勇者たちの物語 短編集

勇者の現実

　俺は広大な宇宙を旅する勇者だ。
　宇宙空間の闇に潜む魔物の不意打ちをかわして斬り伏せる。
　訪れる星々で凶悪なエイリアンを駆除し、超巨大人工衛星ではどうやって倒したらいいのかわからないほど強力な殺人マシーンと戦わなければならない。
　それでも俺は正義の勇者として、宇宙にはびこる悪を倒し続けなければならない。
　今日もまた、ＳＯＳを発信している銀河系の惑星目指して仲間と旅に出る。

　そこで目が覚めた。
　広大な宇宙を旅する勇者とは格好いい。そんな勇者になれたら、どんなに凄いことだろう。
　だけど現実はつらい。
　名ばかりの勇者の僕は、カチャカチャとコントローラーを操作するご主人様に操られて、この四角い小さな空間の中を動き回るだけだ。
　仕方がない。これも仕事。そう割り切ってやるだけ。

　あの、ご主人様、話の流れ的にそちらの方向に向かうのは、ちと見当違いだと思うのですが。
　そう言いたい気持ちをぐっとこらえて、今日も僕はご主人様の命ずるままに冒険の旅を続ける。