同時に、単純にプレイに必要な人数が少ないからだ。
「PGのお前がしっかりしたら、なんとかなるんじゃないのか?」
ポイントガード。攻撃において最もボールを持つ時間が多い、チームにおける頭脳である。
武史はそこそこ身長もあるのだが、純粋にバスケが上手いので、司令塔となっている。
スラムダンクで言うなら宮城ではなく藤真あたりであろう。得点力があるタイプのPGなのだ。さすがに牧ほどのパワーはない。
ただ直史の目からは、自分のチームを活用するのに長けているとは言えない。
まあ比較がNBAのPGなので、それも無理はないのだが。
「監督からして勝つ気ないしなあ。一回戦負けは嫌だけど」
武史は直史より少しだけ背が低い。だが来年になれば、逆転されている可能性が高い。
「お前、高校生になったら、うちに入って野球やらね? 小学校ではピッチャーしてたしさ」
「今更かよ。まあ成績的には行けるだろうけど、三年のブランクはきついなあ。それにバスケより金かかるだろ」
「そこがなあ」
バスケ自体にはもうそれほど未練はない。
だが進学校に行ってまで、野球をやり直すというのも難しい。
佐藤家は極端な貧乏ではないが、使い道のない山林を所有していて、それにかかる税金が痛いのだと両親は言っていた。
ちなみに少しだけ離れた所に祖父母の家があり、定年後の現在は専業農家である。
両親も休日はたまに手伝っていて、それで子供たちの教育費を稼いでいる。
農家は定年がないのがいいのだ、と祖父はよく笑っている。
野球は金がかかるスポーツではある。が、もし金がかからないとしたら。
「備品のかなりの部分を、部で負担してくれるなら、やってみるか?」
「父ちゃんたちに聞かないと分からないけど、俺は別にそれでもいいよ。でも白富東弱いだろ? そこまでムキになる必要あるの?」
「今年から強くなったんだよ。春の大会は県のベスト8だし」
「じゃあ優勝したら入るってのは?」
「そんな成績収めたら、お前に頼らなくてもいい選手いっぱい入ってくるっての。優勝したら甲子園なんだぞ?」
「あ、そうなんだ。そっか、夏は県大会の次が甲子園か」
武史は足腰の強さなどは、中学時代の直史以上の部分がある。
バスケのPGは周囲の状況を把握しながら動くので、内野の適正もあると思う。
白富東は三年が抜けたら、三塁が少し弱くなる。また二塁はシニア組がいないため、あまり期待が出来ない。
まあジンの方もシニアの後輩などを、引っ張ってくる予定はあるようだが。
「考えてみれば、補欠になる可能性も高いな。素直にバスケしとけ」
「なんだよその言い方は」
「お兄ちゃん、何話してんの?」
そこへ二人の妹がやってくる。双子の桜と椿だ。
現在は中学三年生。どちらも文芸部に所属している。
武史と双子は、同じ学年だが三つ子ではない。また、両親も同じである。
武史が四月四日生まれで、双子が三月三十一日生まれなのだ。
ちなみに直史も四月生まれなので、今考えたら両親は、四人の赤ん坊を三年の間に得たことになる。
大変だったんだろうな、と自分も一歳上なだけだが、下の面倒はよく見ていた気がする直史である。
「明日の試合、応援に来るかどうかって」
「あ、あたし達は行くよ。けっこう強いんでしょ?」
「まあそうだけど、多分俺は投げないからなあ」
「あ~、やっぱり高校に行くと、ちゃんと人数がいるんだね」
中学時代は、人数が少ないからピッチャーだった。それは直史の本心であったが、人数がいても直史はエースだったろう。
いや、むしろキャッチャーをやっていたかもしれない。どうせ直史の全力投球を捕れるキャッチャーがいなかったので。
(シーナが中学で野球部やってくれてたら、もっと勝てたかもな)
それこそ今更の話である。
「まあ勝てそうならやっぱり応援行くよ。どっかで代打とかで出るかもしれないでしょ?」
「チーム的には、俺が出る必要もなく勝った方がいいんだけどな」
そうは言う直史であるが、応援があるのは嬉しい。中学時代は、何も期待されていなかったのだ。
「お爺ちゃんとお婆ちゃん誘っていくよ。タケは別に来なくてもいいけどさ」
「いや、俺だって行くって」
やかましい弟妹たちの声を聞きながら、直史はふと空を仰ぐ。
星が良く見える。明日はいい天気になりそうだ。
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