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世界中で戦闘が激しさを増していく中、国連により民間船への攻撃はしないということが再度確認されていた。今回の攻撃は明らかに条約違反だった。
船の甲板は爆発した船の人々の救出で大混乱となっていた。しかし船に乗っているのはほとんどが老人か女子供だったので、たいした事もできない。
「俺たちみたいな避難民の乗る一般の船は攻撃しちゃあいけないことになっているはずだ。だから警備らしい警備もろくにしていなくて、形だけって感じで巡洋艦が一集付いているだけ」
俊輔が海上を見ながら翔司に話す。
「戦争中にそんな規則守るか?」
「何かの事故なら、まだいいんだけど」
やがて傷付いた輸送船は傾き、海の中に沈んでいった。
少し離れたところから声がした。梨花だった。
「いやだ! なんでみんな死んじゃうの!」
俊輔たちがそこに行こうとした時、修がすでに梨花の横にいた。
「しっかりしろ! 泣いている暇があったら一人でも助けろ!」
その時だった。
遠くで何かが光り、しばらくして爆発音が響いてきた。船が燃えている。貨物船団を警護してきた巡洋艦だ。辺りでは無数の光が走り、爆発が続く。ミサイルらしい炎が幾つも空に向かっていくのが見えた。
「おい、やばいぞ、これは」
翔司が俊輔に話かけた。
その言葉を聞いていたかのように、止まっていた船が動き始める。
海に浮かぶ人々は置き去りにされた。
三人の少女はしゃがみこんで泣いていた。
再び大きな音がして、近くの貨物船の横で水柱が上がった。
「マジでやばい。無差別攻撃だ」
翔司が俊輔に言う。その声は怯えていた。
甲板の上を走りまわっていた軍人が声を上げる。
「おーい、救命ボートをすぐに下せるように準備するから、手伝ってくれ。それから手の空いている者は救命具を出してくれ」
船には年寄りが多かったから、自分で自分のことをさっさとできない者も多かった。
六人の少年と少女は軍人のところへ走った。
その時。
「来るぞ!」
誰かが叫んだ。
水中を白い線が走ってくる。
耳をつんざくような音がして船が大きく揺れ、甲板にいる者たちは倒れた。さらに船はビリビリミシミシと振動する。
倒れた人々の上に水がバシャバシャと降り注いだ。爆風で空に飛ばされた水が落ちてきたのだ。
俊輔は仰向けに倒れたみゆきの上に覆い被さるように倒れていた。
「ごめん!」
俊輔は慌ててみゆきの上から飛び退いた。
「おい! 早くボートを降ろせ!」
救命ボートが幾つか降ろされた。
「早く乗れ! 沈むぞ!」
俊輔たちは老人や小さな子供をボートに乗せるのを手伝った。
ボートに乗り込む人々の中に俊輔は母の姿を見つけた。
「母さん!」
「俊輔」
「僕もすぐに行くから」
俊輔の母の乗る大型ボートは、貨物船から離れていった。
「おい、もういい。お前たちもボートに乗れ」
俊輔たち六人もボートに押し込まれた。小さなボートだ。最後に軍服姿の二人の男が乗り込み、ボートは船から離れた。
船の甲板は爆発した船の人々の救出で大混乱となっていた。しかし船に乗っているのはほとんどが老人か女子供だったので、たいした事もできない。
「俺たちみたいな避難民の乗る一般の船は攻撃しちゃあいけないことになっているはずだ。だから警備らしい警備もろくにしていなくて、形だけって感じで巡洋艦が一集付いているだけ」
俊輔が海上を見ながら翔司に話す。
「戦争中にそんな規則守るか?」
「何かの事故なら、まだいいんだけど」
やがて傷付いた輸送船は傾き、海の中に沈んでいった。
少し離れたところから声がした。梨花だった。
「いやだ! なんでみんな死んじゃうの!」
俊輔たちがそこに行こうとした時、修がすでに梨花の横にいた。
「しっかりしろ! 泣いている暇があったら一人でも助けろ!」
その時だった。
遠くで何かが光り、しばらくして爆発音が響いてきた。船が燃えている。貨物船団を警護してきた巡洋艦だ。辺りでは無数の光が走り、爆発が続く。ミサイルらしい炎が幾つも空に向かっていくのが見えた。
「おい、やばいぞ、これは」
翔司が俊輔に話かけた。
その言葉を聞いていたかのように、止まっていた船が動き始める。
海に浮かぶ人々は置き去りにされた。
三人の少女はしゃがみこんで泣いていた。
再び大きな音がして、近くの貨物船の横で水柱が上がった。
「マジでやばい。無差別攻撃だ」
翔司が俊輔に言う。その声は怯えていた。
甲板の上を走りまわっていた軍人が声を上げる。
「おーい、救命ボートをすぐに下せるように準備するから、手伝ってくれ。それから手の空いている者は救命具を出してくれ」
船には年寄りが多かったから、自分で自分のことをさっさとできない者も多かった。
六人の少年と少女は軍人のところへ走った。
その時。
「来るぞ!」
誰かが叫んだ。
水中を白い線が走ってくる。
耳をつんざくような音がして船が大きく揺れ、甲板にいる者たちは倒れた。さらに船はビリビリミシミシと振動する。
倒れた人々の上に水がバシャバシャと降り注いだ。爆風で空に飛ばされた水が落ちてきたのだ。
俊輔は仰向けに倒れたみゆきの上に覆い被さるように倒れていた。
「ごめん!」
俊輔は慌ててみゆきの上から飛び退いた。
「おい! 早くボートを降ろせ!」
救命ボートが幾つか降ろされた。
「早く乗れ! 沈むぞ!」
俊輔たちは老人や小さな子供をボートに乗せるのを手伝った。
ボートに乗り込む人々の中に俊輔は母の姿を見つけた。
「母さん!」
「俊輔」
「僕もすぐに行くから」
俊輔の母の乗る大型ボートは、貨物船から離れていった。
「おい、もういい。お前たちもボートに乗れ」
俊輔たち六人もボートに押し込まれた。小さなボートだ。最後に軍服姿の二人の男が乗り込み、ボートは船から離れた。
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