似た女

原口源太郎

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殺しに来た男・2

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 沖縄で発砲事件があり、女が数発の銃弾を浴びて死亡し、女を撃った男もその場で自分を撃ち、死んだというニュースが流れた。
 私は悲痛な思いでそのニュースを見た。
 男が私の首を絞めて殺そうとした時から十年が経っていた。

 十年前のあの日、男が部屋を出ていく時、閉まるドアの音を聞きながら、私は男が女を見つけ出せずに、復讐を諦めてほしいと思った。
 男と話をしていて、元々お坊ちゃん育ちで人が良く、女にうまく利用されたのだと思った。だから男がこれ以上罪を犯すのを止めさせたいと思った。
 だけど男は行ってしまった。
 その翌日だった。
 ふたたび男が訪ねてきた。
 多分、男の実家は裕福でありながら厳格な家なのだろう。家に居られなくなったから、ほんの数日、宿を見つけるまでの間でいいから泊めてほしいと男は言った。
 私はもう、男のことを恐ろしいとは思わなかった。それどころか、男を説得するチャンスが回ってきたことに感謝さえした。
 私の説得を聞き入れ、男は三日後、女を捜すよりも職を探すことを優先すると約束した。
 約束通り、男は一週間後に下町の小さな町工場に働き口を見つけた。
 男は私の家から真面目に会社に通い、毎日こつこつと一生懸命働いた。
 元々、根が真面目なのだろう。働き始めると、もう女のことを口に出すことはなくなった。
 男が働き出して三年後に私は身ごもり、男と籍を入れて夫婦になった。
 女の子が生まれると、夫となった男はとても喜び、娘を溺愛した。
 その頃から夫は一つの懸念材料を口にするようになった。
 こんな小さなありふれた生活が、これほど幸せだと思わなかった。お前のおかげで、女のことを忘れてよかったと言った。
 そして、銀行に押し入ったもう一人の仲間のことを心配するようになった。仲間の男は拳銃で人を撃ったために夫より罪が重く、まだ刑務所に服役していた。
 きっと刑務所の中で、毎日、昔の自分と同じように女に復讐することしか考えていない昔の仲間に、何としてもその思いを改めさせ、自分と同じような幸せを感じられる生活をしてほしいと願った。
 夫は刑務所の男に何通か手紙を出したが、返事が帰ってくることはなかった。
 そして昔の仲間が出所したことも知らなかった。
 夫はこのニュースのことを知り、どう思うだろう。
 きっと悲しむに違いない。
 そして、もし女を殺したのが、昔の仲間でなく、夫だったら・・・・
 私はそんなことを考え、そして夫の気持ちを考え、胸が熱くなった。
「行ってきましたー」
 小学校に入学したばかりの娘の元気な声が響いた。
 私は涙を拭いて立ち上がると、娘を迎えるために笑顔を作った。
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