少年少女たちの日々

原口源太郎

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 船内は人と物で雑然としている。俊輔と母は三畳ほどの狭い船室を割り当てられた。他に四人いる。二段ベッドは二つしかない。
「じゃ、おやすみ」
 俊輔は母に挨拶をして部屋を出た。他のベッドは皆埋まっている。
 幼い子とその母がひとつのベッドに寝ていた。ベッドは狭く、親子は窮屈そうだ。
 夜の甲板は暗く、寒々としていた。俊輔は手すりにもたれて暗くうねる海を見た。
「シュン君?」
 名前を呼ばれて振り向くと、梨花がいた。
「やっぱりそうだ」
「寝ないのかよ」
「寝る場所がないもん。ベッドは一杯で」
「何だ、お前もか」
「朝までどうしよう。昼間にベッドが空いている時に寝るしかないもんね」
「朝までこんな所にいたら風邪ひくぞ」
「うん。・・・・ちょっといい?」
「何?」
「好きな人いる?」
「何だよ、急に」
「誤解しないでよ。私がシュン君に愛を告白するわけじゃないから」
「そりゃ、いるよ」
「誰?」
「何でそんなことを言わせる?」
「私も言うから」
「ちょっと待て。お前、俺を好きなわけじゃないんだろ。なら言ってもしょうがないだろ」
「シュン君たち、来年には戦争に行っちゃうでしょ。誰かに聞いておいてもらいたいの」
「なら本人に言えば?」
「そんなこと、無理」
「じゃ、聞いてやる。だけど俺は言わない」
「そんなの不公平じゃない」
「恥ずかしくて言えるかよ」
「私だって恥ずかしい。でも誰かに聞いてほしい」
「わかった。じゃ、先に言えよ」
「・・・・何だかドキドキしちゃうな」
「何だよ。じゃあ言うな」
「冷たいな」
「わかったよ。聞いてやる」
「うんとね、シュン君といつも一緒にいる人」
「ふーん、ショウだろ」
 梨花は赤くなって俯いた。
 月の光を跳ね返す波の遠い先に、他の船が黒い塊のようなって見える。消灯時刻は過ぎているが、微かな明かりがたくさん漏れている。
「何でわかったの?」
「俺たちの中で、俺の次にいい男といえばショウだろ」
「俺の次? まあそれはいいとして、そんな言い方は修君に悪いんじゃない?」
「いいんだよ。あいつはまだ幼過ぎてひょうきんなだけだ。根はいい奴なんだ」
「それよりシュン君は?」
「俺? 俺は・・・・、やっぱり言わなきゃダメ?」
「私、もう言っちゃったじゃない。言ってくれなきゃダメ」
「俺は」
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